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魂のレッドライン  作者: ギン次郎
1.5章 六文町の些細な日常
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91話 かぜの薬にご用心!?

「へーっくしょん!!!」


「……ご主人、また風邪ですか?」


 祝勝会から数週間。

 あれから六文市はすっかり平和だった。

 すると、やっぱりどうしても気が抜けてくるというものであって……。

 俺はまた風邪をひいてしまいした。


「おかしい……。最近は運動しなかったり、夜中までゲームしたり、朝10時ぐらいまで寝てただけなのに……!」


「おかしいのはご主人ですよ!! 生活のリズム乱れまくりじゃないですか!?」


「ははは……。今、風邪薬ないしシナトスにちょっと貰いに行くかな」


「まったく……」


 と、いうわけでくしゃみ連発しながらお向かいへ。



 ーその頃、リームとロメリアー

「どうだい? 私の新作、『かぜの薬』! 効果覿面だろう?」


「なるほど……。いいんじゃないか? まだまだ改良の余地はありそうだがね」


「まあ、それは否定できないけどね……。ところでリーム、私はお客だぞう? 茶や菓子の一つ出してもいいんじゃないか?」


「それは君が言い出すことではないだろう」


「まあまあ固いこと言いなさんな、ほら私は知っているんだぞ? こないだかなーりお高い菓子を買っていたじゃないか、あれを出しておくれよ」


「なッ!? それをどこで知った!?」


 なんて言い合いをしながら、台所へ。

 かぜの薬はと言うと……机の上に置きっぱなしだった。



 ー玄関ー

「失礼しまーす」


「ん? ああ、光に村正ちゃんじゃない、何か御用?」


「実はですね、風邪薬を切らしてしまいまして……」


「なるほどね、ちょっと待ってて」


 そう言うと、いそいそと奥へ向かっていくシナトス。


「サンキュー」


「まったく……薬もそうですけども、そもそも風邪ひかないでくださいよ」


「ごめんごめん……へっくし!!」




「ええと、風邪薬はどこだったかしら……」


 戸棚のなかを探すが、なかなか風邪薬は出てこない。


「胃薬じゃない、頭痛薬でもない、これは……下剤!? なんでこんなのあんのよ」


 違う薬はポンポンと出てくるのに、一向に風邪薬だけ見つからなかった。


「ありゃ……これは家も切らしてたのかな? どこにもないな……」


 仕方がないので光に『ごめん、なかった』と報告に行こうとしたその時。

 机の上に置かれた一つの瓶を見つけた。


「……? これは……『かぜの薬』! 良かった、風邪薬あるじゃない!」


 てなわけでその薬を持って光の下へ向かうシナトス。

 その直後にロメリアとリームは戻って来た。


「ええい! あの菓子はやらんと言っているだろうが!」


「まったく、ケチだなぁ。そんなんじゃモテない……ってあれ? 薬は?」


「どうした?」


「ここに置いといた薬がないんだ」


「……とか言ってどうせ別の場所に……」


 そう言おうとした時、戸棚の周りに散らかっている薬を見つけたリーム。

 そして、頭のいい彼はここで事態を察する。


「まずいぞ、ロメリア!」


「へ?」


「お嬢は、さっきの薬を『風邪の薬』と間違えてるんだ!」


「何!?」


「早く、急がないと……! まったく、だからネーミングがややこしいと言ったのに!」


「言ってないだろう!?」


 急いで部屋の中を探しまわる二人。

 しかし、時既に遅かった。


「ぬわあああああああああああああ!?」


 響く光の絶叫。

 それは『かぜの薬』を飲んでしまったことを一瞬にして理解させる。


「くっ……! 遅かったか!!」



 ーその頃、光ー

「ぬっわああああああああああああああ!!!!!!!」


 さて、今の俺の状態を説明しよう。

 まあ言われたところで理解できないと思うが、俺も出来てないし。

 シナトスから貰った『かぜの薬』。

