01攻略されそうな幼馴染、白河 真昼(しらかわ まひる)
放課後、学校で手帳を拾った。
持ち主がわからないので中を見たら、少し気になることが書かれてあった。
【2-B 日向 美羽 攻略完了】
10人以上書かれていた名前のひとつ。
クラスメイトの名前だ。不良なんで話す機会ないけど。
ここに書かれた名前の子は全員女子生徒だ。
それに・・俺の知る限り綺麗な子やかわいい子・・だと思う。
・・・・攻略って、え、まさかそういう意味?
その、え、エロいことというか・・そういうことしたら攻略完了?
とすると、この手帳の持ち主は男子生徒?いや女子生徒の可能性も0じゃない!
うーん、こんなたくさんの女の子とかぁ。むっちゃうらやましい。
有馬「あ・・」
書かれている女の子の名前、その最後に知り合いの名前があった。
【1-A 白河 真昼】
隣の家に住んでいる1つ下の女の子だ。
昔はそれなりに遊んだけど、今は疎遠になってる幼馴染の女の子。
そういえば、白河さんだけ”攻略完了”ってついていないな。
まだ攻略完了していない?これからって・・こと・・か?
・・止めないと!
手がかりは・・もう少し手帳を調べると、地図が書かれているのを見つけた。
ここかな・・?
・・
・・・・
やって来ました手帳に書かれていた地図の場所。
なんというか、プレハブよりちゃちで建物とすら言えないとこ。
外から中は見えない・・はっ、そういや友達から聞いたことがある!
こういうのの中には自販機があって、そこにはめくるめく素敵な本やグッズが売られているとか。
もちろん年齢制限がある。
ど、どうしよう。でも幼馴染を助けるためなら仕方ないよな、うん。
「お悩みなら入りなさい」
中から透き通った綺麗な声が聞こえた。
え?エロ本売り場からお誘いの声?
こういうのって無人なんじゃないの?
とりあえず入る。
・・
・・・・
中に自販機はなかった。しょぼん(´・ω・`)んぼょし
見た感じ・・・・占いの館って感じで装飾されていた。
黒髪の綺麗なおねーさんは神秘的な雰囲気がとても似合っていた。
有馬「ここは・・占いをしてくれるところですか?」
占い師「そうよ。でも占い以外もするわ・・呪いの依頼を受けたりね・・」
呪い?
有馬「だ、誰を呪うんですか?」
占い師「あなたよ。」
有馬「ヴぇ!?」
いや落ち着け。最初に相手を不安にさせ、占い(有料)すると安心できるよ!っていう商売に決まってる!
詐欺の手口を知っていれば詐欺を防げるはずだ。感情で考えるのではなく、頭で考えろ。
相手のペースに乗ってはいけない。こちらの流れを作るんだ。
有馬「あの、人を捜しているのですが・・この手帳の持ち主に心当たりはありませんか?」
占い師「ふふ、幼馴染を助けるために必要なのね。」
有馬「え!?なんでわかるんですか?ま、まさか・・占いで・・?」
これが・・占いの力・・?
占い師「外でぼそぼそ言ってるのが聞こえてたわ。」
なーんだ。
占い師「人に話すことで考えがまとまることもあるわ。」
占い師「どうかしら、私が相談に乗ってあげましょうか?」
うーん、お金かかりそうだしなぁ。
有馬「・・・・おいくらくらい、ですか?」
お小遣いで出せる範囲でお願いします!
占い師「相談は無料よ。占いは有料だけど、ちゃんと事前に確認してから占うわ。」
有馬「た、ただでいいんですか?」
占い師「相手の一挙手一投足も占いの判断材料になるのよ。だからね、情報は多い方がいいの。」
有馬「それって、いわゆるバーナム効果ですか?」
誰にでも当てはまるようなことを言って占いが当たったと信じさせるあれのこと?
まぁつまり相手の特徴を見てそれを言い当てたりするわけ?
