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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔
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ep-α4.迫る恐怖

 ――朝、ジンはエルとの連絡越しに銃声を聞いた。

 銃声がしたという事は…エルに目掛けて撃たれた可能性が高いと言う事。

 急がなければ………危ない。




 ジンはエルと初めて会った森へすぐさま向かった。

 まだ早朝で日が登り切っておらず、森は少し薄暗かった。

 ジンは森の中を走り続ける。


「はぁ…はぁ…」


 息を切らしながら走る。


「…無事でいてくれ…」




 何分か走り、ジンはエルと初めて会った場所に着く。

 だが誰もいない。


「………いない。銃弾の跡は――」


 ジンは辺りを見渡す。

 特に変化のない、景色。

 木に触れて、異変がないか確認するジン。


「…木に銃弾が刺さったりとか…はない…か――」

「やっほ」

「!?」


 ジンの背後から現れる、小悪魔のような少女。

 ジンは驚き尻餅をつく。少女は笑顔だった。


「おっと…驚き過ぎじゃない?」

「お前…無事…なのか?」

「大丈夫。早く起きるのは慣れてるし」

「そうじゃなくて…!」


 ジンが大きな声を出す。

 そんな事よりもあの時の銃声はなんだったのか、ジンはそれを知りたかった。


「銃声…さっき聞こえたが…アレは一体…」

「あぁ…ごめん、ビックリさせちゃったかな」


 エルがそう言うと、エルは何処からともなく銃を取り出す。


「一応、持ってたんだ。これ撃ってた」

「…は?」

「これの音が通信で入っちゃったみたい、ごめんね」

「そんな物何処に…というかお前…天然にも程があるだろ…」

「天然?何が?」


 エルが首を傾げる。

 天然な少女にジンはため息を吐く。


「…まぁいい。お前が無事ならそれでいい」

「ん」


 エルはジンの腕を掴む。


「それで、もう一緒に行ってくれるの?」

「本当はもう少し寝ていたかったが、お前と会っちゃもう向かうしかないだろ」

「そっか、ありがとう。長い旅になるだろうけど、宜しくね」


 エルが微笑む。ジンはエルの笑顔を見て、そっぽを向く。

 そういえば…ジンはほぼ手ぶらだ。持っているのは精々普段使っている銃だけ。


「あ…そうだ…準備…お前のせい…いや、お前が襲われかけたせいで準備があまりできてなかったんだった…」

「あ…それはごめんね」

「いや、いい。携帯食料含めて忘れてきてしまったが、食料なら別に途中で確保する事だってできるはずだ」

「他に大事な忘れ物はない?」

「ない」

「一回引き返さなくていい?」

「いい」

「…昨日は割と流れで依頼しちゃったけど、本当に長くなるけど、いいの?」

「…いい」

「お仲間さんとの連絡は?」

「一応ちゃんと言ってきた」


 エルの質問とジンの了承の繰り返し。


「仲間に後で連絡取っていいか?」

「いいよ。じゃあ約束通り、魔力を少しあげるね」


 エルがそう言うと………

 ジンの唇に自身の唇を当てる。


「…!?」

「これでどう?」

「これでどう…って、お前…自分が今したこと…分かってんのか…!?」

「魔力の譲渡だけど」

「そうだけど、そうじゃねえ…こんな平然とできる事じゃないだろ…」

「…別に、誰にでもする訳じゃないし」


 エルが少し顔を赤くする。


「は…はぁ…?」

「さ、行こっか」

「…お、おう」


 ジンとエルは森の中を歩き出す。






「わぁ、ここの花綺麗だよ!」

「道草を食うな」

「道草じゃないし、花だし。というか食べてないし!」

「そういう意味じゃねえ」

「ねぇ、あっちの川、何か泳いでるかも!なんか魔力の反応があるよ!」

「騒がしい、魔力の反応なんてあるかよ」

「あるって!ほら、見て!」

「なんだよ」


 少女の天然な姿にジンが呆れた顔を見せる。

 エルが見つけた魔力の反応とは、川の水だった。

 ジンは川の水を手で少し掬う。

 川の水には、ほんの少しだが魔力が宿っていた。


「ね?感じるでしょ?」

「多少は」


