ep14.暗殺
ホワイトの腹から零れる血…
ホワイトの身体に響く強烈な痛み。
ホワイトの目の前にいるのは、ネオカオス四天王の一人…暗殺のルキ。
「ネオカオス…四天王…!?」
「これでいいかしら?」
ルキがそう言うと、上に着ていたパーカーを脱ぎ、服の袖にあるネオカオスのシンボルをホワイトに見せる。
「っ…!」
「私の目的は、ラッシュ師団の暗殺…のみ」
ルキはホワイトに刺したナイフを更に深く刺し込む。
「がはっ…」
刺された衝撃でホワイトは吐血する。
ホワイトの吐いた血が地面に落ちる。
「殺戮のデスト覚えてる?」
「…デスト…あの…人造人間の…!」
「そ。結構派手にやってくれたわよね。おかげでデストは実質死亡。人造人間とはいえ、修復しないと動かなくなっちゃったわ。どうしてくれんの?」
ルキがホワイトを睨みながら更に深く刺し込む。
深く刺され、血を吐くホワイト。
「うぐっ…がはっ…デストをやったのは…私じゃ…」
「そう、ホワイトじゃ、ないわね。…だけど、同じラッシュ師団な以上あなたも仇なのよ」
「っ…!」
ホワイトは力を振り絞って、麻酔銃を取り出してルキ目掛けて撃つ。
「おっと…」
ルキの目の前に別のナイフが浮かび上がり、麻酔弾を弾き返す。
「っ…!念…力…?」
「そう。私の魔力。この力で、幾多の人間を滅多刺しにして葬ってきたわ」
ルキがそう言うと、ルキの背後に沢山のナイフが浮かび上がる。
「これ、あなたに全部刺したらどうなるかしら?」
ルキが笑いながら話す。
「っ………なんとしてでもこの人を眠らせて…それから…」
ホワイトが再び麻酔銃を構えた。
だが、ホワイトの腕が震える。
「っ…腕…が…」
ホワイトの腕が震えて思うように狙いが定まらない。
ナイフに仕込まれた毒のせいでホワイトの身体は麻痺していた。
「普通のナイフじゃなくて、麻痺毒が入ったナイフであなたを刺したの。そりゃ、震えるよね。深く入れたし、そのままじゃまともに動けないはず」
「くっ…!」
ホワイトは麻酔銃を撃つ。
だが、狙いが定まらずルキに命中しなかった。
「どこに撃ってるのかしら?」
「っ……」
「さて…そろそろ」
ルキが舌で自身の唇を舐める。
「さよならよ」
ルキはルキの後ろにある多数あるナイフから一つを選び、右手で持ってそれをホワイトの左胸に刺す。
「がはっ………」
――一方、新しいラッシュ師団の基地で報告を終えたミカは、外に出ていた。
「…そういえば、皆何をしに行ったんだろう」
「おーい」
ミカの右の方から声がした。
「…その声は、ロキ。…と、ジンも」
声の正体はロキ。ロキに続いてジンも現れる。
「よ。おかげで薬も包帯もいっぱい買えたぜ。魔力回復の薬のレシピも手に入れたし、早速ホワイトに見せたい」
「俺は、ちょっと昔話を聞いてた。意外とためになった」
「へぇ、二人とも意外な事してるわね。…ホワイトは?」
ミカが腕を組みながら辺りを見渡す。
「…ホワイト?俺は見てないな」
「俺も。確かネオカオスの手がかりを探すだとかそんな事言ってたな」
「ネオカオスの…大丈夫なの?」
「この城下町なら大丈夫だろう。門番もいた事だしな」
「まぁ、そっか。でもちょっと不安だから、あたし探してくる。御飯も近いし」
ミカが腕を解いて、ゆっくりと歩き始める。
「おう。俺は先に基地に戻ってるな」
「ミカ、俺も探す」
ジンはミカに着いていく。
「ん、じゃあ手分けして探そっか」
ミカとジンが分かれてホワイトを探し始める。
「…ったく…どこ行ったのよあの子は…」
ミカがぶつぶつ言いながら城下町の中を歩いている。
そして…ミカはルキとすれ違う。
「………」
ミカはルキの事を特に気にせずに歩いていた。
「…!」
ミカはルキの服の袖に付いているシンボルに気付き、ルキの方を見る。
「…待って、アンタ…」
「んー?」
ルキはミカの方を笑顔で振り向く。
「…袖のそのマーク…!!」
ミカがネオカオスのシンボルを見つめる。
「あ…着替えるの忘れてた」
「ネオカオス…!!」
ミカが銃剣を取り出そうとし、銃剣の柄を掴む。
