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魂のレッドライン  作者: ギン次郎
1章 夢を見た天使
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77話 語られる真実、そして……

「ほう……。そういう物言いをするという事は、君も私を疑っていたんだね? 城内君」


 美紀正路は少し意外だという雰囲気で、俺に向けて話しかける。

 しかし、俺はそれよりも気になることがあった。


「君『も』?」


「ああ、どうもエルメ君も私を疑っていたようでね……。まったく、容疑者から外れるためにいろいろと策を講じたというのに」


「エルメさんが?」


「そうだとも。証拠に君たちが初めて天界に来たときに、敢えて『私一人で』迎えに行かせて何かしないか監視したり、私が下界に行けないようにしたり。彼女もそれなりには行動していたんだよ?」


 いつもと同じような雰囲気、口調で話しかけてくる。

 しかし、その内側から感じる気迫は今までとはまったく違った。


「城内君。良ければ聞かせてくれないかい? いつから私を疑っていたんだね?」


「……初めからと言えばいいですかね」


「何?」


「貴方は俺の次元眼が普通じゃないことを知っていた。まだ俺は誰にも言っていなくて、事実エルメさんもまだ知らなかったのに。その時に『ん?』とは思いましたよ」


「なるほど……。そんな些細なことでさえ君にとっては有力な情報と言う訳か。まったく……本当に油断ならないな」


 睨むように俺を見据える美紀正路。

 その迫力に冷や汗が出てくる。

 そんな状況で次に口を開いたのは、今の今まで驚きで喋ることも出来なかったシナトスだ。


「せ、先生なんですか……? 本当に先生が黒幕なんですか!?」


「……悪いね、シナトス。信じたくない気持ちも分からなくはないが、これが真実だ」


 少しだけ哀しそうな表情で、そう告げる美紀正路。

 シナトスは未だ信じられないと言った感じだ。


「じゃ、じゃあ! クロカゲもオンネンも全部てめえの差し金だって言うのかよ!?」


 薫も興奮気味に問い掛ける。


「そういうことだ。文字通り私は今回の事件の黒幕というわけだからね」


「なッ……」


 美紀正路を睨みながらも、困惑が顔に出ている薫。

 俺は冷静に一つづつ疑問を解決していく。


「……じゃあ、グレイル・アルバートはどうなんです?」


「あれはただの影武者というか、フェイクさ。私に疑いがかからないようにする為のね。今、彼がどこで何をしているのかは知ったことではない」


「……」


 淡々と語る美紀正路。

 もっともここまで来れば、もうそれも当たり前のことかもしれないが。


「それなら、どうして今になって俺達の前に現れ自分のことを話したんですか? 5体のオンネンが倒された、これは貴方にとっては良くない事でしょう?」


 俺としては痛い事実を突きつけたつもりだったのだが。

 しかし、この質問を聞いて美紀正路は大きく笑いだすではないか。


「はははははは! 初めに言っただろう『本当に5体のオンネンを討伐した、君達の呆れるほどの実直さ』と。5体のオンネンなど、所詮ただの時間稼ぎに過ぎなかったのだよ!」


「なッ……!?」


「かなりギリギリではあったが、もう準備は全て整ったということさ」


「準備……だと?」


「おや、流石の君もここまでは見切れなかったか。このまま、謎のままというのも気分は良くないだろう。特別に教えてあげようではないか、私の真の狙いをね」


「……真の狙い?」


「ああ、そうさ」


「……」


「君達もなんとなく知っているだろうが、この世にはバランスというものがある。それの微妙な調整を丁寧に天使と死神が保つことで、この世は成り立っているのだ」


「……」


「これを乱すのはそう簡単なことではない。しかし、もし一度でも乱れてしまえば生命という概念そのものが成り立たなくなる。回転しているコマを指で押さえたと思えばいい」


「も、もしかして……!」


「そのもしかしてだ。このバランスを乱す為の装置を作り始めたのは良かったんだが、これには莫大な時間が必要でね。いくらなんでも、何のカモフラージュもなくこんなものを長々と作っていたら、さすがにバレてしまう」


「なるほど……その装置を作る間、天使と死神たちの目を欺くためにオンネンとクロカゲを使ったのか」


 冷静にリームが返す。

 しかし、その顔には今までにない緊張があった。


「そういうことだ。そして私が君たちの前に姿を現したのは、それが完成したということさ」


 カモフラージュ。

 たくさんの人の命を奪ったこの事件が、ただのカモフラージュだなんて!

 怒りで信じられないぐらい、力強く手を握りしめていた。


「……どうして」


「ん?」


「どうしてこんなことをするんだ!! 何で人を殺そうとするんだ!!!!」


「……良いだろう、意味もなく殺しをするような輩と同じにされても困るのでね。話そうではないか、少し長くなるがそれは許してくれよ?」


 そう言うと、美紀正路は過去のことを語り始める。

 その顔には邪悪さとはほど遠い、懐かしさと悔しさが見えたような気がした。


次回 78話「今昔天使物語 ~落ツル花ビラアト二枚~」

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