62話 茉子の可憐なる作戦 lap2
「へえ……。ここはビュッフェなのか」
ということでお昼を食べにやって来た茉子と光。
なお、実はビュッフェ以外にも選択肢はあるのだが茉子はそれを選ばなかった。
何故かと言うと……
「ねえ、光くん。ちょっとしたゲームをしない?」
「ゲーム?」
「そう。ここで、自分の食べる分じゃなくて相手が食べる分を取るの。で、それを席で交換っていうゲーム」
「お! いいね、面白そうだ」
『よし! 作戦通り!!』
すなわち、茉子はここで良い感じの盛り付けをして好感度UPを狙っていたのである!
まさに、これは今日一日の予定を予習しておいたおかげであった。
しかし……
「……。何取ればいいのかな?」
そこまでは予習できていなかった。
「とりあえずカレーを取っておけばいいかな?」
ビュッフェでいきなりカレーを取るなど、リセットボタンを押さずに電源を切るが如き愚者の行いなのだが……。
何も知らない茉子はそれを行ってしまった。
「後は……。あ、ケーキがあるといいかも」
ケーキとカレーを一緒に取るなど、もはや3時間かけて完成させた企画書にコーヒーをぶっかける如き愚者も愚者の行いなのだが!!
……知らないということは恐ろしい。
その後も茉子はいろいろやらかしながら、食べ物を盛り付けていく。
そして席に着く頃には……
「あれ?」
何故だろうか。
美味しいものしか取っていないのに、盛り付けられると美味しくなさそうに見えるのは。
ビュッフェやバイキングの最大のミステリーと言ってもいい現象に、茉子もなっていた。
「……いやいや、もしかしたら光くんもこん感じかもしれないし」
しかし、前にも言ったが現実は甘くない。
「ごめん、待たせたかな?」
そう言いながら席にやって来た光の手に持つ、お盆の中には一つのグルメが出来上がっていた。
食べ合わせを深く考慮しつつも、同じような食べ物を置かず飽きが来ないように選ばれた料理。
盛り付けも綺麗で『ああ、多分これテレビとかで100点貰えるやつだ』と誰もが思うだろう。
では、茉子はどうか。
カレーとケーキの最悪の組み合わせに、その他食べ合わせが悪い。
また似たような料理が並んでおり、味は単調。
『ああ……。これはテレビとかで0点くらうやつだ……』と万人が思うものが出来ていた。
微妙な表情で、自分と光の茉子を見比べた茉子は……。
「ごめん、ちょっと取り直してくるねぇ~……」
さすがにヤバいことに気づいたようだ。
しかし……
「大丈夫だよ? カレーとケーキが一緒になってて、盛り付けが少し汚くても」
「ふえ!?」
見透かされていた。
「まあ……多分茉子ならそうなるかな?とは思ってたから」
「え!? 最初から分かってたのぉ!?」
「まあね。それなりにもう付き合いは長いわけだし?」
「……」
結局、光は茉子の取った料理を文句ひとつ言わず食べる。
『光くん……。優しいけど、予想出来てるなら言ってよぉ!!』
そう思いつつ、茉子も光の100点ビュッフェを食すのだった。
「あ~! もう、お腹いっぱいだ! さて、次はどこ行こうか?」
「う、う~ん……」
さて、昼食を終え後半戦に入ってきたわけだが……。
茉子は次にどこに行くかかなり悩んでいた。
家を出る前に作った予定通りではもうダメだ。
ジェットコースター、お化け屋敷、ビュッフェの失敗がそう告げている。
このままでは茉子だけ一方的に歩み寄って終わってしまう。
と、ここで茉子は少し発想を転換させることにした。
「ねえ? 光くんはどこか行きたいところないの?」
敢えて光に任せてみようと思ったのだ。
「俺? 一応あるけど、いいの?」
「うん、私の行きたいところだけ行くのじゃ悪いし」
「分かった、俺はあれをやりたかったんだ!!」
そう言いながら、光が指さしたアトラクションは……。
『ソルジャードキドキサバイバル!!』と書かれたアトラクションだった。
要するに、シューティングゲーム系アトラクションである。
『なるほど……光くんはああいうのが好みなのか。う~ん、どうすればいい印象をあれで光くんに植え付けられるかなぁ』
なんて、周りの人とは違う考えをしながら茉子は光と共にアトラクションへ。
ー少し、離れたところー
遊園地だからといってくる客はガラがいい人だけとは限らない。
中にはマナーのなっていない客もいたりする。
「ね~。次はあれ! あれに乗ろ~」
「あれか。いいね~」
なんて周りの迷惑も気にせず、煙草を吸いながら大声で歩くようなものもたまーにいたりする。
マナーのなってない客は煙草の吸殻を火を消しもせず、道に捨て……。
ーアトラクション会場中ー
「う~ん……。やっぱり俺は天性の剣士というわけか……」
さて、ノリノリでアトラクションに挑んだ光だったが、普段から剣で戦う光に銃は合わないのだろうか。
なかなか的に当てることが出来ずに、おそらくアトラクションが始まって以来の最低成績を記録してしまった。
若干しょんぼりする光だったが、楽しかったのも事実なのだろう。
さほど、テンションは下がっていない。
「あはは。まあ、人には得意不得意があるよね。あ、私ちょっとトイレ行ってくるから、光くん先に外で待ってて」
「分かった」
う~ん、茉子はどうしてあんなに上手くできるのかな?
なんて考えながら光は外へ。
「おっと」
ブワッと吹いた風に一瞬よろめきつつも、ベンチで茉子が出てくるのを待っていたが……。
「ん?」
なんか焼いてるのか?
焦げ臭いにおいに違和感を抱いた、その瞬間!!
ブワッと!!建物の横に大きな火がつく。
しかもその建物は茉子がまだ中にいる建物。
火は中にいる人を捉えるかのように、建物を包み込んでいった!
〈続く〉
次回 63話「茉子の可憐なる作戦 lap3」




