プロローグ
とある日の昼下がり…。
俺の1日は始まる。
12時くらいに起床し、まず初めにするのはTL警備。
「推しのグッズが予約開始とな…
母ちゃんに貯金降ろして来て貰わねば!」
なぜそんな時間に起きてるのかって?
何故ならば俺の職業はカッコ良く言えば自宅警備員。
…ただの引きニートだ。
今はこんな俺でも1年くらい前までは社会に出て
普通にサラリーマンやってた。
…が、良くあるブラック企業で骨身を削られ
人間不信に陥ってしまったあげく退社した。
元々趣味と言えば家に引きこもってアニメや漫画
ゲームをするしかなかった俺が引きニートになるのは
簡単だったさ。今は働いてた時の貯金を切り崩して
生活している。実家暮らしで本当に良かった…。
朝食が食べ終わり部屋へ戻る。
「とりあえずゲームでもするかなあ。」
そっから6時間くらいぶっ通しでゲーム。
ヲタクの相棒ブルーライト遮断メガネは必須。
外が暗くなり始めたら昼食を取り、適当に時間を見て
風呂に入り(引きニートでもちゃんと毎日風呂には入る。)
スッキリして部屋に戻った所で
「…アニメでも見るか。」
適当に録画したアニメを見て家族が寝静まった頃
夕食という名の夜食を取り、また部屋で適当にダラダラしながら
深夜3時頃寝落ちするっていうのが俺の1日のルーティン。
運動は家の階段登り降りくらいで、こんな生活を
1年もしてれば誰だって身体にガタが来る。
次に意識を戻すとそこは光に包まれていた。
「……………。」
『あら〜?思ったより冷静なのかしら?
それとも驚き過ぎて言葉も出ないとか…?』
( 俺自分の部屋で寝落ちしたはずだよな…?
何処だここ!?てかこの美女は誰だ!?おっぱい!!!
おっぱいが強い!が、顔面も強い!!!
…てか、美女を前にして俺、思いっきし
くたびれたスウェットなんですけど!?!?!? )
驚いて言葉が出なかった俺だが心の声でリアクションを取る。
なんせ家から出たのも1年ぶりくらいだし自分の身だしが
気になるのもしょうがない。なんたって目の前に
こんな美女が急に現れたら誰だって慌ててしまうだろう。
童貞の俺なんか特に。
『えっへん…。えーこの度貴方は死にました。』
「……………はぁ!?えっ、俺死んだ!?!?!?」
『はい!死にました!なので、次の人生に
進んでもらおうと思います!』
(…いやそんな元気一杯の笑顔で言われても…)
「…ちなみに死因はなんですか…?」
『…えーっとね〜、寝てる間に心筋梗塞を起こして
そのまま〜って感じね!』
(いやだから、そんな元気一杯の笑顔でいわれても…)
「…分かりました。ありがとうございます。」
『あら、やっぱり冷静なのね〜!』
いや、ぶっちゃけ心の中では全然冷静ではないが
なんと言っても俺はヲタクなので、転生モノのアニメや
漫画も複数見てきた。だからだろう。この美女の言うことには
さほど驚いてはいない。
何が俺を慌てさせるって、こんなくたびれた格好をして
美女の目の前に居ることだ!自分で言うのもなんだが
俺は決して不細工ではないと自分では思っている!
それなりに着飾れば、それなりだ!だから今のこの状況は
成人済み男性としては非常に恥ずかしい!!!
『…ふふ。そんなに気を回さなくても良いわよ〜。
誰だってお洒落をして死ねるとは限らないじゃない?』
「え!?…俺の心の声も聞こえてるのか…?」
『えぇ、最初から!』
(………凄く恥ずかしいしカッコ悪いな俺………。)
『とりあえず、立ち話もなんだし、今後のことも
説明したいから座ってお茶にしましょ。』
美女が示す先には、先程までには無かったはずの
中世のティータイムを連想させるような可愛らしい
テーブルに椅子、ティーセットが置いてあった。
『…まず自己紹介をしときましょうね。
私の名前はエル。娯楽を司る神よ。
他に聞きたいことは何かあるかしら?』
「…死んだ奴はみんな、こうやって神様の所へ来るのか?」
『答えは"いいえ"よ。貴方は例外。
貴方にはちょっとやってほしいことがあって、ここに
寄り道してもらったの。本来生物がその生を終えたら
魂は天に帰ってすぐ、次の転生への準備を始めるわ。』
「寄り道の理由を聞いても…?」
(ダメだ、未だに緊張してどもっちまう…)
『…ふふっ。貴方には次に転生する世界で
娯楽を広めてほしいの。』
「…娯楽?」
『そう。貴方の生前の生活は知っているわ。
貴方は"ヲタク"を極めてたでしょ?それを次に
転生する世界でも広めてほしいの。
この世界はね、貴方が居た次元の世界の他にもいくつか
違う次元の世界が存在する。それを神々がそれぞれ
見守ってるんだけど、貴方が今度行く世界は最も娯楽に対しての
重要度が低い世界なの。だからそこで、もっと色んな
娯楽があるってことを広めてほしいのよ。』
「…分かった。でも、それってわざわざ俺じゃなくても
神様自身がなんとかするって出来ないのか?」
『基本的に神はそこまで世界に干渉出来ないの。
だからこうして、貴方には寄り道をしてもらって
間接的に私の願いを聞いてもらおうって話よ!』
「…分かった。そもそも、なんでその世界では娯楽が
そんなに普及してないんだ?あと、それは別に悪いこと
でもないだろ?」
『確かに、悪いことではない。でも、考えてみて。
貴方が生前"ヲタク"をしてた時ってとても楽しく無かった?
その世界にはそう言う楽しみの心がみんな欠けてるの。
つまり、幸せの度合いが少ないってことよ。
幸せの度合いが少ないってことは、みんなの心も荒んでしまう。
そうするとまた幸せは遠のいて…の悪循環って訳。』
「…なるほど。娯楽の神としてはそれは
放っておけないってことか。」
『そうなの!話が早くて助かるわ!』
それからお茶とお菓子を嗜みつつ色んな話を聞いた。
俺が次に行こうとしてる世界には魔力が存在する。
…って言うか、俺が元々居た世界にも魔力は存在してたけど
さほどそれが重要ではない世界線にいたから触れる機会も
無かったってかんじだったっぽい。だか、次に行く世界では
魔力は何よりの源。息をするにも飯を食うにも眠るにも
全て魔力に頼りっぱなしの世界みたいだ。
前世ヲタクの俺からしたらその世界線はご褒美でしかない。
ダンジョンとかもあるのかな…?色んな種族も居るみたいだし…
エルフ!エルフ美女に会いてー!てか、冒険者になりてー!!!
あと、前世の記憶はそのまま次の世界に持っていけるみたいだ。
だか、月日が経つほど記憶は薄れてしまうから、
ずっと覚えていられるって訳でも無いみたいだ。
『…とまあ話はこれくらいで、そろそろ時間みたいだわ!』
「分かった。俺は次の世界で責務を全うするよ。
俺を選んでくれてありがとう、エル。」
『…こちらこそよ。貴方のことはいつも見守っているから…。』
すると俺はまた光に包まれた。
いよいよ2度目の人生が始まる。
今世では前世出来なかったことを沢山しよう。
エルから頼まれた娯楽の布教もせねば。
引きニートは卒業だ!
ヲタク布教開始致す!!!
今までロム専でしたが思い切って…!
まだまだ不慣れですが何卒…!