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第二幕 エルフの集落

次話を読んでいただきありがとうございます。

よろしくお願いします。


トオルは、目の前で十メートルの機神と巨龍との戦いを目撃する。


 トオルは目の前で繰り広げられている驚くべき光景に茫然自失していた。


 ティラノサウルスの如き鋼のドラゴンと、同等の巨大さを持つ機械巨神、マキナが戦い合っている姿は、まるでアニメや映画で見た迫力を上回る現場だ。


 エルフのフェーリルが

「何をぼさっとしている! 巻き込まれるぞ!」

と、トオルの立ち尽くす方を持ち引っ張る。


「ああ…」とトオルが動かないでいる前に


 ブオー-----

と、胸部と背部から蒸気を噴出させてマキナが、陸生のバジリスク・ドラゴンを殴る。

 耳を突き破るようにな衝撃音と、十メートルのバジリスク・ドラゴンが地面を凹ませて転がる姿は、圧巻でしかない。

 そして、それがトオルに迫る。


「え、ああああああ」

と、トオルはやっと逃げ出し

「全く!」

 フェーリルは呆れ怒って一緒に走る。


 トオル達が逃げたそこへバジリスク・ドラゴンが転がり、地面を凹ませる。

 バジリスク・ドラゴンが起き上がり


 ギヤアアアアアアア


 怒りの雄叫びを上げて、マキナに突進する。


 マキナは豪腕の右腕を曲げて、腕部にある何かのロックが外れていく。

 そして、マキナから声が響く

「ファイナル・インパクトーーーー」

 老年の渋い声がマキナから轟き、マキナの構えた豪腕の右が、突進するバジリスク・ドラゴンに発射された。

 マキナは背面と脚部、伸ばした右腕から炎のフレアを噴出させ、突進するバジリスク・ドラゴンへ同じく突撃した。

 

 バジリスク・ドラゴンが、放たれるマキナの右拳を噛み砕こうとしたが…噛み砕けず金属の牙が粉砕。

 更にマキナの鉄拳が入り込み、バジリスク・ドラゴンが縦に圧縮されマキナの纏っている炎のフレアが、バジリスク・ドラゴンに襲い掛かり、バジリスク・ドラゴンは爆発、真っ二つに破壊された。


 鋼鉄のドラゴン、バジリスク・ドラゴンの破片が周囲に降り注ぐ。

 その肉片の全てが金属やシリコンのような物質だ。

 

 逃げて離れて見ているトオルとフェーリルの二人の下へ、機械巨神のマキナが近付く。

 地面を揺らし、トオルの足下からその威圧の震動を伝えて二人に迫り屈むと、胸部が開き、水晶のような部分から、人が降り立つ。


「大丈夫か!」

 その人物は老人である。エルフとは違う人だ。

 年齢的に70代くらい、白い口ひげと右目に眼帯を付けている老人にフェーリルが近付き

「助かったよ。アルド」

 気軽に声を掛ける。


 アルドと呼ばれた老人は肯き

「なぁ…に。バジリスクに襲われそうになっているフェーリル達を見てな…駆け付けたまでさ。それと…」

と、アルドはトオルを見て

「初めて見る顔だが…」


 トオルは、マキナの操縦者である老人のお辞儀して

「ど、どうも…真木 トオルという者です」


 アルドは顎髭を擦りながら

「マギ トオル? 魔術師か?」


「え?」とトオルは疑問の顔をする


 アルドは

「マギとは…魔術師の事を示す言葉だ」


 トオルは困惑する。

 え? 魔術師? ええ?

 固まっていると、フェーリルが

「コイツは森に迷い込んだ散策者だよ。アルド」


 アルドは渋い顔をして

「確かに、この森は、太古の状態を維持しているので散策し甲斐があるが…。ここは火山が多いウルフファング連山の傍だぞ。あのようなドラゴンが徘徊している森でもある。気をつけた方がいいぞ」


 トオルが首を傾げると、アルドが

「なんだ? ここの事を知らないのか? 有名だぞ。ドラゴン・ネストと呼ばれる危険地帯だと!」


 トオルが挙動不審になる。

 え? ドラゴン? ええ? 火山の連山?

 

 トオルが言葉を失っていると、アルドとフェーリルが顔を見合わせて

「ちょっと、集落まで来い」

と、フェーリルが告げた。


 トオルは、フェーリルと共にアルドのマキナの右手に乗って、フェーリルの集落まで来る。


 目の前に、山間に作られた巨大な城壁と門が見える。

 マキナよりも高い城壁の上には、フェーリルと同じエルフ達がいて、アルドのマキナと、その右手にいるフェーリルとトオルに手を振り、城壁の門が開いた。


 十メートルの機神、マキナが余裕で通れる門を潜り、中に入ると大きな集落があった。 畑が並び、それに沿って道や家々があり、用水路のような小川が何本も走っている。

 その最奥には、古城がある。


 エルフの集落に来たトオルは、マキナから下ろされ、そこにエルフの者達が集まる。

 フェーリルと同じエルフが

「遠くで見たぞ、赤いあの光、アルドのマキナの攻撃だな!」

 

