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魂のレッドライン  作者: ギン次郎
1章 夢を見た天使
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74話 邪竜に挑め

「……」


 その日の朝は、なぜか妙に早くに目が覚めた。

 今日は早朝のバイトもないので普段なら8時ぐらいに目が覚めるはずなのだが。

 なんだか街全体にピリピリとした緊張感が漂っている気がする。

 ハッキリ言ってあまりいい雰囲気ではなかった。


「最後のオンネンか……?」


 一人、外を見ながら呟く。

 まだ朝日が昇ったばかりで、東の空がとても眩しい。

 綺麗な朝日が余計に緊張感を加速させる。

 そして、次に聞こえた音は緊張感を決心に変えたのだった。


 ガチャ

 鍵をかけているはずのドアが開いた音がする。

 そんなことが出来る(もとい平気でそんなことをする)人は、泥棒かもしくは……。


「ああ、もう起きていたのね。ヒカル」


 シナトス達しかいない。


「うん。なんか胸騒ぎがして、寝付けなかった」


「ほう……。やはり全てを見通す次元眼の持ち主なだけある。慣れてくるとある程度敏感になってくるのかな?」


 シナトスの後ろからリームも出てくる。

 その表情にはやはり緊張感ののようなものが見えた。


「……遂にか?」


「ああ、とうとう現れたよ。最後のオンネン、その名も『邪竜のオンネン』がね……」



 と、いうわけで早朝から会議である。

 なお薫達に関しては『朝早くから起こすのも悪いだろう』とリームが言うので、今はいない。

 なんで俺にその気遣いが出来ないのかは疑問であるが、それは後で問い詰めるとしよう。


「観測されたのは昨日の深夜。しかし、反応からして現れたのは1週間ほど前だと思われる。この六文町から少し離れた場所に邪竜のオンネンが発見された」


「邪竜のオンネン……」


「ああ、まだ見た目しか観測できていないがね。黒い鱗、大きな翼、鋭い爪、独特のフォルムどこからどう見てもあれはまさに『邪竜』と呼ぶのが相応しい」


「そうか。……ん? ちょっと待て、今1週間ほど前とか言ったか?」


 今まで出てきたオンネンは、どれも全く違う見た目と能力を持っていたがある程度共通しているところがあった。


 夜にしか行動しない(一体例外がいたが)

 同じ場所には2度は現れない(騎兵は何度も現れたが)

 日光に当たると姿を消す(消さない奴もいたが)

 2、3日で活動場所を変える


 などだ。

 まあ、例外が結構あるので一概にそうとは言い切れないが、今までの話だと『オンネン』が1週間も同じ場所にいると言うのは聞いたことがなかった。


「ああ、君が疑問に思うのも無理はない。実際今までのオンネンが何日も同じ場所に居座ることはなかった」


「そうだよな」


「しかし、このオンネンは何日もここに居座っている。加えて今までのオンネンと違い、このオンネンはクロカゲと共に行動をしていない」


「え?」


「つまりこのことから言えるのは、根本的にこのオンネンは役割が違うのだと思う」


「役割が違う?」


「ああ、今までのオンネンは『クロカゲの守護』が目的だった。だからクロカゲが活動する夜に行動し、2、3日でクロカゲが別の場所に移動するのに合わせオンネンも移動していた。しかし、このオンネンはそうではない」


「……」


「同じ場所にずっと居座り、何もしないのはこのオンネンの役割が『クロカゲの守護』ではないから。恐らくこのオンネンは明確に『我々と戦う』ことを目的としている」


「……つまりオンネンは俺達が来るのを待っているってことか?」


 と、ここで今まで黙っていたシナトスが代わりに話す。


「そうでしょうね……。今までのオンネンはクロカゲに合わせて動かないといけなかったから、待ち伏せは出来なかったけど、このオンネンにはそれが出来る。多分自分の戦いやすい場所で私達を待っているんだわ」


「……なあ、何もしてないんだろ? なら、無視するのはダメなのか?」


「それは無理よ。オンネンが今何もしないのは、『いつ私達が来ても万全の状態で戦えるようにするため』であって、私達が戦わないと分かったら何をし始めるか分かったもんじゃないわ」


「……そうか」


 つまりは今までよりもさらに厳しい戦いになるということだ。

 まあ最後のオンネンともなればそれぐらいは予想出来てはいたが。


「分かった。なら今回はいつも以上に慎重にいかないとな」


「そうね……」


 まあ、だからと言って『戦わない』という選択肢はないのだ。

 張り詰めた緊張感のなか、俺達は深夜オンネンの居場所へと向かった。




 ー深夜ー

 さて、今朝とは違い今はちゃんと薫達もいる。

 後からちゃんと話は聞いたそうだ。


「しかし……オンネンのやつも厄介なところに出たな……」


 オンネンが現れたのは何もない、だだっ広い空き地。

 何もないなら特に厄介なこともないのでは?というのは間違いだ。

 寧ろ何もないから厄介なのだ。


 何もないという事は戦いの間に利用できるものがないということ。

 そして、身体の大きなオンネンの動きを阻害するものがないということ。

 さらには、身を隠す場所がないということになる。


 さらに今回のオンネンは空を飛ぶことが出来る。

 街中ならビルやなんやらが邪魔で自由に飛び回れないが、ここならそれも可能になる。


「……! 出たな」


 と、周りの状況を確認しながら歩いていたら、暗闇の奥から鋭い視線を感じた。

 オンネンだ!


【来たか……。正義なる者達よ。さあ我を討て、我に勝て。お前たちが正義であると言うのなら、悪しき我が身を討ち滅ぼせ】


 暗闇から響く声。

 沖田総司や3回目の騎兵のオンネンのような、明確な意思を持った声だ。


「良いだろう。望み通りお前を倒させてもらう!!」


 剣を構えオンネンに迫る。

 それはまさに傍から見れば、邪竜とそれを倒さんとする英雄のように見えるのかもしれない。

 古い神話を再現するかのように、『邪竜』と『正義』の戦いは幕を上げた。


次回 75話「邪竜は炎を、正義は奥義を」

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