ep112.混沌再び
――ホワイトが目を覚ますと、通信機は使えなくなっていた。
吹雪による影響が街全体に、そして電気にも影響を起こしていた。
「ホワイト…!」
ジンが部屋に入る。
「ジン君…!一体何が…」
「分からない…けれど…この吹雪の影響によってかは分からないけれど…ゼッヒョウの地の全ての電気が落ちている…!」
「っ…!?」
「病院も飲食店もゼトラ教団の教会も…全部電気が…」
「っ…」
「電気が使えない影響で寒さを凌げる暖房器具も使えない…しかも…俺達の持っている通信機すら使えない…!恐らくだが…吹雪と共に何かしらの妨害電波がこの街周辺に漂っている…」
「っ…そんな…どうすれば…」
ホワイトが辺りを見渡す。
「そうだミカとロキ君は…あの二人はどこに…!?」
「ミカは住民の避難を…ロキはその原因の調査に向かっている…」
「っ…!」
「ただ…いつにもまして吹雪が強い…この吹雪による負傷者も多数…ホワイトも助けてくれ…!」
「っ…分かった……!」
ジンとホワイトが走り出す。
――外に出る二人…
人命救助をするホワイト。
「皆さん…しっかりして…!」
ホワイトが回復魔法をかけ続ける。
「しっかり…意識を保って…!」
「ホワイトさん…!」
ルドがホワイトの元へ走り出す。
「ルドさん…!」
「電気も通らないって…一体どうなっているんだ…」
「私にも分からない…ルドさんの通信機も…まさか…」
「あぁ…完全に御釈迦している…今は動かせない…」
「そんな…!」
「…恐らく…ネオカオスの残党と思われる者の仕業だろう…」
「ネオカオスの残党…」
「これ以外に考えられない…」
「っ…!」
ホワイトが拳を握る。
「ネオカオスの残党に…ここまでできる程の強い魔力を持っている人がいるって言うの…?」
「…あぁ。天候や電磁波までも操る魔力…この吹雪が続けば…このままだと…ゼッヒョウの地は終わりだ…」
「っ…!」
ホワイトが立ち上がる。
ホワイトが街の外の方へ走り出す。
「ホワイトさん…!?」
「私…一人で行ったロキ君を追います…!」
「一人じゃ危険だ…!それに…手掛かりも全くないんだぞ…!?」
「手掛かりならあります…私の魔力で…!」
「っ…君の魔力…だと…?」
「魔力を使って…ロキ君を探します…!」
ホワイトが病院の外へ出る。
「っ…ホワイトさん…」
――繋命の魔力を使い、一人でロキを追うホワイト。
だが外は街の中よりも強い吹雪で覆われていた。
「っ…吹雪が…強い…前のよりも…かなり強い………」
ホワイトが雪を退かしながら歩く。
「ロキ君…そっちにいるんだね…そっちに行けば…ロキ君に会え――」
「いたぞ!」
吹雪の中から声がする。
「っ…誰…?」
「ラッシュ師団だ!」
「っ…誰か二人以上の人が近づいてくる気配はあるけど…」
「殺せ…!」
声の正体はネオカオスの下っ端の二人組だった。
「っ…!?」
ネオカオスの下っ端が吹雪の中、銃を構える。
下っ端が銃を撃つ。
「うわっ…!?」
ホワイトが雪に飛び込んで銃弾を避ける。
「っ…雪冷た…」
「雪の中に身体を埋めて避けやがった…!」
「だがあっちの方だ!溢れ出る魔力の気配を…!」
「っ…!」
ホワイトが雪から身体を出す。
ホワイトの魔力の気配を下っ端に感知されてしまっていた。
「隠れようとしても…バレる…!」
「そこだ!」
「っ…!」
ネオカオスの下っ端がホワイトの方へ銃を向ける。
「ぐっ…このままじゃ…」
「ほんと…ホワイトってすぐ一人で動くよね」
その声がした瞬間、ネオカオスの下っ端二人が首元から血を吹き出す。
下っ端二人が倒れる。
「ぎゃあああ!?」
「ぐあああ!?」
「え…」
「やっぱり、近くにいないと不安だわ」
「あ…あ………」
ホワイトの目の前には二つの銃剣を持つミカが立っていた。
「ミカ………!!」
「あなた…一人で向かってたけど…やっぱり皆が揃ってから行くべきよ。…寒」
ミカが白い息を吐く。
