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魂のレッドライン  作者: ギン次郎
1.5章 六文町の些細な日常
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95話 城内 光の許嫁!?

「と、言う訳でこれからよろしくね。ヒカ君」


 ニコッと笑いながら大ちゃんはそう言うが、俺は未だに驚きを隠しきれなかった。

 いや、だって許嫁だよ? 結婚ですよ??

 一瞬で『あー、そうだったんだ。うん、よろしく』とか言えるヤツいないでしょ、絶対。


「え、えっと……。ちょっと待ってね」


 俺は必死に過去の記憶を探る。

 脳内でどんどんと過去へタイムスリップ。

 かつての記憶を取り戻すのだ、何かの間違いの可能性もあるかもしれん!




 ー10年前だったと思ういつの日かー

『ねえ、光?』


 まだ起きたばかりで半分寝ぼけている俺に、婆ちゃんは妙に変な笑顔で話しかけてきた。


『何? ばーちゃん』


『大ちゃんがそばにいてくれたら、嬉しいかい?』


『大ちゃん……うん!』


 言葉の深い意味も知らず俺は元気よく答える。


『そうかそうか。……よし! 口実ゲット!!』


『?』


『あ、いや。何でもないよ~』


 適当に誤魔化し、ガッツポーズ。

 そんな婆ちゃんを俺はただ見ているだけだった。




 ー現在ー

 うん、俺言ったわ。

 でもこれは酷くないか? 詐欺じゃないか?

 普通に問題な気がするんだが! 婆ちゃん!!


「ご……ご主人?」


「へっ!?」


 しばし考え込んで微動だにしなくなった俺に、村正ちゃんが心配そうな顔しながら声を掛ける。


「ど、どうしたんですか?」


「あ、いや……なんでもないよ。ちょっと考え事を」


「そ、そうですか……」


 まあ、それはいいとして。

 どうしようか、この場はかなりカオスである。


 びっくりして未だに凄い顔してる、薫。

 何でか知らんけど超赤面している、宇水さん。

『またかね?』とでも言いたげな、リーム。

 まだちょっと心配そうな顔してる、村正ちゃん。

 メチャクチャ顔が引きつっている、シナトス。

 そして満面の笑みでこちらを見る、大ちゃん。


 お、落ち着け。

 一体俺は何からどうすればいいんだ……。


「ヒカ君?」


「え? あ、はい」


「ど、どうしたの? さっきからちょっとなんか変だけど」


 いやこれが普通の反応だと思うんですが。

 なんで大ちゃんはなんともなさそうなんですかね?


「いや、びっくりしちゃってさ……」


「びっくり……? ああ、えっと……もしかして……」


「ん?」


「ヒカ君は私じゃ嫌かな?」


 ふぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!???

