ep121.滞る未来
――死獣エクストデスとミカとの戦いが始まろうとしていた。
前回の戦いでは、ミカの完全敗北だった。
だがミカは今、ルドのアドバイスを受けて銃剣を二つ持っている。
あの頃と違って片手が空いていない。片手もまた武器となっていた――
「グルル!」
エクストデスが尻尾を振ってミカを攻撃しようとする――
「っ…」
ミカが尻尾をかわし、銃剣で尻尾を斬り刻む――
「ガァァァ!」
エクストデスの尻尾が斬り落とされる――
「っ………!」
ミカがエクストデスの胴体に近付く――
「ガァァァ!」
エクストデスが前足で引っ搔こうとするが、ミカがそれを避ける――
「このっ………!!」
ミカが銃弾を撃ち続ける――
「ガァァァ!!」
エクストデスの翼から血が出る――
「ふん…!!」
ミカが二つの銃剣をエクストデスの顔面に投げる――
「ガァァァァァ!?」
エクストデスの目に銃剣が刺さり、目が潰される――
「グルァァァァ!!」
エクストデスが暴れ始める――
「ガアアアアアアアア!!」
「っ……!」
エクストデスが口から紫色のレーザーの様な物を吐き出す――
「そんな事も…できるのかよ………!!」
視力を失ったエクストデスが四方八方にレーザーを撃つ――
「っ……近付け………無くもない…!」
ミカが二つの銃剣を再び魔力で作り出し、持ち替える――
そしてミカは即座に走り出す――
「グルァァァァ!」
エクストデスが放つレーザーを避けながらミカがエクストデスに近付く――
「っ………!」
そして…ミカがエクストデスの顔面を斬り付ける――
「取った…!」
「ガアアアア!!」
エクストデスが倒れる――
ミカが倒れたエクストデスに銃剣を向ける。
だがエクストデスはピクリとも動かなくなる。
「………倒せた…の…?」
ミカがエクストデスに近付く。
「………仮に倒せてたとしても…ネオカオスの残党がまだエクストデスを量産している可能性がある…その対策を…考えなきゃ………」
ミカが銃剣をしまう。
その時肌に感じた、魔力の気配――
「…!」
ミカがエクストデスの魔力に気付く。
「この魔力………」
ミカが銃剣に手を持っていく。
「……………」
少しした後、ミカが息を吐く。
「…そっか………そう言う…事…か………」
ミカが頬に付いたエクストデスの返り血を舐める。
「色々…調べないと行けない事ができたな…」
ミカがそう言うと、銃剣を構えてエクストデスの身体を斬り始める。
――暫くして…
「…こんなものでいいか…エクストデスの…鱗のサンプル――」
ミカがエクストデスの鱗を採取する。
鱗だけでも強烈な魔力を模していた。
「この少量の鱗だけでも凄い魔力…これが…死獣エクストデスという存在…ネオカオスは一体このような化け物を…どうやって手懐けたというの…?」
ミカが立ち上がる。
「…久々に剥ぎ取りなんてしたから…少し疲れたな………」
ミカが腕で汗を拭く。
「…ジンの元に行こうか…」
ミカが魔力で鱗をしまう。
ジンの走った方向へミカが走り出す。
「はぁ…はぁ…はぁ………」
ジンが息切れする。
「後少しだ………後少しで…ゼッヒョウの街に辿り着く…後少し………」
ジンが息を整える。
「ホワイト…絶対助ける…だから…まだ…」
「ジン…」
ミカがジンに追い付く。
ミカの返り血を見てジンが察する。
「ミカ…!?まさか…エクストデスを…倒したのか…!?」
「………まぁ…うん…」
「凄いな…やっぱりミカは…俺達の希望だな…」
「そう…かもね」
ミカが目を逸らす。
ミカがジンに近付く。
「…背負わせてごめん。疲れたでしょ。あたしがホワイトを担ぐの、代わるよ」
「っ…でも…お前に担がせるのは…」
「あら、あたしにホワイトを担ぐのが無理なように見えた?」
「いや…そんな事はないが…でも…」
「…あたしにだって人くらい担げる。そうでもしないと…ラッシュ師団として…いいや、この世界では生きられない」
「っ…」
ミカの言葉を聞き、ジンがホワイトを下ろす。
「…そこまで言うなら、任せる」
「…ん。あたしにだってホワイトくらい担げる。この子…実はあたしより軽いからさ」
ミカがホワイトを持ち上げようとする。
だがミカは…ホワイトの身体に違和感を感じていた。
「…………は?」
「ミカ………?」
ミカの手が震えていた。
「嘘………」
「ミカ………?」
「嘘…ホワイト………?」
「ホワイトは………どうしたんだ………」
「ホワイトが………――」
ミカが涙を流す。
「心臓が…止まってる………」
「っ………!?」
ジンが口を押さえる。
「は…心臓が止まってる…って…な…んだよ………?」
「っ………嘘………ホワイト………?」