「ミカ………ありが…とう…」
ミカがゆっくりとホワイトに近付く。
「ホワイト、大丈夫?」
「っ…これくらい…大丈夫…!」
「そう、良かった」
ミカが二つの銃剣を腰に納める。
「ミカ…その銃剣…」
「ん、あぁ…二刀流にしてみた」
「二刀流…」
「あたしの身体なら銃を撃っても反動が少ない。そして…この武器は小さくて軽いから、両手で一つずつ持てる。接近戦もあたしの得意分野だからあたしお手製の銃剣。ルドさんの助言を得て…あたしが編み出した戦闘スタイルよ…」
「ルドさんから…」
「あの人…自分が戦闘不向きって言ってるけど、自分が不向きであるだけでちゃんと周りの事を見れている…周りを伸ばす事に長けている副団長よ…」
「…確かに…言われてみればあの人は…色々な場面で…誰かの助けに…」
「そんな事より…この吹雪…どうやら…ゼッヒョウの地周辺だけでなく…もっと広い範囲を包む大きな吹雪みたい…」
ミカが空を見上げる。
吹雪いている空…そして、いつにも増して巨大な雲が空を覆っていた。
「っ…そんな…もっと広い範囲を覆ってるの…?」
「このままじゃ…世界中に吹雪と電波障害が行き渡り…全ての人間が魔力切れと低体温症によって死滅する…」
「っ…そんな…!」
「この吹雪だけでも世界全体が変わってしまう…まさにネオカオスのやりたい『世界の改変』を指すのよ…」
「っ…それじゃ…今回の事件の犯人は…ジハに並ぶ実力を持つって事…?」
「…可能性としては高いわ」
「っ…!!」
ホワイトが息を詰まらせる。
「誰とも連絡が取れない以上…誰かの安否を確認する事もできない…あたし達もこのままだと危ない…この状況を打破するには…原因を叩くしかない…!!」
「っ…原因を…叩く…」
「ただ…この吹雪が何処から出ているのか…そもそも人工的な物なのか自然的な物なのか…それすらも分からない…!」
「っ…」
「事は一刻を争うわ…急ぐわよ」
ミカが走り出そうとする。
「待ってミカ…ジン君は…ジン君は連れて行かないの…?」
「ジン…」
ミカが目を逸らす。
「えっと…ミカ…?」
「…ジンの魔力は炎の魔力。その炎の魔力で色んな人達の低体温症を防げる。しかもゼッヒョウの地には炎の魔力を扱える人が存在しない…低体温症はただの回復魔法では治せないし防げない…でもジンの炎の魔力なら…暖房器具の代わりにはなれる…皆の魔力よりも時間稼ぎにはなれる…だから…」
「っ…そんな…」
ジン無しでのネオカオスとの戦闘…ホワイトには想像できなかった。
この吹雪の中、ジンの炎の魔力は必要不可欠だ。
だが…今回は戦闘ではなく救助に必要だった。
「…ジン無しでも行かないと行けない。皆を救うために…大元を叩く…そして…!」
「皆を…救助する…!」
「…えぇ。そして今は一人で外に出ているロキとも合流するべきよ…」
「っ…そうだった…!ロキ君は私の魔力で追える…ついてきて…!」
ホワイトが目を閉じ、ロキの魔力を繋命で追う。
「…分かった。あなたを信用してついていくわ。一応何個かカイロを作っておくから…これであなたの低体温症を防いで…!」
「分かった…ありがとう…!」
「ん…」
ミカとホワイトが走り出す。
――それから数分後…
「ロキ君…こっちの方…!」
「…ん」
ホワイトが雪を退かしながら走る。
「…近くなってきた。ロキ君…!」
「…毎度思うけど、あなたの魔力…繋命って結構反則よね」
「え…?」
「なんだろ、あたしも欲しいって思っちゃう」
ミカが目を逸らす。
「…確かに…この力は…私なんかより索敵能力のあるミカの方が相応しいよ」
ホワイトが雪を退かしている手を止める。
「ホワイト…?」
「魔力が強くても身体が追い付いていない…私の身体や魔力は…お母さんみたいに強い訳じゃないから繋命の全ての力に耐えきれる身体をしてない。今はちょっとナギサさんの知恵でズルしてるけど…」
「…ズル?」
「あっ…えっと…いや…その…魔力の許容量を上げるトレーニングをナギサさんとして…それで…」
