44話 生命の剣 村正
「これは……?」
俺を助けるようにどこからか飛んできた木刀。
その不思議な雰囲気は、ただの木刀で出ないことを一瞬で悟らせる。
「光さん!!!」
「う、宇水さん!?」
遠くから大声で何かを叫ぶ宇水さん。
「それは、かの千字村正が作り上げたと言われる生きた木刀です!! なくなった剣の代わりにそれを!!」
「ありがとう!!」
そこに、すかさず次の腕が俺を捕まえようと迫ってくるがー
「はあ!!」
簡単に斬り落とせてしまう。
さっきまで傷つけることすらできなかったはずなのに。
この木刀は当たり前のようにそれをなしてしまう。
「凄い……」
しかし、腕を落とすだけでは勝つことは出来ない。
いくら斬ることができるとはいえ、あの巨体に木刀で斬りつけ続けるのは分が悪すぎる。
どうにかして、一撃でアイツを倒さないと……!
「くっ!!」
再び鞭のように振り下ろされる腕。
ゴムのような身体は防御だけでなく、攻撃にも効果を発揮している!!
……ゴム?
そうか、これだ!!
「薫ー!!!」
「なんだ!?」
「そいつを倒す方法を思いついた! 薫はアウラさんを連れて、離れててくれー!!!」
「分かった!!」
「おい! オンネン!!」
【????????】
「俺を捕まえてみやがれ!!」
俺はそう言うとー
くるっと回転して、背を向け一目散に逃げだす。
「おい!? やけっぱち、てめぇ何逃げてんだ!?」
薫が怒鳴っているが、気にしない。
とりあえず、今は逃げる!
もちろん、挑発されたオンネンが俺を見逃すはずもなく、腕を伸ばして俺を追いかける。
生い茂る木々を右へ、左へ颯爽と駆け抜ける!!
昔からいじめられっ子だった俺は逃げ足には割と自信がある!
【!!!!!!】
腕もガンガン迫ってくるが、木が邪魔で俺を捕まえることは出来ていない。
一定の距離を保ったまま、しばらく追いかけっこは続き……。
しばらくして木が生えていない、広場のような場所に出た。
「よし、そろそろだな!」
すると、俺は村正を地面に突き刺し逃げるのをやめる。
そうすれば、もちろん腕は俺に追いつきー
ガシッ!!
と、俺を掴む!!
「ぐ、ううううううううう……!!」
俺を捕まえた腕は元の位置に戻ろとするが、地面に突き刺した村正をしっかりと俺は掴んでいるのでそう簡単には戻らない。
それでも、少しづつ少しづつズリズリと前に進んでいき……。
ビュン!!!
と、地面から木刀が抜けた瞬間、信じられない勢いで元の位置に戻り始める。
身体がゴムのようであるからこそ、伸ばした後戻る勢いも半端じゃない。
一瞬で本体のいる場所まで戻ってきたが、それでも勢いは収まらない。
それどころかオンネンの腕は勢いに耐え切れず、俺を手放してしまう!!
「うおおおおおおおおおお!!!!」
その勢いに乗って俺はオンネンの身体に突き技をかます!!!
身体は腕よりもさらに柔らかいが、少しずつ俺も前に進んでいきー
「貫けー!!!!!!」
オンネンの身体を引き裂いた!!!!
【!!!!!!!!!!!!!!!】
引き裂くと同時に現れたコア。
もちろんそれを逃がすこともなく、俺は破壊する!
その瞬間、オンネンはフッっと消え去った!
「やったー!!!……って、うわああああああああああ!!!!」
喜びもつかの間。
斜め上に勢いよく発射された俺は、オンネンの引き裂いてもいまだ勢いは衰えず、そのまま宙に頬りだされる!!!
「あああああああああああああ!!!!!!!!」
死ぬ! 死ぬー!!!!!!
が、地面に打ちつけられることはなく……。
「はあ……。ギリギリ間に合った……」
リームにまたがるシナトスに何とか助けられた……。
「やったぞ!! 2体目のオンネンも撃破だ!」
無事オンネンを退治し、再び平和が戻った伊農村。
今、俺達は宇水さんの家で休憩中。
「はひー……。疲れた……」
特に最後の落下がキツかった。
あれはメンタルに凄い来る……。
「光さん、少しよろしいですか……?」
「へ?」
すると、宇水さんがリームの時のようにそっと俺の手に触れると……。
一気に疲れが吹き飛んだ!?
「え!? な、なにしたの!?」
「えっと……。今のは疲労回復のツボを押しました……。怪我は治せませんけど、体力の回復ならできるはずなんですが……」
「うん、ばっちり回復してるよ! ありがとう!」
「いえ……」
凄い!
さっきまで動くのも辛かったのに、今ならマラソンだって出来そうだ!
……いや、怪我は治ってないからそれは無理か。
「でもさ? 何でこんなに強力なのに、リームは治らなかったの?」
「えっと……。多分、人間じゃないからだと思います……。微妙に人間とツボが違うのではないかと……」
「なるほど……」
さて、リームは宇水さんの家で横になっていて良くなっていたのだが、俺を助けるためにシナトスを乗せて飛んだことで、またまた悪化。
再び、うんうん言いながら横になっている。
「てか……。弱すぎだろ……」
あんなにひどい乗り物酔い初めて見た。
もしかしたら、本当に乗り物酔いじゃなくて謎の病なんだろうか?
「まあ、寝ていれば良くなるので明日には回復してると思いますけど……」
「そうだな……」
「そうれよりもヒカル、その木刀は?」
シナトスは俺に渡された木刀が気になるようだ。
「ああ。それは先ほども言ったように、我が家に古くから伝わるものです。千字村正が作り上げた命を持った生きる木刀、その名を……」
「その名を……」
「まんま『村正』です」
「あ……そう……」
「その木刀は光さんにお譲りします」
「え!? いいの!?」
「はい……。どうせ私には使えませんし……。あ、そうだ今日は良かったら泊まっていってください。リームさんもあんな感じですし……」
「乗り物酔いでは……ない……」
……。
それにしても生きる木刀か……。
一体どんな力を秘めているのだろうか……。
いつの日かその力を見ることができるのだろうか?
ー翌朝ー
「ご主人! 起きてください!」
「……へ?」
いつの日か……。
ーどこか、暗い場所ー
「報告します……。山も討伐されてしまいました……」
「それはいい。それよりもあれは進んでいるのか?」
「はい! そちらでしたら順調に進んでおります!」
「ならいい。そのためなら山の犠牲ぐらい惜しくはない」
「残るオンネンも3体となりましたが……」
「何、残る3体はどれもがかなりの実力を持つ。そう簡単には撃破出来ないだろうよ」
次回 45話「村正ちゃんは小悪魔ちゃん!?」