 なかなかくしゃみが止まらない俺は、それを早速飲んだんだ。

 まあ、その時は特になんともなかった。

 しかし、その後くしゃみが出た。

 まあ薬を飲んだからと言って、そんな一瞬で風邪が治るわけではないのは分かっている。

 問題はくしゃみが出たことではないんだ。

 その威力だった。


 今、俺はくしゃみで空を飛んでいる。


 飛んでいるというより、吹き飛んだの方が正しい気もするけども。


「なんで!? なんでー!!!!!!????????」


 当然理解できるはずもなく、軽く上空500メートル近くまで吹き飛んだ俺。

 しかし、くしゃみの威力も無限ではない。

 すなわち……。


「……あ、あれ? 気のせいかな……? 落ちてるような……落ちてるね! 落ちてるねー!!!!!!」


 だんだんゆっくりになっていき……あるタイミングで糸が切れたかのようにプツンと落ちていく俺。

 それはそれは凄い勢いで、来た時よりもさらに激しい。

 そしてそれは、高所恐怖症の俺からすればまさに拷問だった。


「死んじゃう! 死んじゃうよ、俺ー!!!! 自分のくしゃみで死んじゃうよー!!!!!」


 マジ泣きしながら、大絶叫しても上空500……いやもう400ぐらいか。

 とりあえずそんなところには助けてくれる人はいない。


「あああああああああああああ!!!!!!!!」


 こうして五体のオンネンを討伐した俺、城内 光はその一生を終え……なかった。


「はあ……はあ……はあ……。なんで、吹っ飛んだの?」


 息を切らしながら、リームに跨り俺を助けてくれたのはやはりシナトスだった。

 これでシナトスに命を救われたのは3回目である。

 一生のうちに3回も死神に命救われた人間なんて、多分人類史上初だと思う。


「シナトス……」


 上空約300メートルの高さが怖すぎて、シナトスに俗に言うお姫様抱っこされた状態でガチ泣きとかいう黒歴史案件になってしまったが。

 とりあえず俺は助かったようだ。



 ー地上ー

「で? 一体これはどういうことなんだ?」


「いやあね、実は君が飲んだ薬なんだが……」


「うん」


「あれは『風邪の薬』じゃないんだよ」


 そっぽを向きながら、話すロメリアさん。


「じゃあ何の薬なんですか?」


「これは『風の薬なんだ』」


「『風の薬』?」


「ああ、私が護身用に作った薬なのさ。飲むだけで、吸う息と吐く息の威力が数千倍になるというものなんだ。本来普通の呼吸なら自分で強弱を制御できるんだが……」


 再び別の方向を向く、ロメリアさん。


「『くしゃみ』は威力が強すぎて制御出来ないみたいなんだ……」


「それで……俺は上空500メートルまで吹き飛んだと?」


「ああ、そう言うことになる」


 ハハハと笑いながら語るロメリアさん。

 しかし、これは正直言って笑い事ではない。


「えっと……この薬の効き目はどれぐらいで切れるんですかね?」


「24時間」


「……解毒剤とかは?」


「毒扱い!? ……まあ、残念ながらそういうものもない」


 沈黙。

 俺は今日一日どうすればいいんですかね?


「なに! 心配することはないさ、私に任せておきたまえ!」


「……」


 ロメリアさんはそう言うが、はっきり言って1ミリも信用できなんですが。

 さて、そう言ったロメリアさんがどこからか持ってきたのは……。


「ほら、これを使えば問題ないだろう?」


「いやいや! 日常生活的な問題は!?」


「……まあご主人の堕落した生活が風邪をひいた原因なんですし、自業自得では?」


「ええええええ!!!!??????」


 と、いうわけで今日一日『総重量80キロの鋼鉄の服』を着て過ごすことになってしまいました。

 どこかで何か良くないことをすると、そのツケはいつか帰ってくる。

 それを学んだ一日だった。

 ちなみに風邪はもちろん悪化しました。


次回 92話「復讐に身を委ねて(前編)」

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