ep10.作戦実行まで
――時はデストとロキが森の中で戦っている最中まで遡る…
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気を失ったジンを抱えるホワイトと、重傷のミカを抱えるランスがキャンプ場に向かっている途中………
「…ごめんなさい…私のせいでジン君が…」
「お前のせいなんかじゃない。…お前のためにジンは戦ってくれたんだ。…それより、軽傷で済んでる事を今は喜ぶべきだ」
「…そうですね…ごめんなさい」
ホワイトが悲しい顔をする。
ジンの重量に少しずつだが耐えれるようになってきた。
「…こんな時にすまないが、ホワイトの方で何か情報を得たりはあったか?」
「あっ…えっと…ふたつあって…ひとつは恐らくネオカオスのボスがもうほぼ脱獄確定しちゃってる…ってことと…」
「やはりか…まぁ、アレだけの爆発があった以上、基地をどうこうされてもおかしくはないだろう…」
「もうひとつが…さっきの強い人…デストが人造人間だって事です…」
「…人造人間?」
「はい…本人が言ってました」
「本人がか?」
ランスが歩きながら首を傾げる。
「…身体自体は傷ひとつなかったのに、服は傷付いてたりと不自然だったので、それはほぼ確定でいいと思います。…後は、デストって人がおしゃべりなことくらい…?」
「おしゃべり…か」
「…それなら、あたしも閃光弾を奴に投げたけど効き目が悪かった。…これも一応理由としてあり得るかも」
ミカがデストと戦っていた時の出来事を思い出す。基地で戦ったデストは閃光弾が効かず、ミカの腹をそのまま刺し…
「…そうか…普通の攻撃も殆ど効かず、目潰しも効かないとなると…厄介だな」
「…団長、さっきの奴の動きを見て…勝算はあるの…?あたしにはあるとは思えない…」
「勝算…か…正直1対1では魔力を解放したロキでも無理だ。…もしかしたら、複数人で挑んでも返り討ちにされてしまうかもしれない。下手したらラッシュ師団が全滅だ…」
「…そんな…どうすれば…」
「…一旦シェールが作ってくれたキャンプ場へ行くのは確定として…その後の拠点も決めてはいるにはいるんだが…うーむ」
ランスが悩んでいると、ミカが話し始める。
「…あたし、少しだけ案がある」
「何かあるのか?」
「人造人間って事は…人間とは内臓の仕組みが違うはず。…もしかしたら、ロボットって可能性もない?」
「…ロボット?」
「飽くまで可能性だけど…大きな電気とかを与えれば…或いは…」
ミカは人造人間…もといロボットであるという可能性を考えていた。そして…電気を強く与えれば倒せる可能性があると予想していた。
「…なるほどな。その可能性はあるな。…だが、どうやって電気を与える?うちに電気を扱える奴は…いたけど無事だという保証はない」
「…そう…なんですよね…」
「…いや、作れる方法…あります…!」
「…ホワイト?」
ホワイトがミカの方を向く。
「ミカの魔力なら…」
「…え…あたし…?」
「ミカの魔力で…強力な電気を帯びた武器を作って…」
「電気…」
「できる…?」
ホワイトがミカに聞く。だが、ミカはその作戦には欠点があると気付いていた。
「…作れなくはないけど…電気が強すぎるとあたし達が触れるのすら無理…だからあたし達で触れられる程度の武器を作るしかないけど、1本だけじゃ足りない。…一度に何本か刺さないと恐らくは効かないはず…」
「…そっか…ごめん…」
「…こうなるとあたしは落とし穴くらいしか思い付かないわ。…あんまり得策ではないよね」
「落とし穴…か…」
ランスが少し考え始める。
「…待てよ、落とし穴?」
ランスが作戦を閃く。
「…落とし穴が、どうかした?」
「落とし穴…と、その電気を帯びた武器を沢山使えば…」
「…もしや…」
「…これだ…!」
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――夜の森の中…
ロキが通信を繋ぎながら、ホワイトの声を聞き続けていた。
「…って感じなんだけど…これなら倒せる気がしたの…!」
「なるほど。…ただそうなると、奴を誘き寄せる必要があるな。どうすれば…?」
ロキは疑問に思っていた。
作戦を実行するにも場所がなかった。
「…キャンプ場を使う」
「…は?」
ランスの言葉に、ロキは戸惑う。
「…既に俺等がキャンプ場へ逃げている事はネオカオスにも知られているはずだ…何れはデストにも伝達されるであろう。…そこで、シェールにもさっき連絡したんだが、キャンプ場で奴と決着を付けることにした」
「ちょっと待て…拠点になるかもしれないキャンプ場で…?」
拠点になる可能性のあるキャンプ場で作戦を実行するのはメリットがないどころか、デメリットしかなかった。
そこが戦場になってしまえば、殆どの確率でその拠点を捨てる事になってしまうからだ。
