ep120.未来視の悪魔
――ネオカオス総帥のジハ、その妹を自称するキンキを倒した一行達。
だが死に際のキンキの告白による、『ネオカオスの下っ端はジハの魔力によって作られた偽の存在』という新事実。
そして、キンキの最期に行った、魔力と命を賭けた自爆………
自爆によって大きな大爆発が辺りを吹き飛ばしてから数分…
ルドの魔力によるシールドの展開に間に合わなかったホワイトとジンは爆発に巻き込まれ、窮地を彷徨っていた………
「ジンとの連絡が…途絶えた…」
ミカが通信機を操作する。
通信機を使ってジンと連絡を取っていたミカだったが、通信が切れてしまっていた。
「吹雪の影響…かな…」
「ミカ…ホワイトの方も連絡が付かない…」
ロキも同じく通信機を操作していた。
だが、ホワイトの方にも連絡は繋がらなかった。
「っ…そう………」
「………ルドさん、ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ございません」
ルドが三人を吹雪から守るように盾を展開する。
「いいや、大丈夫だ。それよりも…二人の事が不安だね…」
「っ…まさかキンキが自爆するだなんて…それに…ネオカオスの下っ端が作られた存在だなんて………」
「魔力によって作られた偽の存在…下っ端の数が多いのも…正直納得が行く…」
「………あぁ。まさか…ネオカオス四天王も…作られた存在なんじゃ………」
「っ…可能性は…あるのかしら…」
ミカが拳を握る。
ネオカオスの下っ端が作られた存在であるのならば、四天王も例外ではない可能性があるとミカは踏んでいた。
「ラッシュ師団とネオカオスの戦いは…まだ終わってなかったんだな………」
「そうね…この件…シェールさんに報告ね…」
「あぁ…それより――」
ネオカオスの謎も調べなければいけない事ではあるが、今考えるべきことは二人の安否。
「ホワイトとジンの安否が先だ…!」
「………うん」
ミカが銃剣を両手に持つ。
そして、盾の外に出ようとする。
「ミカ…?」
「あたし…二人を探しに行ってくる。ルドさんとロキは…先にゼッヒョウの地に戻って」
「は…何を言って…この吹雪の中だと危険だ…お前まで死ぬ事になる…!それにお前の身体はキンキとの戦いで………――」
ロキがミカを止めようとする。
だがミカがロキを睨む。
「…あたしまでって…何?」
「え…?」
「なんかそれ…ホワイトとジンが死んだみたいな言い方じゃん……」
「っ………すまん……」
「…気を遣ってくれるのは嬉しいけど、あの二人は…あたしが助けなきゃいけない」
ミカが盾の外から出ようとする。
だが助けに行こうとしているミカもまた、キンキとの戦いで重傷を負っている。
あまり過敏な動きはできない状態だった。
「っ…でもお前…その怪我じゃ………」
「怪我なんてだいぶ治ってきてる…ホワイトの継続的な回復魔力のおかげ」
ミカが自身の顔に付いている血を舐める。
「ロキ、ゼッヒョウの地にシェールさんを呼んでおいて。何か…嫌な予感がする…」
「っ………ミカ………」
「ルドさん…わざわざあたし達に協力してくれて…ありがとうございました」
「あ…うん…でも俺は…まだこっちに来てやる事があるから、君達が戻ってくる頃にはまだいるはずだ」
「…そうですか」
ミカが歩き出す。
「…本当に行くのか?」
「…行きます。あの二人はあたしが拾ったも当然…だから…あたしが行かなきゃ…!」
ミカがそう言うと、二人を助けに行く為に盾から出て走り出す。
「ミカ………」
「ロキ君…今は三人の無事を祈ろう。そのためにも…暖かいご飯でも用意して待とう………」
「っ………俺は…待つことしかできないのか…」
ロキが雪に膝をつく。
「仲間の帰りを信じて…仲間を迎える準備をするのも副団長の仕事だとも思う。少なくとも俺は…そうしてきたからさ。まぁ俺の場合は団長があのナギサだからそう言えるかもなんだけどさ…」
「…分かりました。俺達は奴らの無事を祈りましょう」
「…あぁ」
ロキとルドが吹雪の中、盾に守られながらゆっくりと歩き始める。
「皆………」
「俺は………『未来視の悪魔ジン』だ………」
ジンの身体が少しずつ悪魔のようになっていく。
