ep-α5.監視
――一方…ジンを遠くから見守ってるアヤメとカイは…
「…あいつら、あの街入ってたよな?」
「うん。ルキは…まだ合流できない?」
「後ちょっとで着くとは思うが…少し遅いな」
「まさか…午前中って言っておいて昼まで伸びたパターン?」
「依頼でヘマとか…はルキはあり得ないか」
「通信機繋いでみるね」
アヤメがルキに通信を繋ぐ。
だが、ルキとの通信は繋がらなかった。
「…繋がらないや。なんで?」
「俺の方も繋がらねえな」
「…ルキが無事な事を祈って、今は私達で動こう」
「おう。つってもこの街でやること、何かあるか?」
「うーん、私はあの街のご飯も食べてみたい」
「アヤメって飯にしか目がないのか?」
「…お腹すいたし、食べたい」
「仕方ねえな、サツにも連絡取って飯とするか」
「やった。じゃあ、サツに連絡するね」
アヤメが通信機を再び取り出す。
「よ、お疲れさん」
合流する三人。
屋台の前でサツに手を振るカイ。
「ずっと魔力使ってて久々に疲れましたよ。ただ、こっちは異常なしです。変な魔力の動きも、ジン達を付け狙っている様子もないです」
「そっか、良かったぜ。ひとまずは魔力解いていい」
三人は屋台の椅子に座る。
「…ルキは?」
「ルキはまだ来てない。一応ルキには留守電でこの街に来るように言ってあるよ」
「そうですか」
アヤメが出された唐揚げを食べ始める。
「美味しい」
「早いな相変わらず」
「ここもたまに来たいくらいには美味しい。でもここは鉄道が通らないから、あんまりすぐには行けないか…」
「そうだな。思えばここまで歩いてるのなかなかにやばいな…」
カイも唐揚げを食べ始める。
「僕も食べますか」
「…そういやさ、サツ」
「ん、どうかしましたか?」
「…ジンが護衛してるって言う少女、アレどう思う?」
「あぁ…」
エルの事、カイは不思議に思っていた。
「魔力を普段あまり使わない俺ですら得体の知れない魔力が感知できるほどだ。サツの魔力が感知しやすい魔力だと…その…どう思うのかなって」
「…うーん、難しいですが、少し人間離れしているようにも見えるんですよ」
「人間離れ?」
カイが首を傾げる。
「そうです。アレは人間の魔力にしては…ちょっと異質すぎるというか」
「あぁ…そう言う事?」
「もしかしたら、本当に人間じゃなかったり…とか…」
「人間…じゃない………か」
サツの言葉に、少し恐怖するカイ。
「…そんな物騒な魔力があるなら俺にも分けてもらいたいくらいだ。依頼達成できたらちょっとは貰えたりするだろうか」
「…そんな簡単な物ですかねぇ。ただ、万が一あの子が悪い輩に殺されでもしたら大変なのもまた事実です」
「…そうだな、あの魔力を悪い使われ方したら最悪だ」
「下手したら最高のご飯が食べられなくなっちゃうしね」
「…お前はいつも天然だな、アヤメ」
「…真面目に言えば、世界への問題です。中でも世界の改変を狙う『ネオカオス』…そういう組織に行き渡ったら最後、世界は終わります」
「ネオカオス…最近よく聞く名だね」
ネオカオスの名…この頃は殺し屋の皆にも名前が行き渡っていた。
「私も何度か鉢合わせたことがある。弱かったから何人かは殺したけど」
アヤメは唐揚げにフォークを強めに刺す。
「…強く、ならなきゃ」
アヤメがそう言うと、サツが頷く。
話が終わり、三人がゆっくり食べ始めようとしたその時だった。
アヤメの隣に背の高い男が現れ、椅子に座る。
「大将、唐揚げひとつ」
「あいよ」
「…!」
サツは何かを察知した。
「アヤメ、カイ、ちょっと」
「ん?」
「もぐもぐ…何?」
サツが小声で話し始める。
