ep119.朽ちない焼き跡
――ロキが銃を撃ってキンキの脳天を貫き、苦しんでいる隙ができた。
そしてその隙を見逃さなかったジンはキンキの身体を最大火力で、一気に燃やし尽くした。
そしてキンキの纏っていた黒い電撃もまた、綺麗さっぱり燃やし尽くされた。
「っ…」
「ジン君………!」
辺りは煙に覆われていた。
ルドの盾に守られたホワイトが煙の中ジンの元へ走り出す。
「…はぁ…はぁ………ゲホッ…」
ジンが煙の中から現れ、咳をする。
「ジン君…無事!?」
「…あぁ。ミカやロキは…」
「皆無事…回復も順調に進んでる………」
「そうか…」
ジンの身体から湯気を発していた。
ホワイトがジンに近付く。
「ジン君………」
「…ホワイト…俺の身体の近くは危険だ…熱が籠りすぎてる…今近付いたら危ない…」
「…大丈夫。私…熱には強いから………」
「っ…そうか…そうだったな………ソレイユさんの子…だもんな………」
ジンが微笑する。
「ジン…ホワイト…!」
ミカとロキとルドが二人の元へ駆けつける。
「皆…」
「あっつ…ジンの放つ熱気…凄いわね………」
雪山の中、辺りはかなり暑くなっていた。
「あぁ…今の俺は近付かない方がいい…もっとも熱に強いホワイトにはあまり関係の無い事みたいだが…」
「熱に強い…あぁ…ソレイユさんの」
「ジン…今の爆風…スピアの時以上の火力だったな………」
「…あぁ。あの時よりも…強い魔力を出せた気がする。見ろ…アレがキンキのなれの果てだ…」
ジンが指を指した方向には真っ黒に焦げたキンキの焼死体があった。
「真っ黒…」
「こんがり焼いたわね…でも凄いわ…まさかあの女を…殺し切るなんて」
「…本当は捕らえるべきだったよな…ネオカオスの残党である以上…何か情報を掴めるかもしれない…それにネオカオスの下っ端を産み出す魔力…アレについても…」
「…そうね。けれど…危険すぎる魔力のせいで仮に捕らえれたとして奴の魔力と実力じゃ、こっちの方に危険が及ぶ可能性の方が高いわ…殺すのは寧ろ英断よ…」
「…そうだな」
「…皆…ごめん…」
ロキが腕を押さえながら喋る。
「ロキ…?」
「俺は…副団長なのに全然戦えなくて…ごめん………ミカはキンキの攻撃を引き付けて俺にチャンスをくれた…ジンはさっきのような圧倒的な戦闘力を見せてくれた…普段回復を任せていたホワイトだって戦ってくれてた…なのに俺は…魔力が不足した瞬間この有様だ…俺は…弱い――」
ロキが涙を堪える。
自身の弱さに悔いているロキ…だがそんなロキを、ホワイトは慰めようとする。
「そんな事ない…!」
「ホワイト…?」
「ロキ君だって…あの時キンキが首元を回復している隙を付いて…すぐさま銃弾を頭に撃った…それによってキンキは脳に損傷を負って魔力を使えなかった…これって凄い事だよ…」
「っ…」
「私だったらあの場面ですぐにあの行動はできなかった…ロキ君は銃裁きが凄くて…確実にキンキの頭を捕らえれた…だから…これは皆で戦ってた…皆で勝ったの………!」
「…そうか…そうだな………」
ロキが涙を零す。
ロキがキンキの脳天を撃ててなければこの勝利はなかった。
誰かが欠けていたらなかった勝利だった。
「ロキ君…?」
「ありがと…な…皆………」
「…アンタの涙、久々に見たわ」
「俺は初めてだな…」
「…ふふっ――」
ルドが微笑む。
だが…終わりを告げようとしていた戦いは…
まだ終わらない。
「あぁぁぁぁぁぁ………」
「っ…!」
ジンとロキがキンキの声を聞いて振り向く。
「まだ生きてやがったのか…!?」
「なんていう耐久力………」
「あぁぁぁぁぁぁ…はぁぁぁぁぁぁ………思考ができねぇぇぇ…魔力が使えねぇぇぇぇぇ………」
「っ………!」
ジンとロキとミカが銃口をキンキに向ける。
「あぁぁぁぁ…あはははは!!」
キンキが黒焦げな状態の中、立ち上がる。
焼けていたキンキが笑い始める。
「…キンキ!!」
「ここでアタシを潰せるのはいい事だなぁ、ラッシュ師団!!」
「っ………!」
