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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔

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ep108.窮地の脱出

 ――ゼッヒョウの街にて…


「ありがとう、助かるわ」

「あぁ。教師の皆にもよろしゅうな」


 サザナとソドが話していた。

 サザナは仕事の関係でゼッヒョウの地にまで訪れていた。


「…あれ?」


 サザナがミカを探しに走るホワイトを見掛ける。


「ホワイト…さん…?」

「ん、どないした?」

「ソドさん、ここにラッシュ師団って来てるのですか?」

「あぁ、来とるねぇ。この街に突然の吹雪が襲いかかったせいで行方不明者が出たんやけど、どうやらそのまま救助に来てくれたみたいでさ。おかげでだいぶ助かっている。後少しなんだけど…時間が無いのもそうだけど色々あってな…」

「…そう…なのね」

「今はとてつもなく強い魔物が外にいるって情報もあんねん。先生だかなんだか知らんけど、一般人が追うのはおすすめはせんで?」


 ソドが頭を搔く。


「あぁ、そうや。そういや魔物の攻撃によって魔物を孕んだ子がラッシュ師団におるだとかなんだとか」

「は…魔物を…孕んだ…?それって………」

「ワイにはよー分からん。けれど…そのせいかラッシュ師団の団員の間でちょっとピリピリしよったなぁ」


 ソドの言葉を聞いて、サザナが決心する。


「…ソドさん、私用事を思い出しました。また後でお会いしましょう」

「え?あぁ、おう。けど、外に出る場合はすぐ帰るんやで?おぬしも魔物に孕まされんようにな…?」

「…そうね。私は今、お腹の中で新しい命を育てているもの。これに加えて魔物なんて…一度には育てられないわ」


 サザナが走り出す。


「…ったく、妊娠しとんのに最近の連中は元気やなぁ」


 ソドが走るサザナを目で追う。


「まぁ、お手並み拝見と行こうか」




 ――それから数分後…

 ゼッヒョウの地の外…吹雪の中にて…


「ミカ…!」

「っ…ホワイト……?」


 吹雪の中、歩いているミカを見つけるホワイト。

 ミカが足を止め、ホワイトに背中を向ける。


「どうしてここが?」

「そんな事より…!どうして黙って抜け出したりなんてするの…!?どうしていつも一人で………!」

「…なんだ、そんな事か」


 ミカがため息をつく。


「そんな事って…そんな事で済まさないでよ…!!」

「…皆のためだよ」

「え………?」


 ホワイトが首を傾げる。


「皆が…街の人達が被害に会わないように…あたしが皆から離れたの。あたしが…化け物になったとしても…この位置なら街に行くまで時間がかかる。その間に…あなた達に食い止めて貰える…。若しくは…誰にも見つからない場所で自殺をして………それで………」

「ミカ…そんなの…ダメだよ…!」

「じゃあどうすればいいの…!?」


 ミカが大きな声を出す。


「っ………」

「あたしの身体には…あの化け物の命が宿ってる…もう…こんなにお腹が膨らんでしまってる…こんなに膨らんだのは馬鹿みたいに食べすぎたあの頃以来…もう…まるで妊婦よ…」