 ジンが水を掬って漸く確認できた魔力。エルは掬わなくてもこの魔力の反応が分かったのだ。


「お前…この微量な魔力の気配にすら気付けるのか」

「昔からずっと、お父さんとおじいちゃんの修行を受けていたから」

「修行…凄い環境下で育ったんだな。だからお前は魔力の気配も分かるくらい、洗練されているんだな」

「そうなのかな」

「まぁ、異常ではあるな」

「酷…」


 エルがジンに怒る。


「…冗談だ」

「知ってる」


 エルが笑うと、ジンが通信機を取り出す。


「そろそろあいつらも仕事の頃だし、連絡取っていいか?」

「いいよ。内容は聞かない方が良い?」

「いや、別にいい。静かにしてくれるなら別に」

「分かった」


 ジンは通信機を使い、アヤメに通信する。


『はいはいこちらアヤメ。こっちは大丈夫だよ』

「ん、他の奴等は?」

『ルキはまだ仕事だけど、カイはちゃんとあなたの見える範囲でスタンバってる。サツも今の所、魔力反応に異常は感じないみたい』

「そうか。なら良い」

『くれぐれも護衛だからって護衛の子とイチャイチャしないようにね』

「イチャイチャしてねえ」

『…それと、さっき君のいた森で死体が転がってたんだけど、アレ何…?』

「死体?」


 ジンが疑問に思う。

 死体が転がっていたという報告を受けたが、ジンは見ていない。


『何かに撃たれてた跡があったから、てっきりジンの仕業かなって思ったんだけど』

「いや、俺じゃないな。今日は撃ってない」

『そっか。まあアレは本当に謎って事で。じゃあ引き続き周りにいるね。くれぐれもイチャイチャしないように』

「だからイチャイチャしてねえ」


 ジンが少し怒り気味で通信を切る。

 ジンがため息を吐く。


「へぇ、女の子の仲間…ねぇ」

「なんだよ、悪いか?」

「別に?でも私と言う女がいながら、別の女と連絡ねぇ」

「仲間だ。お前とは一緒にいる歴が違う」

「話の内容的に、あなたの仲間達も周りに来てるんだ」

「本当は俺一人でお前を予定の場所に行く予定だったが、あいつらが来るってずっと言うから…こうするしかなかったんだ」

「ふふっ、でもこれだったら私が急に撃たれるって心配は全くないね」

「まぁ、確かにな。お前の周りは俺の仲間が見張っていて、お前の傍は俺が見張っている」


 ジンがそう言うと、エルが微笑む。


「えっと…仲間って、男の子もいる?」

「いる。俺も含めて男女比3対2だ」

「へぇ。じゃあ、私が入ったら3対3で丁度いいね。仲間内でカップル誕生じゃん。ジンは勿論私固定で…」

「いや、そうでもない。一人別所で彼女作りやがった」


 その一人とは、サツの事である。

 彼女を作っているという事は、彼等にとって裏切者である。


「あ、そうなんだ。青春だね」

「それに、お前を仲間に入れられるほど緩々な仲間ではない」

「私そんなに緩々かなぁ…」

「こっちが物騒ってのもあるな」

「あぁ、納得かも」

「納得?」

「だって君、銃持ってるじゃん」

「これは見回り用のだ。物騒な物だが、その用途で使いたくは…」

「隠してるでしょ?」


 エルが真面目な顔になる。


「…あ?」

「見回りって言うなら普通は複数人で行動するはず。それなのに一人で行動してたなんて、絶対裏があると私は思ってる」

「…本人の前で裏があるって言うのか?」

「実際あるでしょ?」


 エルがそう言うと、ジンは目を逸らす。

 殺し屋である事はエルに隠さなくてはいけない。

 そして、殺し屋の事情にエルはあまり巻き込んではいけない。


「…後ろめたい事?」

「…いや別に…」

「…私はあなたは信用してるしあなたは私をどう思ってるかは知らないけど、信用はしてほしいかな」

「………」


 エルとジンが見合う。

 ジンは話す事を決意する。


「じゃあ信用して話そう。俺は…殺し屋だ」

「殺し屋………」

「さっき連絡した仲間も、殺し屋の仲間だ。依頼を受けては人を殺す仕事をしている」

「…殺すんだ」

「無差別に殺してる訳じゃない。世界に絶望をまき散らす存在…つまり犯罪者を主にターゲットとしてる。俺達は正しい殺しをして世の中を良くするのが目標なんだ。こんな物騒な世の中で物騒な行為かもしれないが…俺達はそれでも正しいを貫き通すんだ。俺達は…世界の癌を消し去る放射線になる」