ロキが咄嗟に銃を撃ち、キンキの左胸を貫く。
「がはっ………はぁっ………」
キンキの左胸から大量の血が出る。
心臓を撃ち抜いたかのように血が零れ落ちる。
「はぁ…はぁ…あははははは!!!」
「っ…!脳も心臓も貫いたはず…なのに…何故生きてる………!?」
「あははははは!!脳も心臓も…ねぇ!あははは!このままアタシは死ぬの確定だぁぁ!!」
「っ………」
黒く焦げたキンキが吐血する。
だがその吐血すらもどうでもいいかのように笑い始める。
「あはははは!死に際にいい事教えてやるよぉぉぉ…ラッシュ師団とカルム師団よぉ………」
「…いい事…だと…?」
「あはははは!ネオカオスの…ネオカオスの下っ端共はなぁ…作られし存在なんだよ………!!」
「作られし………」
「存在………?」
「っ…まさか…!?」
ルドが驚いた表情をする。
ルドにはその言葉の意味が理解できていた。
「カルム師団はこの意味が分かるみてぇだなぁぁぁ!!」
「っ…!?そんな…まさか…」
「え…つまり…どういう…」
「下っ端は誰かに望まれて生まれてきちゃいねぇ。もっと言えば…下っ端はジハの魔力によって作られた偽の存在なんだよ…!!」
「っ…!?」
「ジハの魔力によって…」
「作られた………!?」
四人が驚いた表情をする。
そう…今までホワイト達が戦ってきたネオカオス…
下っ端は全て…ジハの魔力によって生まれたものだった――
ジハによって人体錬成され…下っ端として扱われ…生き物というよりロボットとして扱われていた…――
「あぁぁぁぁ…!あはははは!そしてそれは…アタシも例外ではない…!!」
「は…」
「キンキも例外じゃない…!?まさか…」
「そう…ジハの妹キンキと言う女は…はなからこの世に存在しねぇ………!!」
「っ…!?」
「な…」
「なん………」
「なんだって…!?」
キンキの衝撃的な言葉に全員が驚く。
キンキもまたジハの計画のために作られた存在…
母も父も知らない。
兄のジハとも全然似ない血…
顔や性格を少し似せて妹のように振舞ってただけの…作られし存在だった――
「っ………」
「あははははは!!」
キンキがそう言うと、自身の左胸に右腕で穴を開ける。
「っ…!?」
「あははは…はははははは!!!」
キンキが自身の心臓を取り出す。
心臓から大量の血が出ていた。
キンキは作られし存在。
それ故に心臓を身体から切り離しても生存する事ができた。
「っ…!?」
「キンキの心臓……!!」
「あはははは!!この心臓には破壊が詰まってる…アタシが万が一死ぬと分かった時の…爆薬のような魔力がぁ!!!」
「っ…!?まさか…あの心臓そのものが……」
「爆弾………!?」
「っ…させるか…!」
ロキがキンキの右手に銃を撃つ。
「っ…!?」
キンキの右手から血が噴き出す。
だがキンキは右手を撃たれようとも怯まなかった。
「アタシがここで死ぬ代わりにさぁぁぁ…アンタ達も道連れにしてやるよぉ…!!」
キンキがそう言うと、爆弾と化した心臓を握り潰す。
「地獄でまた戦おうぜぇぇぇ………!!!」
握り潰したと同時に………
巨大な爆発が起こる――
「っ…!」
「しまっ…」
ルドが魔力の盾の展開に遅れる。
「危ない………!!」
「っ…!?」
「ホワ………」
辺りが爆風で覆われる。
ジンの魔力が起こした爆風の数倍以上の爆風が…ヒョウガイ山で起こる。
――巨大な爆発が起こってから数分後………
爆発が起きた影響か、吹雪も起こる…
吹雪はヒョウガイ山の上層部から中心に起こり、ゼッヒョウの街にまで届くほどの勢いだった…
キンキやアイスドラゴが起こした時の吹雪とは比べ物にならない程の強さだった………
「がはっ………」
吹雪の中…意識を取り戻すジン。
ジンが傷だらけの中、立ち上がる。
「うぐっ…クソッ………あの女………自爆しやがった………!!」
ジンが頭をふらつかせる。
ジンの身体中は出血していた。
「っ…だけど…なんとか生きては…いるな………出血は少ししてるが…なんとか止まって――」
