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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔
103/271

ep-α3.契約の少女

 ――殺し屋として慣れてきていたジンだが、少女に背後を取られる。

 ジンが背後を取られるのは珍しかった。


「っ…!」


 ジンは思わず少女から距離を取る。


「あ、ごめん」


 少女はジンの銃を見て、手をあげる動作をする。


「…もしかして、撃っちゃう?」

「…状況による」

「状況か…あははっ」


 少女は笑い出す。

 手のひらで口元を隠し、小悪魔の様に笑う。


「…何がおかしい?」

「いや、おかしくはないよ。あなた、意外とおもしろそうだなって」

「…お前…何者だ?」

「私?私の名前はエル」


 エル…それこそジンがこの時出会った少女。

 そして、契約の悪魔エルの正体。

 今は人間の姿をしており、ジンに正体がバレていない。


「私の魔力…色々複雑だけど、与えたり受け取ったりする事ができるんだ」

「魔力を与える…貰う…?」

「うん、今は枯れ切った花に命を与えてた」

「…ほう」

「えっと…あなたは?」

「あっ…俺はジン。殺し…いや、ここら辺の見回りをしてた者だ」

「へぇ、見回りかぁ。もしかして私…相当怪しかったかな…?」


 エルは少し残念そうな顔をする。

 ジンも正直に返す。


「…多少は」

「やっぱり。こういう所来るの好きなんだよね。あなたはどう?植物とかは好き?」

「…嫌いではない」

「嫌いではない…かぁ。まぁ物騒な物は持ってるけど、私を撃たないでくれたから、大丈夫な人なのは分かった」


 エルはジンの銃を見る。


「…別に無害の奴には撃たないだけだ。それより…色々聞きたい事があるが…お前と会う途中で風に魔力を感じた。アレはお前のせいか?」

「あぁ。アレは私がさっき植物に与えた魔力が花粉と一緒に飛んでった感じだね」

「そうか。原因が分かって良かった」


 それどころじゃない。ジンは既に感じていた。

 エルの中から感じ取れるものすごく強大な魔力を。

 ジンの身体は少し震えていた。


「…震えてる?」

「この風は俺にはちょっと肌寒くてな――」


 咄嗟に言い訳をするジン。

 肌寒くなんてなかった。

 ただただエルに対して、カッコ悪い一面を見せたくなかった。


「もしかして、分かる?」

「何が?」

「私の魔力…肩書を」


 エルがジンに近付く。


「っ…」

「まぁ分かるよね。人の魔力を感じ取れるのは誰でもできるけど、その中でも私は異質かも。あなた達と比べると」

「異質…か」

「あなたになら、話していいかも。私の事――」

「お前の…事?」

「私さ…言っちゃえば人間じゃないんだよね」

「…は?」


 ジンが疑問に思う。

 エルは厳密に言えば人間ではない、正体は悪魔族。


「人間じゃないって…何だよ?」

「あ…難しかったかな」

「難しすぎる。人間じゃないって…なんだよ。お前は人間だろう」

「…そう言ってくれるのはちょっと嬉しいかも」

「…詳細を聞いていいか?」

「詳細は言えない。けれど…私、狙われてるんだよね…」


 エルの笑顔が真面目な顔に変わる。

 それに伴ってジンも厳格な顔になる。


「…狙われてる?誰に?」

「団体とかはよく分からないけど…いつも同じ奴等に狙われてる。銃も持ってるしナイフを持ってる人もいたかな…この前鉢合わせた時は本当にヤバかった…」

「…ちょっと待て。それって…見た目はどんな奴だ?」


 ジンはカイとルキの顔を思い浮かべていた。


「えっと…銃を持ってた奴はあなたより身長が大きくて、えっと…髪の毛がなかった。ナイフを持ってた人は…マスクみたいなので顔を隠してた――」

「…そうか、安心した…」


 ジンは一息つく。

 カイやルキの事ではない、それだけで少し安心。

 もしもカイやルキがエルを狙っているのであれば大問題であるからだ。


「ここで会えたのもなんかの縁だしさ…頼みがあるんだけどいい?」

「…なんだ、言ってみろ」

「私を…守ってほしいなって」

「…守ってほしい?」


 エルからジンへの依頼。

 ジンが腕を組んで聞き始める。


「私…ここより遥か南の砂漠にある街に行きたいの。そこは今は魔力が殆ど満ちてなくて人々の生気も全くない街。でも私、そこの街に代々恩があってさ。私は魔力を与えに行きたい。そしてお礼も言いに行きたい」

