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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔
109/271

ep-α9.青い炎

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ――これはジンが撃たれてからほんの数分後の話だった。


「ど…どういう事だ………」

「………ア…ウゥゥ………」


 ジンが額から血を流しながら、右手でボロスの顔を掴んでいた。

 ジンは正気を失ったかのように、彼を睨み、唸っていた。

 だがその目に生気が感じられない。まるで、本能で動いているかのような、獣のような目だった。


「お前の脳に…銃弾を撃ち込んだはず…なのに、何故生きてやがる…」


 ジンが爪を立て、ボロスの顔を強く握る。

 ボロスの顔にジンの爪が刺さり、血が出る。


「っ…!離せ…!」

「…未来…未来………未来………」


 ジンは身体中に魔力の気迫を出していた。

 ボロスの顔を掴んでいる右手に魔力を込める。


「未…来…?何を言ってる!?」

「オマエガ………エルノ未来ヲウバオウトシタ………」

「っ………!」


 危機を察したボロス。

 ボロスはジンの身体に向けて、銃を向ける。

 そしてすぐさま撃つ。


「……………!」


 ジンの右胸に銃弾が撃ち込まれる。

 右胸から血が垂れるジン。


「ふん…ざまぁな――」


 だがジンは銃弾を撃ち込まれても、動じなかった。

 ボロスを離さず、再び強く掴む。


「ぐおっ………!痛い…何故だ…!お前を撃ったんだぞ!?何故動ける…!?」

「………オレハ未来ノ……………カミダ」


 正気と生気の感じられないジンがそう言うと、ジンの右腕から青い炎が出る。

 そして青い炎は、ジンの額と右胸から出ている血にも引火する。

 まるで血液が油になっているかのように、燃え広がる。


「…何をしようとしてる…お前…まさか…」

「…未来ヲウバウモノ………シネ――」

「辞めろ…!!」


 ジンの右手から一気に青い炎が噴き出る。

 噴き出た青い炎により………

 ボロスの身体は全て燃え上がる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 ――グレネードの爆発音がジンとダイアの元にまで鳴り響く。


