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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔
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ep-α2.晩餐と異変

「どうせ死ぬなら、癌細胞いっぱい殺してから死んだ方が、楽しくない?」

「延命させたのがかえって正解だったみたいだ。俺達と一緒に、殺し屋やろうぜ」


 カイとルキに誘われ、殺し屋になったジン。

 自分達と同じく、世界に絶望した人が増えないように。

 そして世界に絶望をまき散らす、癌のような者達を…この世界から無くすために。

 癌細胞を消す放射線のように、正しい殺しをする。


 ジンが殺し屋になって以来、ジン達は調子が上がった。

 ジンという実力者が仲間になってから、殺しの質が上がったのかもしれない。

 或いは仲間が増えたから士気が上がった…そんな単純な理由かもしれない。




 ジンは意外にも銃の扱いが上手くなっていった。

 元々持っている炎の魔力だが、殺しにはあまり使っていない。

 寧ろジンの規格外とも言えるような炎の魔力は、殺害に使うには目立ちすぎる。

 ジンは自身の魔力はあまり使わず、それでもなお殺し屋として腕を上げてきているのだ。


 世界に絶望する人を減らす為、正しい殺しをし、今日も何処かで殺しを行うジン。






 ――ジンが殺し屋になってから、数か月が経った。

 そろそろ殺し屋にも慣れてきた頃だった。

 あの日、ある依頼がやってきたのだった。




 ――森の中で銃声が鳴り響く。そして一人の男が銃に撃たれ、胸から血を流して倒れる。


「………成功だ」


 スナイパーライフルを持つカイが茂みの中から現れる。


「…腕を上げたな、カイ」

「ありがとなジン。こりゃ帰ったら美味い飯…だな」

「いつも任務の後はやってるだろ…。だけど、これで魔力犯罪の方もきっと大丈夫だ。これで救われる命もある」

「そうだな。全く、野暮な世の中になったもんだ」


 カイの言葉を聞いて、ジンが頭を掻く。


「…俺達は正しい殺しをして世の中を良くするのが目標だ。こんな物騒な世の中で物騒な行為かもしれないが…俺達はそれでも正しいを貫き通すんだ。癌細胞は…全部俺達放射線が潰す」

「ジンのくせに何かっこつけてんだ?いや、ジンだからかっこつけるのか?」

「お前…仲間じゃなかったら殺してるからな?」

「ははっ、冗談だ。ジンのそういうとこ、俺は好きだぜ?」

「…ほんとかよ」

「ほんとだ。…さてと、今回もいつも通りやりますかね」

「あぁ、そうだな。…噂流しを」

「おうよ」


 カイとジンは森の中で走り出し、街へ向かう。






 ――賑わっている街。

 ここは『セイサツタウン』と呼ばれる街。

 カイとジン、そしてその仲間達はここで依頼を受けて任務を達成したらここで晩餐をするというのが日常だった。


「おや、いらっしゃい」

「ばあさん、いつものおつまみ、3袋くれ!」


 屋台の店主をしている中年女性に話しかけるカイ。

 そして、嘘をしている顔。

 普段のカイは、ここまで陽気な話し方をしない。


「はいはい。でも3袋って多いわね。もしかして…いい事でもあった?」

「今日は一発で任務を達成できた!」

「一発で?どういう事?」

「あっ…えっと――」


 殺しをしている事をバレてはいけない。

 カイは焦らして発言し直す。


「一瞬で、だったわ!」

「あらそうなの、いいわね。今日も旅仲間で夕飯?」

「そうだぜ!ばあさんの作る枝豆、飯のおつまみに丁度いいんだよな」

「それは嬉しい事言うわね。特別に値引きしてあげてもいいくらいよ」

「ほんとか!そりゃ嬉しい!皆にも伝えとくぜ!…それと、ちょっと前にこの街に現れた魔力犯罪者なんだけどさ…あいつが森の中で死んでたって噂が流れてきてさ…」


 嘘の噂。だがこれを上手く流せれば、街の脅威が一つ去る。

 