「………」

「どう?引き受けてくれない?」


 ジンは少し悩む。

 だがジンにとってはエルを連れて行くだけなど、利益になりえない事。


「断る」

「え…まさかお金が欲しい…とか…ある…?」

「金の有無とかの話ではない。俺達の意思に背く」

「意思…?」


 ジンの意思とは、殺し屋としての意思の事。

 エルの依頼を受けるのは、正しい殺しをするという意思に背くと言っているのだった。


「それに、遥か南の砂漠と言うと、何日もかかりそうだ」

「………」

「…お前にとっては酷い話かもだが、俺達の意思に俺自身が背くのはいけない」

「それは、正しい殺しのためにならないから?」

「………!?」


 まるで心が読まれたかのような反応を見せるジン。


「何故それを………!!」


 だがエルはジンの疑問を無視する。

 エルはジンの心が読めていたのか、それすらも分からない状態のまま話が続く。


「じゃあさ、私の魔力を少しあなたに分け与えるって条件はどう?」

「魔力………?」

「お金じゃないけど…私のこの魔力があれば使い方次第だけどあなたも強くなれる。あなたの今後の賞金稼ぎにも役立てられるし、正しい殺しにも役立てれるはずだよ」

「…確かに。だが――」

「じゃあ、私があなたの恋人になるってのはどう?」

「…え」


 ジンが固まる。

 更に条件を投げるエルの、そしてあまりにも利益過ぎる依頼を受け取る。


「恋人…彼女って事か?」

「うん。あなたが私を遥か南の砂漠まで守ってくれるって言うなら、あなたの恋人になる事を約束する、契約の元に」

「それは………」


 考えるジン。


「…騙してないだろうな?」

「騙してないよ。騙してたってのが分かったら、私をすぐに殺して貰って私の死体から魔力を全部かっさらってもらっても構わない。それができるなら…ね」

「…はぁ」


 ため息を吐くジン。

 断ろうとしても断れる気がしない。

 それに、ジンの心もどういう訳か読み取られてしまっている。

 断れば、何を言われるかたまったものではない。


「…分かった。お前の依頼を引き受けよう」

「やった、ありがと」


 エルが再び笑顔になる。


「俺の仲間に数日依頼から離れる事を知らせる。今日はもう日が暮れそうだし…出発は明日でいいか?」

「いいよ。私の連絡先、教えるね」


 エルがジンの通信機を勝手に取る。


「あっ…おい、何しやがる」


 エルがジンの腕に通信機をいじってないもう片方の自身の腕を組む。


「…何してんだ?」

「何って…恋人だし普通の行動じゃない?さては恋人…できたことない?」

「恋人は…ないな」

「…ま、そうだよね。そんな感じがする。でも…童貞じゃないでしょ君」


 エルの言葉にジンが息を呑む。


「………内緒だ」

「何それ、気持ち悪い」

「お前が先に言ったんだろ、俺は隠しただけだ。俺を馬鹿にしているのか?」

「馬鹿にはしてないよ。私、人間の恋人は初めてだから。つまり処女だよ」

「………はぁ」


 ジンがため息を吐く。

 エルはジンに通信機を返す。


「よし、私の登録できたからね。明日朝…連絡くれたらそこで待ち合わせしよう」

「ん?お前は俺達の街に来ないのか?」

「一応私、狙われてる身だから今日は隠れ家にいる」

「そうか」


 エルがジンから腕を離す。


「…じゃ、またね」

「明日、な」


 エルがどこかに走っていく。

 ジンの視界からエルの姿が見えなくなる。


「あいつらにはなんて説明しようか…」


 ジンが森の中を歩きながら一人で呟く。


「とりあえず数日必要な依頼が回ってきたから、暫くは俺は晩餐に集まれない…でいいか」


 ジンが息を呑む。