 ミカがホワイトの方へ振り向く。

 ミカの腹は膨れていた。まるで…妊婦のように…

 ミカの腹の中で魔物が育ってしまっていたのだった。


「っ…もう…そんなに…大きく………」

「あの化け物があたしの体内に無理矢理体液を注入したから…あたしは…化け物の母になってしまった…!あたしは………」

「っ…だからって諦めるのは早いよ…まだ…何か方法が………」


 ホワイトがミカに近付くが、ミカがホワイトを拒否するかのように距離を取る。


「っ…」

「…無理よ。もう…あたしのお腹の中で…魔物の赤子が…ガンガン騒いでるのよ…いつ出てきてもおかしくない…内臓を引き裂いて今ここに現れてもおかしくないの…!!」

「っ…こんなの…こんなの………!」

「…あなたもここに来てしまった。だからもう、時間は残されてないの」


 ミカがそう言うと…魔力で剣を作り出す。

 そして、自分に刃を向けるように持ち始める。


「は…何をして…」

「…これであたしのお腹を深く刺して魔物を殺す。一撃でやれたらいいけど…幼体でも恐らく不可能。だから何回か刺す必要がある。その何回かの間にやれれば………」

「っ…そんな事したらミカが………!!」

「これで…皆が救えるなら…あたしはどうなったっていい…」

「辞めて………!!」


 ホワイトがミカの右手を押さえる。

 ミカの腕は震えていた。ミカも自分が死ぬのは怖かった。

 だがそれ以上に…仲間を巻き込むのが怖かった。


「…何してんのさ…あたしを…殺させてよ…」

「っ…そんなの…ダメ…誰かを救うために誰かが犠牲になるなんて…もうそんなの…嫌だよ………!」

「でも………」

「何か絶対方法はある…絶対ある…何か…方法が………」


 その瞬間…ミカが吐血する。


「っ………!」


 ホワイトの胸にミカの血がかかる。

 ミカの腕が痺れたかのような震え方をする。


「…身体…が…痺れてきた…お腹の中もずっと…激しく動いてる…もう……時間がない………」

「っ………」


 ミカがホワイトに自分が持っていた剣を渡す。


「ホワイト…あたしの腹を…刺して………お願い………」

「っ…でも………!」

「刺して………あたしを…魔物ごと…早く殺して!!」

「っ………」

「あたしが…化け物を産む前に………!!」


 ミカがそう言うと…

 ホワイトの背後から声が聞こえた。


「話は聞いたわ」

「っ………?」


 ホワイトが振り向くと、そこにはサザナが立っていた。


「サザナ先生…!?どうしてここに……!?」

「仕事の都合でゼッヒョウの地に行く用事があったの。そうしたらあなたを見かけて…こっそり着いて行ったらこの有様よ」

「っ…先生…!この吹雪の中じゃ先生の中の子だって危険です…早く街に戻って…!」

「生徒のために身を投げれないなんて、教師失格よ」

「先生………でも…!」

「私は大丈夫。なにせ水の魔力で体温どころか皮膚の表面の温度すらも調整できるわ。この子も安心して過ごせる環境よ」


 サザナが自身の腹を摩る。

 サザナもまた妊娠している身…あまり中にいる子どもに刺激を与えるような行動はしてはならなかった。


「っ…す…凄い………けどここは危ないです…早く街に…!」

「ミカちゃんの症状、詳しく見せてくれるかしら…?」

「っ………先生…」


 サザナの真剣な目にホワイトが動揺する。

 頼みたい気持ちと身体に気を遣って欲しい気持ちが入り交じっていた。


 ホワイトの中の気持ちが勝ったのは…頼みたい気持ちだった。


「お願い…します………」

「えぇ、勿論よ」


 サザナがミカに近付く。


「っ…!」


 ミカがサザナから距離を取ろうとする。


「アンタも危ないんだよ、ホワイトの先生…。あたしの中にいるこの魔物がすぐに目覚めたら…アンタはその魔物に引き裂かれてお腹の子共々殺される。今にもあたしの内臓を引き裂いて現れる可能性だってある…近付かないで…死ぬのはあたしだけで…いい………」

