ご対面
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そんなこんなで、マック警部以下2名の順番が来た。
幸田が先頭きって、入り口の布をめくった瞬間に、
「お電話の刑事さんですよね?」
そこには、小柄なかわいらしい女の子が座っている。
まだ、あどけない顔をしているが、明らかに不機嫌そうだった。
それでも、気にせず、幸田刑事が敬礼方々、
「ハイ!中山和さんですね。我々はあなたと散歩しにきました。ご同行いたしますのは、わたくし、幸田と仙田、そして我々の上司にあたりますマック警部です。」
と、率直に説明したのが、意外に面白くて、和は思わず笑ってしまった。
マック警部もかっこいい所を見せたいのか、キリリとしたいでたちで、短めにウォン!と吠えた。
一気に場が和やかになった。
和は、ほっぺたを膨らませつつも、朗らかに
「全く!お父さんは何を考えているんだか…」
そして、少しだけ今居をただして、
「私、お二人とその警部…さんも命令で仕方なくいらしたのに、失礼な態度を取ってしまって、申し訳ありませんでした。」
と頭をさげた。
なかなか、どうして、しっかりしたお嬢さんで、とてもうつ病や自傷行為が心配だなんて思えない。
幸田も、丁寧に答えた。
「いえ、こちらは市民のためになることですから、喜んで!」
「ふふふふ…。」
笑うとうっすら出てくるえくぼが和を実年齢よりずいぶん若く見せている。
「刑事さんたち、面白いですね。少しだけ数字の話をしてもいいですか?」
「数字…あ、あぁ、かまいませんよ。」
すると、和はすーっと、無表情になり、いかにも占い師という雰囲気で話はじめた。
「最初にお電話くれた幸田さん。あなたは、14(7×2)という数字を持っています。そして、そちらの犬を連れている方、仙田さんでしたね。あなたは、161(7×23)という数字を持っています。そして、その…犬の方…マック警部ですね。あなたは21(7×3)です。あなた方の共通項は7です。7で結ばれた組み合わせは、その絆が強い傾向があります。とても、とても良いチームになると思います。」
仙田は、和がマック警部を犬の方と言ったところがツボにはまって、必死で笑いをこらえて最後の方を聞き逃していたが、幸田はしっかり聞いていた。
「我々は今、占われたのですね。」
「はい。私は占い師ですから。」
「あ、でも、資料には、西京大学大学院理学研究科数学専攻修士課程の1年生と。」
「はい、そちらのほうは、先日すっぱりやめました。多分、それで、父が依頼を…」
「なるほど。そうでしたか。では、我々はお嬢様と散歩をしてどうだったと報告すればよろしいですか。」
理解してくれたのか、と少し驚きを隠せない和だった。
「なんとも、ありがたい質問で…その、ありがとうございます。それで、まず、知りたいのは、父が何と言っていたかと…」
「そうですね…その、ご本人に言うのは失礼な話ですが、娘にうつ病の傾向があるから、マック警部を連れて行って、動物セラピーをしてきてほしい。という事でした。」