「…よし、大丈夫だ。あいつらなら分かってくれる。これで行ける…!」






「は?ダメに決まってるでしょ」

「…は?」


 五人の本日の晩餐会中、ルキがジンにダメ出しする。


「…いや、数日間かかる依頼が回ってきて…だな――」

「一人でそれ行く気?だったら私も行くわ」

「…え」


 ルキの発言にジンは戸惑う。


「俺も行く」

「もぐもぐ…私も行く」

「僕も行きます」


 他の三人も反応する。


「ちょ…お前等…」

「一日二日くらいならいいけど…それ以上の依頼は皆で受けるって決めたでしょ?」

「…そういやそんなルールあったな…」

「だから、今回の依頼の内容を教えて。どうせ遠方の方へ行く依頼なんでしょ?」

「…バレてる」

「バレバレよ。というか予想できるでしょ。ほら、早く言いなさい」


 ルキがそう言うと、ジンは少しためてから発言する。


「…護衛だ」

「護衛?護衛の殺し?」

「…違う、少女の護衛だ」

「護衛…お金は入るのそれ?」

「入らない」

「え…その依頼、アイツから流される依頼とは違う物?」

「そうだ。少女本人からの依頼だ」

「今日、依頼達成の後何があったか説明してくれるかい?」


 サツがジンに聞く。


「あぁ。今言える範囲だと、とある少女に出会ってな。そいつが砂漠の街に行きたいんだとさ」

「砂漠の街…かつては理想郷と呼ばれていたけれど現在は壊滅寸前となってしまったあの街かな。何か目的があるとか?」

「簡単に言えば、そいつは魔力を与えに行きたい…らしい」

「魔力を与えに…」

「そう。詳しくは知らないけど…凄い魔力を持ってるのは俺の肌がそう言ってた。実際にその瞬間も見た。黒く枯れた花が…一瞬にして再び白く咲きやがった」

「なるほど」

「死んだ細胞が蘇っているような感じ…かしら。凄いねそれ」

「俺はそいつに直接依頼を任されたんだ。だが当然アイツからの依頼じゃないから金は出ない。だから俺一人で行く予定だった」

「なるほどねぇ」

「だから、今回は俺だけで行かせてくれ。お前らはその間に依頼をこなして金を稼いでて欲しい」


 ジンが頭を下げる。

 ルキが腕を組んで話し出す。


「護衛は多いに越したことはないでしょ?」

「…は?」

「僕もそう思います」

「…え、ちょ…サツ…?」

「俺も行こうか」

「もぐもぐ…別に、私も今はお金困ってない。数日くらい別にいい」

「カイにアヤメまで…」

「決まり!と言う事で、全員で行くわよ!」

「…マジか」


 ジンが戸惑う。


「もぐもぐ…それで、どうすればいい?あとジン、今日のピザ追加して」

「どうすればいいって…ピザは自分で頼め」

「そうだなぁ、俺だったら得意分野はスナイパーな訳だし、護衛に近付く悪い奴等を遠くから狙撃…みたいな感じで立ち回るか」

「…僕は魔力の気配でも察知しますか。その子を狙う輩の魔力にも恐らく気付けます。この手の物には僕が適任です」

「私は…カイと同じかしら。遠くからナイフで…」

「おいおいお前等、勝手に話を進めるな」


 ジンだけでの護衛の話だったが、話が勝手に進んでいく。


「…俺一人で十分だそれくらい」

「そうね。あなた一人とその少女で行動して、私達は見えない所で援護…これでいいと思うわ」

「そういう話じゃねえ…」

「で、明日から決行って事ね。明日の依頼は…私は大丈夫、午前中を使えばすぐ終わるわ。昼には合流できる」

「俺も明日は大丈夫だ」

「僕も明日は空いてます」

「ピザおいし…私も表の仕事は午前中に終わるし、明日から暫く旅行に行きますって言えばいいかな。断られたら最悪上司を殺せばいいや」

「おい物騒な奴いるぞ。…じゃなくて、本当にお前等来るのか…?」

「行くに決まってるでしょ」

「…はぁ」


