50話 新必殺を手に入れろ!
「……光くんが、休日に部活に来るなんて……!」
「そこまで驚く?」
「先輩……。熱あるんじゃないですか!?」
「ねぇよ!!」
日曜日、剣道部に来たらこれだ。
茉子を含めた剣道部全員が目を丸くする。
今日は大雪でも降るんじゃないだろうか、といった雰囲気だ。
『あは~。ご主人はそうとう部活に来ていないんですね~』
なお、村正ちゃんはさすがに今は木刀の姿になっている。
部活に人間の姿で連れてきたら、最悪俺は誰かさんに殺されるかもしれない。
「で? 先輩はどうして今日部活に来たんですか?」
もちろんそれには理由がある。
え?部活に来るのに理由は普通いらないって?
まあ、それはそれで置いといてくださいな。
ー数時間前ー
「ご主人って弱くないですか?」
朝ご飯を食べているなか、村正ちゃんは突然そう言いだした。
理解はしてはいることだが、改めて言われるとどこか心に来るものがある。
「そんなに弱いのに部活サボるんですか?」
「いや、別にそれとこれとは関係が……」
「基礎をしっかりと学びなおすことで、応用にいかせるんじゃないですか?」
「えっと……、はい。分かりました」
「よろしい」
ーそして今ー
というわけで今、俺は剣道場に来ている。
しかし、それをそのままいうわけにもいかないのでここは適当にそれっぽいことを。
「どうして来たって……。まあ、あれだ。特訓ていうか、さらなる強みを目指して的な?」
「へー。でも、先輩って今でももうメチャクチャ強いですよね。これ以上どうやって強くなるんです?」
……確かに。
そもそも村正ちゃんは俺を『弱い』というが、一般人からすれば俺は剣道は強い方なのだ。
寧ろ、薫とかそこら辺がおかしいのであって俺は別に普通なんだ!
『その普通を抜け出さないと、意味がないんじゃないですか~?』
俺の心を読んだのか、読めるのか。
またまたぐさりと刺さる一言を。(脳内に)
しかし……そうは言ってもこれ以上どうすれば……。
「ねえさ、光くん」
「ん?」
「光くんの家ってさ、道場なんだよね? かなり昔からある」
「そうだけど?」
「ならさ、光くんの道場のなんて言うのかな、必殺技とか奥義みたいのはないの?」
そういえば……昔、婆ちゃんがそんなことを言っていた気がする。
確か……。
ー十数年前ー
『いいかい、光? これからアンタにウチの道場のスーパーな必殺技を教える』
『必殺技?』
『そう、必殺技。でもね、これはメッチャクチャ難しい技だから今は出来ない。まあ覚えておくだけ覚えておきなさい』
『はーい』
そう言うと、婆ちゃんは竹刀の先を前に向け、手を後ろに引く。
突きの体勢だ。
すると、そのまま前に走り出しその先に飾ってある鎧に向け鋭く突き技を放つ!
『爆 決 天 牙!!』
すると、鎧に触れた竹刀の先で小さな爆発が起こり鎧を吹き飛ばす!!
俺はそれをただ、ポカンと眺めていた。
『これが必殺技。まあ、アンタもあと何十年かすれば出来るようになるよ』
ー現代ー
はい、思い出しました。
しかし……人間技なのか本当に。
なんか竹刀の先が爆発してましたけど……。
『なるほどなるほど。理解できましたよ』
俺が困惑するなか、村正ちゃんは完璧に理解できたそうです。
というか、ナチュラルに人の回想覗くのやめてくれませんかね。
『だからご主人は戦う時に突き技を多く使う傾向にあるんですね~』
『どゆこと?』
『まあ、とりあえず今の技の説明をしますかね』
『頼む』
『今の技は突き技の極みとでもいうべきでしょうか』
『突き技の極み?』
『はい。手に持った竹刀を信じられないほどのスピードで前に突き出すことで、周りの空気と摩擦し熱が生まれる。その熱を纏った空気を思い切りぶつけることで切っ先に小さな爆発が起きるんです』
『……。それは人間にもできる技なんですか?』
『ご主人のお婆さんが人間であるならば。まあ、仮に人間じゃなかったとしても、それならご主人は人外の血を引いてることになるのでどっちにしろ出来ますね!』
明るく言うセリフではない!!
ええ……。この技を習得するの? ハードル高すぎない??
「ひ……光くん?」
と、村正ちゃんとの脳内会話に集中しすぎた。
そのせいで俺は3分ぐらい微動だにせず、突っ立っていたせいで皆が変な目で見ている。
「わ、悪い! でも大丈夫だ、ちゃんと思い出したから!」
「そ、それならいいんだけど。で、それは出来そうなの?」
「……分かんない」
「えぇ……」
「頑張れ! 光くん!!」
「はあああ!!!」
というわけで、さっきからずっと村正を出来る限り速く突き出しているのだが全くもって出来るがしない。
傍から見る茉子は、『惜しい!』とか『ちょっと暖かいよ!』と言っているのだが、それが事実なのかは不明。
『ご主人! ファイト!! もっと速くですよ!!!』
村正ちゃんも脳内で叫ぶが、もう俺は体力が限界だ。
汗が目に入って痛い。
口の中も汗の塩辛い味。
というかもう汗だくで気持ち悪い。
「はああ!!!」
「あああ、惜しい!」
と、その時。
「光、何してるの?」
ヒナとエルメさんがやって来た。
「え? ああ、新しい技の練習をちょっと」
「へえ。ねえさ、白井さんどこ行ったか知らない?」
「あ、私知ってる」
と、すぐさま茉子が答える。
「なんかね、部活がOFFなの知らなかったみたいで、『え! 今日ないの!? ええ~、じゃあ花蓮ニュータウンに遊びにでも行こうかしら』って言ってたよ?」
「オカルト部ってまだ生きてたんだな……。てか、シナトス一人で行ったの!?」
それは不味いだろ!?
あの方向音痴が一人であそこに行ったらそれは、一生の別れだぞ!?
「ううん。先生と行くって」
あ、そうですか……。
ならいいんですが。
「そう……ありがとう」
そう言って剣道場を出ていく二人。
シナトスを探しているのだろうか。
ん?……探す?
「そうか! そうだよ!!」
「わっ! 急にどうしたの!?」
「こんな技、闇雲にやっても出来るわけないんだよ! 多分家のどっかにこの技について書いた説明書……?みたいなのがあると思うから、それを探し出せばいいんだ!」
「なるほどぉ」
「と、言うわけで俺は帰る……」
「今日の活動時間は午前中なので、ちゃんと最後までやってから帰ってね?」
「……はい」
これなら帰れると思ったのだが、無理だったか。
しかしそれさえ見つければこっちのものだ!
爆決天牙、絶対に会得してみせる!!
続く
次回 51話「真空を貫いて」




