61話 茉子の可憐なる作戦 lap1
「最近……甘いんじゃないの?」
「へ?」
光達が剣士のオンネンを討伐してから数週間。
休校が解除された学校の生徒会室で、ヒナは茉子にそう告げた。
「甘いって……なにが?」
「茉子。貴女このままだと、光は多分何の疑問もなく白井さんとくっつくわよ」
「……!」
「いいの? 内に思いを秘めたまま外に出すこともなく終わらせちゃって」
「……具体的には、どうすれば?」
ここで、ヒナはサッと何かを取り出す。
その手に握られていたのは……某遊園地の入場券ではないか。
「これをあげる。ここならいくらでもチャンスなんてありまくりなんだから、ギュッとハートを鷲掴みにしてきなさい」
「……うん」
ー剣道場ー
「今度の日曜日?」
「うん、今度の日曜日。光くん、暇?」
「映画に行くって言うなら暇じゃない」
「映画じゃない。これなんだけど……」
そう言いながら、某遊園地の入場券を見せる。
「ここ!? えっ、いいの!?」
「まあ……うん……」
「やった! 行く! 絶対行く!!」
光は見た目に違わず、子供っぽいところがあった。
そのためにこういう所は大好きなのである。
もちろん、ヒナは光のそういう面を見抜いてこの入場券を渡したのだった。
ちなみに、高3ともなれば女子に二人きりで遊園地に誘われれば何かしら感づきそうなものだが……。
光は鈍感だった。
というわけで難なく、今度の日曜日二人は遊園地に行くことになったのだ。
ー当日ー
「来たー!!!」
というわけで当日。
長い休園明けのしかも日曜日ということで人はかなり多いが、光はそんなことは気にしない。
一方、茉子は光が全く意識していないなか、一人メチャクチャ緊張しているのであった。
「まず、どこ行こうか!」
若干……いやかなり興奮気味の光が茉子に聞く。
嬉しさが抑えきれない。
「まずは……ジェットコースターに乗ろう!」
「……え? いきなり?」
「うん!」
茉子は、緊張こそしてはいたが当初の予定を忘れたわけではない。
本日、ここに来るにいたって少し勉強をしてきたのだ。
その一つに『吊り橋効果』というものがあった。
吊り橋効果とは、吊り橋のような高くて揺れる場所では、その恐さゆえ興奮してしまう。
それを頭が勝手に恋によるものだと勘違いしてしまう効果である。
つまり茉子はこの吊り橋の代わりにジェットコースターを利用することにしたのだ。
高所恐怖症の光にはより効果てきめんだろう。
しかし、この作戦には大きな欠点があった……。
それはー
「キャアアアアアアアアアアア!!!!!!」
茉子自身も乗らなければいけないのである。
茉子は基本的に『弱点』というほど恐れる物はないが、普通に怖いものは怖い。
というわけで、絶叫系は普通に絶叫するのである。
しかも、光をビビらせようと一番前の席に乗ったのだから……。
「茉子……大丈夫か?」
「全然……大丈夫じゃないよぉ……」
すっかりダウンしてしまった。
おまけに光は何故か平然としている。
「光くん……怖くないの……?」
「そんなに怖くないかな? 初めのゆっくり高い所に行くのは怖かったけど、その後は速さの爽快感の方が強かったし」
「そっか……」
そう、これは作者自身が体験したことだから胸を張って言えることなのだが。
高所恐怖症だからといってジェットコースターが怖いとは限らないのだ。
まあ、作者の場合酔うのでどっちにしろ乗れませんが……。
さて、10分ぐらいベンチで休んだ茉子だがまだ回復しきらない。
「う~ん……」
「まだフラフラする?」
「うん……ちょっと」
「そうか。それなら……」
すると、光はナチュラルに恥じらいもなく茉子の手を取るではないか!
「ひ、光くん!?」
「これなら歩きやすいだろ? さ、次に行こう!」
「あわわわわわ……」
思いがけない展開に脳内でもパニックが止まらない。
『ああああ!! 向こうから先に握られちゃった!! でも、光くん本当は早く次に行きたいだろうに私に気を使ってくれるんてやっぱり優しい……。って違ーう!! 私が魅力感じてどうするのぉ!? いや、光くんは元から魅力満載なんだけど!!』
なんて脳内でいろいろ叫びまくっているうちに次のアトラクションへ。
そこはどこの遊園地にも絶対あると言っても過言ではないもの……お化け屋敷だった。
『お化け屋敷か……。これはいける!!!』
茉子は脳内で大きくガッツポーズ。
今更、お化け屋敷ごときでビビることもないだろう。
そして逆にビビりの光くんは今度こそビビるだろう!
そう思ったのだ!
「ぬああああああああああああ!!!!!!」
「ギャアアアアアアアアア!!!」
「だ、大丈夫か!?」
しかし、現実はそう甘くない。
ホラー映画とお化け屋敷は話が違う。
次から次へと現れるお化け達にしっかり全部ビビりまくる。
なお、やっぱり光は何ともなさそうだ。
「光くん……怖くないのぉ……?」
「う~ん……。ぶっちゃけオンネンの方がよっぽど怖いからなあ……」
さらに怖いもののせいで恐怖を感じなくなっていた。
茉子は脳内でそっと恨む。
『おのれぇ……サキちゃん。こんなところでも私の道を阻むのか……!』
「うばあああああああ!!!!!!」
「ああああああああ!!!!!!!」
恨み事言う暇もない。
「茉子、大丈夫だって! 万が一お化けが襲ってきたら俺が倒してやるよ!」
「光くん……」
またまた逆にキュンとしてしまった。
さて、なんだかお化けから嫉妬のような感情を感じながらお化け屋敷を抜け、外へ。
次に行く場所を考えながら遊園地を歩く。
『ダメだ……。これじゃあ「光くんのハート鷲掴み作戦」が「より光くんの魅力を感じよう作戦」になってしまっている……。どこか、どこかで私の魅力も見せつけないと……!』
その時、茉子は閃いた!
光に自身の魅力を見せるためのいい場所を!
「光くん!」
「何?」
「そろそろお昼にしようか!」
すなわちビュッフェである!
〈続く〉
次回 62話「茉子の可憐なる作戦 lap2」




