ep114.禁忌の女
――数分前…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「…ホワイト?」
「…ミカ、ちょっとこっちに」
「?」
「どうした、ホワイト?」
「あ…ロキ君はそのままで…」
「あぁ…?分かった」
ロキが立ち止まり、ミカがホワイトの方へ歩き出す。
「…どうしたのホワイト?」
「…ミカ、ロキ君に聞こえないように喋って」
「え…あ…うん」
ミカがホワイトの耳元に寄る。
「…それで、どうしたの?」
「えっと…ロキ君の事…なんだけどさ…」
「…ん」
「私の繋命の魔力で…ロキ君の魔力を追えるんだけど…ちょっとおかしい事があって…」
「おかしい事…?」
「えっと…」
ホワイトがコソコソ喋る。
「私がロキ君を魔力で追えるのは…分かるよね…?」
「あぁ…うん。繋命の魔力で目覚めた力のひとつって言ってた奴ね」
「そう…それで…ロキ君の魔力反応をずっと追ってたんだけど…本来ロキ君はもっと遠い方に魔力反応があったの」
「…え?」
ミカが首を傾げる。
今目の前にいるロキは繋命の魔力で追えているロキとは違う反応を示していたのだ。
「おかしいでしょ…?」
「…確かに」
「それでさ………私の推測なんだけど…もしかしたらロキ君に化けた人なんじゃないのかなって…」
「ロキに化けた…」
「あのロキ君はロキ君の見た目をしているけれど…ロキ君じゃない…」
「…そうね。その理論で行くとそうなるわ」
「…そこでひとつ提案なんだけど…どうにかしてロキ君…いや、あの人を眠らせる事ができないかなって…」
「眠らせる…麻酔銃か」
「そう…なんとかしてあの偽ロキ君に背中を向けさせて…首元を撃って眠らせて…捕らえることができたら…」
「…なるほど」
「眠らせるだけなら…仮にロキ君が本物だとしても…大丈夫」
「…ふぅ」
ミカが息を吐く。
「…分かったわ、あなたの言う事…信じる」
「うん…ありがと…」
ミカとホワイトがロキの方に向かって歩く。
「ん、話は終わったか?」
「…うん」
「…ん」
「そうか」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――麻酔弾がロキの首裏に当たる。
「麻酔………弾…」
ロキが倒れる。
「…引っかかってくれてありがとう…ロキ」
「っ…」
「…いや…ロキじゃないわ。正体を見せなさい…!!」
ミカが銃剣を倒れるロキに向ける。
「っ…貴様…!!」
「…ナイス麻酔銃よ、ホワイト」
「うん…!」
「チッ………」
ロキが舌打ちをすると、ロキが黒い魔力に包まれる。
「っ…!」
「あーあ…せっかく誘き寄せて皆殺しにしようと思ったのになぁ………」
黒い魔力に包まれたロキが喋る。
「引き付けずさっさと殺せば良かったなぁ!!」
ロキの声が途中で変わり、女の声になる。
「っ………」
黒い魔力から、背の高い女が現れる。
黒いローブを羽織って長くて白い髪…紫色の瞳の20代。
「まさか探知機能まで持ってるなんてねぇ…!!」
女がホワイトを睨み、舌を出す。
「女神族の魔力所有者…ホワイト………!!」
「っ…それがアンタの正体って訳ね…」
「あぁ…アンタがミカかぁ…!!アンタがデストの大剣に刺されても死なず…ルキのナイフを弾き…フェクトの魔力弾も身体で防ぐ…おまけにメタリーを殺した…!!」
「…えぇ、そうね。一応全部…あたしがしたことね」
ミカが女を睨む。
「兄貴から全部聞いてんのよぉ…!!」
「兄貴…そうかアンタは…ジハの妹みたいなもんか」