 いや、違うんです。そうじゃないんです。

 寧ろ俺にはもったいないぐらいなんです。

 ああ、いつもは凛としている大ちゃんの、雰囲気が少しズレただけでこんなにヤバイのか……。

 胸を押さえながら、息絶え絶えになる俺。

 と、とりあえずだ。

 なんとか話を少しづつ進めなくては……。


「あ、いや。そう言う訳ではなー」


「本当!? 良かった、ずっとそこが心配だったの!!」


 超笑顔になる大ちゃんと後ろでさらに凄い顔になるシナトス。

 嬉しさのあまりか俺は大ちゃんに手を握られ、もうしどろもどろである。

 頭が沸騰しそうなんだが。

 と、ここでシナトスがスッと立ち上がる。


「そう。良かったじゃない、ヒカル。こんな美人の許嫁がいるなんて」


 シナトスは笑顔だが、その背後から感じる殺気が尋常じゃない。

 笑顔で放つその言葉に圧倒的に呪詛をため込み、目力だけでどうにか殺せないかとしているかのようだった。


「シナトス……?」


「さ、私達は帰りましょう。お二人のお邪魔になってしまうわ」


 言葉は丁寧だが、一音一音に死にそうなぐらいの圧力がある。


「え? でも……俺まだもうちょっとこいつらの話聞きたー」


「帰りましょう」


「……はい」


 あの恐れ知らずの薫が黙る程の圧力である。

 てなわけで、大ちゃんと俺を残して皆退出。

 シナトスは最後に部屋に残って、ドアを閉める時に一言。


「じゃあね、ヒカル」


 もう一生の意味で『じゃあね』に聞こえたのは俺だけだろうか。




 ーシナトスの家ー

 さて、どうしたものか。

 家に帰ってそうそうお嬢は、自室に閉じこもってしまった。

 まあ理由は明確なのだが。

 それを吾輩が口にすれば、気が付いたときにはゴミになっているだろう。

 吾輩だって命は惜しい。


 しかし、このまま放置すれば大和嬢の命が危ない。

 もちろん、城内 光の命も危ない。

 というか今夜あたりもう決行しそうでヤバい。


 まったく。

 こういう時、保護者と言うのは面倒なものだ。

 しかし吾輩は正しき道を示す……まではしなくとも言わなくてはいけないことがあるのだ。

 命を懸けてでも。


「お嬢?」


「何?」


『何?』という一言に籠った迫力、重み、暗さが尋常じゃない。

 まさにブラックホールだ。


「まあ、気持ちは……すまん分からないがね。君は自分から何かしたのかい?」


「……」


「未来は変えられる。しかし、変えようとしないと変わらない。君は何かしたかい? 何かを変えようと努力したかい?」


「……」


「恥ずかしさや恐怖があるのは分かる。とても勇気が必要なことでもある。しかしその勇気がないと変わらないんだよ? というかこういうことはいつもエルメに君が言っていることだろう?」


「……だって」


 ドアは開けずに、そのまま小さく呟くシナトス。


「?」


「だって私は死神だし……あの人は許嫁。つまり昔からの約束なんでしょ? 無理よ、勝ち目がない」


「それがどうしたって言うんだね?」


「へ?」


「『死神』だろうが『人間』だろうが、何も違いはないじゃないか。昔からの約束? なぜそれに縛られなくてはいけない?」


「……」


「彼がそんな細かいことを気にすると思うかい? 大事なのは『過去』よりも『今』なんじゃないのかい?」


「……」


「さあ、吾輩が話すのはここまでだ。あと自ー!!!」


 と、ドアの横の壁にもたれて話していた吾輩は、思い切り開かれたドアが顔面にヒット。

 しかしお嬢は気にせず、すたこらと玄関に向かっていく。


「やれやれ。ここぞという時に急に弱気になるのは、お嬢のよくない癖だな。しかし、この扉内開きに変えた方がいいかもしれんな……」




 ー互いの家の前の道路ー

「あ、貴女はシナトスさん。息を切らしてどうなされた?」


 ちょうどドアを開けた時、目の前に大和がいた。

 今から帰るところのようだ。


「アンタね……」


「?」


「いきなり横入りしてきて、美味しい所だけ持ってこうなんて虫のいい話があると思ってるんじゃないわよ!」


「へっ!?」


「確かに私は今まで特になにも出来てなかったけど! 光に出会ってからずっとずっと思ってきたこの気持ちを! そんな十年も前の約束なんかに打ち砕かれてたまるもんですか!!」


「……なるほど。貴女も……」


「そう! 私はヒカルが好き!!!」


 シナトスの思い込めた叫びは夕焼け空に響き渡る。

 大和もその思いの深さをしっかりと理解したのか、ゆっくりと言葉を返す。


「いいだろう。なら勝負といこうか」


「勝負?」


「ヒカ君が結婚出来るようになる18歳まで、あと一年ある」


「うん」


「その間にどちらが彼に好かれるかという事だ。私とて、皆から祝福された結婚をしたいからな」


「分かった。ようするに18歳の誕生日にどっちが選ばれるかってことね!」


「そういうことだ、言っておくが一切私は諦めるつもりなどはないぞ」


「望むところよ!」


 こうして六文市ににて、光をめぐる正妻戦争は幕を上げた。

 二人は知らない、この戦いに参加するもがまだまだいることを。

 それでもある意味人生でもっとも大事な戦いの火蓋は確かに斬って落とされたのだった。




 ー城内家ー

「いやー、ご主人。さながら18禁ゲーム並みのハーレム状態ですね~」


「……そう? 別に大ちゃんぐらいしか俺に好意向けてる人いなくない?」


「え?」


 その頃、当の本人はいまだなんにも気づいていないのだった。


茉「私達も三人も!」

ア「戦いに参加するのですよ!」

エ「私は違う! 一緒にするな!!」


次回 96話「町内二人三脚スタンプリレー!!(開戦)」

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