「なるほど?」
「それで…前よりも強くはなれたけど…それでもまだ…完全に扱い切れてない…」
ホワイトが暗い顔をする。
「…そうね」
「この力は…本当はミカやジン君…ロキ君みたいな…私より強い人が持つべきだよ…私は見ての通り気弱だし…力も魔力も全然弱い…だから…」
「そうね…ホワイトは色々と戦闘に関する能力は弱いわね…」
「…だから、本当は…」
「…でも、ホワイトには…誰よりも優しい心がある」
「優しい心…?」
ホワイトが首を傾げる。
「誰よりも人の事を気遣える…誰よりも仲間想い…誰よりも…皆の命を大事にしてる」
「皆の命を…大事に…」
「あなたの魔力が皆の命を繋ぎ止めてる、皆を生きていいと思わせてくれる。…ちょっと重いかもしれないけれど…」
「皆を…生きていいって思わせてくれる…?」
「…あなたのおかげで、何度も死にたいと思ってたあたしを…何度も死にかけたあたしを…生きていいって思わせてくれた。だから…命を張れる、命を守りたい、命を…繋ぎ止めたいと思える」
「………!」
「だから…その力はあなたから離れてはいけないもの。だから――」
ミカが言葉を続けようとすると…男の声がした。
「ラッシュ師団…!」
「っ…!」
ホワイト達の横にネオカオスの下っ端が複数人現れ、ホワイト達を囲む。
「囲まれてる…!」
「あの白い髪の女は…生け捕りにしろと命令の…!」
「生け捕り…!?」
「捕らえろ!!」
「隣の女はどうする?」
「奴は殺せ!」
「チッ…」
「っ…!?」
ホワイトが繋命剣を作り出し、構える。
「どうしよう…!」
「…そんなの…やるしかないでしょ………!!」
ミカが二つの銃剣を持つ。
「こっちはさ…」
ミカが瞬時に移動し、銃剣を振るう。
「がっ…!?」
ミカの銃剣がネオカオスの下っ端を斬り付ける。
「簡単に『殺せ』なんて言われて…」
「がはっ…」
ミカの銃剣が別のネオカオスの下っ端を斬り付ける。
「イライラしてんのよ…!!」
ミカが銃剣を撃ち、ネオカオスの下っ端の脳天を撃ち抜く。
「がはっ!」
「ぐああ!!」
「っ…!」
気が付くと…
ミカはホワイト達を囲っていたネオカオスの下っ端を全滅させていた。
「……ふぅ」
ミカが銃剣の銃口に息を吹く。
「ミカ…今の一瞬で全部やったの……?」
「…大丈夫?ホワイト」
「あっ…えっと…」
ミカの頬には返り血が付いていた。
ホワイトがミカの頬に付いている血を指で落とす。
「…ん」
「…ミカの顔…綺麗だから…安易に汚しちゃダメ」
「…そう」
ミカが目を逸らす。
「けれど…私を守ってくれてありがとう…」
「…命を張れる、守りたい、繋ぎ止めたいって思える相手だから…ね」
「…そっか」
ホワイトが胸に手を当てる。
「それにしても…ホワイトの周りでバタバタと人死んでるのに、もう…慣れた?」
「あ…いや…まだ慣れないし…ネオカオスもネオカオスで生きているって思うと…」
ホワイトが魔力を感知する。
そして、その魔力に違和感を覚えていた。
「…あれ…?」
「どうしたの、ホワイト?」
「なんか…おかしいな…」
ホワイトが死亡しているネオカオスの下っ端を見る。
「…死体なんか見て、どうしたの?」
「いや…えっと…なんかこの人達から変な魔力の気配を感じて…」
「変な魔力の気配…?」
ミカが下っ端を見下ろす。
「…まぁ変な魔力を感じはするけど…あたしにはよく分からないかな」
「なんだろ…なんていうか…変な事言うようだけど…」
「?」
「本当に…そこに生きていたのかなって………」
ホワイトの声が少し震えていた。
それは吹雪だからとかではなく…恐怖による物だった。
「…本当にそこに生きていた…って?」
「なんかその…この人達から命を奪ったって感触が無いって言うか…」
「…え?」
「なんだろう…いや…私の魔力のせいって訳ではなさそうなんだけど…なんかその…」
「――望まれて生まれた命って感じがしないような…」




