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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔

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135/283

ep123.繋がる未来の先に

 ――脳死したはずのホワイトが、真っ白な世界に立たされていた。

 最初は繋命による世界だと思い込んでいたホワイト。

 だがこの場所は、違う場所だと言う事を告げられる――


「繋命ではなくてごめんなさい。では何故あなたはここに立たされているか…そう、この世界は私が作り出した偽物の世界…あなたの失われつつある意識を呼び込めた世界…」

「偽物の…世界………」


 ホワイトが手のひらを見る。

 ホワイトの身体は少し透けていた。


「っ…なんか…身体が透けている………?」

「…それが今のあなたの状態を体現している…そして…今のあなたの脳機能は動いていません」

「っ…脳機能が動いてないって…」

「えぇ…簡単に言えば脳死…あなたはもう…死んでるも当然の状態なのです」

「嘘………」


 ホワイトが口を押さえる。


「そして…その身体は時間が経つにつれて薄くなり…やがて消え…あなたは天に旅立たれます」

「…そっか…私…死ぬんだ…」


 ホワイトが床に膝を付く。


「…そういえば…さっきお兄ちゃんとお母さんにも会ったような感覚があった…そっかあれが…死の世界…私は一瞬死の世界に行って…息を吹き返したけど…その後結局脳が死んでしまって…それで…」


 ホワイトの言う通り、ホワイトは一瞬死の世界が見えていた。

 そこにはリュンヌとブラックが待っていて、何も喋らないまま…でも意思が通じ合う謎の世界だった。


「そっか…癒しの神様は私を迎えに来てくれたんだね…ありがとう…」

「…まあそういう考えもありますか」

「…癒しの神様――」

「なんでしょうか?」

「私さ…もしも自分が死んでしまっても…誰かの役に立ちたいと思っててさ…」

「…と言うと?」

「臓器移植とか…できないかなって」

「っ………」


 ホワイトの決意を聞いて、癒しの神が少し怯む。


「脳死だけど…心臓は動いてるかもしれないんでしょ…だったらその心臓を…誰か困ってる人に渡したい。私自身が死んでも…私の臓器で誰かの命を繋ぎ止められるなら…その命が生きる道を………」

「…ほんと、あなたって人は………」


 癒しの神がため息をつく。


「どこまで優しいのやら」

「だから…誰か困ってる人に私の臓器が行くように…お願い…できないかな………?」

「…そう…ですね。可能ではありますが………」


 癒しの神がホワイトに近付く。


「…?」

「あなたの仲間達は…どうするのです?」

「………」


 ホワイトが下を向く。


「あなたの仲間達は…きっとあなたの帰りを待っています」

「私の帰り…か」


 ホワイトが拳を握る。

 暫くしてホワイトが首を振る。


「確かに…あの二人は私の事を信じてくれてるか…」

「そうです。まだ諦めては…」

「…でも…いいや…」


 ホワイトの心の中は決まっていた。

 そう…死を受け入れる事だった。


「私はもう…死んでるの。私は…ラッシュ師団の一団員として…使命を全うして死んだ…だから…もう悔いはないの」

「…本当に悔いはないのですか?」

「本当だよ…ジン君やミカ…それだけじゃない…ロキ君…シェールさん…皆の役に立てたから…でも本当は…」

「悔いがあるじゃないですか」

「っ…」


 ホワイトが絶句する。


「悔いがあるなら尚更――」

「だったらどうすればいいの…!?」


 ホワイトが大きな声をあげる。


「…ホワイトさん」

「私はもう死んでるの…あの頃ジン君が生き返らせてくれた時とは違って願いの女神様もいない…人間の魔力や技術じゃ脳死した人を生き返らせることなんてできない…生き返りの術を得るのに数百年かかるって聞いた事がある…でもそんな事ができる生き物は人間界には居ない…」


 ホワイトが涙を零す。


「それに私は…このまま天国へ…いや…地獄でもいい…地獄だろうがなんだろうがあの世に行って…お兄ちゃんとお母さんに謝る…繋命の世界でしか会えなかったお母さんに…ちゃんと同じ土俵で会って謝る…お兄ちゃんにも謝る…皆に…謝りに行く………」