占い師「ちょっと違うわ。占いの結果って、すごく曖昧なの。どうとでも解釈できるものだったりね。」
占い師「じゃあどうするかって言うと、一番可能性の高い解釈をするわ。占い相手のことがわかれば、一番可能性の高い解釈を判断しやすいってわけ。」
へー。
有馬「ちなみに占いはいくらですか?」
占い師「見料ね。基本3000円だけど、制服だし学生さんよね?1000円でいいわ。」
アカデミック価格万歳。
1000円かぁ・・うーん、結構いたいけど出せない金額じゃない。
有馬「じゃ、じゃあまず相談を・・」
俺は学校であったことを話した。
・・・・
有馬「ど、どう思いますか?」
占い師「誰かがなにかをしようとしているのは間違いないわね。あまり・・よろしいことだとは思えないわ。」
有馬「やっぱり!」
次々と女の子を攻略していくだなんて、よくないことだよね!
占い師「幼馴染が攻略されそうなんでしょ?本人に危険を伝えたら?」
有馬「・・そこまで親しくないんです・・たぶん信用される前に気味悪がられるかと・・」
攻略されそうだよ!なんていきなり言っても危ない人でしかない。
何かいい方法は・・
有馬「・・占い、お願いできますか?」
占い師「学生価格1000円だけど、初回は半額500円ね(税込)。手は抜かないから安心して。」
良心価格だ・・俺は500円を支払った。
占い師「カードや水晶、ダウジング系もあるけどなにがいい?」
カードってタロットとか?ダウジング系ってなんだ?曲がった棒を持って宝探しでもするの?
有馬「じゃあ水晶でお願いします。」
占い師「ならスクライングをやりましょう。」
有馬「スクライング?」
占い師「水晶占いでスクライングと言ったら、水晶に映しだされる映像で占うものよ。」
占い師「というわけで・・はい、この水晶玉を覗き込んで。」
水晶玉って結構大きいんだ。なんだか見ていると引き込まれそう。
占い師「なにが見えますか?」
有馬「え?いや特になにも。」
占い師「それでいいわ。肩の力を抜いて、あなたの悩みを考えてください。」
軽く深呼吸をして肩の力を抜いた。
俺の悩み・・知り合いの女の子が攻略されそうなこと・・
というか俺も恋愛したい。いやぶっちゃけやらせてくれれば誰でもいいなぁなんて。
どこかに俺のこと好きで好きで狂おしいほど愛してくれる女の子とかいないかなぁ。
・・あ!
水晶玉になにか映りだした・・?
女の子?
女の子がひとり映っている。
後ろ姿で誰かはわからない・・でも学生服だから歳は同じくらいか?
あの制服は・・どこかで見たことがあるような・・
占い師「はいそこまで。」
有馬「500円だとここまでですか?」
占い師「いえ、ただの失敗よ。あなた関係ないこと考えたでしょ。」
あ、バレてる。
有馬「ごめんなさい・・」
占い師「もう一度水晶玉を覗いて。今度は余計なことを考えないように。」
有馬「はい。」
水晶玉を覗き込んだ。
知り合いの女の子が攻略されないようにするにはどうしたらいいのか・・
あ・・また水晶玉になにか映りだした。
ここは・・夜の公園?
ベンチに男女が座っている。
後ろからの映像だけど、女の子は幼馴染の白河さんだ。
だけど男が誰かわからない。
・・なんだろう、ベンチの背もたれでわからないけど、男の手が不自然に動いている気がする。
あの動きだと、白河さんの身体を触っているような・・まさか・・いやだけど・・ごくり。
白河さんの身体がベンチの背もたれに隠れた。
でも足はあるからいなくなったわけじゃない。えーとつまり・・身体をかがめた?
え?身体をかがめてなにをしてるの!?カメラさん仕事して!前に回り込んで!
まさかとは思うが、男のを・・いやそんなわけが・・
あ!男がこっちを・・後ろを振り返った。
ぱりんっ!!!
・・水晶玉が割れた・・びっくりした!