 ジンがため息を吐く。

 だがジンも仲間を信じていない訳ではない。

 寧ろ仲間を、信じ切っていたのだ。


「…分かったよ。何かあったら頼む。…お前等は信用できるからな」

「いいわよ」

「おう」

「任せて下さい」

「ん」

「…そうと決まってしまったなら、明日から護衛に入る訳だが…基本は俺の連絡に従ってくれ」

「いいわよ。元はと言えばあなたの依頼なんだし」

「まぁこの中で一番強いのお前だしな、強い奴の指示には従うぜ」

「…いや、私の方が強い。私ならジンより食べれる」

「どこで張り合ってるんですかアヤメさんは」

「…まあ、これくらいの方がやりやすいか」


 困惑しながらも、士気が上がる殺し屋一同。


「…ありがとな」


 ジンが小声で礼を言う。


「…なんか言った?」

「なんでもねえ」

「そう」

「あ、そうそう、今日の私の表の仕事なんだけどさ…」


 五人の会話が弾む。


 そして、それを遠くから見る二人組。


「あいつら、少女の護衛って言ってたな?」

「言ってた言ってた。ここの酒場じゃ基本誰も周りの話は聞いてねえからデカい声で話すのも理解できますぜェ兄貴」

「もしかしたら例の女かもな、アイツらを尾行する。連中に向かわせるぞ」

「へい兄貴」






 ――翌日、エルに連絡をするジン。


『おはよ、ジン』

「…こんなクソ早い朝から連絡してくんな」


 時刻は5時だった。まだ日が登り切ってなかった。


『恋人だからいいじゃん?私だって彼氏できたら連絡くらいしたいよ。もっと言えば毎日したいよ』

「そういう問題じゃねえ…早く起こされて頭いてえんだこっちは」

『あ…もしかして酔ってる?二日酔い?未成年は飲酒しちゃダメなんだよ?』

「傍から見たら未成年には見えねえだろ。クソガキでも飲んでる奴はいっぱいいるだろ?」

『そういうのが自分の首をいつか絞めることになるんだよ?』

「はぁ。お前の護衛を受けた俺が間違ってた」


 ジンがため息を吐く。

 ジンはエルに呆れていた。これから護衛をするというのに、あまりにも心が軽い。


『でも、あなたで良かった』


 エルが小声で呟く。


「…ん?なんか言ったか?」

『いや?なんでも?準備できたらこの前会った森で再開って感じでいい?』

「…分かった。準備ができたら行く」

『うん。宜しくね』

「…ただ、ひとつ頼みいいか?」

『ん?何?』

「もう少し寝かせてくれ。流石に眠い――」

『いいよ。それまで…持ちこたえてるから』


 エルがそう言うと、ジンの通信機から走っている音が聞こえる。

 そしてその言葉と音に、疑問を抱く。


「…は?持ちこたえ…何を――」


 ジンが言葉を続けようとする。

 だが突如、「バァン!」と突如通信機越しに大きな銃声が鳴る。


「…!?」

『ごめん、ちょっと切るね』


 エルがそう言うと、エルとの通信が切れる。


「…エル?」


 ジンが唖然とする。


「…は?」


 ジンは通信機をその場に落としてしまう。


「…まさか…いや…そんな訳…」


 ジンは最悪なパターンを考えていた。

 そして、エルが撃たれて倒れている情景を思い浮かべてしまった。


「…エル!!」


 ジンはすぐさま部屋から出て、朝の誰もいない街を走り出す。

 ――エルを救うため…ジンは眠気を払いのけて走り出す。


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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
も連載中!
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