「…あら、優しいのね」

「っ…アンタは怖くないの………?」

「怖いわ。けれど…大事な生徒の大事な友人の為ならば、身を乗り出す覚悟くらいならあるわ」

「狂ってるよアンタ…」

「私みたいな人でも狂わないと、この地獄の世界は生き延びれないわ」


 サザナがミカの腹を触る。

 そして、中にいる魔物の特徴を自身の魔力で捉え始める。


「………なるほど」

「…何が…分かったの?」

「…もういつでも中にいる魔物は出てこれる程育ってしまってるみたいね。人間とは比較にならない程の成長速度…恐るべき魔物だわ………」

「っ…!だったら…尚更アンタはあたしから離れるべきよ…あたしの目の前にいたら…絶対死ぬ…お願い…離れて…それかあたしを…殺して………!」

「…ホワイトさん、手伝ってくれるかしら?」


 サザナがホワイトの方を向く。


「先…生…?」

「ミカさんのお腹の中にいる魔物を消し去ります…私の魔力を使って…そのためにはあなたの回復が必要よ。お願いできるかしら?」

「っ………勿論です………!」

「ありがとう、感謝するわ」


 ホワイトがサザナに近付く。


「ただこれは…失敗したら私だけじゃない。あなたも死んでしまうかもしれない」

「っ…」


 ホワイトの足が止まる。


「下手したら今いるここの三人が死亡…いいや、私の子どもも含めたら四人ね…」

「先生の…子どもも………」


 ホワイトは決意が揺らいでいた。

 ホワイトもまた、自分の死よりも他人の死の方が怖かった。

 しかも今回は…複数。それに自分よりも幼い…生まれる前の子どもも関わっていた。


「…少し…ハードルを上げてしまったかしら…?」

「…先生は………怖くないんですか………?」

「…怖いわ」


 サザナの声は震えていた。


「それでも私は…教師としての仕事…いいえ、役目を…果たすまで。教師として…未来ある子の未来を…繋ぐために」

「…!」


 繋ぐという言葉に…ホワイトが感化される――


「…やります」


 ホワイトがサザナの隣に立つ。


「…あなたの覚悟、受け取ったわ。…隣で私の回復、お願いできるかしら?」

「…分かりました」

「…行くわよ」


 サザナの言葉を聞き、ホワイトが息を吸い込む。

 サザナがミカの腹に触れる。


「…あら?」

「…先生?」

「…いいえ、なんでもないわ。そうね…この魔物は………」


 サザナが魔力で魔物を分析し始める。 


「ミカさんの体内にいる魔物の魔力を確認し…脳内で分析したわ。そして…その魔力と魔力を成している身体を分解する方法を編み出した」

「は…身体を…分解…!?」

「産まれる前の魔物も人間と同じく水分がとても多い。そして…私の魔力は水分から魔力を分析することも可能。水は私の得意分野だから尚更すぐに魔物の居場所が分かったわ。そして…その魔物を分解する方法も…ね?」