「ふーん」


 エルが少し無関心そうに言う。


「私の事も、殺しちゃう…?」

「それは…」


 ジンが言葉に困る。

 いざ自分を殺すか問われると、殺し慣れているジンですら固まってしまう。


「…やろうと思えば、すぐに殺す事だってできる」

「ん、そっか」


 エルがジンの腕を掴む。


「やっぱ依頼を受けてくれたのがあなたで良かった」

「…は?」

「私の生殺与奪をジンに握られてたら、逆に楽しみになってくるね。いつ殺されるんだろう~って」

「お前、割とヤバい奴だな…」

「大丈夫、あなたが私を殺すって事はしないと思ってるから。あなたってお金以外に欲はあまり無さそうだしね」

「どういう意味だ」

「冗談だよ」


 エルがそう言うと、エルがジンから腕を離す。

 エルが指を指す。指を指した方向には、街が見える。


「見て、街が見えてきたよ。あそこで休憩しない?」

「…まぁ少し疲れたな。あそこで食事でも取ろう」

「やった!」


 エルとジンは小走りで街へ向かう。






 ――エルとジンは小さな街に着く。


「…小さめな街だな。土地勘は少しあるか?」

「あそこが宿って事くらい」

「宿か…まぁ少し仮眠は取りたい」

「じゃあ宿直行でいい?」

「分かった」


 エルとジンは宿の方へ歩く。


 宿に入るエルとジン。


「やっぱ小さい街ってだけあって宿も小さいね」

「まぁ、寝床があるだけマシだろ」

「久々の布団かも」


 エルが布団に飛び込む。


「…そういやお前、昨日は何処で寝てたんだ?」

「えっと…森の中で」

「森の中?危なくないのか?」

「ちょっと危ないけど、スリルあって楽しいよ」

「そうか。まぁ俺も森の中で寝た事なら何度かあるが…」

「殺し屋だもんね、野宿とか慣れてそう」

「多少は慣れてるな。でも、こういう寝床がある場所は助かる」


 ジンは布団の上に座る。

 エルが自身の目を掻く。


「…ねむ」

「俺も少し眠い。お前に朝早く起こされたせいだ」

「それはごめん。仮眠って言ったけど、ガッツリ寝ちゃう?」

「…いや、仮眠を取ると決めたからには長居はしない、数分取るだけにする。俺は飯を調達してくる」

「待って、私も」

「お前はここにいろ。もしも街の中に追っ手がいたらどうする?」

「…確かに。じゃあ、ジンに任せる」

「おう。少し休んでろ」


 ジンが布団に伏せてるエルの頭を少し撫でる。


「…ん」


 少し顔を赤くするエル。

 ジンが部屋を出る。



 それから数分後…


「…あ」

「ん、起きたか」


 エルが目覚める。

 ジンを待っている間に寝てしまったようだった。


「やば、私寝てた…?」

「多少は。飯、持ってきたぞ。おにぎりを何個か」

「あ、うん。ありがと」


 エルがおにぎりを食べ始める。

 ジンも隣で食べ始める。


「殺し屋って感じのごはんセンスだね」

「昼は多く食わない、殺し屋としては当然だ。だが夜は成功の証に仲間同士でガッツリ食う、それが俺等のやり方だ」

「へぇ、夕飯を仲間で一緒に食べるの楽しそう」

「あいつらといると、俺が俺でいられる気がするんだ」

「カッコつけてる?」

「…カッコつけてる」


 ジンが目を逸らす。エルの前では恋人らしい事をしようと思っていたジン、無意識にエルの前で堂々とカッコつけていた。


「ジンって、幸せそうだよね」

「誰かの幸せを奪ってる可能性はあるけどな」


 エルがジンの顔を見続ける。


「どうした?米粒でも付いてたか?」

「ん」


 エルがジンに口付けをする。


「…どうした」

「私、あなたのこと好きかも」

「………そうか」


 ジンが少し顔を赤くする。


「ねぇ、色々終わったら一緒に暮らそうよ」

「…え?」

「一緒に来て欲しい。こんな物騒な世界だけど…私は物静かに暮らすのが夢なんだ。あなたとなら果たせる気がする。あなたは立派な人だから私との間に元気な子どもだってきっとできる。…気が早いかな?」


 エルの提案に、ジンが考え始める。

 少し考えた後、ジンがエルの頭を撫でる。


「…俺でいいなら」

「ほんと?良かった」

「…そのためにはお前を砂漠の街に連れて行かないとな。その後、街の人達を救って…それからだな」

「うん。…宜しくね」

「あぁ。…しっかし、だいぶ先に行ったな。子どもとか…結婚すらしていないが」

「いいでしょ、そのくらい」


 その昼、エルとジンは宿で仮眠を取った。

 南の砂漠に向かうため、体力を回復するために………


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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
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