「待ってよ。ここ、人いっぱいいるよ?武器取り出したら不味くない?」
ルキがミカの顔を見てニヤリと笑う。
城下町にいる周りの人間がミカ達を不審そうな目で見る。
「っ…」
ミカは周りの目を気にし、銃剣を取り出すのを辞める。
「あ、なんか服見た事あると思ったらラッシュ師団か」
「とぼけるな…何故、アンタがここにいる…」
ミカがルキを睨み付ける。対象にルキは笑みを浮かべていた。
「とぼけてないわよ。門番さんを騙してこの中入ったのよ。でも、門番さんは殺してないから安心して?」
「殺しはしてないのか…何が目的だ…」
「え?…そうねぇ…」
ルキが少し悩むような仕草を取る。
「偵察…と、宣戦布告?」
「宣戦布告…?」
「そう。…あ、デスト殺したの、あなたでしょ」
「っ…!」
ミカは驚いた顔をする。
「その顔はやっぱりね。下っ端にはバケモンの女がいるって聞いてたから、あなたの事だと思ってたけどやっぱりね」
「っ…!」
ミカがルキの胸倉を掴む。
「っ」
「…アンタ…ただじゃおかないわよ…」
「ふふっ…それはどうかしら…」
ミカがルキを強く掴んでいたが、薬屋の女性がミカを止めに入る。
「ちょっと…!喧嘩はしないで…!」
「っ…!何も理解していないで…あなたは黙ってて下さい…」
「理解…?よく分からないけど、城下町での喧嘩はダメ!」
ミカがルキから手を離す。
「っ…クソッ…!」
「全く、服が伸びちゃうわ。上に羽織っとこ」
ルキが再びパーカーのような物を着る。
「…そういうこと。ここでの戦闘は私にとっても面白くない。けれど、また会ったら宜しくね」
ルキが笑みを浮かべる。
「次会ったら、全員殺してあげるわ」
「っ………」
ルキの鋭い眼光にミカが少し震える。
「…あ、そうそう。一応言っとくけど、門番さんは殺してないって言っといたからね」
「…?」
ルキがその場を去り、どこかに消えてしまう。
「……門番さん…は…?」
ミカはその言葉を疑問に持つ。
そして…ミカの考えが、確信に変わる。
「っ…!まさか………!!」
ミカはすぐさまルキが歩いていた場所へ走り出す。
そして…狭い通路を見つける。
そこには少しだけ地面に血が付いていた。
「血がちょっと付いてる…」
ミカが通路を通り抜ける。
その通路にはルキが持っていたナイフから落ちたのか、血が床に付着していた。
そして………
「……!!」
そこにはホワイトが左胸と腹から血を大量に流して壁に横たわっていた。
「ホワイト…!!」
ミカがすぐさまホワイトの方へ向かう。
「ホワイト…しっかり…」
ミカがホワイトを触る。
………だが、既にホワイトの身体は冷たくなっていた。
「ホワ…イト…?」
ホワイトの胸を見るミカ。
そして…
左胸の心臓がある部分から血が大量に出ているのを凝視する。
「…この位置…まさか心臓に…」
ホワイトはルキによって心臓をナイフで深く刺されており、死亡していた。
「嘘…そんな…ホワイト…!!」
ミカが必死にホワイトを揺するが、ホワイトは当然目を覚まさない。
ホワイトの動かなくなった心臓から血が垂れ続ける。
「そんな…まだあなたは…死ぬべきじゃ…」
――その後、ミカはランスにすぐさまホワイト死亡の件を通信機を使って報告した。
ランスは通信機越しのミカの震え声を聞き、冷静を欠いていた。
仲間が死んでいる中、師団の団長からかけられる言葉は何もなかった。
ミカはホワイトの亡骸をラッシュ師団の基地へ運び、霊安室へと運んだ。
――ラッシュ師団基地の霊安室にて…
ホワイトの亡骸をミカが見る。
「………ホワイト」
「…ミカ!ホワイトは…」
霊安室にジンが入ってくる。
「っ………!」
ジンがホワイトの亡骸を見て身体から力を失う。
「…ホワイト…嘘…だよな…?さっきまであんな元気だった…じゃないか…」
ジンがホワイトの顔を触り、その感触にジンは絶望した。
ぬくもりを感じない。感じるのは冷たい肌の感触だった。
「………」
「…なんで…ホワイトが………」
「…アイツだ…あの女だ……」
「…アイツ…?」
「…袖にネオカオスのシンボルがあった…下っ端とは服が違ったから…あいつが四天王の一人だと…思…う…」