「っ…まさか…」

「そう、簡単に言えば…あなたの体内でこの魔物を分解する…!」

「っ………!」


 そう、サザナはミカの身体の外側から、身体の内側にいる魔物の幼体を分解する事で消し去ろうと考えていた。

 そうすればミカから魔物が生まれる事も、ミカの内臓を引き裂いて魔物が現れる事もなくなる。


「先生…!でもそんな事したらミカの身体にも影響が…!!」

「…多少出てしまうのは…孕んでしまっている以上仕方ないわ。寧ろ…この状況下でミカさんの命を救える事だけでも…」

「っ………」


 ホワイトが息を詰まらせる。


「…あたしは死んでもいい。この中の魔物が…サザナさんの言う通りに止められるなら………身体だろうがなんだろうが差し出してやる…」

「ミカ…」

「その覚悟、乗ったわ」


 サザナがそう言うと、ミカの腹に向かって分解の魔力を使う。

 分解の魔力でミカの体内にいる魔物を少しずつ分解し始める。


「っ………!!」

「先生…!」

「ホワイトさん…私を回復して…!この分解の魔力は…私の身体にも負荷がかかりやすいの…だから…!」

「っ…!」


 ホワイトが回復魔法をサザナにかける。


「………!」


 ミカが胸を押さえる。

 ミカは腹の中に違和感を感じ取っていた。

 少しずつ…体内の負担が無くなっていくかのように――


「はぁぁぁぁぁ………!!」


 サザナが力を入れる。


「っ………!」

「うぐっ………!」


 急に来るミカへの腹痛。

 ミカが腹の痛みに耐える。


「耐えて…我慢して…!」

「がはっ………」


 ミカが嘔吐する。


「ミカ………!」

「もうすぐよ………!」


 サザナが力を込める。


「っ………!」


 そして…遂に…――

 サザナが魔力を止める。


「………はぁ…はぁ…」


 サザナが息を切らす。


「…ゲホッ……おえっ………」


 ミカが再び嘔吐する。


「ミカ………!!」

「…成功よ、ミカさん…ホワイトさん…」

「おえっ…ゲホッ………」

「ミカ…お腹の膨らみが…!」

「…!」


 ミカが自身の腹を摩る。

 ミカの腹の膨らみは綺麗になくなっていた。


「っ…ほんとだ…中にいる感じも…なく…なった………」


 ミカが安堵する。


「っ……!!おえっ………」


 ミカが再び嘔吐する。


「ミカ………!」

「…暫く嘔吐は続くかもしれないわ。それに…孕んだ時からずっとミカさんの身体に負担がかかってしまってる。何せ妊娠と同じような症状…そして…若い身体でそんな状態なんて…肉体的にも精神的にも辛いはず…暫くは安静にしないといけないわ。…はぁ…はぁ…」


 サザナが息を切らす。


「先生…!」


 ホワイトがサザナに寄り、回復魔法をかける。


「大丈夫…ですか…!」

「えぇ…大丈夫よ…けれど…少し休憩したいわ………なにせ今の魔力を使った影響で…体温の調節が厳しいわ…」

「っ…!そうだ…助けを呼ばなきゃ…!」


 ホワイトが通信機を操作する。

 そして、ロキに真っ先に連絡する。


「ロキ君………!」

「ホワイト…!ミカは見つかったか…!?」

「っ…見つかった…それに…先生まで…」

「先生?お前に先生が…いやそれよりも…ミカの様態は…!?」

「…大丈夫…」

「なんだと?」

「…もう…魔物を産む心配も…魔物になる心配も…なくなった…」

「っ……それは本当か…!」

「う………ん………」


 ホワイトが倒れ込む。

 倒れるホワイトにサザナがゆっくり近付く。


「ホワイトさん…!?」

「はぁ…はぁ…安心したら…身体が…重りが一気に無くなった感じがして…脱力感が………」

「っ…」


 サザナがホワイトの右腕に付けている通信機に声をかける。


「聞こえるかしら…?今こちら二人…動けない状況よ…。ミカさんはもう無事…だけれど吐き気に苦しんでいる…私は魔力の使い過ぎによって動けないわ…ホワイトさん一人では運び切れない…こっちに助けを…救助を要請します…!」


 サザナの急な要求だったが、ロキは臨機応変に対応する。


「…なるほど、分かりました。その場から動かないようにお願いします。ホワイトの通信機の位置情報を元にそっちに向かいます…!」

「えぇ…お願いするわ…!」


 ロキが通信を切る。


「先生…ミカの中にいる魔物だけを分解するなんて…凄いです………」

「幼体だったから簡単だっただけよ。けれど…もう少し育ってしまっていたら…全ての分解は厳しかった。間一髪って奴ね…」

「…はい」


 ホワイトが安堵していたが、そんな暇はなかった。

 吹雪が強くなる。


「っ………この吹雪の中…魔力を使い続けられるなんて…先生凄い…」

「ふふっ…だてに30年以上…生きてないわよ…けれど…妊娠している身体で無茶な行動をしまったわ………」

「…でも、あなたのお子さんにとって…先生はきっと誇りある母です…先生は………」


 ホワイトが言葉を続けようとすると…

 突如ホワイト達の傍にエクストデスが現れる。


「っ…!?」

「エクストデス…!?」

「はぁ……はぁ…おえっ……」


 ミカが再び嘔吐する。


「っ…なんでここに………!」


 ホワイトが立ち上がる。


「っ…まさか…匂いに釣られて…」


 ――死獣エクストデスは、ホワイトやミカ、サザナの匂いに釣られてこの場にやって来た。

 エクストデスにとって、ホワイト達は魔物の母体以外の何物でもないのだった――

後書き~世界観とキャラの設定~


『サザナの魔力』

…ナギサと同じく水の魔力を扱う事ができる。

水の魔力によって自身の体温を調節したり、お腹の中にいる子の過ごしやすい環境を作ったりと戦闘よりも生活に活かすように使っている。

…そして、生まれる前の子は水分がとても多い。サザナにとっては得意分野であり、ミカの中に植え付けられた水分だらけの魔物を分解し、ミカを救った。


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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
も連載中!
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