「見通しの悪い場所で奴を嵌めるのが一番得策ではあるんだが…見通しの悪い所では俺達も当然不利だ」
「……まぁ、確かにそうですが…」
「だから…俺らが最初に着く予定のキャンプ場も作戦決行時に一旦捨てる」
「す…捨てるだと…!?」
「次の拠点は俺の知り合いがいるデカめの街がある。そこでラッシュ師団の拠点を置くつもりだ」
「…へぇ。団長って次から次へと作戦が思い付くんですね」
ミカが傷口を押さえながら、ランスの言葉に少し感心する。
「…俺だけじゃない。ホワイトやミカのおかげでこの作戦を立てられる」
「…まぁ、一理ありますね。…とはいえ、俺がまずキャンプ場に行くのが先ですね…すぐ向かいます」
「うむ…ジンを置いたら、迎えに行こう」
ランスが通信を切る。
「……作戦…決行か…」
作戦決行という言葉でロキは疲労の回復を感じた。
ロキは少し小走りでキャンプ場へ向かう。
――第二の拠点となるキャンプ場に着いたランスとホワイトは…
「着いたぞ。…一応ここは俺がラッシュ師団を作る前によく来てた場所でもあるんだ」
「ラッシュ師団が…できる前に…?」
「…まぁ、俺がやんちゃしてた時代の頃の話さ、あんま気にしないでくれ」
「…子供の頃…って事ですか?」
「…んー、まぁそんなとこだな」
キャンプ場には松明で当たりが照らされており、ラッシュ師団の団員が結構な人数集まっていた。
中には少し負傷者もいた。団員同士、魔力を使ったり包帯を使ったりでお互いを回復させていた。
「…ミカとジンをテントの中へ運んだら、俺は皆に作戦を教えなければならない」
「分かりました…!」
「…ん」
――大きなテントに入るホワイトとランス。
そこには人が数人入れるくらいのスペースがあり、しかも布団が敷いてあった。
ホワイトがジンを下ろし、ランスがミカを下ろす。
「すまない、行ってくる。回復魔法を頼む」
「はい…」
ランスはラッシュ師団の団員が集まる場所へ向かう。
ミカが布団に寝転がる。
「…布団が敷いてある。…しかも広い」
「…ラッシュ師団のテントの技術も凄いからね。…もしかして、ホワイトってテントは初めてだっけ?」
「あ…うん。ここに来てから…って言うより、人生で初めてかも」
「…とりあえず、ジン寝かせようか。…まだ起きないわね」
「そうだね…。よいしょ…」
ジンを寝かせるホワイト。
ジンの背中の傷を痛めつけないためにも、うつ伏せにして寝かせた。
数秒経った後、ミカが立ち上がる。
「あたしもランスの元へ行く。そして………」
腹を押さえるミカ。
「あっ…うぐっ………」
「ミカ…!」
腹の傷は当然治りきっていない。
ミカの身体は…内臓はボロボロになっており、普通の人間ならいつ死んでもおかしくない状況だった。
「…大丈夫。さっきの傷が治りきってないだけ。すぐに…」
「…見せて」
「でも…」
「ジン君は寝てるし恥ずかしがる必要はないよ。…怪我、見せて」
「別に恥ずかしくないし、そもそも大丈夫だって…」
「見せて…!」
ホワイトが大きい声を出す。
「…ごめん、分かった」
ホワイトの指示に従い、ミカは服を少し脱ぐ。
ミカの腹には大きく深く刺されたような傷ができており、出血が止まっていなかった。
「っ………酷い怪我…」
「…ちょっと恥ずかしいな」
「…待ってて、刺し傷用の回復魔法使う」
ホワイトはミカの身体に手を当て、回復魔法をかける。
ミカの傷は段々と回復していく。
「…ちょっと、染みるけど…かなり楽になった」
「……ふぅ…完全には治せないけど、出血は止めれた。内臓の方も…私の魔力だったら…安静にしていれば治るかも…少しだけ安静にしてて」
ホワイトはミカの身体に包帯を巻く。
ホワイトの手にミカの血が付く。
「っ……なんか、その、ごめん」
「…ジン君と出会った時の事、覚えてる?…あの時包帯を使って私を治療してくれたの、ミカだったじゃん…?だからさ…」
「…そっか」
「…ジン君も回復させなきゃ…」
ホワイトはジンの服を少しだけ脱がす。
ジンの背中もミカと同じように大きな傷が付けられていた。
「…うっ…ジン君まで酷い怪我…でもこれなら…治せるかも」
ホワイトが回復魔法をかける。
だがこれまで使ってきたせいか、魔力が足りない。
「っ……はぁ…はぁ…ちょっと魔力が足りないや…」
ホワイトが呼吸を乱す。
ジンを完全に回復させることができなかった。
「…ホワイト。今はアンタも休憩しなさい。…さっきジンを運ぶ時、ちょっと魔力使ったでしょ。自分の筋力を少し強化する魔力を…」
「っ…私の力が弱かったから…持ち上げる為に…」
「…応急処置はされてるから、暫くはジンを寝かせて回復を待とっか。ホワイトも魔力回復のため、休んで」
「…分かった。…皆で休み…だね」
「…基地にいる時みたいね。…まぁ、今後同じように過ごせるかは分からないけど」
ミカがゆっくりと立ち上がる。
そして、テントの外の方を見る。