「…アヤメの隣の人…魔力を感じます」
「え?魔力は人間なら全員持ってるんじゃないの?」
「しっ…声が大きい…そうですけど…隣の人の魔力が桁違いに感じられました」
サツの言う通り、声を小さくするアヤメ。
「…と、言うと?」
「ざっと…ジンとルキを合わせたくらいの…気配です」
「…なるほど」
「?」
アヤメが男の方を見る。
「…もしかしたら、追っ手の…」
「おじさん?」
アヤメが男に話しかける。
「…あ?」
「えっ」
「ちょっ…」
「えっと…おじさんも唐揚げ好きなの?」
「おじっ…」
「ちょっとアヤメ…!失礼ですよ!」
サツがアヤメの服を引っ張る。
「だって、この人髭生やしてるし背は高いしおじさんでしょ?それにハゲてるし」
「ハゲっ…」
「おい」
「何言ってるんですか!すぐ謝ってください!」
サツが慌てる。
アヤメの言う通り、男の背は高い。そしてツルツルだ。
「…いや、いい。髭は伸ばしてるし背は遺伝だ。ハゲも…遺伝だ」
「そうなんだ」
「唐揚げは好きだよ、嬢ちゃん」
「そっか」
「俺に何か用かい?」
「えっと…」
アヤメが言葉を考え始める。
「おじさんは旅人?」
「ん?まぁ一応旅人だな。ただここらへんは初めて来るからな、丁度いいところに屋台があって嬉しいぜ」
「そうなんだ」
「アヤメ…あんま知らない人とは…」
サツがそう言うと、アヤメが二人だけに見えるように右手でピースをする。
「…あ」
何かに気付くカイ。
カイはサツの口を手でふさぐ。
「ちょっとカイ?手邪魔です」
「いいから。今はこのおじさんの話を聞くぞ」
「おじさんじゃねえ、俺の名前は………そうだな、今はボロだ。旅人のボロとして今は各地を巡っている」
「そっか、宜しくねボロさん」
「あぁ」
ボロがそう言うと、アヤメはボロの背中を触る。
「背中でっか」
「…ん?」
「…いや、これだけ背中でかいと、娘さんとか持ち上げるのも楽しそうだなって」
「あぁ、そうだな」
ボロが少し微笑む。
「君達がここに来た理由は何だ?君達も旅人か?」
「…俺達も旅人です。今は三人で行動してます」
カイが咄嗟に嘘を吐く。
「そうかそうか、ここまでご苦労さん。ここまで来たって事は…遥か南の砂漠の街にでも行くのかい?」
「あ…そうです」
「そうか。あそこの街は魔力も殆ど満ちてないから訪れる者は少ないんだが…あそこに行くって事は相当の理由があるのかい?」
「えっと…」
「私が砂漠の街のご飯が食べたくてこの二人を連れてってるだけです」
アヤメが嘘を吐く。
「なるほどな」
「食べたらそのまま帰ろうかなとは思ってる」
「そうか。まあ気をつけてな。君達もそろそろ大人になる頃だろうしこの時期は魔力も豊富だろうけど…くれぐれも気を付けてな」
「うん、ありがとうおじさん」
アヤメがそう言うと、ボロはその場を去る。
サツがため息を吐きながらアヤメを見る。
「…はぁ…アヤメ、ビックリさせないでください」
「大丈夫、魔力がいっぱいある人は大体怪しいってサツの教えだから」
「いや確かに昔そう言いましたけど…」
「それに…アレの方も済んでるから」
「アレ?」
「サツ、忘れたのか?アヤメの特技を」
「アヤメの…あっ…」
サツはアヤメが先程していたピースサインに気付く。
「盗聴器、付けてきた。背中触ってる隙に」
「なるほど、やりますね」
アヤメがボロの背中に触れたあの瞬間、盗聴器を仕掛けていた。
「これで万が一追っ手とかの証拠を聞き取れれば、アレと再び出会った時に殺すって行動にすぐ移せる」
「…まぁ、あの人がただ魔力持ってる人ってだけだと、何も成果は得られないけどな…」
「まぁそれは…仕方ない」
