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魂のレッドライン  作者: ギン次郎
1章 夢を見た天使
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73話 命の意味

「君は『生きる』ということに意味があると思うかね?」


 美紀さんの質問は確かに、とても重い質問だった。

 恐らく遠い昔から人々問い続け、悩み続けた疑問である。

 ならこの質問を俺は適当に答えてはいけない。

 しっかりと考えたうえで発言する必要がある。


 しかし、俺が答えるまでそう時間はかからなかった。


「『生きる』ということ自体に意味があるかは、正直分かりません」


「分からない……」


「だってこの人生は最後の最後まで何があるか分からないのに、初めからそれを見出すことは誰にも出来ないことだと思うんですよ」


「……」


「それに人によって人生は様々で、一概にこれが『生きる』だと言い切ることが出来るものは存在しない。漠然としてて答えようがないですね」


「なら、どうして人間達は生きていくのだと思う? 誰もその意味を知らないのに、どうして多くの人間達は生きていこうと思うんだ?」


「それは……その人生を意味のあるものにするためだと思います」


「なに?」


「『生きる』ことの本当の意味は誰も知らない。だけど、だからと言ってこの世に生まれて生きていくことは決して無駄ではない」


「……」


「人間は『生きる』意味を知らない。だから、意味を得るために『生きる』のだと思います」


「意味を得るために……」


「だって結局その人が『生きる』ことに意味があったのか、それが分かるのはどう足掻いても死んだ後。だから人間は死んだあとに『自分の人生は意味があるものだった』とするために生きているじゃないでしょうか」


「……」


「まあ、あくまで俺はそう思うってだけですけどね……」


 実際、俺の意見が正しいのかなんてことは分からない。

 この17年の短い人生上での経験でしか語れないから。

 それでも、美紀さんには十分だったようだ。


「そうか、ありがとう。興味深い話だったよ」


 その顔には少し寂しさと言うか、虚しさのようなものが見えた。

 しかし、俺は一つだけ聞きたいことがあった。


「……あの、じゃあ俺からも質問していいですか?」


「なんだい?」


「美紀さんは……人間が嫌いなんですか?」


「……」


「いや、あのロメリアさんが『正路がそこまで人間を気に入るのも珍しい』って言っていたので……」


「そうだね。あまり好きではないかもしれない」


「……」


「前にも話したが、私は昔下界に行っていた時期があってね。その時によくよく理解したよ、人間の『悪』をね……」


「人間の『悪』……」


「何、だからと言って無下に扱ったりはしないさ。良い人間がたくさんいることも知っているからね」


「そうですか」


「ああ。おっと済まない、そろそろ時間だ。まだこの部屋に居てもいいし、移動してもいいので好きにしてくれ」


「分かりました!」


 そして美紀さんはいそいそと部屋を出ていった。

 暗い部屋には俺と、眠る村正ちゃんだけが残される。


「……」


「……ご主人はウソつきですね」


「へ?」


 眠っていると思っていた村正ちゃんが、体勢を変えずに小さく呟く。


「美紀さんはご主人の意見を聞きたかったんじゃないですか?」


「……」


「ご主人は自分を『人間』とは見なしていない。なのに会話の間、ご主人は何度も『人間』という言葉を使いました」


「……」


「それはつまり『俺以外の大半の人達は』って意味ですよね」


「……さあ? それはどうかな、深読みが過ぎるかもしれないぜ」


「……」


 それ以上は村正ちゃんは何も言わなかった。

 俺も何も言いはしない。


「で? どうする、もうちょっと寝る?」


「いえ、もうぐっすり眠れましたので」


「そう」


 ということで、カエデの綺麗な美紀さんの部屋を俺達は後にした。



 ーロビー……のようなところー

「疲れた……」


 ロビーみたいな広い部屋に戻ると、椅子にリームが寝ころんでいた。


「大丈夫?」


「ああ……なんとか。まったくあの部屋の片づけは心臓に悪い……」


「リームに心臓ってあるの?」


「ある」


 なんて会話をしていたら、そこにシナトスも戻って来た。


「あ、シナトス。お疲れ様」


「ありがとう。もう会議は終わったから、用がないなら帰る……ってリームどうしたの?」


「疲れた」


「……ああそう」


 微妙な表情で、微妙に受け流すシナトス。


「で? もう用はない?」


「うん」


「じゃあ帰ろうか」


 というわけで帰り。

 今日は美紀さん達は忙しいのか見送りはなし。

 またまた恐怖の空飛ぶ絨毯に乗って無事……帰宅である。



 ー下界ー

「……よし。茉子は流石にいないな」


「どんだけしつこいんですか」


 おそるおそる家に戻ったが、さすがに大丈夫でした。


「ああ……何度やっても絨毯には慣れない」


「って何だらけてるんですか! 今日部活サボった分はちゃんと自主練してもらいますよ!」


「ええ!?」


「『ええ!?』じゃないでしょう!!」


 村正ちゃんがいる限り、俺はサボることは出来ないようです。

 結果として一人寂しく、道場で剣を振る俺なのでした……。



 ーその日の夜、遠方にてー

【……】


 着いた。

 あとは、待つのみ。

 我が身を砕く剣士が来るまで。

 我は待つのみ。


 邪竜は長旅を終え、しばし眠りについた。

 最後のオンネンは遂に地上に現れたのだった。


次回 74話「邪竜に挑め」

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