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魂のレッドライン  作者: ギン次郎
1章 夢を見た天使
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69話 さあ戦いを続けよう

「くらえ!!」


【ヌウ……!】


 吹き荒れる竜巻の中で、俺とオンネンはただひたすらに斬りつけ合う。

 狭い空間での戦いになると、どうしても単純な行動しか出来なくなってくる。

 今までの戦いとは違い、この戦いはまさに純粋な傷つけ合いだった。


【オノレ……。チョコマカト……!】


 オンネンは自分の作り出したものだからなのか、竜巻によるダメージを受けていない。

 そのため竜巻を無視して強引に突進して来たりもする。


 しかし、だからといって俺もやられてばかりではない。

 砕いたアスファルトの欠片を風に乗せて、それを足場として利用する。

 こうすれば狭い竜巻の中でも、結構自由に動き回れるのだ。


「竜巻の中に俺を閉じこめたのは失敗だったかもな」


【クッ……】


 もし俺が自由に動き回れないのなら、圧倒的にオンネンが有利だっただろう。

 しかし、そうではない今は話が違う。

 オンネンの大きな身体が狭い空間と相性が悪く、俺は次から次へと足場を変えて動き回れるため、寧ろオンネンには逆効果になっているのだ。


 けれどもオンネンは竜巻を消すことはしない。

 何故かと言うと……



 ー竜巻の外側ー

「くらえ! 四無一閃!!」


 薫が外側から竜巻に斬りかかるが、分厚い風の壁はビクともしない。


「ちくしょう! これじゃあ中にいるヤケッパチに助太刀出来ねぇじゃねぇか!!」


 大量のクロカゲを倒し、光の援護に行こうとした途端。

 光とオンネンが竜巻の中に閉ざされてしまったのだ。

 なんとか中に入り込もうとするも、よほど頑丈なのか奥義すら無情に跳ね飛ばしてしまう。


「なんとか、なんとかして竜巻の穴を見つけないと……」


 外からは中が見えないので、どうしても不安と心配が募ってくる。

 今までとは違う不安を感じながら、薫達は焦っていた。



 ー再び、内側ー

「竜巻を消すにも消せないんだろ? これを消したら今度は薫達が乱入して来るからな」


【……】


「でも、このままでもお前が有利とは言い切れないけどな」


【いいや。そうとは限らぬ】


「……!」


 また、オンネンの言葉の雰囲気が変わった。

 壊れた機械のような声が、人間のような声になっていたのだ。

 しかし、もう鳥肌が立つこともない。


「また、学習したのか? まあ、結構話したからな。それで? 何が限らないんだ?」


【我と汝には大きく違うものが一つある。それもかなり重要なものでな】


「何……?」


【それは『体力』だ。我に疲れなどないが、汝にはそれがある。しかも汝は狭い空間で動き回りながら戦っている。爆決天牙以上の威力の技を持たぬ汝が、仲間の援護もなしに我に勝てるのか?】


「……。さあな。勝てるかどうかはやってみないと分からないぜ?」


 しかし、実際に疲れが出てきているのも事実。

 外の様子が分からないが、俺は薫達を信じて一つ賭けに出る!


【それを聞いてもなお、戦い方を変えぬか……。しかし狂気を持つ汝の考えは常人とは違う。何かまた企んでいるな?】


「ホント……よく喋るようになったな!!」


 オンネンの言葉には答えず、振るわれる槍を避けながら少しずつ狭い空間でさらに距離を詰めていく。

 目指すはオンネンの……足元だ!


 毒を纏うクナイを地面に埋め込み、槍を打ち払い、矢を斬りながら着実に迫っていく。

 そして、最後はオンネンの足元にスライディングしながら……真上に向けて!!


「爆決天牙!!!」


 しかし、爆決天牙はオンネンに当たらず……!

 そのまま爆風は竜巻の頂点を一瞬消し飛ばしただけで、傷をつけることは出来なかった。


【残念だったな……。正面から打っても避けられると思って下から上に打ったのだろうが、流石にそう何度も同じ技は食らわぬよ……】


「……そうだよな」


【何?】


「お前なら避けられると思ったよ。俺の予想通りだった」


【……!?】


 その時、オンネンは光の意図を察したがもう遅い。

 振り返る前に、その背中を薫によって十字に切り裂かれたのだから。



【ぬおおおおおおおおお!!!!!】


 傷つき呻くオンネン。

 竜巻を維持しきれなくなったのか、俺達を囲む風の壁は消え去っていく。


【なるほど……。今の爆決天牙は合図だったのだな……】


「ああ、そうさ。外側からは分かりずらいが、内側からならよく見えたよ。竜巻の頂点の収束点、そこは周りの風を集めてる場所だから他と違って切り裂くことが出来るってね」


【本当に……油断のならない奴よ……】


 もう普通に喋っているオンネンに薫達は動揺しつつも、剣を構える。

 今回は前とは違う、正真正銘の優勢状態だった。


【しかし……相変わらずお前も甘いな】


「……?」


【東の空を見て気がつかぬのか? もう日の出まで後5分もないぞ?】


 オンネンの言う通り、もうすぐ朝日が昇ろうとしている東の空は明るくなってきていた。

 しかし光はなんともなさそうに振る舞うではないか。


「ああ、分かってるよ。でも、もう同じミスはしないさ」


 そう言うと光は剣を……地面に突き刺した。

 その瞬間、道路が完全に砕け散りオンネンと光を暗い下水道に飲み込んでいく。


【何……!?】


「アスファルトを砕いていたのは何も足場を作る為だけじゃないさ、こうやって道路を脆くしておく為でもあったんだよ」


【汝は……そこまで考えていたのか!?】


 オンネンが驚きの声を漏らす。


「ああ、俺に出来るのは『見切る』ことぐらいだからな」


【……!!】


 オンネンの感情に恐怖が走る。

 しかもそれは前回とは違う、正真正銘の恐怖だ。

 別に暗い下水道に落とされたからと言って、せいぜい30分程度の時間稼ぎにしかならないがオンネンが恐怖したのはそこではないのだ。

 それはまさに『弱者が強者に感じる恐怖』だった。


「さあ戦いを続けよう。夜が明けるにはまだ早い」


 地上には明るい朝日が昇り始めるなか、光は暗い下水道で再び剣を振るい始める。

 まるで今居る場所こそが、今の状況こそが自分にはお似合いだ、とでも言うように。


 〈続く〉

次回 70話「約束」

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