「………そうですか」


 癒しの神が目を瞑る。

 ホワイトは大きな声を出した反動か、息を整え始める。


「…癒しの神様、短い間だったけど…私の事支えてくれてありがとうね」

「ホワイトさん…」

「癒しの神様…私の命が尽きたら…さっきも言った通り…私の臓器を…困ってる人達の元に行くように…お願い…」

「………」

「誰かの所で私が生きていた意味が…私が死んだ意味があるって考えれば…誰かの役に立てれば…もう私は何も求めません」

「誰かの役…」

「お願い…癒しの神様…」


 ホワイトの言葉を…癒しの神は承諾した。


「………分かりました」

「…ありがとう」


 ホワイトは安心したかのように目を瞑る。


「あぁ…やっと…これで…お母さんに…ちゃんとした場所で会える………」







 ――数分後…


「…あれ」


 ホワイトが目を開ける。


「私の身体…消えないなぁ…」


 ホワイトが身体を見る。


「それどころか…なんか意識が強くなって――っ!?」


 ホワイトの身体は少しずつ実体を持つようになっていた。


「は…何これ………え………?身体が…」

「ホワイトさん………!!」


 ホワイトが顔を見上げると…

 癒しの神がホワイトに魔力を投与していた。

 癒しの神は…ホワイトの死を拒んでいた。


「癒しの神様!?何をしてるの………」

「今こそ、女神族の力を見せる時ですね」

「女神族の………え………何を………」

「ホワイトさんはさっき言いましたね、生き返りの術を扱える人間はいないと。それもそのはず…歴史上の人間にも生き返りの術を使える者は存在しない」

「っ…まさか………」

「ですが、女神族の私には造作もない…」

「っ…!」


 癒しの神が魔力を強くしていく。


「癒しの神…様………」

「そして、今ある私の命と魔力を全部使い…ホワイトさんの脳を回復させます」

「え…は…命と魔力を全部ってそんなの………」


 ホワイトが癒しの神の腕を掴む。

 その言葉の意味は…癒しの神を失う事を意味していた。


「辞めてよ…!!」

「っ…ホワイトさん…!」

「何してるの…?ふざけないで…?私の命を復活させるために…?それ…誰の命を使ってると思ってるの…?」

「私の命です…何か問題でも…?」

「問題しかないよ…!どうして私を助けるために…癒しの神様の命を使わないといけないの…!?」


 ホワイトの言う通りだった。

 本来は誰かを助けるために…自分の命を犠牲にする必要なんてない。

 自分の命に余裕があるから…誰かを助けれる。

 だが…そんなホワイトを癒しの神は否定する。


「あなたは人間としてまだ若い。それに、他の人達も待っている。まだ生きる理由がある。そして私は女神族として長く生きた。ならばこの行動は当然の事でしょう――」

「っ…!!」


 ホワイトが癒しの神の腕を強く握る。


「嫌だ!!!」


 だが癒しの神の腕はホワイトの腕では動かせなかった。


「嫌だ!嫌だ!女神族だからってそんな事しないで…!魔力を解いて…お願い………誰も犠牲にしたくないの………私だけでいい………だから………」

「…ホワイトさん、よく聞きなさい」

「癒しの神様…?」

「実は私…既に肉体を失っている身なのです」

「え………それって………」


 ホワイトは理解が追い付いていなかった。

 だが…うっすらと感じる既視感…それは死だった。


「つまり…人間で言う死と同義の状態…」

「死…んでるって事ですか………」

「はい」

「はいって…そんな簡単に言って…自分が何を言ってるのか分かって…」

「…いわばリュンヌさん達と同じ状態」

「お母さんと…同じ状態…?」

「いわばあなたの繋命みたく、他の女神族から魔力によって魂や魔力だけで繋ぎ留められて生きていられる。これは繋命にも関係する手法。ですが実体を持つ肉体は存在しない。私はもう現世に命が存在しない者…つまり、繋ぎ留められているに過ぎないのです」