「…よし、飯も食ったところだし引き続きジンの見守り、しますか」
「うん。たぶんまだ宿で寝てると思うし、暫くは休憩だね」
「そうだな。ひとまずここを移動しよう」
三人は屋台を出て移動をする。
ジンの宿の近くに潜む三人。
身を潜めてから数分が経った。
「あいつらまだ寝てんの?」
「まぁ、別におかしな話ではないと思う。サツ、ジンとあの少女の魔力、確認できる?」
「了解」
サツが目を閉じ、ジンとエルの魔力を感知する。
ジンとエルの魔力から察せて、睡眠状態だった。
「確認できました。あの魔力の動き方的に…寝てますね」
「やっぱり」
アヤメがため息をつく。
「…盗聴器の様子でも探ろっか」
アヤメがイヤホンを耳に付ける。
「…何か聞こえるかなー」
アヤメがそう言うと、イヤホンからボロの声が聞こえた。
『そっちは順調なんだな。あぁ。うん。おう。』
「…ん?誰かと連絡とってる?」
『あぁ、早く来てくれよ。』
「…ちょっと怪しい。けど…重要な言葉がないのは惜しいな…」
怪しい言葉が飛び交うが、断定はできない。
アヤメがイヤホンを外す。
「アヤメ?どうした?」
「…いや、おじさんの声をずっと聞くのは耳が腐るから、外しただけ」
「録音機能とかないのか?」
「一応あるけど、こういうのは生で聞いとかないとダメじゃん?」
「まぁそうだが」
「でも生で聞くにはあのおじさんボイスをずっと聞かないといけない。でもそれは嫌だ、私の耳が腐る。サツかカイ、イヤホンいる?」
「…じゃあ僕が代わりに」
サツがアヤメからイヤホンを貰い、耳に付ける。
「…うーん。今はなんか歩いてる音は聞こえますが…それ以外は何も…」
「ん、そっか」
その時だった。
アヤメの通信機が鳴る。
「あ」
すぐさまに出るアヤメ。
連絡をよこしたのは、ルキだった。
「あ、もしもし?ルキ?」
『アヤメ!今何処…!?』
ルキの焦っているかのような声が聞こえる。
「ど、どうしたのルキ?」
『大変…あの少女は………』
ルキが途中で言葉を止める。
「な…何………?」
『…いいや、今は言えない。兎に角集合!四人で集まらないと…!』
「………分かった、今どこ?」
『あなたこそ今ど…あ………!』
ルキが気付いたかのように通信を切る。
そして、アヤメ達の遠くからルキを見つける。
「ルキ…!」
「アヤメ!」
アヤメがそう言うと、宿からジンとエルが出る。
「あ…ジンと少女が宿から出た」
「え…ちょ…マジか。お前等隠れろ…!」
「ルキ、君もだ…!」
「え、ちょ…」
サツがルキの腕を掴み、四人は物陰に隠れる。
ジンとエルは再び、目的地に向けて歩き始めていた。
「…ルキ、遅かったね。仕事長引いたの?」
「………仕事が長引いたのもあるけど…何よりヤバい事態がひとつあって」
「ヤバい事態?」
「セイサツタウンに、お尋ね者が貼られている場所があるでしょ…?」
「あるね」
「…そこに、例の少女が貼られてた」
「…は?」
ルキの言葉に三人は驚愕した。
エルがお尋ね者として貼られている、そういう事だった。
「…えっと…つまり…?」
「…ジンの守っている子が今、賞金首として指名手配されてる」
「ええっ…!?」
「…そんな…じゃあ…」
「…何れはこの街にも貼られるはず…ほら…言ってたら…すぐに…」
ルキが遠くに指を指す。
そこにはエルの顔が写されている紙が貼ってあり、多額の賞金がかけられていた。
「皆さん、新たなお尋ね者の情報だ」
紙の近くにはボロが立っていた。
そして、ボロが銃を持って立っている。
「っ…!あの男…」
「さっきの屋台の…!」
そしてボロは………衝撃的な言葉を零す。
「――この咎人の女は、悪魔族だ」




