51話 真空を貫いて
「ない! ない!! なーい!!!」
部活が終わり、家に帰ってきて道場を漁りまくっているのだが、それらしきものは全く出てこない。
よく分からない壺だの、本だのそういうのは無駄なぐらいあるのに。
「まあ、普通に考えて一応『奥義』なんですし、他にバレにくくするためにも何かに書き記したりはしないんじゃないですか~?」
と、当然のことのように言う村正ちゃん。
「え!? じゃあ何、最初からないの分かってたの!?」
「まあ」
「何で言ってくれないのさ!?」
「あは~。無知なご主人を泳がせておくのも楽しいなって思ってしまいまして~」
……。
なら、なんのために俺はこんなに散らかしたんだ。
広い道場が古い本や、一緒に出てきた埃やらでぐちゃぐちゃだ。
掃除が……。
「まあ、そういうわけですから。練習あるのみだと思いますよ、私は」
「そうか……」
果たして、練習だけであんな無茶な技を身に付けられるのだろうか。
何かこう……もっとハイレベルな何か必要な気がするのだが。
「新技の練習とは……精が出るな、城内 光」
「なッ! その声はルーク!?」
驚いて振り返ると、そこにはいつの間にかルークがいた!!
「なぜ、私がここにいるのかは言うまでもないだろう。この間は、死神に嗅覚もいたが……今日はどうかな?」
「お前……。俺が一人になるのを待ってたのか……!」
「私の目的かつ使命は、お前の命のみなのでね」
「くそ! 村正ちゃん!!」
「はい!!」
村正ちゃんが一瞬で木刀に変化する。
それを手に取り、切っ先をルークに。
いつでも攻め、守れるように備える。
「ほう……生命の剣とは、これまた厄介なものを……。まあ、相手にとって不足はない!!」
その声を合図に、ルークが一気に突っ込んでくる。
迫りながら手を剣に添え、俺の目の前で抜刀しその勢いで攻撃。
カマイタチでなくとも、ルークの使う剣術は抜刀術。
ただ、剣を抜くだけでその威力は半端じゃない。
が、俺だってそのまま何も出来ないわけじゃない。
この間の戦いでルークの剣筋はもう見切っている。
純粋なパワーならルークのほうが何倍も上だが、どこにどう来るか分かっているの剣を防御に集中して受ければー
「なんと……!」
受け止めることぐらいは出来るのだ。
それでも、そこから攻めに転じることが出来ない!
ルークの押してくる力が半端じゃなく、少しでも力を抜けば押し返される!
すると、一瞬体勢が崩れたかと思うとルークはその場でジャンプ。
なんと押し合う俺とルークの剣を軸にその場で跳び膝蹴りを放つ!
「ぐあっ!!」
咄嗟のことに反応しきれず、思い切り腹を蹴られる!
その勢いで後ろに吹き飛んだ隙をルークは見逃さない。
「はああああああ!!!」
体勢を直しきれない俺に、鬼のような連撃を放ってくる!
『ご主人! 接近戦は不利すぎます!』
『分かってる!』
村正ちゃんの言う通り、近づかれると俺は防御に精一杯でまったく攻撃できない。
ルークの連撃の一瞬の隙をつき、床を蹴って距離を取る。
そうすれば、アイツはもちろんあの技を出す!
「距離を取ったところでお前に安全圏などないぞ! カマイタチ!!」
神速の抜刀による、真空の刃!
しかし、この技なら今の俺には迎撃できる!!
「カマイタチ!!」
「何!?」
ルークの本家カマイタチより、俺のはだいぶ威力が低い。
しかし、その代わりに俺のカマイタチは連続で撃てるというメリットがある。
威力が低い分、技自体が軽くなっているのだ。
ルークの大きな一つの真空の刃と、俺三つの小さな真空の刃がぶつかり合って、相殺。
「まさか、私のカマイタチを模倣するとは……。あの方が警戒するわけだ」
ルークは心底驚いたようだ。
目を見開いて、冷や汗をかいている。
しかし……
「いいだろう、ならカマイタチ。その先の刃を見せてやろう!!」
「何!?」
そう言うと、ルークは再び剣を構える。
だが、普通のカマイタチの構えとさして変わらない。
強いて違う点上げるなら、やや引きが強いことだろうか。
『ご主人、気を付けてください。ピリピリとした空気を感じます!』
『ああ……!』
「食らえ! 空烈十字斬!!」
ルークは普段通り、カマイタチを放つ。
そこまでは何も変わりないのだがー
カマイタチを放った直後、なんと反対側の手でもう一度鞘と剣を取り、一発目より速いカマイタチをもう一発!
すると、二発目の刃が追い付き……!
「真空の刃が十字に!!」
前の刃と重なり十字になって俺に迫る!
これはどう考えても、俺の弱いカマイタチでは迎撃できない!!
『ご主人! 十字の交差点に爆決天牙を!! 交差点は威力も高い分、そこをつぶせば打ち消せるはずです!』
『でも! まだ爆決天牙は完成していない!!』
『そんなこと言ってる場合ですか!!』
こうなったら、やるしかない!!
一か八か決まってくれ!!
「爆 決 天 牙!!」
吹き荒れる向かい風に逆らって、俺は剣を前に突き出す!
渾身の一撃は見事に十字の中心を貫き、真空の刃を打ち消した!
「なんだと!?」
「で……出来た!!」
さっきまで出来なかったのに……この土壇場で技を完成させることが出来るなんて……!!
「……私の空烈十字斬さえも届かないか。面白い、実に面白い!」
「……? どういうことだ?」
「新技を手に入れられてしまったのでは、今日の私に勝ち目はないだろう。なら、今回は素直に引くとしようか。まあ、なんだ新技の完成おめでとうとでも言っておくよ。さらばだ」
「!? ま、待て!!」
しかし、間に合いはせず。
ルークは再び姿を消してしまった。
村正ちゃんは再び、剣から人に戻る。
「……なんか腑に落ちないですね」
「うん……。まあ、ルークも馬鹿じゃないから……撤退するのも分からなくはないが……」
と、ここで体中にズキッ!!と痛みが!
「う!!」
「ああ、ご主人怪我してるんですからあんまり動かないで。今はリームさんも宇水さんもいないんですから」
「ご、ごめん……」
何とか完成した新技、爆決天牙。
この技が今後役に立つのは分かり切ったことだ。
しかし、ルークは……黒幕は一体何を企んでいるのだろうか……。
ーどこか、暗い場所ー
「上手くいったか?」
「はい、ご命令通り。城内 光の爆決天牙を完成させました」
「よくやった。さて……ではそろそろ本格的に攻めていくとするか!!」
次回 52話「狂いし騎兵、再び」




