41話 伊農村と触覚の特異器官
「見つけた! 見つけたぞ、やけっぱち!!」
昼間、家でゆっくり映画を見ていた俺の所に薫は興奮気味で現れた。
シナトスもそうなんだが、チャイムもノックもしないで家に入ってくるの止めてくれませんかね。
てか、鍵かけてたよな? 何、当たり前のように勝手に開けてるの?
「『見つけた!』って触覚の特異器官を?」
「ああ、そうだ」
果たしてこれは、薫の発見速度が異常に速いのか。
はたまた、美紀さん達が遅いのか。
天界から帰ってきてまだ1週間ぐらいしか経ってないんだがな……。
ということで、シナトスとリームを呼んできて部屋には5人。
「それで? 触覚の特異器官はどこに居たんだね?」
「ここだ」
広げられた地図に薫は指をさす。
指の先にあったのは、『伊能村』と書かれた森の中の村だった。
「ここいらの連中は『伊農村』って呼んでる村だ。触覚はここの村に居た」
伊農村はここ六文市から、バスや電車諸々乗り継いで約2時間半。
思いのほか近くにいたもんだ。
「それじゃあ、これからそこに行くってわけね?」
「ああ、そうだ」
「で? どんな人なんだ、触覚の人は」
「知らね」
……え?
見つけたんでしょ? なら、事前に会ったりしてないの?
「それがですね……。若は『なるべく早くアイツらに知らせた方が良い』とおっしゃいまして……。まだ、会話どころか対面すらしていないんです」
「おい!!」
「いいだろ、別に!? どうせ、これから会うんだから!!」
そういう問題じゃない!!
まったく……一体親はどういう教育をしたんだか。
というわけで、伊農村に向かうことになった俺達5人。
特に何のハプニングもなく無事に伊農村に到着したのだが……。
「す、少し待ってくれ……」
何故かリームがフラフラになっていた。
「どうした?」
「吐き気が……。それに、少し目眩もする……。何だ、この謎の病は……」
……乗り物酔いか。
リームってバスとかダメなんだな。
「それ多分、乗り物酔いだよ。少しここで休んでいけば?」
「違う! 断じてこれは乗り物酔いでない! 酔い止め飲んだら少し楽になって、風に当たっていると気分が良いが!!」
「それ完全に乗り物酔いじゃねぇか!!」
「違う!!」
なんで認めないんだ!
そこに意地はってどうするんだよ!?
「とにかく! 気分が良くないんだろ? ならそこで休んでろよ。触覚の特異器官は俺と薫とアウラさんとで見つけてくるから。シナトスは悪いけど、リームを見ててあげて」
「うん、そうする」
「おのれ……謎の病めぇ……」
いやだから、それは乗り物酔いなんだよ!!
「ここだ」
空気の美味しい村の中を歩いて少し。
村の中でおそらく一番大きい家に付いた。
表札には『宇水』と書かれている。
「でかい家だな……。この村で一番偉い人達って感じか?」
「そうでしょうね。若、どうか失礼のないようにお願-」
「おーい! 誰かいるかー?」
薫!!!!!
話、聞いてた!? 失礼のないようにって言ったじゃん!!
何当然のように勝手に家に上がってんの!?
「おい、こら!! 薫、勝手に家に入るな!!」
「え?」
「『え?』じゃねぇよ!! デリカシーとか考えろ!!」
「何者だ?」
「ほら! 勝手に入ったりするから怪しまれて『何者だ?』と言われー」
……え?
冷や汗をかきながら、そっと後ろを向くと……。
「お前たち、宇水様の家で何をしようとしている?」
がたいのいい大男が……。
「う~ん……。う~ん……」
その頃、バス停で休むリームはいまだに乗り物酔い……もとい謎の病に苦しんでいた。
「大丈夫?」
「あまり……」
しかし、薬も飲んだしあとは自然治癒を待つしかないのだが……。
「どうかなされましたか?」
すると、そこに一人の女の子が。
綺麗にまとめられた髪に、まだ幼さが残る顔立ち。
しかし身長から見れば歳は光達と同じぐらいだろうか。
だが、身にまとう和服と凛とした雰囲気は見た目とはまた違う印象を放つ。
「えっと……。乗り物に酔ったみたいで」
「違う……酔ってない……」
「まあ、それは大変ですね……。少し、よろしいでしょうか?」
すると、リームの手をそっと取ったかと思うと手のひらをスッと撫でる。
「これでだいぶ良くなったと思うのですけれど……」
「え?」
「……本当だ。気分の悪さがなくなった」
「ええ!?」
「! それは良かったです」
一体何をしたのか。
確かにそっと手のひらを撫でただけなのに、一気に全回復してしまった。
「な、何をしたの?」
「ツボを少し……」
「ツボ?」
「はい。私、昔から肌が敏感で……だからどこをどう触ればどう感じるっていうのもよく分かるんです」
肌が敏感……!
もしかしてこの子が!?
「あの!? 貴女の名前は!?」
「私は『宇水 撫華』。貴女達の言い方で言うと、触覚の特異器官ということになります。死神さん?」
笑顔でそう、少女は告げた。
次回 42話「その感覚は夢のように」