「…あァ?何の爆発だ?」


 ダイアが煙の方を見る。


「…紫色…何だありゃ?吸ったらヤバそうな空気してんなァ?」

「……グググ…」


 ジンがダイアの方へ歩き出す。

 地面にジンの血の代わりに青い炎が垂れ続ける。

 青い炎は少しずつ地面を焦がしていく。


「お前、額からめっちゃ炎出てるぞ。穴も開いてるしよォ…大丈夫かァ?」

「……未来ヲウバウモノ…ゼンイン…コロス…!」

「未来以外、聞き取れねえよ。何言ってんだお前はァ?」


 ダイアがそう言った瞬間…ジンが飛び掛かりダイアに向かって掴みかかろうとする。

 素早く動くジンをダイアはかわす。


「おいおい!危ねェなァ!」


 ダイアはジンの左胸に向かって銃を撃つ。

 ジンの左胸から大量の血が噴き出る。


「ッ…!」

「心臓やりィ!」

「ゲホッ」


 ジンが吐血し、その場に倒れる。


「心臓は貫いた、額も穴が開いてる、流石に死んだろ」


 ダイアが銃口に息を吹きかける。

 だが…


「グググ…」


 ジンがゆっくりと立ち上がる。

 まるで一切効いていないかのように…

 そして、ジンが先程吐いた血も青く燃え上がる。


「なんだよ、心臓も脳も潰してるはずなのに生きてるって言うのかァ?」


 ダイアはそう言うと、ジンに向かって再び撃つ。


「ッ…」


 ダイアは連続で撃ち続け、ジンの身体に何個も穴を開ける。


「……ア…ウ…」


 何個もできた身体の穴から噴き出る血…

 ジンは再び倒れる。


「流石に死んだか?」


 ダイアが倒れるジンを見ると、ジンは再び起き上がる。

 そして身体の穴と言う穴から…青い炎が宿る。


「っ…マジかよ…」

「ッ…!」


 ジンはすぐさまダイアの目の前にとびかかる。


「は…早…」


 ジンはダイアの顔を右手で掴む。


「っ!?」

「コ…ロス…」


 ジンの右手から一気に青い炎が噴き出る。


「ぎゃああああああ!」


 ダイアの身体が燃え上がり、その場に倒れる。


「………未来………」


 ジンは辺りを見渡す。


「…!」


 ジンは何かを見つける。


「…ジン…?」


 ジンが見つめた先にはアヤメが立っていた。


「無事…ではなさそうだね」

「…未来…ウバ…ウ………」

「…え?」


 アヤメがそう言うと、ジンはアヤメの目の前にとびかかる。


「っ…!」


 アヤメは横に転がってかわす。


「ちょっとジン…!私だよ…アヤメだよ…?あなたの仲間の――」

「…エルノ…未来…ウバウ…ゼンイン…ケス…」

「ジン…?何か…おかしいよ…?」


 アヤメの持っている剣が震える。


「っ…」


 アヤメは倒れているダイアの焼死体を見つける。

 そして辺り一面に広がる青い炎を見て、驚愕。そして判断した。


「…もしや、ジンがその人…殺したの…?」

「…未来…ウバウ…ガン…ホウシャセン…」

「やっぱり…か」


 アヤメは剣を下ろす。

 そして、ダイアの焼死体に近付く。


「…燃えてて分かりづらいけどこの長い髪と細身な感じ…シゼル教団…殺番(サツノツガイ)のダイアって奴だ。ジンがやったのも納得ができる…だったら――」


 アヤメが言葉を続けようとした瞬間…

 ジンはアヤメに即座に近付き、蹴りを入れる。


「っ…!?」


 アヤメは腹を蹴られ、吹っ飛ぶ。


「がはっ………」

「…未来…ホウシャセン………」


 ジンが倒れるアヤメに近付く。

 アヤメの頭からは血が出ていた。


「ちょっ…ジン…なんで…攻撃を………」

「エル…ノタメ…オマエ………」

「そうだ…そのエル…エルって子は何処に行ったの…!?」

「ッ…!」


 アヤメの言葉を聞き、ジンは驚いた表情をする。


「ソウダ…エル…何処…行った…?」


 ジンが辺りを見渡す。

 ジンの身体を覆っていた魔力の気迫が消える。

 そしてジンを纏う青い炎も段々と消えていく。

 まるでジンが正気に戻ったかのように…


「…アヤメ?」

「ジン…?」

「っ…!その傷…どうした…!?」


 ジンがアヤメに近付く。

 アヤメのボロボロの身体にジンが不安な顔を見せる。


「っ…ジン…もしかして…さっきまでの記憶が…ないの…?」

「さっきまで…?いや…そんな事よりお前…その怪我…」

「…ジンが…いや、私がジンを庇おうとして怪我しただけ…名誉の傷だよ」