「っ………」


 土壇場で重要な事を言う癒しの神…

 だが…ホワイトにその言葉を理解するほどの思考は残っていなかった。


「そして…これも伝えなければなりません。リュンヌさんはあなたの繋命の力を利用し…自分の魔力をホワイトさんに譲渡した…繋命の魔力も込でジハと戦える程の力を………」

「っ………嘘…じゃあ…普段お母さんと繋命で出会ってる時にお母さんがすぐ消えちゃうのは…お母さんが魔力を私に渡したから…私がそれを無意識に使っていたから…?」

「その通りです。そして…私も彼女と同じように…ここで一人の少女の命を我が命を懸けて救い…女神族としての使命を全うしましょう」


 癒しの神が魔力を解放する――


「待って…!辞めて…お願い………!!」

「あなたはまだ生きるべきです。私はもう…長く生きた」

「ダメ…癒しの神様の命と魔力は…他の女神族の方達が繋いでくれてたんでしょ…だったらそのために…」

「いいえ…この命と魔力は…女神族として…人間であるあなたに使います。それが…女神族に与えられた…贖罪…」

「っ…待ってよ…そんなの………」


 ホワイトが首を振る。

 だが癒しの神は折れない。


「…ホワイトさん、あまりあなたに与えれず…女神族として…申し訳ございませんでした」

「癒しの…神様………」

「でも…あなたを見つけて本当に良かった…繋命を継ぐあなたを見つけて…あなたを助けるために命を捨てられて…」

「待っ…」

「我が命と魔力を引き換えに…少女の命を現世に繋ぎ止めます」

「嫌………」

「あなた様…女神族として…癒しの神という名を授かった私も…最期の役目を…果たせそうです」


 癒しの神がホワイトを光で包み込む。


「辞めて………」

「短い間でしたが…お世話になりました」


 光はホワイトの身体を全て包み込む。


「辞めて………」


 ――そして…真っ白な世界全体を包み込み………


「辞めてえええええええええええええええええええ!!!」










「…ミカちゃん」

「ミカ………」

「っ………ごめん…なさい………うぅっ………あたし………あなたに何も……………」


 ミカが涙を零す。


「…!」


 何か声が聞こえたような感覚がジンに走る。

 ジンがホワイトの方を見る。


「ホワイト…?」


 ジンが眠っているホワイトに近付く。


「ジン…?」

「ジン君…?」

「今…ホワイトの声がしたような…気がして………」

「ホワイトの声…?」

「なんか…叫んでいたかの…ような………」


 ジンがホワイトの手に触れる。


「気のせい…か…?」

「…あたしには聞こえ――っ…!?」


 ミカが頭を押さえる。

 ミカにもまた、聞こえてきたのだろう。


「いや…待って…もしかして………?」

「…!」


 ソレイユが驚いた表情をする。

 ソレイユにもまた…


「僕も…聞こえた気がした………」

「まさか………!?」


 ミカとソレイユがホワイトの元に寄る。


「ホワイト……!」


 眠っているホワイトの浅い呼吸は…少しずつ深くなっていく。


「…!呼吸が…」

「強く…!」

「そんな…そんな事が…!?」


 三人が驚く。


「まさか…」


 ジンがそう言うと、ホワイトがゆっくりと起き上がる。


「はっ…!!」

「ホワイト…!?」

「ホワイト…!!」

「ホワイト…!!」


 起き上がったホワイトは目から涙が零れていた。


「み………みん…っ…」


 ホワイトが自身に付けられている人工呼吸器を見る。


「あ…え…何…これ………」

「ホワイト…!」

「ホワイトが目を覚ました………!!」

「ホワイト………」

「ジン君…ミカ…お父さんも………」

「っ…皆を…呼んでくる…!」


 ミカが部屋から出る。


「あ…ミカ………?」

「ホワイト…ホワイト…なんだよな…?」

「あ…ジン君………えっと…このマスクは…」

「あ…すぐ取る…!」

「いや待って、すぐ取るのは危険だ。お医者さんを待とう」


 ソレイユがジンの肩に手を乗せる。


「あ…そうか…えっと…」

「お父さん…」

「ホワイト…ひとまず…その………」


 ソレイユがホワイトを抱く。


「あ…」

「おかえり………」







