ep-α8.死線
――今までジン達五人の殺し屋を子供の遊びだと考えていたボロス。
だがジンによって手下を大勢やられた。ジンはまさしく、ボロスに対抗できるほどの殺し屋のプロだった。そのジンをボロスは、『悪魔みたいな殺し屋』と称したのだった。
ボロスの周りには手下が倒れており、ジンとボロスが一対一で対面していた。
「…喋ってる暇なんてねえぞ」
ジンはそう言うと、ボロスに向かって銃を撃つ。
「いいや、暇はある」
ボロスはそう言いながらジンの銃弾をかわす。
「っ…!」
ジンはボロスに向かって撃った銃弾に違和感を持つ。
本来の軌道と、少しズレた場所に銃弾が飛んでいた。
「弾の軌道が…おかしい…?」
「気付く頃には遅いぜ――」
ボロスはそう言うと、ジンの後ろに立っていた。
「っ…!」
「くたばれ」
ボロスはジンの背中を撃つ。
「がっ…!」
ジンは背中を撃たれる。
「っ…いつの間に後ろに…」
「見くびるのは辞めたよ、だから俺も本気でお前を殺そう」
「ぐっ…」
ジンが背中を押さえながら立ち上がる。
「…ふん」
ジンが再び閃光玉を投げる。
「またか…!」
ボロスは目を腕で塞ぐ。
閃光が辺りを照らす。
「殺す――」
ジンはそう言うと、ボロスに向かって銃を撃つ。
「…まぁそうするよな」
「っ…!?」
ジンは驚いた表情をする。
そして…
「当たらないんだよ、俺には」
ボロスの目の前にはジンが撃った銃弾が止まっていた。
ボロスは顔を反らし、銃弾をかわす。
「何故だ…何故当たらない…!?」
「俺の魔力だよ。さっき言っただろ、本気でお前を殺そうって。俺の魔力は魔力の範囲外からの攻撃の軌道を歪ませる事ができる。お前の銃弾は俺の魔力で停止…つまり無効化されるんだよ」
ボロスの目の前で止まっているように見えた銃弾、それはボロスが魔力によって軌道を歪ませていたのだった。
つまり、ボロスに銃弾は効かない。
「っ…!だったら――」
ジンがボロスに向かって走り出し、魔力で右腕から炎を生み出す。
「だったら近距離戦をしたがるよなぁ?」
ボロスはそう言うと、銃から刃を出す。
「っ…!」
「俺に勝てるなんざ、一億年早い」
ボロスは向かってくるジンを銃から出した刃で切り裂く。
「がっ…」
ジンは攻撃を受け、吹っ飛ぶ。
斬った場所から飛び散る血。
「あぁ…近距離の攻撃もこの武器であれば問題ない。全て…問題ねぇ」
ボロスはそう言うと、倒れたジンに向かって銃を撃つ。
「がはっ…」
ジンの腹に銃弾が命中し、ジンが吐血する。
「っ…クソッ…!」
「いい顔してんなぁ?他のガキ共と違って本物の殺し屋の顔って感じで、俺は好きだぜ」
「他の…ガキ…共…だと………?」
ジンが傷口を押さえる。
「暗殺のルキ…だっけか?」
「………!」
ルキの名前を出すボロス。
ジンに怒りの感情が芽生える。
「ルキに…何をした………!」
「殺した、でいいか?」
「っ………!!」
ジンの仲間…ルキはボロスとその手下により殺された。
その証拠に、ボロスがルキの血で染まったナイフを見せる。
「っ……………」
「あのメスガキが持ってたナイフだ。俺の手下を刺した罪で殺した、納得してくれるか?」
「てめぇ………!!」
「怒る姿も、かっこいいぜぇ???」
ボロスがジンに近付く。
傷口を押さえて動けないジンに蹴りを入れる。
「ぐっ………!!」
「お前達全員、あの女に関わった以上殺しの対象だ。万が一お前が生き残って何か俺達の事を吹き込まれても困るからなぁ」
ボロスがジンに銃を向けながら近付く。
「っ…エルに指一本触らせねぇ…絶対あいつの目的を果たしてやるって決めてんだ…それに………仲間を殺した罪は大きい…だから…!」
ボロスがジンの腹に銃を撃つ。
「がはっ…」
「だから、なんだよ?」
ボロスがジンの額に銃口を突き付ける。
「っ…」
「この引き金を引いたら、お前は一瞬であの世行きだ。脳を直接攻撃され…死亡する。お前の脳みそはグチャグチャに飛び散る。脳にたまった悍ましい血の臭いが辺りを充満させる――」