ミカが話しながら涙を流す。
「っ…ミカ…」
ジンが涙を流すミカに寄り添おうとする。
だが、ミカがジンを振り払うかのように距離を取る。
「辞めて…今は…触らないで…」
「っ………」
「城下町だからって…油断してた…まさかネオカオスがいるなんて…」
「……俺、出るよ…」
ジンが霊安室から出る。
「……ごめん、ジン…」
出ていくジンに謝るミカ。
「…今頃あなたは…お母さんに…会えてる…ところ…かな…ホワイトの事だから…きっと…謝ってるんだろう…な…」
ミカの涙の量が更に増える。
「………大切な人が亡くなるの…こんなにも辛かったんだ…」
(また…あたしは…)
ミカの後ろからランスが現れる。
「…ミカ」
「…団…長…」
ミカが腕で涙を拭う。
「…あたしがそばにいなかったせいで…ホワイトは…」
「………」
「あたしが…ジンが…ロキが…誰かがそばにいたら…こんな事には……」
「…ミカ」
再び泣き出すミカ。
ランスがホワイトの亡骸を見る。
「…これも…運命なんだろうか」
「っ…!」
ランスの言葉にミカは反応。
そして、すぐさまランスの頬を叩く。
「っ…いって…何す…」
「運命だなんて言わないでよ!!」
ミカが大声を出す。
霊安室に声が響き渡る。
「…ホワイトが…死ぬ運命なんて…あたし許せないよ…そんな簡単に…言わないでよ!!」
「…申し訳ない」
「………ホワイトも言ってた…簡単に言わないでよ…って…」
「……そうだったな」
「…これから…あたしは…どうすればいいの…」
ミカが涙を零しながらランスの顔を見上げる。
「…ホワイトの分まで…生きるんだ。お前ができるのは、それだ。そのためにも…ネオカオスの奴等を今度こそ全員捕らえる」
「………そっか…あたしは…ホワイトの分も頑張って生きる事しか…できないんだ…」
ミカは自分に残されている事はそれしかないのだと言う事に深く絶望していた。
「…卑屈になるな。…俺も幾多の仲間を失い、絶望した時期があった。…だが、いつまでも悔やんではダメだ。…これから、逝った奴のためにも、俺等が生きるんだ」
「………ホワイトのいない世界で…あたしは…生きれない…」
「…そうか」
ランスが息を零す。
「とはいえ、今のお前にはまともな判断ができないだろう…申し訳ない事をしたな…。落ち着くまで部屋で待機しててくれ」
ランスがそう言うと、霊安室から出る。
「………あの女…絶対………」
ミカが手を強く握り締める。
握り締めた手からは少しだけ血が出ていた。
ミカの目付きが強い睨みに変わる。
「殺す」
――その日の夜、ミカもジンもロキも、夕飯を食べず、寝付く事すらも不可能だった。
ホワイトの急な死の事で頭がいっぱいだった。
――ホワイトの葬儀はネオカオスに関わる全てが解決してから行われる事が決定した。
他の失った仲間達もその時に一緒に葬儀をする事になった。
――そして翌朝…
「………」
「…ジン、ミカ、おはよう。…っつっても、俺は寝れてないが」
ロキが起き上がる。ジンもそれに呼応したかのように起き上がる。
「おはよう。…俺もだ。あいつの事を考えたら…眠れる訳がない」
「……ミカは起きてるか?」
「…起きてる。…頭…痛い…」
ミカが額に手を当てる。
三人共、ホワイトの事が頭にいっぱいでとてもじゃないが眠れる訳がなかった。
今までいた仲間であるホワイトが急に死んでしまったのだから…
「………けど、弱音なんて吐いてる場合じゃない」
ミカがそう言うと、ベッドから立ち上がる。
そして、銃剣を持って部屋を出ようとする。
「何処へ行く?…あの事件があったから、部屋で待機と言われたはずだぞ」
「……ちょっと、地獄へ…」
「…!?」
地獄という言葉を聞き、ロキが死を連想する。
「お前…まさかホワイトを追う為に死ぬ気か…!?」
「そんな訳ない…ネオカオスのあの女を…地獄に送るまで…帰らない」
「…そんな事…団長の命令違反だぞ…!?」
「…団長には、いい感じに話を付けといてよ。お願い」
「っ………」
ロキが絶句すると、ミカが扉の前に移動する。
「じゃ、またね…」
