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魂のレッドライン  作者: ギン次郎
1章 夢を見た天使
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83話 己を懸けた決闘

美紀正路の計画を止めるため、天界に乗り込んだ光達。

彼のいる部屋の扉を開くと、そこにはルークが待ち構えていた……。

「剣を取れ、城内 光! これが最後の勝負だ!!」


 今までにない鋭い表情をして、俺を待ち構えるルーク。

 そしてその後ろにある扉からはさらに凄い気配を感じた。

 つまりルークが美紀正路の下へ向かう最後の障壁というわけになる。


「分かった。頼むよ、村正ちゃん」


「もちろんです」


 人の姿から木刀に姿を変えた村正ちゃんを構える。

 気迫が違う。

 今までのルークから感じた気迫とは桁違いの気迫を感じる。

 それはルークが今まで以上に全力であるということだ。


「ヒカル、私もー」


「悪い。わがままなのは分かるけど、ここは俺一人に任せてくれないか?」


「え?」


 俺に加勢しようとしていたシナトスを、俺は自ら止めた。


「合理的じゃないのは分かるけどさ、どうしてもこの戦いは引けないんだ」


 ルークとはそう何度も剣を交えたわけではない。

 実際一対一の真剣勝負をしたのは、前の一回だけだ。

 それでも、俺からすれば負けられない相手だった。

 そしてそれはルークも同じようだった。


「安心しろ。お前たちが複数で攻めない限り、こちらも複数で攻めることはない」


 ルークの言う通り、他の所にはウヨウヨいるクロカゲがこの部屋には一匹もいなかった。

 それは姿を隠しているわけではなく、実際に気配も感じない。


「正真正銘の決闘ってわけだな」


「そういうことだ」


 互いに剣を構え、少しの間静寂が続いたが……。


 少し風が吹いた瞬間。

 弾かれたように俺達は同時に距離を詰める。


 ダッシュと同時に俺は上から、ルークは下から。

 剣を振りかざし、互いの剣は重なり合う。

 押し合う力は互角。

 まるでその場に固定されたかのように互いに剣は微動だにしない。


 が、次の瞬間。

 ルークは剣に込める力の向きを変え、俺の剣を滑るように受け流す。

 ぶつかり合いから逃れたルークは回るように、しなやかに剣を振りかざす!


「ぐあっ!!」


 顔に向かって飛んできたルークの剣をなんとか抑えるも、その勢いまでは殺しきれない。

 顔を斬りつけらるのは防いだが、そのまま俺は後ろに吹き飛んでいく。


 流れるように動くルークは前の行動の勢いを無駄に殺したりはしない。

 そのままさらに勢いをつけ、抜刀。

 唸るように風を斬る音をたてるカマイタチが俺に襲いかかる。


「甘い!」


 しかし、もうカマイタチは自分でも使っていてその剣筋はとうに『見切る』を越えて『慣れて』いる。

 床に村正を突き立て、引き抜くように上に斬りあげる。

 それに巻き込まれた床の欠片は、まるで俺を包み込むかのように真空の刃から守ってくれる。

 これもかなり前に『見切った』即席の防壁術だ。


 しかしー


「甘いのはどっちだ。このレベルの戦いで安易に砂埃を起こすのは、命取りになるぞ!」


「なッ!?」


 俺を守った砂埃を斬り分けながら、ルークは俺に迫る!

 斬りあげた村正をすぐさま振り下ろし、なんとか防御。

 が、ルークの勢いはそんなことでは抑えられない。


 移動するたびに、攻撃するたびにどんどんルークのスピードは増していっている。

 加速、加速、加速。

 直前の行動の勢いを殺さず次の行動を取るため、スピードがどんどん速くなっていく。


 口で説明するのは簡単だが、それは尋常じゃないことである。

 前の行動の勢いを殺さずに行動するということは、常人にも出来ることだ。

 しかし、それをどんどんと重ねていくのは普通は出来ない。

 すなわちそれを可能にしたルークは、理論上常識を超えた速度を出すことが出来るということになる。


「流石に驚いたようだな、これが私のもう一つの技『加速走術』。速さが命の抜刀術の応用と言う訳だ」


 そう言う間もルークのスピードが衰えることはない。

 少しづつ、しかし確かにその速度は増していく。


「ぐっ……!」


 まさに疾風迅雷。

 風のように流れるルークを抑えることは出来ず、しかし加速されていく剣は同時に威力も増していく。

 円を描くようにステップを踏み、斬りつけるその一瞬だけ俺に近づいてくる。


 もちろんこの戦法も無敵というわけではない。

 徐々に加速していくには走り続ける必要があるため、いつか体力の限界が来るはず。

 しかし、今の俺がそれを待っていたら先に俺が死んでしまう。


「どうだ! 流石の貴様もこれには対応出来まい!!」


 脇腹、腕、足。

 まだ大怪我まではしていないが、もう全身切り傷まみれだ。

 どうにか、どうにかしてこの速度を殺さないと!!


「喰らえ!!!」


 相手の動きに集中しても、速すぎて行動が追い付かない。

 斬りつけた場所にはもう既にルークはおらず、隙だらけの背中に再び斬撃。


 打つ手がない。

 多分ここまで速くなってはもうカマイタチでも追いつけないだろう。

 動きを予想するにしても、まさに疾風のように動くルークにはさらにその裏をかかれてしまう。


「ヒカル……」


 シナトスが心配そうな顔をするが、割り込むわけにもいかない。

 そうすれば相手もクロカゲの大群を呼びよせてくる。

 第一俺が頼んだことだ、今更取り消せない。


 しかし、状況も絶望的だ。

 相手の速さを殺す以前に、その速度に追いつけない!

 相手に触れることも出来ないのにどうやって減速させればいいんだ!


『ご主人!!』


 その時、脳裏に村正ちゃんの声が響く。


『一つの考えに囚われ過ぎないないでください! 今のご主人にあのスピードを殺すのは無理です!!!』


 スピードは殺せない。

 なら、どうすればいい!?

 あの速度のままアイツを倒す方法なんて……。


 と、その時。

 脳裏にとある戦いの記憶がよぎる。

 それは伊農村での『大山のオンネン』との戦いだった。

 そうか……速度を殺せないのならいっそのこと!!


 次の瞬間。

 俺はさっきと同じように、駆け出していく。

 しかし、今度はルークがいない方向にだ。

 そのまま俺は走っていき、とある場所で動きを止めた。

 というより、止まるしかなかった。

 すなわちそこは部屋の角、四角形のこの部屋の四隅の一つ。


「ヒカル!?」


「死に際を前にして血迷ったか!? 自ら追いつめられるとはな!!!」


 もちろん他に行き場のない俺に向かって、ルークはさらに加速しながら向かってくる。

 しかし……追いつめられているからこそ今までと違うこともある。


 迫るルークに向けて俺も村正を構え直す。

 放つ技は一つ、かつて侮辱ともいえる行為を受けたこの技以外にあり得ない!


「爆決天牙!!!!」




「がはっ!!」


 勢いよく吹き出された血と共に、男の乾いた乾いた声が響く。

 ボタボタと零れだす赤い血は、その場にいる全員にその男の『死』を連想させた。


次回 84話「最後の一瞬まで……」

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