「…あたし、団長の所行ってくる。…何れ武器作れって言われるだろうし」
「…分かった」
ホワイトがそう言うと、ミカはテントの外に出る。
「……ジン君…」
ホワイトは未だに起きないジンを見る。
「…私を守る為に…こんな怪我させちゃって…ごめん…」
ホワイトは少しだけ泣きそうな顔をする。
「…せめて、これでお礼できれば…」
そして、ホワイトがジンの口に自身の唇を当てる。
「っ……」
そして、急に眠気に襲われたホワイトは、そのまま寝てしまう。
――テントの外…キャンプ場にて、複数の団員に作戦を伝えに行ったランスは…
「…確認できただけでも団員の死亡者…二十人…か…これ以上もいる可能性はあるだろうな」
「…申し訳ございません」
「彼らの死は決して無駄にしない。これ以上の失態は許されないが…まずは命大事にだ」
「…はい。…それで、ネオカオス四天王の一人を倒す作戦があると聞きましたが」
「あぁ。…落とし穴だ」
「落とし穴…ですか」
「…ロキやミカが対面しても勝てない相手だ。それに2人への相手も得意としていた。つまり、まともにやり合うのは不可能だ。…ならばこちらは小細工が必要だ。…それに、人造人間だと聞いた。ロボットという推測もある。…なら、それに賭けようじゃないか」
ランスが真面目な眼孔を団員に見せる。
「…なるほど、団長らしいです」
「…それで、俺が考えたこの作戦の通りに動いてもらう」
ランスがそう言うと、作戦が書いてある紙を団員に投げた。
「…この資料、いつの間に」
「…即興で書いた。字は汚いが、許せ。この通りに動いてくれると助かる」
「分かりました。そう伝えておきます。…団長はこれからどうされますか?」
「…まだ生き残りがいるからな…迎えに行く」
「…承知しました」
団員が紙を握り締め、走り出す。
一方、外に出たミカは…
「…団長、何処行ったっけ…」
ミカがキャンプ場であたりを見回す。
「…ねぇ、団長見なかった?」
ミカが別の団員に話しかける。
「団長?…そういえば、さっき迎えに行くとか言ってキャンプ場の外に…」
「あっ…そうだった…ありがとう」
ミカはランスを追いかけようとしたが、何かを思い出したかのように立ち止まる。
(あたしが行っても、今は足手まといか…)
(あんまり遠く行くとホワイトも怒るだろうし、辞めとこう…)
ミカがテントに戻ろうとすると、後ろから声がした。
「あ…いた、ミカちゃん」
「…その声…シェールさん」
ミカの後ろにはシェールが立っていた。
「美人…いや…それよりも、あなたの彼氏は?」
「ランス君、ロキ君を迎えに行ったらしいから私が今頑張って指揮してる」
「そう…ですか」
「全く…ランス君ってば、私への信用…熱いんだから…」
シェールが息を切らす。
テントを立てるのには女性のシェールには大変な作業だった。
「で、さっきの作戦の件で早速ミカちゃんへのお仕事があるよ」
シェールがそう言うと、ミカは少しだけため息を吐く。
「早速ですか。…でも時間がないのも事実です。あたしの魔力なんかで良ければ協力します」
「うん。…デストって奴が人造人間な以上、普通の人間の私達は小細工を上手く使って足止めしなきゃいけない」
「…普通の人間…かぁ」
ミカがそう言うと、少し天を見上げていた。
「…どうかした?」
「いや、こっちの話です。…あたしは何処へ行けば?」
「えっと…こっち」
シェールがミカを案内する。
「ここ」
シェールが指を指す。
が、そこにあるのは土だけだった。
傍から見れば、何もない。
「…何もないじゃないですか。落とし穴…あるんですか?」
「そう。団員の魔力で落とし穴を作ってみました」
シェールがそう言うと、シェールは土に手を当てる。
「…あぁ…なるほど…一定の重さを与える事で開く落とし穴的な」
「そ!…で、この中にミカちゃん特製の電気属性の武器をいっぱい入れて欲しい訳!」
「なるほど、了解です。ついでに殺傷能力高めにしときましょうか」
「…案外怖いね、ミカちゃん」
「…人間相手なら兎も角、人造人間相手ならいいかなって」
ミカはそう言うと、長く鋭い剣を何本も作り出した。
その剣は電気を帯びていた。
ミカが複数の電気を帯びた剣を地面に埋めていく。
「…こんな感じで、落ちてきたところを串刺し…って感じでいいですか?」
「そうだね。…万が一電気が効かなかったら、どうしようか」
「…どうしようもないかもですね。…でも、あたしの推測が正しければ…恐らくは」
ミカとシェールで力を合わせて、デスト特効の落とし穴が完成した。
この落とし穴を駆使してデストを討つ…ラッシュ師団はそう考えていた。
後書き~世界観とキャラの設定~
『森の中のキャンプ場』
…ランスがかつて野営に使っていたとされるキャンプ場。
基地が爆破された後の一応の拠点だったが、ネオカオスの殺戮のデストを打ち破るため最終的に決戦場として使われた。




