表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂のレッドライン  作者: ギン次郎
1.5章 六文町の些細な日常
100/316

96話 町内二人三脚スタンプリレー!!(開戦)

 少しづつ夏の気配が漂い始めた今日のこの頃。

 六文町ではとあるイベントが行われようとしていた。



 ーシナトスの家ー

「お嬢、聞いたかね?」


「何を?」


 朝ご飯の最中。

 なんの脈絡もなく、リームはそう切り出した。


「今度の日曜日に『町内二人三脚スタンプリレー』というものが行われるそうだ」


「何、その罰ゲームみたいなイベント」


「なんでも六文町の『町民の運動能力向上』『町民同士の信頼性向上』『町民により町を知ってもらう』ことが狙いだそうだよ」


「なんで全部まとめちゃったわけ? どこぞのニュータウンもそんな感じじゃなかった?」


「まあ、それは吾輩も疑問ではあったが……。それで、お嬢は参加しないのかね?」


「……え? 私参加するの? それに?」


「城内 光と距離を詰めるチャンスじゃないのかね?」


「! そうじゃん! ちょっと誘ってくる!!!」


「あ! 待ちたまえ! とりあえず、トースト食べてからいきたまえ!!!!」


 が、そんな声はシナトスには届かず。

 そそくさと玄関から出て行ってしまった。



 ー少し前、光の家ー

「ヒカ君聞いた?」


 シナトスが家を飛び出す10分ほど前。

 光の家でも、同じような会話がなされていた。


「何を? あと、大ちゃんはなんで朝8時から当たり前のようにウチにいるのかな?」


「そして何でそんなに泥だらけなんですかね?」


 村正ちゃんの言う通り、大和はなぜか体中砂だらけ泥だらけだった。


「さっきここに来るときに、走っていた車の荷台の荷物が私に落ちてきてですね……」


「……。で? 聞いたって何を?」


「実は今度の日曜日に『町内二人三脚スタンプリレー』っていうのがやるんだって」


「何、その罰ゲームみたいなイベント」


「なんか六文町民のいろいろな向上を狙ってるみたいなんだけど……。これにさ、一緒に出ない?」


「……え? このイベントに?」


「うん。あ、私じゃ嫌ならそれはそれでいいんだけど」


「いや、そうじゃなくてね? この嫌がらせみたいなイベントに出るの?ってことでだね……」


「なんか優勝すると賞金100万も貰えるみたいだけど」


「よし、出よう!」


「え!? 即答!?」


 村正ちゃんがびっくりして、思わずキレのいいツッコミをかます。

 まあさっきまで戸惑っていたのに、急に『出よう』とか言い出したらそれも無理はないが。


「ご主人そんなにお金に飢えてましたっけ?」


「ウチはね今金欠なんだよ……。主に食費がエグくて……」


「あー……」


 忘れがちだがシナトスは方向音痴なだけじゃなく、異常なほどの健啖家でもある。

 おまけに自分のことは棚に上げているが、村正ちゃんも結構食べる。

 そのせいで今、城内邸は金欠の危機に苛まれていたのだ。


「じゃあ、私と出るのね」


「うん。よろしく大ちゃん」


 と、言う訳でここに今一つ目のグループが出来上がった。

 そんな記念すべき瞬間を見届けていたのは、当の本人たちと村正ちゃん。

 そして出遅れた死神だけだったが。



 ーその頃、街中ー

 さて、何もここでグッと距離を詰めようと画策しているのは大和やシナトスだけではない。

 ここにも一人、同じようなことを考えている男がいた。


「……は! 別に改めて考えれば緊張することでもねぇんだ! ただ、たまたまこんなチラシを見たから暇つぶしにでもどうだ?ってだけの話だし……」


 日比谷 薫。

 彼も密かに思いを寄せる宇水を誘おうとかなんとか思っていたのである。

 もっとも口では余裕ぶっているが、内心はドキドキしていた。


「さて、着いた……。焦るな、緊張するな。別にそんなに大したことじゃあねえんだ!!」


 勢い込んでインターホンをプッシュ。

 しかし、反応はない。


「……あれ?」


 疑問に思ったその時、ドアに何か張ってあることに気づく。

 そこにはこんなことが書かれていた。


『実家に帰っていて留守にしています。来週の月曜日には帰ります。 宇水』


「……」


 先日、さんざん大和に「運が悪い」と言った薫だったが、薫も薫だった。


『そんな! 狙いすましたかのようにこのタイミングで留守だなんて!!!』


 おまけに帰ってきたころにはイベントはもう終わっている。

 この世の終わりみたいなテンションで出てきた時、そこに同じようなテンションの死神を見つけた。


「なんだ……お前もか?」


「薫も?」


「ああ……」


 互いに言葉は深く交わさずとも、なんとなく事態は察する。


「組むか?」


「そうね」


 と、いう事で2チーム目完成である。

 二人ともテンションは死ぬほど低かったが。



 ー六音時高校ー

『大丈夫だ……。落ち着け、俺。ミスは許されないぞ!』


 さて、学校でも同じようなことを考える青年が一人。

 そう多分忘れかけられている、鹿立 雄馬君である。

 今回こんな狙ったかのようなイベントを知り、憧れの生徒会長と少しでも距離を詰めるべく雄馬もまたチャレンジに出たのだ。

 心臓をバクバク言わせながら廊下を歩いていると、行き当たりにヒナがいるのを発見した。


「あ、せ、生徒会長!」


「あ、雄馬君おはよう。どうしたの?」


「へ、あ、その、きょ、今日は……いい天気だね!」


「そうね。ちょっと暑いくらいだけどね」


「あ、うん。え、えっと、今日もお仕事、頑張ってね!」


「ありがとう!」


 そのまま、要件を告げることは出来ずヒナは生徒会室へ。

 雄馬は一人廊下に呆然と立ち尽くす。


「ああ……言えなかった……。俺の馬鹿! どうして、どうして!!」


「一緒に二人三脚スタンプリレーに出ない? の一言が言えなー」


「え? 私ですか?」


「へ?」


 顔を上げると、そこにはアリサがいた。

 少し驚いた様子だったが、チラシの内容を読んでいく。


「なるほど。オーケーなのですよ! ユーマよろしくお願いしますなのですよ」


「あ、えっと……。はい」


 誤解と間違いと躊躇いが重なって3チーム目も完成。



 ーそして生徒会室ー

「先生、聞きました?」


「何をだね?」


 もう六文町で何度も行われたであろうこの会話は、この生徒会室でもされていた。

 チラシを見ながらヒナはリームに話しかける。


「町内二人三脚スタンプリレー。優勝者には100万円だそうですよ」


「ああ、知っているよ。結構噂になっているからね」


「先生。これ、優勝して100万円貰えたら今後の学校のイベントとかに役立ちません?」


「……どういうことだね?」


「死神病の影響でウチの学校も結構活動費がダメージ受けたんですよ。その分を文化祭とか、体育祭の費用から引いてるんですけど」


「ほうほう」


「その分をこの100万で補えばいいんじゃないかと」


「なるほど……。それで? なぜ吾輩と君なんだ?」


「だって、私の知り合いで男の人ってそんなにいないんですよ。光と組んだら茉子が怒るし」


「……まあ、いいか。君はお嬢の事でも世話になっているし吾輩で良ければ組もう」


「ありがとうございます」


 てなわけで4チーム目。

 これにて、主要メンバーのチーム編成は決まった。

 火花散る熱き戦いが今始まろうとしていたのだった!


茉「え? 私は?」


次回 97話「町内二人三脚スタンプリレー!!(1)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