額に鬼のような角、背中にコウモリのような黒い翼を持つ人間の男の姿。
その姿は、人間に似て人間にあらず――
「ホワイト…」
ジンが意識のないホワイトをゆっくりと下ろし、見下ろす。
「…ごめん…なぁ………」
ジンが涙を零す。
『ジンよ…貴様は悪魔族として…その子を利用するために人間界へやってきたのだよ』
「そう…だったな………ホワイトの傍にいるのは…本当は人間と悪魔の共存が目当て…何れはホワイトに悪魔の子を産んでもらうように仕向ける…そうだ…俺はあいつの意思を尊重してなかった…エルがソレイユさんにやった時と同じように…俺は無理矢理…」
『だがそうも言ってる場合でもないみたいだな。その子は今まさに低体温症によって死のうとしている』
「っ…!」
ジンの頭に流れる声の言う通り、ホワイトは危険な状態だった。
このまま放置してしまえば、ホワイトは低体温症で死んでしまう。
『ジンは回復の魔力を持たない。このままでは、この子は天に召されてしまうだろう』
「ホワイトが…死んじまう………」
ジンがホワイトを抱く。
ジンが自分の体温を分けて必死にホワイトを暖めようとする。
「そうだ…すぐに街に運んで…」
『だが、悪魔族には瀕死の生物を救える方法がある』
「は………?」
土壇場な中、ジンが疑問を抱く。
「瀕死の生物を救える…ホワイトも救えるのか…!?」
『あぁ、できる。ジン…お前の持つ悪魔族の血を与えるのだ――』
「悪魔族の血を与える………」
『その子の持つ銃剣で自分の腕を切れ』
「っ…」
ジンがホワイトを雪の中に置き、ホワイトの腰に付けている銃剣を持つ。
『そしてその血をその子に飲ませるのだ』
「っ…それで…そんなんで…ホワイトを救えるのか…!?」
ジンが銃剣の刃を自分の腕に向ける。
「はぁ…はぁ…はぁ………」
ジンの腕が震える。
いくらジンでも自分の腕を自分で斬るのは恐怖だった。
「はぁ…はぁ………血を…与えて…ホワイトを救えるんだな………!?」
『あぁ…そうだ』
「っ………クソッ…!!」
でもやるしかなかった。ホワイトをすぐに救うには自分の血を分け与える…それだけだ。
それだけすれば、ホワイトの命は助かる。
ジンの左腕が刃に触れようとした瞬間だった――
声がジンに囁く。
『血を分け与える事で…その子を悪魔族として生存させることができる』
「は………?」
ジンが銃剣を止める。
「何…言ってんだ…お前…そんな事したら…ホワイトが………」
『あぁ…人間としてはいられなくなるだろうな』
「っ…!?」
ジンが銃剣を強く握る。
『ふん、焦る事はない。現にジンやエルだって…人間の姿になれる術が使えるじゃないか。悪魔族にはそれができる。その子も人間の姿をする事でいつも通りの姿を保てるだろう』
「っ…」
『使え。その力を使え。その子が死ぬ未来のままでもいいのか?』
「っ…!だけど…この力を使ったら…こいつは………」
『こいつは?』
「人間としていられなくなる…!」
ジンが銃剣をホワイトの腰に戻す。
「ホワイトは…悪魔になってはいけない…こいつは人間として…人間のままで…いさせないといけない………!」
ジンが身体全身を悪魔の姿に変える。
「ホワイト…!!」
ジンが炎の魔力を最大出力で発動する。
炎は天を穿つ――
そして…その炎はキンキの自爆が起こした強烈な吹雪を打ち消し、荒れた天候を快晴にする――
『吹雪を打ち消したか』
「はぁ…はぁ………」
ジンがホワイトを運び、走る。
『…ふん、悪魔族でありながら人間を助けるか。それもまた…共存』
謎の声はそう言うと、去ったかのように消える。
「はぁ…はぁ………」
悪魔の姿となったジンがホワイトを運びながら雪道を歩く。
「ホワイト…あと少しだ…絶対…助ける………」
ジンがそう言うと、二人を助けに来たミカがジンの前に現れる。
「っ………!ミカ………」
「っ…!?」
ミカが銃剣を構える。
ミカにとって今のジンは見知らぬ悪魔族だった。
「その姿…悪魔族…!」
「待て…ミカ……これは…」
「っ…ホワイト…?」
ジンが抱えるホワイトをミカが見る。
「っ…ホワイトに…何をした………!!」
ミカがジンに瞬時に近付く。
「っ…!!」
ジンがすぐさまミカから距離を取る。
「ホワイトを返せ…!!」