ミカが銃剣を構える。
「いかにも…アタシはキンキ…名前の通り『禁忌の女』なんて呼ばれてる…そして…ネオカオスのボスであるジハの…妹さ」
「…妹にまで吹きかけたのね…あの男は…!」
「いいや…これはアタシの意思さ…ネオカオスとして…ネオカオスの裏の切り札としてアタシは存在してんのよ!!」
キンキがそう言うと、電気の魔力を手に帯びる。
「っ…!」
「電気…!」
「死にやがれ!!」
キンキが手を振り、電撃の柱をホワイト達に飛ばす。
「っ…!」
「避けてホワイト…!」
ミカとホワイトが電撃の柱を横に避ける。
「あぁ?」
「ホワイト…!」
「ミカ…!」
ミカがキンキに近付き、銃剣を振る。
「ッ!」
キンキが銃剣をかわす。
「ホワイト…今からあたしの言う事…できる…!?」
「えっと…」
「先の方に行ってしまったロキに合図を送る…そのために…さっきアンタに渡した銃を天に向かって撃って…!」
「っ…!あの時ロキ君がやったやり方…」
「そう…あたしがこいつを引き付けてる今のうちに――」
「あぁ?」
キンキがミカの攻撃をかわし続ける。
「合図を送るぅ?」
キンキがミカの銃剣の刃を掴む。
「っ…!?」
ミカがキンキに銃剣ごと掴まれ、宙に浮く。
「嘘…素手で刃を掴ん――」
「ふん…!」
キンキがミカを地面に叩き付ける。
「がっ…」
「ミカ…!!」
キンキがもう片方の手でミカを殴ろうとする。
「っ………」
ミカが瞬時に武器から手を離し、キンキの攻撃を避ける。
ミカがキンキから距離を取る。
「っ…」
ミカが頭の後ろを触る。
「ミカ…!」
「頭…強く打った…痛い………」
「っ…待ってて…すぐ回復させる…」
ホワイトがミカの頭に回復魔法をかける。
「っ…ありがとう…」
「あぁ…?」
キンキが右手に残ったミカの銃剣を見る。
「銃剣かぁ…アタシにも使えるかなぁ?」
キンキが銃剣をミカに向ける。
「っ…!」
キンキが銃弾を撃つが、ミカが瞬時に横に避ける。
「あ?外した?」
「っ…ホワイト…!」
「っ…!」
ホワイトがミカに渡された銃を天に撃つ。
「…よし…」
ミカがもう片方の手に魔力を込め、銃剣を作り出す。
「あぁ?武器創造の魔力ぅ?」
キンキがミカを睨む。
ミカがキンキに近付く。
「片手に武器持ってたら…肉弾戦難しいでしょ…!!」
ミカが銃剣を撃ちながら近付く。
「あぁ?そうだなぁ…」
キンキが銃弾を避けながら喋る。
「…やっぱりジハの妹と言うだけあって…魔力が桁違いだ…それに戦闘も慣れている…下手したらジハ以上の…!!」
ミカがキンキの懐に潜り込む。
「あぁ?」
キンキがミカの動きに一瞬戸惑う。
この隙に重い一撃を…!!ミカがそう思った瞬間、キンキが魔力を発動する。
「っ…?」
「あぁ…アタシ一気に攻撃されて死にそうだなぁ?」
「何が……起きて――」
その瞬間…ミカの背中に思いっきり蹴られたような感覚が走る。
「っ…!?」
ミカが後ろから蹴られ、吹き飛ぶ。
「がはっ………」
「ミカ…!?」
「あぁ、あぶねぇあぶねぇ。やっぱアタシに銃は似合わねぇなぁ」
キンキがミカから奪った銃剣を捨てる。
「今の一瞬…何が…」
ホワイトがキンキとミカを目で追う。
「今完全にミカがキンキの懐に入ってた…絶対斬り付けれる状況だった…それなのに…気付いたらキンキがミカの背後から蹴りを入れて…」
「…ゲホッ…」
ミカが咳をしながら立ち上がる。
「ミカ…!」
「っ…何も見えなかった…今のは一体…」
「あぁ?」
「…だけど…懐に入れるチャンスは作れる」
ミカが落ちた銃剣を持つ。
