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魂のレッドライン  作者: ギン次郎
1章 夢を見た天使
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60話 変わらずの世界

【なら! 証明してみせるがいい! 私を倒し、幸せの守護者としての在り方を見せつけてみろ!】


「言われなくとも……!」


 再び、迫る両者。

 しかし、今までのぶつかり合いと今回には大きな違いがあった。


【な、お前……!】


「うおおおおおお!!!!」


 なんと、見切りを使ってもなお追いつけないはずの沖田の剣に、光が追い付いているではないか。

 細かく、そして鋭く放たれる連撃を光は綺麗にさばいていく。


【ど、どうして……!?】


「舐めるなよ、沖田総司! いくら見切れないからといって、なんども斬り合っていればその剣筋になれることは出来る!!」


【何!? いや、しかしこんな短時間で……ここまで身に着けられるはずが……!】


 そう思ったが、ここで沖田は光が特異器官であることを思い出す。

 例え見切りが使えなくとも、その学習能力は人一倍高いことを。


「はああああ!!!」


【ぐっ……!】


 動揺と焦りが沖田の動きを鈍らせる。

 少しづつ沖田に追いつき、加速していく光の剣はとうとう沖田に一撃を入れた!


【ぬおおおおおおお!!!】


 だからといって、沖田も斬られっぱなしではない。

 思い切り力を込めた剣を、下から斬り上げるかたちでフルスイング。

『斬り』というよりは『打ち』に近い攻撃だ!


「があっ……!!」


 その攻撃を腹に食らった光は、木に向かって吹き飛んでいく。

 そこに追い打ちをかけるべく、迫る沖田!


「させるかよ!!!」


 地面に倒れ動けない薫が、最後の力を込め鞘を沖田に投げつける!

 沖田はそれを軽く払うが、一瞬光から目を放してしまった。

 光がその隙を見逃すはずもなく、沖田の足元へスライディングし斬撃を避ける。


 そして剣を構え、最後の技を繰り出す!


「これで、決める!!」


【ならばそれを撃ち落とす!!】


 互いに突き技を構え、迫る二人。

 徐々に距離は詰められていきー


【完成もしていない技など、恐るるに足りず! 我が三弾突きで撃ち落としてくれる!!】


 しかし、光は躊躇うことはしない。

 恐れることもない。


「今の俺にもう慢心はない! くらえ、これが本当の爆決天牙だー!!!!!」


 技と技がぶつかり合う!!!



「ヒカル!!」


「シナ……トス……?」


 光は数分の気絶の後、シナトスの声で目を覚ました。

 体中傷だらけで、体力もないが光は今だ生きていた。


「とりあえず、早く家に戻ろう。宇水嬢にこれ以上負担をかけるわけにもいかないだろう」


「ちょっと……待ってくれ。沖田……は……?」


 シナトスがゆっくりと振り向くと、そこには光と同じように横たわる沖田がいた。


「薫……悪い、肩貸してくれ……」


「おう……」


 薫の助けを借りて、沖田の下へ行く光。

 沖田はまだ生きてはいたが、身体が少しづつ消え始めていた。


【なんだ……? 敗者である私を笑いに来たのか……?】


「そんなことしないさ」


【そうか……。まったく酷い皮肉だ、この私があの者たちと同じ信念を持つ相手にまた負けるなんて……。しかも、突き技の打ち合いでだ……】


「あの者たちと同じ信念……?」


【そうだ……】


 そう言う沖田の顔は、とても穏やかだった。


【お前は我が仇敵、『維新志士』達と同じ……。未来への信念を持っているだろう?】


「未来への信念……」


【結局、あれから何年経っても……世界とは変わらないものらしいな……。『過去に縋る者』は『未来を目指す者』には勝てないようだ……】


 武士の時代を求めた、新撰組。

 新たな時代を求めた、維新志士。


 それは確かに今の戦いと同じ、『過去に縋る者』と『未来を目指す者』の戦いだったのだろう。


【それも……当然のことか……。人は……そうやって進歩してきたのだからな……】


 沖田は……もしかしたら初めから自分が負けることを分かっていたのだろうか。

 光はそうも思いもしたが、そればかりは考えても分かることではない。


【少年よ……、城内 光よ……。お前が未来を目指すというのなら……、幸せの守護者であり続けるというのなら……】


「言うのなら……?」


【敗北を恐れるな……。いかに敵が強大であろうと……剣を手に取り続けろ……。この先に待つ敵は生半可な強さではない……】


「……言われるまでもないさ」


【そうか……。そうだったな……。お前は……そう言う奴だったな……】


 途切れていく言葉。

 消えゆく身体。

 沖田の最後だ……。


 穏やかなどこか幸せそうな表情で……沖田総司は消えていった。



「これで……残るオンネンはあと2体か」


「そうだな」


 薫がそっと呟く。

 が、気が抜けたせいかここで光の身体に急に痛みが。


「う……ぐ……」


「とりあえずまずは早く帰ろう。城内 光は思っている以上に重傷だからな」


 口ではそう言いつつも、リームはちょっと嬉しそうだ。

 またこうして、共にいれることの喜びが抑えきれていないようだ。


「そうだな……。でも、その前に……シナトス!」


「……! な、何……?」


 木の陰から、シナトスがなんだか申し訳なさそうに出てくる。

 まあ、無理もなことだが。


 しかし、光はなにか咎めるようなことは言わず。

 沖田と同じような穏やかな表情で一言。


「おかえりなさい」


 そう言ったのだった。


 差し込む朝日。

 こないだと似たような状況なのに、心の中はまるで正反対だ。

 シナトスは必死に涙を抑え、少し抑えきれずに


「ただいま!」


 笑顔でそう返す。

 城内 光の周りはまた戻ったようだ。




 ーどこか、暗い場所ー

「……」


「……」


「……まさか、沖田総司が敗れるとは」


「おまけにシナトスは再び城内 光と合流。しかも、真の意味で爆決天牙が完成」


「……」


「最悪の状況だな……」


「申し訳ございません!!」


「ルーク、別にお前のせいではない。そもそも、オンネンなど最初から時間稼ぎでしかないが……。少し早すぎるな」


「……」


「騎兵と、コイツがどれほど粘ってくれるものか……」


 そう言いながら、黒幕はそばで眠るオンネンの頭をそっと撫でる。

 ごつごつとした鱗のような肌に、大きな翼。

 人が『龍』と呼ぶ、生き物に触れて……。


次回 61話「茉子の可憐なる作戦 lap1」

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