ミカが銃弾を撃つ。
「がっ…!」
ジンの悪魔の翼を撃ち抜く。
翼から血が噴き出る。
「ふん…ちょっと的がでかい人間って感じね…」
ミカが銃剣を持ち替える。
「丁度吹雪も止んだし…動きやすい………!!」
「待てミカ!俺だ………!」
「ふん…あたしの名前を知ってるなんて…あたしもかなり人気者になったわね…?」
ミカが瞬時にジンの懐に近付く。
「っ…!?」
ミカがジンの首元に銃剣を向ける。
「ホワイトを離しなさい――」
「っ………」
ジンがホワイトを下ろす。
「………すまん」
「っ…!」
ミカがジンの額に銃口を突き付ける。
「アンタ…ホワイトを捕らえて…何をするつもり?」
「っ………待て………俺は………ホワイトを助けようと…したんだ………」
「助けようとした…?」
「…危害は加えない。だから…銃剣を下ろしてくれ」
「…はぁ」
ミカが銃剣を下ろす。
そしてジンが紫色の炎を身体に纏う――
そして…ジンは本来の人間の姿に戻る――
…これが本来と言うより、仮初の姿という方が正しい…だろう。
「っ…!?」
「………俺だ」
「ジン………!?」
ミカが銃剣をジンに向ける。
「どういう事…アンタが悪魔族…?」
「…驚くのも無理ないだろう。俺も驚いている…」
「アンタも驚いてるって…どういう――」
「…思い出したんだ。失ってた記憶を………」
「失ってた記憶…」
ミカが銃剣を下ろす。
「この世界に来る前の…悪魔族としての記憶を全て思い出した…俺は………『未来視の悪魔』だ…」
「『未来視の悪魔』…」
「そんな事より…ホワイトが………!」
「っ…」
ミカがホワイトの息を確認する。
わずかだがホワイトに息は残っていた。
「大丈夫…まだ…息がある………」
「っ…ミカ…ホワイトは………」
「…助けなきゃ…ね。ロキやルドさんには先に街に帰って貰ってる。早く…帰ろう」
「あぁ………」
ジンがホワイトを再び抱える。
「…アンタが悪魔族…未来視の悪魔って事に関しては…後で聞く。アンタは…悪魔族としての記憶を戻しながらも…それでもホワイトを助けようとした…だから――」
「っ…」
ジンが涙を零す。
「…何、泣いてんのよ」
「なんで…そこまで………」
「…あたしはアンタを信用してる。それだけ」
「信用…だと…?」
ジンには理解できなかった。
自分が悪魔族だと言う正体がバレながら、何故ミカは自分を拒絶しないのか、理解ができなかった。
「ほら…行くよ…ホワイトをこれで包んで」
ミカがそう言うと、魔力で毛布を作り出す。
「少しでも体温を下げないように…そしてアンタの身体と密着させて…アンタの体温を移しなさい」
「…分かった」
ジンがホワイトを背負う。
「ホワイトを…助けないと………」
ジンがそう言った瞬間…
二人の後ろから蔓延る魔力の気配がした。
ミカがそれを感じ取る。
「…!?」
ミカが振り向くと、そこにはエクストデスが立っていた。
「ガルルル…」
「エクストデス…!?」
「なっ………!」
「っ…このタイミングで…!」
ミカが二つの銃剣を構える。
「ジン…行って………!!」
「っ…!でもあの魔物は…」
「…あたしでも勝てるか分からない…現に一度負けてる…今度は死ぬかもしれない…それでも………!」
ミカが銃弾を撃つ。
「ホワイトの命は繋がないと行けない………!!」
エクストデスの頭に銃弾が当たる。
だがエクストデスの頭は銃弾を物ともしなかった。
「ガァァァ!」
「行って…!」
「っ………すまない………!!」
ジンがホワイトを背負って走り出す。
「…すぅ………」
ミカが息を吸い込む。
「…アンタの相手は…あたしよ………!」
ミカが銃剣を持ち替え、瞬時にエクストデスに近付く。
――ジンがホワイトを運び切れるように、ミカはエクストデスと戦って時間を稼ぐことを決意。
あわよくば…倒そうとしていた――
後書き~世界観とキャラの設定~
『悪魔族の血』
…ジンに突如呼びかけた声によると、悪魔族の血は瀕死の生物に与える事で救う事ができるとのこと。
血を分け与える事で対象を悪魔族として生存させる事ができる。つまり…悪魔族を増やすという事になる。
だがジンは重傷のホワイトが悪魔族になる事を拒んだのだった…