「っ…!」
ミカが瞬時にキンキの懐に飛び込もうとする。
「あぁ、またそれか」
キンキが構える。
「…ふん」
ミカがキンキの目の前から瞬時に消える。
「…あぁ?」
「っ…!」
ミカが瞬時にキンキの背中から斬りかかろうとする。
「そこかぁ」
キンキが瞬時に振り向き、ミカの銃剣を掴もうとする。
「…あぁ?」
だがミカを掴もうとした手は虚空を掴んでいた。
「…!」
ミカがキンキの背後から足を斬り付ける。
「…!」
「入った…!!」
キンキの足から血が出る。
「これで足元を崩し――」
その瞬間…ミカの首がキンキの手に掴まれる。
「がっ…!?」
「あぁ…よくもまぁ…足やってくれたなぁ!?」
キンキが片手でミカの首を絞めようとする。
「っ…クソッ…!」
ミカが振り向き、銃剣を振ろうとする。
「っ…!?」
ミカがキンキの足を目視するが、キンキの足からの出血は治っていた。
「出血が…治っ…ゲホッ………」
キンキに首を絞められた衝撃でミカが吐血する。
「ミカ…!!」
「…あ…う……ぐ……」
「これで終わりだぁ」
「辞めて………!!」
ホワイトが繋命剣を作り出し、キンキに近付く。
「ミカから手を…離して!!」
ホワイトが剣を振るおうとする。
「あぁ?」
キンキがホワイトにミカを向ける。
「っ…!?」
ホワイトの剣が止まる。
このまま動いてしまうと、ホワイトはミカを斬ってしまう…そんな状態だった。
「こうすると、人間って攻撃できねぇよなぁ?」
「っ………」
「隙ありだぁ」
キンキがミカを片手で持ちながら、ホワイトの脇腹に蹴りを入れる。
「がはっ…」
ホワイトが吹っ飛び、倒れる。
「っ…ホワイ…っ……」
ミカの首が再び絞められる。
「っ………ミカ………辞めて………」
「がっ…うぐっ………ゲホッ………」
ミカが首を絞められ、再び吐血する。
「辞めて…ミカを…殺さ…ないで………」
「あぁ…ジハの兄貴を倒せたからアタシも倒せると思ってるんだろうけどさぁ…現実は甘くねぇんだよなぁ!?」
「辞めて…お願い…ミカを………殺さないで………」
「っ…ゲホッ…ゲホッ………」
ミカが吐血し続ける。
「絞めれば締めるほど血が出てくる…まるで雑巾みてぇだなぁ!?」
「辞め…て………」
「っ…」
ミカの力が抜け、手に持っている銃剣が離れる。
「あ………」
「このまま終わりだ………」
「っ………!!」
ホワイトが繋命剣を持つ。
「ミカを離し…」
「うるせぇなぁ!?」
「っ…!?」
キンキがホワイトの後ろに瞬時に回り込み、みぞおちを殴る。
「がはっ…」
ホワイトが吐血し、吹っ飛ぶ。
「っ…ホワ………イト………」
「ゲホッ…ゲホッ…うぐっ………」
ホワイトが口を押さえる。
「っ…呼吸を…整えっ…ゲホッ…おえっ………」
ホワイトは気持ち悪さのあまり…嘔吐する。
「っ…ゲホッ…」
キンキに首を絞められているミカの動きが止まる。
「っ…!ミカ…………?」
「あぁ?呼吸止まったかぁ?」
キンキがミカを投げ捨てる。
ミカがその場に倒れる。
「ミカ………!?」
「もっと骨がある奴だと思ってたけど、大した事なかったなぁ」
「ミカ………!うぐっ…」
ホワイトが口を押さえる。
「ミカ…そんな…死んじゃ………」
「アタシの手で首キメたんだからなぁ、死んだかもなぁ?」
「っ……………」
ホワイトが手のひらに力を込める。
「よくも………」
ホワイトが涙を零しながら繋命剣を持つ。
そして…ホワイトの身体に天使のような羽根が生える――
繋命の魔力か、或いは別の魔力か………それは分からない。
