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魂のレッドライン  作者: ギン次郎
1章 夢を見た天使
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67話 逃走と敗北の先に

「……」


 朝、いつもように布団のなかで目が覚める。

 今日もいつもと変わりないはずなのだが、なんだか少し苦しい気がする。

 暑苦しいというか、まるで誰か布団に入っているかのような……。

 そんな感覚を感じながら寝返ると……。


「う~ん……」


 なぜか隣に村正ちゃんがいた。

 スウスウと小さな寝息をたてながら、気持ちよさそうに眠る村正ちゃんが。


「……え!? ちょ、はあ!?」


「……ん? ああ……ご主人お目覚めですか?」


「『お目覚めですか?』じゃないよ!! なんで俺の布団に入ってるの!? てかいつから!?」


 これ2回目だよね!?

 言ったよね!? 朝はダメだからって!!


「あは~。相変わらずのテンパりっぷりですね~。ご安心くださいな、布団にもぐり込んだのは今朝ですので」


「そうか、良かった……じゃない! なんで布団に潜り込むのさ!!」


「初めはそのつもりではなかったんですよ? ご主人を起こしに来たのですが、なかなか起きてくれないうちに私もつい眠ってしまったわけでして」


「ミイラ取りがミイラになるなよ……」


 まったく。

 心臓に悪いので、本当にやめて欲しい。

 それなり村正ちゃんとは生活しているが、いつになってもこの性格に慣れられそうにない。

 というか、慣れたらそれはそれで問題な気がする。


「で? わざわざ起こしに来るってことは……なんかあったの?」


 すると村正ちゃんの顔が、少し真面目な顔になる。


「はい。皆さんもう既に下でお待ちですのでさっさと着替えていきましょう。さ、早く脱いで」


「じゃあ部屋から出て行ってもらえるかな!?」


 というか、ナチュラルに人の家に入り込んでくるのもやめてもらえませんかね……。



 ー居間ー

 村正ちゃんの言う通り、居間にはさも当然のように皆がいた。


「ごめん。待たせたかな?」


「そうね、村正ちゃんに起こして来てって頼んでから30分ぐらいね」


「ごめんよ……」


 なんかシナトスが若干機嫌が悪い気がする。

 しかし、リームは微笑しただけでそこには触れず本題に入っていった。


「さて……もうなんとなく分かっているとは思うがね。またオンネンが現れた」


「まあそうだろうな」


 もうこれで5回目ぐらいなので流石に分かる。


「今回現れたのは、3回目の騎兵のオンネンだ。場所の今まで同じ場所。つまりもうどういうことか分かるな?」


 言われるまでもない。

 前回と同じ挑発だ。

 しかし、その本質自体は違う。


 前回は油断した俺達を仕留めるための挑発だった。

 しかし今回はそうではないだろう。

 爆決天牙は真の意味で完成しており、黒幕側にももうオンネンは2体しか残っていない。

 しかも一度敗北を経験し、乗り越えた俺達にもう慢心も油断もない。


 つまり今回の挑発こそ、黒幕側が真に俺達を脅威とみなしここで終わらせようとしていると考えるべきなのだ。


「またアイツか……。まだ詳細不明の5体目じゃねぇのか?」


 薫がリームに不思議そうに聞く。


「ああ、確かに騎兵のオンネンの反応だったよ。恐らくだが、5体目のオンネンには独自の役割があるのだろう。だから、黒幕側は5体目を使わないのではないだろうか」


「そうか、つまり……」


 ここで俺がユラリと立ち上がる。


「黒幕側からすればここでもし俺らが勝つとかなり厳しいわけだ」


 すると、宇水さんが心配そうに俺に聞く。


「確かにそうでしょうけど……。光さんにはなにか勝機があるのですか……? 凄い作戦とか……」


「いや? 特にないよ?」


「え?」


「なら、なんでそんなに勝てて当然って感じなんだよ」


 今度は薫が質問する。

 まあ、確かに前回敗北した相手が現れたというのにこんな感じだと疑問を感じてもおかしくはないが。


「実際にどうなるは別として、心持ぐらいは『勝てて当然だ!』って思っておいたほうがいいだろ?」


「何?」


「もちろん、油断や慢心はいけないけどさ。初めから『負けるかもしれない……』なんて思いながら戦うのはおかしいじゃないか」


「……」


 少し沈黙が場を支配する。

 次に口を開いたのはシナトスだった。


「でも、怖くないの? 相手はあの騎兵のオンネンなのよ?」


「……」


 怖くないのかと言われれば怖いに決まっている。

 しかしだ。


「まあ、怖いけどさ。俺は最後まで戦うって決めたし、沖田も言ってただろ?『敗北を恐れるな。いかに敵が強大であっても、剣を手に取り続けろ』ってね」


「……そうね」


 シナトスが若干呆れの混じったような笑顔を作る。

 しかし、だからといって俺を否定するわけではない。

 そしてそれはこの場にいる全員が同じだった。


 一度目は実力不足で逃げだした。

 二度目は油断したせいで敗北した。


 しかし、今回すなわち三度目は違う!



 ー深夜、懐かしき戦場ー

 ガチャン、ガチャンと聞きなれた音が聞こえる。

 鉄と血の臭いが漂い、独特の緊張感に肌がピリピリする。

 口の中は緊張した汗のしょっぱい味でいっぱいだ。

 そして……暗闇の向こう側からその騎兵は姿を現した。


【生者……】


 聞きなれたフレーズだ。

 何か他のことは言えないのか、そう思いもするがまた別の機会に聞かせろというわけにもいかない。


「騎兵のオンネン……」


【……】


「今度こそここで仕留める!!」


 〈続く〉

次回 68話「見慣れた恐怖、聞きなれた狂気」

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