「っ…クソッ…てめぇ…」
ジンが右手でボロスの銃を持つ。
だが身体中が痛むせいで手が震えていた。
「く…そ…動け…俺の腕…」
「無様だなぁ。子供って感じで、それはそれでいいんだがなぁ――」
ボロスが銃を強く突き付ける。
ジンは必死で抵抗しようとするが、動けなかった。
一歩トリガーを引けば、ジンは即死する。
撃たれれば必ず死ぬという状態に、ジンは全く動けなかった。
「もう撃っていいか?」
「っ…!」
ジンがボロスを睨む。
「いい顔だ。じゃあ、撃っていいって事で――」
銃声が鳴る。
ボロスの顔に、血が飛ぶ。
「がはっ………」
ジンの額から飛び散る血。
辺りにまき散らす赤黒い血。
「さようならだ――」
ジンはその場に仰向けで倒れる。
ジンの脳天から零れる、大量の血。
そして脳天を撃ち抜かれた事による、確実な死。
「死んだな」
ボロスはそう言うと、銃口に息を吹き込む。
銃を撃った後の独特な焦げた臭いが、彼の鼻に入る。
「いい臭いだ。このガキも殺した事だし、さっさとあの女を追いに行くか…」
ボロスはそう言うと、ジンを一瞬見てからエルの走った方向へ向かう。
「計画達成まで…後少しだ…!!」
数分が経った。
エルはジンの言う通り逃げ続けていた。
ジンがエルを庇い…脳天を撃ち抜かれて死んでしまった事も知らずに。
エルはひたすら、走り続けた。
「はぁ…はぁ…」
エルが森の中息を切らしながらも走り続ける。
「…ジン…無事でいて…お願い…」
エルは祈りながらも走り続ける。
その瞬間、銃声が鳴る。
「っ………!!銃の…お…と………――」
振り向くエル。
その時だった、エルの身体に一気に重みがかかったかのような感覚が来た。
「あ………が………」
エルの左胸から血が出る。
先の銃声で、エルの左胸を銃弾が貫いていた。
「っ……嘘………」
エルが左胸を押さえる。エルの左胸から大量に血が出る。
エルの血が零れ一瞬にして血だまりを作る…
「こ…何…これ…私の…血……」
エルの意識が朦朧とし始める。
「うぐっ…ゲホッ………」
エルが吐血し、その場に倒れる。
「やっぱり、待ち伏せして正解だったぜェ」
倒れているエルの前に銃を持つ細身の男が現れる。
紫色の長い髪、両目が見えないくらいに長い前髪。
彼もまたシゼル教団、殺番のボロスの仲間だった。
「今まで貧乏な暮らしをしてきたが、これで俺も大富豪だァ。ケケケッ!」
男が手を挙げる。
そして、男の手下が現れる。
「お前らァ、こいつをアジトに持ち帰れ。帰ってバラすぞぉ?」
「ダイアさん、了解っす!」
ダイアと呼ばれた男の手下がそう言うと、倒れるエルの腕を触り始める。
「っ…離し…て…」
「ダイアさん、こいつ意識ありますぜ?」
「あぁ?」
ダイアがエルの顔を見る。
「こんなんこうしとけばいいだろォ!?」
ダイアはそう言うと、銃でエルの頭を殴る。
「がっ…!」
エルは殴られた衝撃で気絶してしまう。
「悪魔族はどうせ殺すんだしさァ…ちょっと傷が付くくらいどうって事ねェよなァ?早く連れてけ、役立たず共」
「りょ…了解です…!」
「確実に悪魔族を捕らえる――」
ダイアが言葉を続けようとすると、突如北の方角から巨大な爆発の音がする。
そしてダイアが見た方向には、異様な光景が広がっていた。
「はァ?なんだァ?」
「ダイアさん…!」
手下が指を指した方向には赤い炎と黒い煙が広がっていた。
「炎?山火事でも起こったかァ?」
「ダイアさん…しかもこの炎の気配…何か魔力の様な物が…」
「…なるほどなァ。早く行けお前らァ。ここは危険だァ」
ダイアはそう言うと、炎の方に銃を向ける。
「了解です…!」
手下はそう言うと、二人で気絶したエルを運び始める。
「…!」
炎の中から額から血を流したジンが歩いて現れた。
そしてそのジンは、両腕に青い炎を宿していた。