ジンがそう言った瞬間、ジンの腕から外れたボロボロの通信機がなる。
「っ…通信機…そうか…キンキが死んだから…電波障害が消えたのか………」
ジンがボロボロの通信機に手を差し伸べる。
「っ………こちら…ジン…うぐっ…――」
ジンが通信機を持ちながら倒れる。
『ジン…無事……!?』
「その声…ミカ…か………?」
通信の相手はミカだった。
爆発に巻き込まれたジンに、ミカが連絡をしていたのだった。
『…その声だと無事…ではなさそうね…』
「…あぁ…身体を大きく負傷した………そっちは…」
『あたしとロキとルドさんは大丈夫…ルドさんの魔力で盾を咄嗟に展開できて………盾は壊れて少し傷は負ってしまったけど…皆大丈夫よ…』
「そう…か………良かっ…――」
ジンが倒れ、通信機を握り絞める。
『ただ…ジンとホワイトに対して盾への展開が遅れたから…』
「っ…そうだ…ホワイト……!」
ジンが立ち上がろうとする。
ルドの魔力を持ってしても、ジンとホワイトへの盾の展開は間に合わなかった。
『ジン…その声的に今かなり負傷してるわね…今どこにいるの…?目印になるものは………』
「目印………っ………」
ジンが顔を上げ、ゆっくりと辺りを見渡す。
「えっと………目印……は…――っ…!?」
ジンが何かを見つける。
「あ……あぁ………!」
ジンが倒れているホワイトを見つける。
「ホワイト………!!!」
ジンがすぐさま立ち上がり、ホワイトにすぐさま寄る。
「ホワイト……!ホワイト………!!」
ホワイトはうつ伏せで倒れていた。
ホワイトもまた気を失っていた。
そして…ジンより体の負傷が激しかった。
「っ…ホワイト………!!」
ジンに取り残された通信機…
『ジン…?何か目印を見つけたの…?ジン…?』
だが吹雪の影響でミカの声はジンには届いていなかった。
「ホワイト……ホワイト………!!」
ジンがホワイトを抱く。
ホワイトの身体は吹雪のせいで冷たくなっていた。
「っ………待ってろ…今…助ける……!!」
ジンがホワイトを背負う。
「っ…あ…通信機…何処に………」
ジンが辺りを見渡して通信機を探す。
「足跡を辿っ――足跡が…ない…!?」
ジンの辿って行った足跡は吹雪の影響ですぐに消えてしまった。
「っ…通信機が…何処に………!!」
「あ……う………」
ジンに背負われているホワイトが唸る。
「っ…!ホワイト…!」
「う………あ………」
ホワイトが意識を取り戻した。
…と思ったらすぐに意識を失ってしまう。
「っ………!クソッ………!」
ジンがホワイトを強く背負う。
「そうだ…ゼッヒョウの街が近くにある…そこに向かえば………通信機なんて無くても…大丈夫…だ………」
ジンがゼッヒョウの街の方角に向けてホワイトを背負って歩き出す。
「ホワイトを…助けるんだ………!!」
ジンがゆっくりと歩き出す。
「待ってろホワイト…今お前を助ける………絶対に………」
ジンが決心したその時だった…
「…あ………お母さん…」
ホワイトが喉が焼き切れたかのような声で喋り出す。
「っ…!?」
「お兄ちゃんも………来てくれたんだね………」
目を瞑りながらホワイトが喋る。
「は…お前……何を言って……」
「漸く…私もそっちに逝けたよ…」
「っ…!しっかりしろ……………!」
ジンがホワイトを背中で揺する。
「意識を保て…!まだ…死ぬんじゃねぇ…!」
「…ずっと…会いたかった………の…」
ホワイトの目から少量の涙が出る。
「そして…謝り…たかっ………」
「っ…クソッ…こんな…の…!!」
ジンがそう言うと、ホワイトが再び意識を失う。
「は…ホワイト………?」
ジンは背中でホワイトの心臓の鼓動が弱くなっていくのを感じていた。
「う…うぅぅ………――うあああああああああああああああ………!!!!」
ジンがホワイトを強く背負い、歩き出す。
「早く…早く助けねえと………!!ゼッヒョウの街へ………!」
ジンが辺りを見渡す。
吹雪の方角を見て、街の方角を判断しようとしていた。