だがこの時発動した魔力で、ホワイトはキンキに向かって攻撃する事を決意。
「ミカを………許さない………!!」
「ッ?」
「絶対に…倒す………」
ホワイトがキンキに近付く。
「絶対に許さない……!!」
「あぁ?」
ホワイトが繋命剣でキンキに向かって斬りかかる。
キンキがホワイトの繋命剣を片手で押さえる。
「っ…!?」
「あれ?」
攻撃を押さえられたホワイトが驚愕する。
だが、押さえたはずのキンキが疑問を抱く。
キンキの手から血が出る。
「血出たかぁ、じゃあこれは両手が必要だなぁ」
キンキが両手で繋命剣を押さえる。
「っ…嘘………!?」
「ふん…!!」
キンキがホワイトを繋命剣ごと地面に叩き付ける。
「がっ………」
キンキが瞬時にホワイトの繋命剣を奪い取り、ホワイトに刺そうとする。
「ッ?」
だがホワイトの手から離れた瞬間、繋命剣が消える。
「っ…」
「あぁ?消えた?」
キンキが手に疑問を感じる。
「っ…!」
ホワイトが瞬時に距離を取る。
「あ」
「っ…うぐっ…」
ホワイトが頭を押さえる。
「…その魔力は女神族のモンかぁ?」
「っ…」
「女神族って…アタシ達が恨んでる種族でさぁ」
キンキが身体中の関節を鳴らす。
「女神族ってなっちゃ、アンタには、もっと魔力使わないと勝てねえ気がしたなぁ」
キンキがホワイトを睨む。
「っ…ジハの時と一緒…私の力…完全に侮れられている………はぁ…はぁ…」
ホワイトが呼吸を整える。
「あぁ?別に侮ってはねぇよ?」
「っ…?」
「楽しい殺しに侮るなんて馬鹿がやる事さ!少しずつ、本気でやらなきゃなぁ!!」
「っ………」
ホワイトが再び繋命剣を作り出す。
「ミカが首を絞められたけど…気を失ってるだけなら…まだ…助けられる………!」
「またその剣かぁ」
キンキが舌を出す。
「っ…?」
キンキが舌を出したと同時に吹雪が止む。
「吹雪が…止んだ………?」
「ちょっと全集中しなきゃだなぁ」
キンキが息を吸い込む。
「っ…!」
キンキが再び電撃の柱を飛ばして攻撃する。
「さっきの…!」
ホワイトが横に避ける。
だが…
「っ…!?」
避けたつもりのホワイトが電撃に当たる。
「がああっ…!?」
ホワイトが感電する。
「っ………うぐっ………」
ホワイトの身体が痺れる。
「な…なに…今の………絶対避けていた…そのはず…だったの…に…」
「もういっちょ」
「っ…!」
キンキが電撃の柱を飛ばす。
「っ……!避け…」
電撃を避けたつもりのホワイトだが…電撃の柱が再びホワイトに当たり、感電する。
「あああっ……」
ホワイトの身体がボロボロになる。
ホワイトの身体から血が出る。
「あ…うぐっ………」
「強い電流を流してるが、意外とタフなんだなぁ。やっぱラッシュ師団って肉体も鍛えられているんだなぁ!?」
「っ………」
「だが…次電撃を受けたら死んじゃうよなぁ…!?」
「っ………」
ホワイトがゆっくり立ち上がる。
「死になぁ!!」
キンキが再び電撃の柱を飛ばそうと構える。
「っ………!!」
避けようとしても身体が痺れて避けきれない…そう確信したホワイト。
「…ごめん…皆………」
「諦めるな………!!」
その声が聞こえた瞬間…キンキが瞬時に反応し、攻撃をかわす動作を取る。
「ッ!」
銃弾がキンキの方に何発も飛ぶが、キンキはそれをかわす。
「あぁ?なんだお前?」
「それはこっちの台詞だ。なんだお前は…?」
「あ…あぁ…」
キンキの目の前にはロキが銃を持って立っていた。
今目の前にいるロキこそ、ホワイトが繋命で追っていた本物のロキだった――




