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聖女と呼ばれた少女

作者: 桃吉時雨

ふと

神様だって、いつもこっちの思った通りに願いをきいてくれるわけじゃないよねー。

向こうにもそれぞれ専門分野もあるだろうし、考え方も違うだろうし。

と思ったのがきっかけ。



 ある所に島国がありました。島国には、元々住んでいた住民の他に近くの大陸から移り住んできた一族がいました。

その中に一人の少女がいました。

 少女はよく島内を探検していましたがある日、雑草が生い茂り木々が覆いかぶさり、誰にも忘れ去られたような小さな神殿を見つけました。

 一族の他に、元の住人の長にも知らせ、少女はその神殿を綺麗にすることにしました。

 毎日こつこつと草を引き、道具を借りたり、時には大人の力を借りて木を枝を落とし、白い石壁を磨きとても熱心に掃除をして、少女の植えた花が咲き始め、白い壁が光を弾き出したころ、少女はある事に気付いきました。

「ここは誰の神殿だろう」

 自分たちは最近やってきたばかりで、一族の誰も知らないない。少女はたまに話す島の長老に聞きに行っ行く事にしました。

「さぁて。そんなところに神殿なんてあったかな。

 一度、古い書物を読んでみよう。わかったら教えてあげるよ」

 少女は頷き、わからないまでも、誰かの神殿であるのだから…と長老と相談し「神様」と呼ぶことにしました。

「神様、おはようございます」

 綺麗になった神殿に、彼女は挨拶をしに来ます。

 自宅からも少し離れ、自分以外には誰も来ない場所。そこは少女にとって特別な場所になってきました。

「おはようございます。今日はとても暑くなりそうですね」

「こんにちは、朝は雨が酷かったので遅くなりました」

「明日は収穫祭です。どうか無事に終わりますように」

 やがて、島民の誰かが言い出しました「まるで巫女みたいだ」と。少女がほとんど自分で綺麗にしたのは島民は皆知っていることでしたから、皆が「確かに」と頷いただけでした。

 それから数年がたち、島と交流のある大陸の方で悪い病気が流行りだしました。新しい病気で、罹るとまず助からないだろうと言われていました。

 もちろん、島民も心配していました。それほど大きくもない島、医者なんていません。

 少女も熱心に祈ります。

「どうか、悪い病気がこの島に来ませんように」

 少女はとてもとても熱心に祈りました。

「どうか。どうか」

 身近にいる優しい人たちが元気でいられますように。

 ところが、少女の願いも空しく初めての患者が出ました。

 その島民は医者に診てもらう前に亡くなりました。その家族が悲しみに暮れる中、一人また一人と家族に患者が現れました。家族が終わると近所の人や仲の良かった人たち…

 病気は足が速く、次々に島を占領していきます。

「どうか、どうか…」

 それでも少女は祈ります。一族が止めても彼女は祈ります。

 やがて、まだ元気な人たちもお互い病気でないか疑うようになり、大陸も島で病気が流行りだしたとわかると交流を止めてしまいました。

 そして、誰かが一族で誰も患者が出ていない事に気づきました。

「あの一族だけ患者が出ていないなんておかしい」

「あの少女が熱心に祈るようになって島内に広がったのではないか」

 誰かが言い出し、それは残った島民の間に瞬く間に広まりました。どれだけ長老が「少女はただ祈っているだけだ」と言っても誰も聞きません。

 噂は広まるだけでなく、どんどん大きくなりました。「実は少女が病気を広めたのではないか」そんな話にさえなりました。あまりに大きくなっていったある時、残った島民たちが一族の屋敷に向かいました。

「少女を出せ」

 怒りながら言う島民たちに、一族は冷静に話し合おうとしましたが、島民たちは興奮して話を聞いてくれません。

 そんな日も、少女は神殿にいました。

「どうか、どうかこれ以上島の人たちが病気の犠牲になりませんように。

 一族の人達も病気の犠牲になりませんように。

 神様、お願いします」

 その時、神殿に眩しい光が降り注ぎました。まるで太陽が落ちてきたような光です。少女はあまりにも驚いて、声もなくただただ何が起こったのかと思っていました。

「少女よ」

 聞いたこともないような綺麗な声がして、空からこれもまた見た事がないような綺麗な人が降りてきました。

「お主はここを綺麗にし、熱心に祈りを捧げた。

 お主の願いを聞き入れよう」

 その一言で綺麗な人が「神様」だと少女は気づきました。

「ありがとうございます。神様」

 驚きと喜びで少女は涙を流しました。膝をつき、お礼の言葉を捧げると辺りは元通りになり、神様も消えていました。

 少女は神様の事を伝えようと屋敷に走りました。一族の人達に伝えたら次は長老に話そうと声が枯れそうになる位一生懸命走りました。

 屋敷に近づいた時、少女はいつもと違う空気を感じました。

 少女が止まると、向こうから長老がよろよろと近づいてきます。

「帰ってはならない」

 長老はいつになく元気がありません。何故と問う少女に長老は続けます。

「今は、一族と島民との話し合いが続いている」

 続けようとする長老の言葉を途中で遮り、少女は神様の話をしました。もう、誰も流行り病にならない。だから大丈夫だと。皆に伝えに戻ろうと長老の手を取る少女に、長老は泣き崩れました。

 おかしいと思い、泣き続ける長老を置いて屋敷に戻ります。

 すると

 屋敷には誰もいませんでした。

 一族の人達は血まみれで、残った島民達は皆、白い顔をして倒れていました。

 島に残ったのは少女と長老だけになりました。

 誰もが息をしていないのを確認する頃、長老が戻ってきました。

 興奮した島民たちが一族の人達を襲ったこと、その島民たちも空が強く光った瞬間に倒れて息をしなくなったこと。

 島民たちのように白い顔をする少女は長老に気付くと大声で泣きました。

 何故、皆死んでしまったのか。そう言う少女に長老は答えられません。長老も少女に、どんな神様か調べてもわからなかったと伝えて泣きました。二人は互いを抱きしめあって泣きました。

 しばらく泣いていると、光に気づいた大陸の人達がやってきて二人を見つけました。

 二人だけ残ったことを「奇跡だ」と言い「もうここでは二人では生きていけないから」と二人を大陸に連れて行きました。

 二人は大陸の神殿で過ごすようになりました。皆、二人にとてもよくしてくれました。

 二人のことはすぐに大陸中に知れ渡り、多くの人が二人に会いに来ました。しかし、長老はかなり年を取っていたのでしばらくして亡くなってしまいました。少女も、大陸に来てから元気が無くなり、少しづつ少しづつ小さくなって亡くなってしまいました。

 「聖女」と人々に呼ばれ慕われていた少女は、生前に望んでいたように質素に、とても多くの人に葬儀をあげてもらいました。「聖女様」を慕っていた人たちは大陸の神殿だけでなく、「聖女」のきっかけになった島の神殿にも少女の骨の一部を埋葬しました。

 「奇跡」後、沢山のお墓と綺麗な神殿だけになった島は「聖女の育った場所」として特別な場所になり滅多に人が行かない場所になりました。

 やがて長い時を経て、その島は「聖女の島」と呼ばれるようになりました。



 

 

 


なんとなく救われない感じで終わらせたかったのですが、なんとか無事できましたかね。



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