「あら森で…でも…これで脅威がひとつ去ったのね」

「あぁ。誰かが殺したとかそういうのは知らんけど…」

「そう。まぁ、人の死というのはいくら悪者とはいえ嫌よね」

「そう…だな。俺、いつかこの街の皆が笑顔になれるような殺し…いや、戦士になって見せるわ!」


 また嘘をつくカイ。だがこれも、人のための嘘だと割り切る。


「そう、頑張ってね。はい、これも皆で分けてね」


 女性がカイに飴玉を5個渡す。


「おっ、ばあさんさんきゅーな!また来るわ!」


 カイはそう言うと、女性から枝豆を貰って颯爽と走っていった。




「お待たせ」


 酒場に入るカイ。

 そして待っている四人組。


「遅い」

「何してたの?」

「次遅刻したら暗殺よ」

「パーティ開始するぞ」


 カイを待つ四人。

 カイと任務に向かっていた少年のジン。

 殺し屋の少女ルキ。

 殺し屋の少女アヤメ。黄緑色の髪、少し小柄だが少し筋肉質、腰には二つの短剣。

 殺し屋の少年サツ。赤い眼鏡をかける青い髪の少年。殺し屋というより、情報屋として相応しそうな制服。


「すまんすまん、いつもの枝豆…欲しいだろ?」

「欲しい!」


 カイが枝豆をテーブルに置くと、アヤメがすぐさま手で取る。


「アヤメは相変わらず食いつくまでが早いなおい。まぁいつもの事だしいっか」

「それで、噂の方はばっちりですか?」

「あぁ、ばっちりだ。あのばあさん、お喋りだからすぐ流してくれると思う」

「…俺達が殺し屋だってことは?」

「勿論伏せてる、安心しろ」

「ほんとかしら…」


 ルキが疑問気にカイの方を見る。


「私達もそろそろ、身バレが怪しくなってくる頃よ」

「身バレか」

「正体がバレれば、この活動もできなくなるわ。殺しをしてたってのがバレたら表立って活動も厳しくなるわよ?」

「なるほど…それは嫌だな」

「特にカイは物騒なスナイパーライフルを常にさらけ出し過ぎ。ジンだってこの前の依頼の時にあまり使わないって決めた魔力で派手に山火事を起こしたし…アヤメも派手に殺しすぎ。大丈夫なのは私とサツだけよ…」


 ルキがため息を吐く。

 それもそのはず、カイやジン、アヤメの殺しは大っぴらになりすぎている事がある。

 もしもこれをやったのが自分達だとバレたら、殺し屋としての活動が危うい。


「…滅相もない」

「…ごめん」

「枝豆美味しい」

「アヤメ、話聞いてた?」

「うん聞いてたよ。今日の枝豆が派手だねって」

「この子今すぐ窒息して死なないかしら」

「うぅ…喉に詰まらせた…やばい死ぬ……ばたっ…」


 アヤメがテーブルに横たわる。

 当然これはわざと、死んだふりである。


「おっ…ルキの言う通りアヤメが窒息死したぞ」

「さすがは暗殺のルキ」

「いや私何もしてないし…わざとらしい…」

「まぁまぁ、ルキが言う気持ちも分かるが…今楽しければそれでいいんじゃないか?」

「…そうかもしれないけど…私はできる限りあなた達との関係は続けたい。だから…」

「身バレしたらしたで、『正義から逃げ続ける殺し屋』とかでもやればいいんじゃないか?警察っぽい輩…ラッシュ師団だっけか?あいつらからずっと逃げ続けながら密かに依頼受けてって犯罪者殺していく犯罪者…良くね?」