 アヤメが嘘をつく。


「馬鹿…女が男を庇うんじゃ…ねえよ…」

「………」


 ジンの身体中から零れていた血は、止血していた。

 アヤメはそれを見て疑問を抱く。


「ジン…その怪我…」

「エルは何処だ…!?」

「っ………」


 アヤメの言葉を遮るジン。

 ジンが辺りを見渡す。


「エルは一体…何処に…」

「…ジン」


 アヤメがジンの身体中の傷を見る。

 その傷は瀕死以上の重傷。生きている事すら奇跡なほどに。


「こんなに銃弾を撃ち込まれてどうして生きてる…のかは今は問わないでおこ…」


 アヤメが小声で喋る。











 ――森の中走り続けるジンとアヤメ。


「はぁ…はぁ…」


 ジンが息を切らす。


「っ…クソッ………息が…続かねえ…」

「…そんな怪我じゃ…無理もないよ…少し休もうよ…」

「休めるかよ…こんな時でも…エルは今頃連れ去られて…酷い事をされているかもしれない…だから…!」

「ジン――」


 アヤメがジンの必死な顔を黙って見るしかできなかった。

 そして…アヤメは今の状況を理解していた。


「…もしもさ、ルキやカイ…サツが死んだって言ったら…どうする…?」

「…は?」


 ジンが足を止める。


「は…あいつらも…死んだ…?冗談だよなアヤメ?俺の足を止めるための冗談だよな?」

「………」

「あぁ…そうか…アヤメ…冗談言って俺を少しでも笑わせようとしてくれんだな…?」

「………」

「ボロスがルキを殺したとか言ってたが…そんな訳ないよな…?あれはただ手下を刺しただけのナイフに過ぎないよな…?」

「………」

「ははっ…大丈夫だ…ルキは案外しぶとくて…カイはスナイパーだから攻撃を受けるなんて早々ない…サツも頭がきれる奴だ…戦闘に関しては誰よりも…」

「………」


 ジンがアヤメの方を睨む。

 だんまりとしたアヤメに、ジンは問う。


「…なんか言えよ、アヤメ」

「………っ」


 アヤメが涙を零す。


「…なんで、泣くんだよ…アヤメ…」

「………ルキは………負傷したカイを運ぶために一人でボロスと戦って………あの後連絡が………ない………」

「っ」

「サツとカイは…さっきのグレネードの爆発…あったの…分かる………?」

「グレネード…?」


 アヤメが紫色の煙の方向へ指を指す。


「あのグレネードには…ルキ特製の物で…毒煙が仕込まれていてカイに渡されていた…そして…その毒煙は少量の煙を吸っても致死率100%で即死…」

「即死…」

「そして…あの爆発があった場所は…カイとサツが丁度隠れていた位置…」

「っ…!?」

「だから…もしかしたら………」

「そんな…サツ…カイ………!」


 ジンがグレネードの爆発があった方角へ戻ろうとする。


「ダメ…!」


 アヤメがジンの腕を掴む。


「離せアヤメ!早くあいつらを取り戻さないと………」

「まだ毒煙が充満している…そこに行ったらジンも死ぬ…煙を防ぐためのガスマスクもない…」

「っ………」

「カイとサツは…もう死んだんだよ………」

「っ…そん…な………」


 ジンが地面に膝を付いて絶望する。


「なぁ…こんな事って…有り得るの…か………?」

「………」

「俺達は…なんのために殺し屋をやってたんだ…?金の為か…?いいや…それだけじゃない…俺達は五人で殺し屋だ…チームでやってる…俺達の事情を…殺し屋と言う場所で埋める為に…そして…正常に生きる者の未来を守る為に…殺し屋をやってる…未来を守る殺し屋って………でも…ルキにカイ…サツまでも死んだら………それももう…意味がないじゃないか………あいつらの未来が奪われて…どうするんだよ…」

「っ………」

「あいつらの…未来を………壊した………教団を………」


 ジンが拳を握り締める。


「シゼル教団の連中を…全員燃やす」

「っ…!?」

「全員燃やして粛清する。そして…捕らわれたエルを回収する」

「粛清って…そんなの…復讐と同じじゃない…!!」

「…アヤメ」


 ジンがアヤメに銃を向ける。


「っ…何をして…」

「お前も…散々人間に言われてきただろう?」

「っ…確かに…私だって…自分がおかしくて過去に色々言われてきた…孤立してきた…けれど…ジンやルキ…カイやサツみたいな人達に出会って…殺し屋を始めて…正しい殺しをして色んな人の未来を助けて…人間もいいなって思った…」