 ――それから数分後…

 ミカによって部屋にシェールとロキ、ルドも集まり、ホワイトに付けられていた人工呼吸器も外された。


「…ホワイト…なのか…?」

「ロキ君…」


 ロキがホワイトの目を見る。

 まだ目の前にホワイトが生きているという光景が信じられなかったロキ。


「あ…あぁ………ホワイトだ…緑色の…綺麗な目をして………」

「き…綺麗って…少し照れるよ…」

「ホワイトさん…なんだね…?」

「ルドさん…」


 ルドもまたホワイトを見て驚きを隠せなかった。


「…ひとまず…おかえり…」

「…はい」

「ホワイト…脳死状態から戻ったのか…」


 ジンがホワイトの頭を撫でる。


「…そう…みたい………」

「前代未聞の事態ね…」

「あぁ…本来脳死状態になると、今の時代でも回復する可能性は全くない。どんなに回復魔力が優れていても…脳や心臓と言った重要器官なると話は別だ…」

「ホワイトの魔力故…だろうか…いやしかし…」

「………癒しの神様のおかげ…だよ………」

「癒しの神様…?」


 ルドが首を傾げる。


「あ…ルドさんは知らないんだっけ…えっと…どう説明すれば…」

「凄く簡単に言えば…ホワイトの魔力には女神族の意思と魔力が秘められている…そんな感じです」

「なるほど…つまり…その女神族の意思がホワイトさんを復活させたと…」

「っ…そうだ…思い出した………あの癒しの神様の作り出した世界で…私は癒しの神様の魔力を浴びて…そうだ…癒しの神様は………犠牲になったんだった…」


 ホワイトが涙を零す。


「犠牲に…?」

「癒しの神様は…残った命と魔力を使って…私の死んだ脳を回復させた…」

「っ…」

「癒しの神が…」

「脳を回復させ…た………」

「…私は犠牲にするのが嫌で拒んだけど…癒しの神様はまだ私に他の人達が待っている、まだ生きる理由があるって…」

「っ…」

「そうか………」

「…まぁ…なんというか………女神族なら脳を回復させる事くらいできかねないというか…」

「でも…魔力も命も使わないと行けないとなると…相当な負荷がかかるものだろうか…」

「そう…かも…?」

「何れにせよ…ホワイトが戻ってきてくれて…皆嬉しい。そうだよな?」


 ロキが皆の方を向く。


「…えぇ」

「おう」

「うん」

「おかえり…ホワイト…」

「皆…!!」


 皆がホワイトの帰りを喜んでいた。




 だが…一人だけ険しい顔をしている人間がいた――


「…ホワイトちゃん」


 シェールがホワイトの目を見る。

 その目はホワイトに取って…怖く映っていた。


「シェールさん…?」

「………あなたは一体…何者なの…?」

「え…?」


 ホワイトが首を傾げる。


「ラッシュ師団の団員は事情を抱えている人が多い以上…ホワイトちゃんの件も割となあなあにしてきたけれど…改めてアレをやらないと行けない時が来たようね…」

「え…アレって…」

「ついでにジン君も――」

「え…俺も………?」


 シェールがジンの方を向く。

 その目もまた…疑いの強い目だった。


「だってあなたも…悪魔族、なんでしょ?」

「っ…そう…ですけれど…でも…!」

「ラッシュ師団団長シェール…団長としてホワイトとジン…あなた達二人には私の言う事を聞いてもらうわ」

「っ…」

「シェール…さん…?」


 ホワイトとジンが息を呑む。

 いつもの優しいシェールに突如呼び捨てにされた二人…



「――基地に戻り次第…あなた達の魔力と血液を検査する。これは…団長命令よ」


後書き~世界観とキャラの設定~


『脳死』

…例えこの世界であろうと脳死をしてしまえば最後は死を待つのみ。

だがホワイトは脳死から蘇ってしまった。癒しの神という今まで支えてくれた存在を失い、命を現世に繋ぎ止められた。

そしてホワイトの蘇生は…ジンの悪魔族判明という急な出来事と急な出来事の倍プッシュにより、ラッシュ師団現団長のシェールに大きな疑問を抱かせる事となった。

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本編のスピンオフである
しろあくものがたり
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