額の穴から、血の代わりに青い炎を零していた。まるで血液が青い炎に変わってしまったかのように。
「なんだァ、アイツ?」
ダイアはジンに向けて銃を向ける。
「…異質な魔力の気配…まるで、人間とかけ離れたような魔力…それに………」
ジンはダイアの銃に一切怯まず、青い炎を纏いながら近付く。
ジンが歩いた場所の草は、一気に燃えて黒く焦げる。
「あっちィ………」
ダイアが汗をかく。
青い炎で高温になったジンの身体が近付いている。
「………こんなんで怯む俺じゃねェ」
ダイアはそう言うと、魔力で自身に魔力の衣を宿す。
「それにどの道全員殺すって計画だしなァ…!」
――森の中で巨大な爆発が広がる。
「あの爆発…!」
ジンの炎の魔力の影響で爆発が起こっていた。
その爆発を遠くから見るアヤメとサツとカイ。
森が少しずつ、燃えていく。
「あの爆発は…シゼル教団の仕業…?」
「…いや、あの魔力はジン…かも」
「ジンが?でも彼にあんな魔力…僕には到底理解が…」
「早く行かないと…!」
アヤメがそう言うと、二つの剣を両手に持つ。
アヤメが走る構えをする。
「あっ…待ってください!」
「待て、俺も…行く…」
「カイはダメ。撃たれてるんだし…まだ万全じゃないでしょ」
「でも…!」
「………ごめん」
アヤメはそう言うと…業火の森の中へ姿を消す。
「アヤメ…!くっ…」
サツが拳を握る。
そして…遠方から声がする。
「そこか!」
声と同時に銃声が鳴る。
「っ…!サツ、追っ手が来てる…!俺が引き付けるから今の内に…」
カイはスナイパーライフルを構える。
そして…応答のしないサツの方を見る。
「…サツ?」
サツは左胸から血を流していた。
先の銃声による銃弾…それがサツの身体を貫いていた。
「っ…!?」
「あ…ぐ…嘘…だ……」
サツが左胸を押さえる。
胸を押さえている右手は血に染まっていた…
「っ…!そん…な…左胸に穴が…まさか…!?」
「ゲホッ…」
サツが吐血し、その場に倒れる。
「サツッ!!おい…しっかりしろ…!サツ…!!」
カイがサツを揺するが、意識を既に失っていた。
心臓を貫き…死んだ。
「っ…クソッ…なんでだよ…なんでなんだよ…!!」
カイはそう言うと、涙を流しながら声のした方向へスナイパーライフルを乱射する。
「俺達が…俺達が…何をしたって言うんだよ…!!」
カイの銃弾が声の主に当たる。
「がっ…!」
声の主の正体はボロスの手下だった。
ボロスの手下は撃たれた右胸を押さえる。
「奴の手下…!」
「っ…全員殺せという命令だ…お前も殺す…!」
手下はカイに向かって銃を撃つ。
「っ…物騒な…!」
カイはすぐに立ち上がり、銃弾を避ける。
「っ…ぐっ…」
カイが腹を押さえる。
ボロスに撃たれた際の傷はまだ治り切っていなかった。
「お前達!来い!ガキ共がここに隠れていたぞ!!」
「っ…!」
手下が更に手下を呼び寄せる。
手下はカイの周りを囲う。
もう絶体絶命だと思ったカイだった。
「………はは、もう…死んでいいや………」
そして…カイはポケットからグレネードのような物を取り出す。
「こんなの使いたくなかったけど…」
カイは左手にグレネードを持つ。
「…は?」
「ただのグレネードじゃねえ。ルキ特製の…とんでもねえ魔力の産物だ」
カイはグレネードのピンを引っ張り、軽く投げる。
「俺達…皆一緒に仲良く死のう…」
グレネードが爆発し、辺り周辺が濃い紫色の煙で覆われる。
「っ…!なんだこのグレネード…は…がっ…ゲホッ…」
ボロスの手下が煙を吸ってしまう。
ボロスの手下が吐血する。
「な…これ…毒煙…が……」
ボロスの手下がその場に倒れる。
グレネードから出た煙の正体は、猛毒だった。
「……ジン…アヤメ…頼ん…だ…ゲホッ………」
カイも毒煙を吸い、吐血する。
カイはゆっくりと目を閉じ、意識を失う。
カイとサツの心臓は…若くして動きを鈍くしていく。
そして完全に………停止してしまった――