「………」

「だから…こんな復讐みたいな事…したくない…私は…皆と一緒に復讐じゃなくて…癌細胞だけを潰す放射線になるって…未来を守るって形で殺し屋をしたくて…それで…!!」

「アヤメ」


 ジンがアヤメの耳元に銃を撃つ。

 アヤメの耳に掠らないように撃っていた。


「っ…」

「俺がこれからやる事は…正しい殺しだ」

「ジン………」

「エルの未来を助ける…そのためにシゼル教団の人間全員を殺す、それだけだ。全部………俺の炎で燃やしに行く」

「っ…」


 アヤメは少し迷った後、頷いた。

 ジンは通信機を見ながら走り出す。


「…ジン…」


 アヤメがジンの後ろについていく。


「そんなの………正しくないよ………」








 ――シゼル教団のアジト…

 各地にある教団のアジトの一つに着くジン。


 ジンが銃弾で扉を壊す。


「…燃やす」

「なんだ貴様は…!?」


 シゼル教団の手下がそう言った瞬間だった。

 ジンが炎の魔力を最大出力で放つ。


「ぐああああああ!!!」

「すぅ…」


 苦しむ教団の下っ端…

 ジンが息を吸い込む。


 シゼル教団のアジトはその後数分にしてジンの魔力によって焼き尽くされた………


「…ここは違うか。次…行くぞ」

「っ…」


 アヤメがジンの後ろから息を詰まらせる。


「どうしたアヤメ、早く行くぞ」

「…分かった」


 アヤメはただ…ジンに従うしかなかった。

 彼を止める事は、彼女にはできなかった。





 ――その後もジンはシゼル教団の持つアジトを何度も焼き尽くし………

 遂に目の前にはシゼル教団最後のアジトが立っていた。


「ここが最後だ…」

「ジン…もう…辞めて………」


 アヤメがジンの服の裾を掴む。


「なんだよ、アヤメ。ここにエルがいるのは確定だ」

「エルのために…こんな無駄な殺しをして………エルは本当に喜ぶの…?」

「………」

「私達がしてきた…正しい殺しって…本当にこれなの…?」

「………」

「エルのためにも…こんな事辞めるべきだよ………もう…辞めて………」

「アヤメ」


 ジンがアヤメの手を左手で掴む。


「これは正しい殺しだ」


 ジンがそう言うと、炎の魔力を右腕に込める。


「っ!?」


 アヤメがジンから距離を取る。


「………ごめん…ルキ…カイ…サツ…――」


 アヤメが上を向く。

 そして決断をした。

 彼を諦める事に…した。


「ジンを…止めれなかった」

「アヤメ、俺は…エルを救うために殺す。エルは砂漠の街に行きたがっていた。奴の夢を叶えるための…正しい殺しだ」

「…そう言うなら…仕方ない…」


 アヤメはそう言うと、ジンの前から遠ざかろうとする。


「…ジン…私さ…君の事…好きだったんだよ………」


 アヤメが涙を零す。

 アヤメはジンが好きだった。

 殺し屋仲間としてのジンを…いつの間にか恋愛感情を抱くくらいには好きになってしまっていた。

 だがそれももう、意味がなかった。

 ジンはもう…アヤメに振り向いてくれない。


「…さよなら」


 アヤメがゆっくりと歩き出す。


「………ふん」


 ジンがため息を吐く。


「俺一人でも…エルを助ける。あいつから受けた依頼だ…絶対にサキュアに連れて行く」


 ジンが炎の魔力を構える。


「エル………!!」





 その後もジンは燃やし続けた――

 殺し続けた――

 灰燼にしてきた――

 殺めた――

 殺害した――

 キルした――

 それが正しい殺しだと自分に言い聞かせた。




 ――シゼル教団は…間もなく全て滅んだ。

 ジンが全てのアジト全てを焼き払ったからだ。

 何個も配置されていたアジトを焼き払い…全部消えたのだった。

 跡形もなく、消し去ったはずだ。

 そして彼等が捕まえたエルに辿り着けるはずだった。




 だが………




「はぁ…はぁ…はぁ………」


 ジンが返り血を浴びながら、炎の中を歩く。


「エル………何処だ………」


 ジンがゆっくりと歩く。


「エル………何処に…」


 ジンが落ちている何かを見つける。


「っ…!」


 ジンが多く切られて捨てられた髪の毛を拾う。

 そしてその髪の毛には見覚えがあった。


 その髪の毛は、エルの物だった。


「これ………エルの………!!」


 ジンが髪の毛に手を触れてから数秒経つと…

 髪の毛は燃え尽きてしまった。


「っ…エル………この感じ…まさか…髪の毛から魔力を採取されたんじゃ………」


 ジンが燃え尽きた髪を握る。


「っ…!」


 ジンが辺りを見渡す。

 人の気配はない。魔力の気配はない。

 いるのはジンただ一人。そして周りには…地獄の業火。


 そして当然…エルはいない。


「どうして…どうして何処にもエルがいない…!?エルは………まさか………」


「もう………殺され…た………?」


 ジンがそう言うと…ジンの喉元に違和感が走る。


「っ…!?」


 ジンが吐き気を催す。

 ジンが口を押さえる。


「な…ぜ…だ………なんでエルは殺されな………」


 ジンが嘔吐する。


「がはっ…ゲホッ…おえっ………」


 吐瀉物が地面に落ちる。

 地獄の業火がその吐瀉物から蒸気を出す。

 それだけの高温…恨みの炎だった。


「エル…エル………エル……………!」


 ジンが吐き続ける。

 喉元が熱さと気持ち悪さでいっぱいだった。



「あ…あぁ………」


 ジンの涙が零れる。

 涙もまた、炎の中で一瞬にして蒸発し始める。



「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


 その日ジンは…自分の無力さに対して、人間への憎悪を抱いて、叫び続けた――


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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
も連載中!
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