有馬「あ、あのこれは・・」
占い師「向こうに見つかったわ。見られていると気付くなんて、普通の人じゃないわね。」
有馬「向こうも占い師とか?」
占い師「さぁ。でも専門の修行を積んだ相手よ。」
修行・・霊能者とかそういうのかも。
有馬「やばいですか?俺のことバレた?」
占い師「大丈夫よ。お客を危険な目には遭わせないわ。」
有馬「おお!」
占い師「店にいる間は。」
ここに住めば安全ってことかな。
有馬「ところで水晶に映った内容ですが・・・・その、”攻略”の意味が俺の思ったのと同じだったんですが。」
有馬「というかもう手遅れみたいな感じなんですが!」
占い師「占いは曖昧な結果しか示してくれないってさっき言った通り、あなたの見えたのも曖昧なものなの。」
有馬「えーと・・すみませんどういうことでしょうか?」
はっきり映った気がしたけど・・カメラワークはミスっていたかな。
占い師「じゃあちょっと外の景色を見てきて。」
え?
よくわからないけど、外の景色を見てみた。
有馬「ふつーの景色ですが。」
占い師「空の色は?」
有馬「赤というかオレンジ?夕方ですし。」
占い師「なら、あなたの見た映像は何時のもの?」
有馬「何時って・・・・あ!夜だった!」
今の時間じゃない!
占い師「もし水晶の映像が昨日のだったら、あなたの幼馴染も”攻略済み”になっているわ。」
なるほど・・あれ?
有馬「つまりどういうこと?」
占い師「あなたが見た水晶の映像は、未来の映像なの。」
未来!?
占い師「でも同じ未来が起こるとは限らないわ。あなたの行動次第では変わる可能性もある。」
有馬「幼馴染を救えば、ですね!」
占い師「難しいでしょうけどね。水晶で見られていたのを気付き、こちらに攻撃を仕掛けて来るほどの相手よ。」
占い師「あなたはなにか能力ある?」
有馬「あ、ありませんが、あれって超能力なんですか?」
占い師「精神エネルギーを直接武器にしている辺り、霊能力が近いわね。超能力ではないわ。」
霊能力か・・
有馬「俺も霊能力者になれますか?」
占い師「年単位で厳しい修行をすればあるいは・・ね。」
完全に間に合わないな・・
有馬「30分くらいで身に付く能力ってありますか?」
占い師「お客はたまに無茶を言うわ。でもそれに応えるのがこちらの務め。」
占い師「この眼鏡をつければサイコメトリーができるわ。」
有馬「日本人なので英語はちょっと・・」
占い師「残留思念を見ることができるの。例えば・・ふふ、眼鏡をかけてこの壊れた水晶に触れてみなさい。」
眼鏡をかけるなんて初めてだ。ちょっとドキドキ。
かけてみた。なんとなく違和感っていうか、なんか変な感じ。
えと、壊れた水晶に触るのか・・
ああ!
水晶に触れると、頭の中にさっきの公園での映像が現れた。
目を開けていると視界が変にかぶる。俺は目を閉じた。
見知らぬ男と幼馴染の白河さんがベンチに座っている。
さっきと同じだ。ベンチの背もたれでよくわからないが、あれはエロいことしてるよね?
カメラさんもっと仕事して!後ろからじゃモヤモヤするー!前にカメラを!
あ、男がこっちを見た。
やばい、衝撃波が来る!
有馬「うわぁ!」
目を開けると同時に椅子から落ちてしまった。
占い師「慣れれば大丈夫よ。使い方はわかった?それをレンタルしてあげる。」
有馬「は、はい。これがサイコメトリー・・あの、映像の位置や角度を変えることってできませんか?」
占い師「ちゃんと修行すればできるようになるわ。でも必要ないでしょ?」
有馬「あのあの、中途半端はいけないと思うんですよね!取扱説明書みたいなのありませんか!?修行方法みたいな。」
占い師「よく食べて、よく遊び、よく勉強しなさい。」
有馬「それだけでいいの?断食とか滝行とかは?」
占い師「したければしても構わないけど、命を危険にさらすだけよ。」
えー。
占い師「一時的に心の高まりが得られるだけで、普段の生活に戻れば心も戻るわ。死ぬまで続ければなにか得られるかもね・・その前に大抵死ぬけど。」
えー。
占い師「この水晶やあなたの座っている椅子、そしてあなた自身も魂を持っているわ。」
占い師「魂同士はつながっていて、その全てを記憶し連携している。」
占い師「サイコメトリーは魂の記憶を読むの。だから修行に必要なのは、魂を読む力。」
有馬「・・どうすればそんな力を強化できるんですか?というか食べたり遊んだり勉強すればいいって・・」
占い師「魂を成長させれば読む力も伸びるわ。あなた自身の成長が、そのまま魂の成長につながる。堕落せず、死ぬまで成長し続けなさい。」
有馬「死ぬまでって、死んだら意味ないような・・まぁわかりました。」
よく食べて、よく遊びます!