ミカはそのまま扉を開け、部屋を後にしてしまった。
「……ジン…ミカが行ってしまった…これは…」
「行かせてやってもいいんじゃないか…?」
「っ…でも…」
いくら仲間を殺されたからと言って、敵を殺すなんて…そんなのいけない…ロキはそう思っていた。
「…ミカの行動も…正直分かる。一昔前の俺ならそうしてただろう…」
ジンがため息をつく。
そして、部屋にランスが入ってくる。
「よ」
「…団長」
「…ん、ミカはどうした?」
ランスが部屋を見渡す。
「…起きたら、いなかった」
ロキが咄嗟に嘘をつく。
「そうか。…まぁいい」
ロキが少しだけ意外そうな顔をした。
ランスがミカがいないことに怒ると思っていたからだ。
「今日なんだが…お前等は自由行動だ」
「っ…!?」
二人が驚いた表情をする。
「例の件でお前等は精神的に深い傷を負っているはずだ。無論、俺もだが。だから、今日は一部の団員には自由行動を与えた」
「自由…行動…か…」
「…但し、その代わり条件がある」
ランスがそう言うと、ジンとロキは少しだけ構える。
「…自由行動の最中に、絶対死ぬな」
「…!」
ランスから放たれる意外な言葉に二人が驚く。
「危険だと思ったら、すぐに身を引いてくれ。それと、戦闘に不向きの団員が一人の場合、傍にいてやってくれ。お前達なら一人でも問題ないだろうが…仲間が絡んでる時は例外だ」
「…分かった」
「以上だ。何か質問とか、あるか?」
「団長。ホワイトの遺体は…」
「あぁ、今も霊安室にある」
「ホワイトの使ってた通信機とか麻酔銃はどこに…」
「そう言うと思って、一応ここに持ってきた」
ランスはそう言うと、ジンの前にホワイトの荷物を出す。
「…麻酔銃…」
ジンはホワイトの使っていた麻酔銃が光っている事に気付いた。
「ん?あぁ…その麻酔銃、なんだか知らないがずっと光ってるんだよな。…ホワイトの魔力の一部が入ってるのかもな」
「魔力の一部…」
「そんなところだな。後は…肌身離さず首の中にかけていたブローチがあったな」
「…ブローチ」
ランスが首輪を持つようにブローチを持つ。
「なんかこのブローチ、開けれそうだが俺はあいつの気持ちを尊重して今は開けない事にした。ホワイトの遺品だ、一番近くにいたお前達がどうするかに任せる」
ランスがジンに首掛けのブローチを渡す。
「…了解」
「じゃあ、俺は仕事があるから、お前等は今日は自由に行動してくれ」
ランスがそう言うと、部屋を出て行った。
「…遺品…か…」
ジンがホワイトの付けてたブローチを見ていた。
「…遺品とか…もうあいつが…いないみたいじゃねえか…」
ジンがホワイトのブローチの中を開ける。
その中には、小さな写真と裏面に字が書いてあるものが入っていた。
写真にはホワイトと兄のブラック、そして両親のような人が映っていた。
「…やっぱり…家族思いだったんだな…」
ジンは写真の裏面を見る。そこにはこう書かれていた。
『家族みんなが揃ってる大好きな写真!大人になっても…おばあちゃんになっても…死んじゃっても…一生忘れない。この思い出だけは、ずっと離さずにいるんだ。思い出が追加されたら、ここにまた、写真を入れるんだ。』
「……思い出…か……ん?」
ジンはもう一つ写真が入っている事に気付いた。
その写真にはホワイトとジンが2人で映っている写真があった。
「……はは…なんだよ…これ」
ジンはその写真に見覚えがあった。
ジンも同じ物を持っていたからだ。
ジンは写真の裏面に書いてある字を読む。
『私の今一番大切な人。片思いかもしれないけど、今一番大切。家族の皆も大切だけど、同じくらい大切。背負う物が似てる。彼との思い出はこれから作る。』
ジンはその言葉を見て涙を流す。
「…あぁ…俺も一番…大切…だよ…」
「ジン…」
ロキがジンの涙を見て驚く。
「…大丈夫だ…」
ジンがそう言うと、何かを思い出したかのようにロキに話し始めた。
ジンは先程得た情報の、一つの可能性を信じる事にした。
「――ロキ、お前は…自分の願いを叶えるために世界の理を自分が乱す事になったら…どうする…?」