ホワイトの身体は一切のぬくもりがなく…冷たくなっていた。
「ホワイト…!!」
「そんな…嘘…だろ………」
「アンタが……いや………あたしがあの時…ホワイトを助けれなかったから………!!」
「っ…ミカ…そんな訳…ないだろ…俺の背中にいた時は…」
ジンがホワイトの左胸に触れる。
「っ………!?」
ホワイトの心臓の鼓動は止まっていた。
ジンにも確かに感じ取れた。
死の気配を――
「そ…は………嘘…だろ………?」
ジンが涙を流す。
「そんな…ホワイト…嘘…だよな………」
「心臓…心臓……はっ………!」
ミカがそう言うと、ホワイトの左胸に手を当てる。
「ミカ…何をして………」
「心肺蘇生をする………」
「心肺蘇生…?」
「アンタも習ったはず…回復団員が来る前に心肺停止している人がいたら…心肺蘇生をするって…回復団員が来る前に救える命があるって………」
「っ………!」
「今のあたし達に魔力で心肺停止を回復できる人はいない…だから…魔力を使わない蘇生を…!」
ミカがホワイトの心肺蘇生を始める。
「ホワイト…!ホワイト………!!」
ミカがホワイトの左胸を何度も押す。
「お願い…お願い…息を吹き返して………!!」
「っ………」
ミカの涙がホワイトの身体に零れる。
「ホワイト………!!」
ミカがホワイトに人工呼吸をする。
「っ………」
ミカが再びホワイトの左胸を押す。
「ミカ………」
ジンの涙が零れる。
「っ…お願い…ホワイト…もう…あたしの前から…いなくならないでよ………!!」
「っ………」
「お願い…息を…吹き返して………」
「…………」
「ここは…何処だろう」
「…真っ暗で…何も見えない………」
「あ」
「この気配は…兄さん」
「…兄さん、今まで何処に行ってたの…?」
「隣にいるの…もしかして…お母さん?」
「…お母さんだ、間違いない」
「…二人とも、どうして喋らないの?」
「あ…そっか」
「…私…死んだんだった」
「そっか、二人は私を迎えに来てくれたんだね」
「お母さんも兄さんも優しいね」
「…お母さん、泣いてるの?」
「…うん、もう…頑張らなくていいんだよね………」
「…また一緒に…ご飯…食べれるね…」
「…声…段々と薄くなって…きたな………」
「…そっか………これが…本当に死ぬって事…なんだ………」
「…兄さんも、手…ありがとう」
「…うん」
「…お父さんもきっと…私達を追って…こっちに逝ってくれるよ」
「…うん、大丈夫。もう…苦しまなくて…」
「…なんだろ、何か…忘れているような………」
「まぁ…いいか………」
「このまま………」
――数分が経つ。
ホワイトの心肺蘇生を行っていたミカ。
だが…ホワイトの心臓は動きを戻さない。
それどころか…少しずつホワイトの身体が冷たくなっていった。
「ホワイトっ………お願い…息を…息をして………!」
ミカの涙がホワイトの身体に零れる。
ミカがホワイトの左胸に手を押し込むが、息は一考に吹き返さない。
「っ………手が…かじかんで…きた………」
ミカの力が弱くなる。
ホワイトの心臓はずっと止まったまま。
もう死亡してもおかしくない頃だった。
「っ………ホワ…イト………そん………な………」
「あ…あぁ………あああ………」
ジンが頭を抱える。
「これが…あの時の未来視の………嘘………だろ………」
ジンの身体から力が抜ける。
「っ…ホワイト………」
ジンがホワイトの頬に触れる。
「っ…ごめん………ごめん………」
「っ………」
ミカが口を押さえる。
「…お前がいなきゃ………俺………この先…どう生きろって――」
その瞬間、ジンの前に何かが映る――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あの時必死に呼びかけてくれたの、あなたでしょ」
「その…なんだろ、上手く言えないんだけどさ………ずっと一緒にいたいって言うか…」
「あなたのおかげで、まだ…生きてていいんだってなった」
「私達の命も…きっと繋がってるよね」
「この指輪、一生…大事にするね」
「愛してる」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「っ………今の………」
ジンが自身の手を見つめる。
「もしや………ホワイト!」
ジンがホワイトの左胸に手を当てる。
「ジン…何して………」
「ホワイト……!!」
ジンがホワイトの左胸を何度も押す――
「っ…ジン…無理だよ………ホワイトはもう………」
「諦めるな…ミカ…ホワイトは………ホワイトは………!」
ジンがホワイトに人工呼吸をする。
ホワイトの身体の中に、ジンの吐いた空気が入り込む。