占い師「勉強もがんばりなさい。」
あれ?心を読まれた?いやみんなそう考えるか。
・・
・・・・
家に着く頃には暗くなっていた。
うーん、結構長く占い師のおねーさんのところにいてしまった。
500円しか支払っていないけど、生活大丈夫かな・・
こっちも幼馴染を守るにはどうすればいいか考えないと・・隣家とはいえ、交流ないと無事を確認することすらできない。
有馬「ただいまー。」
母さん「お帰りなさい。ねぇ、悪いんだけど白河さんちへ回覧板を届けてくれない?」
有馬「え?あ、ああいいよ。」
なんかタイミングよる白河さんの様子を見に行けそう。
・・・・
外に出て窓から白河さんの部屋を確認する。
・・電気ついていない。
ぴんぽーん。
白河母「はーい。あら、お隣の有馬ちゃんじゃない。回覧板?ありがとね。」
白河母「そういえば、まだ真昼が帰ってないの。いつもは帰っている時間なんだけど・・」
有馬「あ、あの、携帯は?」
白河母「電話もメールもしたけど返事がなくて・・」
有馬「お、俺ちょっと捜してきます!」
まさか、まさか、まさか!
・・
・・・・
急いで一番近くの公園にやって来た。
そこそこ大きな公園なんだけど、大通りへ行く道から外れているから近所の人もあまり来ない。
白河さん・・ここにいるのだろうか?
俺は占い師のおねーさんからレンタルした眼鏡をかけた。
触った物の記憶を見ることができるんだっけ。
俺は公園の水飲み場に触れた。
映像がおぼろげに見え始めた・・はっきり見るため俺は目を閉じた。
人がふたり歩いている。
幼馴染の白河さんと見知らぬ男だ。
ふたりは公園の奥へ進んでいった。
映像が公園の時計を映し出す・・そこでサイコメトリーを終わらせた。
現実の時計を見る。ふたりが通ってからまだ5分くらいだ。
急ごう。俺は公園の奥へ向かった。
・・・・
いた!
ふたりはベンチに座っていた。
男の手は・・白河さんの身体に触れていた。
だけど白河さんに嫌がる素振りはない・・・・俺が出しゃばることじゃないかもしれない。
ふたりは恋人同士かもしれない。
でも。
でも。
なぜか辛いんだ。
有馬「白河さん!!!!!」
少し距離を開けて声をかけた。
男がこちらを見た。
・・夜だしちょっと距離あるし、帽子かぶっているから男の顔はよく見えない。
なんとなくだけど、学生って感じはしなかった。
あ!
男が逃げ出した。
有馬「待て!」
追いかけようとしたけど、白河さんの方が先だと思った。
あれ?
白河さん・・・・ベンチに座ってぼーっとしている。
あのーもしもし?
有馬「白河さん?」
しかし白河さんの返事はない。
んー?
まじまじと白河さんの顔を覗き込む。
・・かわいく成長したなぁ。あと胸も結構・・
起こすためなら触っても・・いやでも・・仕方ない、うん仕方ないよね。
有馬「・・」
俺は・・・・白河さんの頬をぺちぺち軽く叩いた。
うう、胸を触りたいよう。
真昼「・・え・・?」
有馬「起きた?ぼーっとしていたけど大丈夫?」
真昼「え?あれ?私・・なんでこんなとこにいるの?」
有馬「どうやって来たか・・覚えていないの?」
真昼「あれ?緑川さん?え?え?」
あ、緑川 有馬です。
白河さんは何も覚えていなかった。
どうやって公園に来たのかも、男のことも・・
・・
・・・・