42話 その感覚は夢のように
「特異器官……! それに、どうして私が死神だって分かったの!?」
緊張した声で質問するシナトス。
しかし、宇水 撫華は相変わらずふわっとした雰囲気のまま続ける。
「えっと、そちらの方の感触が人間のものではなかったので……。私に関係のある非人間は、死神ぐらいしかないかなって……」
感触……!
さすがは触覚の特異器官、触れただけでそんなことまで見抜いてしまう。
「それで……? 私に何か御用ですか……?」
「そうね。貴女に用があってきたの。実は……」
ーその頃ー
「だーかーらー! 俺達は泥棒じゃねぇってば!!」
「なら、なぜ不法侵入した!」
「開いてたから入っただけだ!」
「開いてたって入るか、普通!?」
薫が勝手に家に入ったせいで、泥棒と勘違いされてしまった。
さっきからずっと説得してるのだが、なかなか聞き入れてもらえない。
「そもそもの話! わざわざこんな田舎まで来て、盗みなんかするかよ!!」
「薫! 失礼!!」
「うるせえ! だってそうだろ!? 仮に盗みに入るとしても、もっと金ありそうなところに行くわ!!」
「何!? 宇水様はそれなりに金持ちだぞ!?」
「知らねぇよ!!」
ああ……。
段々話が脱線してきている……。
どうしようかこの状況。
「武慶さん? 『それなりに』は微妙に失礼じゃありませんか……?」
「え? なッ……撫華お嬢様!? これはとんだ失礼を!!」
「まあ、いいですけど……」
お嬢様……ってことはこの家の人なのかな?
と、後ろから見慣れた二人が……。
「シナトスにリーム? 何してんの? てか、この人は?」
「この人は宇水 撫華さん。お探しの触覚の特異器官よ」
「え!?」
「というわけで、先ほど紹介に与りました。宇水 撫華、触覚の特異器官です」
「あ……えっと城内 光です。視覚の特異器官です」
「日比谷 薫。嗅覚だ」
「ええと……こちらの方は武慶さんです。家の奉公人?ですかね……」
「どうも。特異器官の方とは知らずとんだご無礼を……」
「いや、いいんですよ。実際不法侵入したのこっちですし……」
帰ったらとりあえず『開いてるなら入っていい』という薫の認識を直さないと。
いつか本当に捕まる。
「話は死神さんから聞きました……。街では大変なことになっているようで……」
「街ではって。この村はなんともないんですか?」
「え? あ、はい。気づいてなかったぐらいですし……」
森の中の村だからだろうか?
まあ確かにここは空気も綺麗で、都会よりもずっと健康的ではありそうだ。
「私で良ければ喜んで協力しますよ」
「あ、ありがとうございます!!」
「で? その『傀儡触』だっけか? それは何ができるんだ?」
「そうですね……。ちょっと手を出してもらっていいですか?」
言われた通り手を差し出す薫。
その手を宇水さんがそっと触れた瞬間ー
「痛ってぇ!!!!!!」
薫が飛び跳ねる!
そして手を抑えながら、床をゴロゴロと転がりまわる。
「どうした!?」
「す、すみません……! 調節が難しくて……」
「な、何だ今の?」
薫が涙目になりながら聞く。
そんなに痛いのか……。
「えっとツボ押しの要領で触れた人の感覚を操れるんです……。『熱い』とか『痛い』とか、それを私たちの家系は『自由感覚』と呼び、奥義として使っていたみたいで……」
「自由感覚……」
「そりゃすげぇな……ん?」
「どした?」
自分の手のひらをまじまじと眺める薫。
何かおかしな所でもあるのか?
「おい、こりゃどういうことだ? なんで全く無傷なんだよ?」
「えっとですね……。自由感覚はあくまで感覚だけですので、実際に傷つけることは出来ないんです……」
「まあそうか。ツボ押しだもんな」
「すみません……」
いや、それでも十分強力だとは思うが。
あの薫が飛び跳ねるぐらいって相当だぞ?
しかも、直接感覚をいじるならどんな相手にも効果がありそうだ。
「全然大丈夫ですよ。これからよろしくお願いします!」
そう言って握手しようと手を伸ばしたが……。
握り返されることはなかった。
「すみません……。私、肌が敏感で触られるのが苦手で……」
「あ、ごめんなさい」
なんか大変だな……。
目や鼻が良くて困ることはそれほどないが、肌はそうもいかないだろう。
特異器官も良いことばかりではなさそうだ。
と、握り返さなかったことに少し負い目を感じたのか、宇水さんが話を続ける。
「あ、えっとその光さんと薫さんは戦う時、何の武器をお使いになるのですか……?」
「俺も薫も剣ですね」
「! あの……それなら家に実は良いものがあるんですけどよければー」
ドォン!!
その時、大きな地震とは違う揺れが響く!
「な、何だ!?」
「た、大変だぁ!!!」
「どうした!?」
「化け物が……でっかい山の化け物が!!!」
「なッ!?」
まさか新手のオンネンか!?
でも、オンネンは夜にしか出ないはずじゃなかったのか!?
「リーム!!」
「すまないお嬢……なんか吐き気がぶり返して……」
「ええ!?」
こんな時だっていうのにリームがダウンしてる!!
これじゃあシナトスは戦えない!
「アウラ!!」
「はい! シナちゃんはリームさんを見てて! 化け物は私と若と光さんで対処するから!!」
「ごめん!!」
「宇水さんもここに居てください!」
「あ……はい!!」
家を飛び出す、すると確かにそこには山のように大きな化け物がいた。
さらには体中から無数の手が伸びておりかなりキモい。
「オンネンだな……」
「なんで? オンネンは夜しか出ないんじゃないか?」
「それはですね。オンネンも人に存在をバレるのを恐れています、だから基本的に人が少ない夜に行動するんです」
「だがアイツは真昼間から動いてるってことは、バレるのも何もお構いなしってことだ!」
「そんな! それじゃあ、村が危ない!!」
「言われるまでもねぇ! 止めるぞ!!!」
「おう!!」
次回 43話「斬り裂けぬ強敵!!」