「…まだ…命は繋ぎ止められる………!」
「っ………」
ジンがホワイトの左胸を何度も押す。
まだ心臓は動かない、息は吹き返さない。
「…無理よ…もう何分も経っている…蘇生率はもう…天文学的レベルで低い……もう………ホワイトを………休ませるべきよ………」
「あぁ…ホワイトは休ませなきゃ行けない………」
ミカは既に諦めかけていた。
だがジンは諦めなかった。
ジンはホワイトの左胸を何度も押す。
「だが…それは今じゃない………!!」
「無理って言ってるでしょ………!」
「無理じゃねぇ!!」
「っ………」
「ホワイトが幸せになるまで…生きて一緒にいるって…誓ったんだ…!!」
「ジン………」
「俺はこんな地獄みたいな世界を…変えるって決めた…!」
「っ…アンタ………」
「ホワイトは………!」
ジンがホワイトの左胸を何度も押す。
「俺達の命を………」
ジンがホワイトの左胸を何度も押す。
「繋いでくれる存在だ………!!」
「………兄さん?」
「…そうだった、忘れちゃってた…」
「ごめん、先延ばしにするね」
「ううん、大丈夫」
「気付かせてくれて、ありがとう」
「…うん、あの人には私が必要だからね…」
「…ありがとう。できるだけ…遅めに来るね」
「ゲホッ………」
ジンの必死な蘇生は一旦成功した。
ホワイトが咳をする――
「っ………!」
「………!」
ジンとミカがホワイトの咳に気付く。
「ホワイト………?」
「………ゲホッ…………はぁ……はぁ………」
ホワイトが息を吹き返す。
息を荒くしながら、ゆっくり目を開ける。
「………!!」
ジンがホワイトを抱く。
目が開ききらないホワイト。
「……………あ……」
「っ………良かった…本当に………ホワイト…………!」
「あ………え………」
「っ…ホワイト………」
「っ…………?」
「………良かっ………た………」
ミカがホワイトに抱きつく。
「………っ」
ホワイトが意識を失う。
「っ…ホワイト……?」
「………大丈夫、息はある」
ミカがホワイトの息を確認する。
ホワイトの心臓は少しずつ動き始めていた。
だが小さい鼓動である事に変わりはなかった。
「ミカ………それって………」
「…心肺蘇生…成功よ………」
「……………!」
「…ただ………長く心臓が止まっていたから脳に障害が発生してるかもしれない………」
「っ………」
「早く…病院に行こう…………」
「…あぁ………分かった………」
ミカがホワイトを背負う。
「…ジン…早く行くよ」
「ホワイト…」
ジンがその場に立ち尽くしていた。
「ジン?何してるの?早く行くよ」
「あ…あぁ…」
ジンが頭を押さえる。
「ジン?頭痛いの…?」
「…未来視だ」
「未来視…あぁ…未来視の悪魔って言ってたね」
「…俺の未来視の能力は…どうなんだろうなって…」
「どういう事?」
「どういう時に未来が見えるのか…見えた未来は変えれるのか…それとも変えれないのか…」
「………」
ミカがジンの目を見る。
「…色々戸惑う事が多いけど…まずはホワイトを病院に運ぼう。ホワイトが戻った後に…考えればいいよ」
「そうだな…ホワイトが戻った後に………」
その瞬間、ジンの前に何かが映る――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「もうホワイトちゃんは…皆と戦う事も…皆を回復する事も………喋る事もできない…」
「そんな…嘘…ですよね…?」
「それどころか…もう………」
「もう…なんですか………?」
「死んでるのと…同義なのよ」
「っ…………!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「………!?」
「ジン…?」
「あ…あぁぁぁ………」
ジンが頭を押さえる。
「ダ…メ…だ………それは………絶対………」
ジンが涙を堪える。
ジンがミカの方を向く。
「ミカ………早く…ホワイトを………運ばないと………!!」
「っ…分かった…行こう――」
ミカとジンが再び走り出し…ゼッヒョウの街へと向かい始める。
――心臓の動き出したホワイトが…安心したかのように眠りに…
……………
後書き~世界観とキャラの設定~
『死獣に勝利、そして疑問』
…ミカはかつて死獣エクストデスに子種を植え付けられて絶望していたが、再戦では銃剣を両手に持って応戦。そして遂に勝利。勝利したミカは何処か疑問を抱きながらも死獣の鱗を採取する事に成功。これにより対抗策を考える事となる。
だがしかし、ジンとミカ二人の前に突如死獣が現れた理由は不明。キンキは絶命したので残っている残党が召喚したという事が推測としてあげられるが………?