 ラッシュ師団…この頃はネオカオスとの全面戦争を行っていた頃だった。

 そしてラッシュ師団はネオカオスだけでなく、他の悪の集団もある程度目を付けている。

 が、ネオカオスとの全面戦争中はジン達みたいな小さな殺し屋はあまり眼中にないだろう。


「おっ、それいいなカイ。俺は賛成だ」

「もぐもぐ…私も!」

「それには僕も賛成です」


 ルキ以外の4人が賛成する。


「…はぁ」

「…それはそうと、明日の依頼ってどうなってんだ?」

「えっと…俺は依頼入ってるな。皆はどうだ?」


 ジンがそう言うと、沈黙が走る。

 ジン以外は依頼の無い沈黙だった。


「…あれ?明日は俺だけ?」

「ジンだけかもな。俺は昨日今日で依頼を果たしてるし明日は少し休みを貰ってる予定だ」

「もぐもぐ…私は明日は表の仕事あるから協力はできないかな」

「私はパス。この前暗殺しに行った時にガラスが割れたせいで怪我をしてしまったから…少し治したい」

「僕は彼女とデートなので――」


 デートの話を乗り出したのはサツ。


「待って、ここに裏切者が一人いるわ。いつの間に彼女作ってんの?」

「僕の場合は、事件解決したお礼にその子に告白されて付き合うことになりまして…」

「はぁー…皆はサツみたいにならないでね?」

「彼女?俺はこの仕事やってるうちはいらないな」

「まあカイはそんな気がしたわ」

「どういう意味だよ」

「もぐもぐ…私は人の喜びとご飯が彼氏」

「なんかあなたはそんな気がしたわ。…ジンは大丈夫よね?」

「俺は…いないけど…」


 サツ以外の四人は彼氏彼女はいない。

 彼氏彼女を作るのも、正体がバレるきっかけになるのだ。


「何?好きな人でもいるの?」

「いや…それもいないけど…いつかは作りたいよなって。そういうルキはどうなんだ?」

「私は別に」

「そうか」


 再び沈黙が走る。


「…まあ、今は飯でも食おうぜ。今日頑張りましたってのと、明日も皆頑張ろうっていう意味合いで食事会でもしよう」

「…それもそうね。変な話にしてごめん」

「いや、いいぜ。たまには恋バナみたいなのもしたいしな。俺達もまだガキな訳だしさ」



 その日の晩、5人は晩餐会をゆったり過ごした。







 ――次の日…

 ジンは一人で依頼の場所に向かう。依頼の内容はやはり殺しだ。

 内容は女性を付け狙う魔力犯罪者の殺害。これも世界に絶望をまき散らす者の殺害依頼。

 これに成功すれば多額の報酬金を貰えるはずだったが、あまりジンはお金に目は眩んでいなかった。

 犯罪者は最近になって目撃情報があった。ジンは目撃のあった森の中を走り続ける。




 走り続けること30分、遂に男を見つけた。

 男は逃げ出そうとするがジンはすぐさま銃を構え、男の心臓を狙い撃った。銃声が森の中で鳴り響き、男は胸から血を流し倒れる。


「…依頼完了――」


 ジンは通信機で連絡する。


「…俺だ。例の男の殺害、完了した――」

「御苦労だよジン。やっぱ君ら殺し屋に任せて正解だったね。依頼主の家族も、これで被害はなくなるはずだ」

「…あぁ」


 ジンが連絡していたのは、今回の依頼を投げたとある男。

 殺し屋としての仲間以外にも、ジン達に依頼をこっそりと渡してくれる者がいる。


 ただジンは依頼主を仲間として見ていない。


「ここ最近は君ら殺し屋のおかげで生活を脅かされている人達も救えている。依頼の数も段々と減ってきた」

「そうか。そうなると、得られる賞金は段々と減ってしまうな」

「ん?あぁ、そうだね。勿論その保険に、君にもいい表の仕事紹介するよ?」

「俺はいい。サツやアヤメみたいに表の仕事もある奴の生活に憧れる事もあるが…別にそこまでじゃない」


 表の仕事…簡単に言えば、普通にお金を稼げる仕事だ。

 ジン達殺し屋がしているのはいわば裏の仕事。

 ジンは表の仕事はせず、裏の仕事しかしていない。


「そうかい。まあ今回も賞金を君らのアジトにこっそり送っておくよ。つっても君らのアジトは何個もあるんだっけか?」

「助かる。送る場所は何処でもいい。お前が知ってる場所に送ってくれ」

「…僕が知らないアジトがあったりするのかい?」

「別にあってもおかしくはねえだろ」

「ははは、冗談だよ。裏社会とはいえ君らのプライバシーまでは侵害しないよ。君らは大事な依頼執行人だからね。だけど、君らに僕が依頼を流してからもう3か月が経とうとしている。3か月も君らは僕を信用して依頼を受けてくれた」

「それは俺らの魔力が殺しに向いてただけだ。それに、俺は兎も角あいつらは金には目がないんだ。世界の癌を無くすのを表立って言ってても、実際は金が欲しい。だからやれることは何でもする」

「そうか」

「今日は依頼がまだまだ溜め込んでいる。次の依頼が終わったら、また連絡する」

「はい、了解。楽しみにしてるね。それじゃ、また」


 ジンが通信を切る。

 そしてジンは一つ疑問を抱く。


「…あいつ…そういや名前知らねえな」


 ジンが一人で呟くと、風がなびく。


「…今日は一段と風が強いな。早めに帰ろう――」


 ジンが小走りで森を抜け出そうとする、その時だった。

 肌に触れた風がピリピリする感触をジンは味わった。


「…?」


 ジンは自身の頬を触る。手がバチバチとした。


「…これ…魔力の風か…?いや…魔力が混じった風なんて強い魔力反応が近くに無い限りない――」


 ジンは辺りを見渡す。


「それに甘い香りもする…近くに何か凄いのが…ある?」


 ジンは人差し指を舐め、指に風を当てる。

 指に感じる風を感じ、風の向きを確認する手法だ。


「…こっち向き…か――」


 ジンは向かい風の方へ歩き出す。

 風の強さは変わらないが、歩くにつれて風に含まれる魔力の濃度がどんどん高くなっていく。

 ジンはだんだんと歩くペースを早くする。


 そして………


「…!」


 ジンの視界にジンと同じくらいの年齢の少女が映っていた。

 少女は座っていた。

 そして、黒く枯れた花に手を触れて…そして再び元気に白く咲かせる。


「あなた達は、ずっと綺麗であってね。私達みたいな…悪に染まらないように」


 魔力に驚くジン。

 そして、咄嗟に隠れる。


「………女」


 ジンは彼女の魔力に疑問に思いながらも木に隠れ、少女の視界から外れる。

 少女はジンの方向とは違う方向を向いていた。

 そしてその少女から先程感じていた魔力の風と同じ気配、匂いを感じていた。


「…間違いない、この魔力の気配…この匂い…あの女だ」


 ジンは木の裏で銃を再び持つ。

 万が一の戦闘に備えていた。


「っ…!」


 ジンは銃を少女の方へ構えようとした。

 しかし、そこには少女はいなかった。


「…!いない…」

「ねぇ、そんな怖い物持ってどうしたの?」


 ジンの後ろから女の声がした。

 見失った少女だった。

 見失ったはずの少女は、いつの間にかジンの背後に回り込んでいた。


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悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
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