「っ…吹雪はあっちから吹いてる…逆方向に進めば…ゼッヒョウに行けるかもしれない………」
ジンが吹雪の吹く方向と逆の方向へ歩き始める。
「っ…ホワイト………絶対助ける…それまで…死ぬな…………!!」
ジンがホワイトを向こうとした瞬間…
ジンの頭に直接男の声が流れる――
『愚かなものだな、ジン』
「っ…!?」
ジンが瞬時に辺りを見渡す。
だが辺りには誰もいなかった。あるのはただ吹雪だけだった。
『愚か者であるから、お前がその時大切にしてた物をまた失う。もう…二度目だろう?』
「は…誰だよ………」
頭に直接言葉が入ってくるジンは、頭を強く抱える。
そして、怒りを露わにする。
「誰なんだよ…てめぇは…!!」
『私か?私はお前が王と呼ぶ存在…そして…お前が今背負う子の親とも会っている者だ』
「は…?俺が王と呼ぶ存在…?まさかランスか…?いや…ランスは団長であって王ではない…そもそも喋り方が違う…お前は一体…いや、そんな事より…そんな事言ってるくらいならホワイトを…ホワイトを助けてくれよ………!!」
ジンが必死に訴える。
だがその訴えは叶わない――
『ならば…まずはお前に記憶を戻さないと行けないな』
「は…記憶を戻す…何を言って…まさかやっぱりランスの――」
ジンがそう言うと…
ジンに突如頭痛が襲い掛かる――
「うぐっ…!?がっ…があっ…!?なんだこの…頭の痛みは………」
『お前がやってきた事…全て思い出せ、ジン』
「っ…俺が…やってきた………事って………」
ジンの頭の中に…ジンがかつて経験したかのような出来事が脳裏に何個も浮かぶ。
ジンが殺し屋になる前の光景――
「あ…がっ…がはっ………うぐっ………おえっ………」
ジンがホワイトを背負いながら嘔吐する。
ジンの殺し屋としての殺戮の光景…
「うぐっ…ゲホッ…おえっ…げほっ………」
ジンの頭痛と嘔吐が続く――
「がはっ…はぁ…はぁ………クソッ…なんだよ…これ………」
『思い出したか?人間の姿をして平和ボケしてたお前が…経験した記憶の数々を――』
「あ…あぁ………」
ジンが頭を抱える。
「あぁ…おえっ………うぐっ………」
ジンが涙を零しながら嘔吐する。
悪魔族としての…殺戮の光景――
「っ…」
ジンの頭の中に映る…
数々の女と男の悪魔の影――
「あ……お前…達………」
そして今度は…ジンの頭の中にホワイトの顔が浮かび上がる――
浮かび上がったホワイトは笑顔でジンの方を見ていた――
だが…その後瞬時にホワイトがジンの前で血を流して倒れる姿が浮かび上がる――
「あ………あぁぁぁ………ホワイト…………そうか…ホワイトが…俺を…いや…俺達を………」
『自身の本来の使命と…幾つもの罪を思い出したか?我が可愛い眷属よ………』
「そう………か………そうだった……………俺は………」
ジンが目を赤く光らせる。
そして…ジンの背中から悪魔のような翼が生える。
姿は少しずつ変わり、エルと同じく額に鬼のような角が生える。
服も黒く染まり、首元に巻かれているネックレスの様なアクセサリー。
「俺は………幾多の罪を作り上げて…幾多の未来を見てきて…幾多の未来を…作って…未来を…壊してきた………」
「――俺は………『未来視の悪魔ジン』だ………」
後書き~世界観とキャラの設定~
『ネオカオスは作られた存在』
…キンキによって明かされた衝撃的な事。
今までホワイト達が戦ってきたネオカオス…
下っ端は全て…ジハの魔力によって生まれたものだった。
ジハによって人体錬成され…下っ端として扱われ…生き物というよりロボットとして扱われていた…。
それはキンキとて例外ではない。キンキもまたジハの計画のために作られた存在…
母も父も知らない。
兄のジハとも全然似ない血…
顔や性格を少し似せて妹のように振舞ってただけの…作られし存在だった。
そうなると「ではネオカオス四天王は?」という疑問が出るが、現時点では不明。
少なくとも過去にジンと面識があるルキは作られた存在であるとは言い難いが………?