 フェーリルが肯き

「ああ…アルドがマキナで倒してくれた。後でドラゴンを回収するぞ」


「二週間ぶりのドラゴンの獲物だな!」

 エルフの仲間が喜ぶ。


 それをトオルは見つめて呆然とする。

 村の人々の服装、中世のヨーロッパの時代と似ている。

 更に、尖った耳に、金髪、緑、青と色取り取りの髪。


 アルドが来て

「エルフが珍しいのか?」


 トオルはエルフと聞いて呆然となる。


 そこへエルフの女性が来る。

「あら、お帰りアナタ…」

と、フェーリルに近付く。


「ただいま、サラーナ」

と、フェーリルは微笑む。


 サラーナは、トオルを見て

「知らないお客様?」


 フェーリルが

「ドラゴン・ネストの森で迷っていてな。そこへオレが通り掛かって、バジリスク・ドラゴンの襲撃に巻き込まれ、アルドにマキナで助けて貰ったのさ」


 サラーナがトオルに近付き

「初めまして、フェーリルの妻、ア・サラーナ・レティ・フェリオットです」


「ど…どうも…」

と、トオルはお辞儀する。


 サラーナが、トオルの右腕のケガを見つけて

「右腕が…」


「ああ…」とトオルはボロボロになった右腕の袖から出ている肘にケガがあったのを気付く。


 サラーナが両手を前に出して

「待ってくださいね」


”ヒール・レイン”


 トオルが緑の光に包まれ、右腕の傷があっという間に治って消えた。


 えええええええええ!

 トオルは内心で驚愕する。


 フェーリルが自慢げに

「ウチの嫁は、この集落で最も腕が立つマギ(魔術師)なんだよ」


 トオルはショックで呆然としながらも、気付いた。

 これ、異世界に来ちゃった…と。


◇◆◇◆◇◆◇


 夕方、フェーリルの家に招かれ事情を聞かれると、トオルは

「名前以外、思い出せません」


 フェーリルと妻サラーナに、一緒に来たアルドが驚きを向ける。

 

 フェーリルが頭を抱え

「ええ? えええ!」


 サラーナが右手を顎に置き考え

「記憶喪失って事?」


 トオルは肯き「多分…」と


 アルドが渋い顔で

「何か憶えている事は?」


 トオルは頭を抱えて

「何か、強烈な光を見て…それで…」


 アルドが焦げているトオルの両手足の裾を見て

「恐らくだが…ドラゴンに、しかも…ブレスを吐くバハムート級にやられて…」


 フェーリルが眉間を寄せ

「確かに、バハムート級なら…その暴威に晒されて…」


 サラーナが「ああ…」と顔を苦しそうにする。


 トオルが心配げに

「自分は…どうすれば…」


 フェーリルが

「記憶が戻るまで、この集落にいればいいさ」


 暖かい言葉にトオルは感謝して

「ありがとうございます」

と、頭を下げた。


 その後、別の部屋で袖がボロボロの服を変えるとして、服をフェーリルから貰い、上着を脱いで上半身を顕わにすると、上半身に異変がある。

「なんだこれ?」

 上半身の全体に黄金の電子回路のような入れ墨が刻まれている。

「ええ…」

と、トオルは青ざめていると、ドアがノックされ


「おい、若いの」とアルドが入り

「この短剣はワシのお古…」

 アルドは、トオルの上半身、前と背中に刻まれている黄金の回路模様の入れ墨を見て、持って来た短剣を落として

「お、お主…ワシと同じマキナ・マイスターか!」


 トオルは、上半身に触れながら

「え…マキナ・マイスターってなんですか?」



 その後、フェーリルと妻のサラーナも来て、トオルの上半身にある黄金の回路模様の入れ墨を見つめて

 アルドが

「こんな大きなマキナ・スティグマを見た事がない」

 驚きを向ける。

 

 フェーリルが、トオルの右肩の模様を見て

「アルド、確か…スティグマの一つが、マキナの所有を現しているんだよなぁ…」


 アルドは肯き

「ああ…ワシは、胸部に大きなのを一つと四つだ」


 フェーリルは、背中にある無数のサークル模様達を見て

「もしかして、これ一つ一つが…」


 アルドは、トオルの背中の両肩から背骨の中腹、頭まで伸びる大きな翼を広げたようなサークル模様を見つめて

「こんな巨大なマキナ・スティグマは見た事がない」


 サラーナが、濡れた布巾で、トオルの右腕の汚れを取り手にして

「見てよ。腕の全体から、手の甲、手の中まで、マキナのスティグマだらけよ」


 フェーリルが、足から太もも、お尻、背中まで見て

「足先から、全てに大量のマキナ・スティグマのサークルだらけだぞ!」


 アルドが驚愕でトオルを見つめて

「こんな立派で大量なマキナ・スティグマなんて、王族や皇族だって持っていないぞ! お主何なのだ?」


 トオルは顔を引き攣らせて

「わかりません」

と、答えるしかない。

 

 だって異世界から来ましたなんて、信じて貰えないだろうし、記憶喪失で通すしかない。


 トオルが

「そのマキナ・スティグマとか…マキナとか…なんです?」

 全てが疑問だらけだ。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いします。

ありがとうございます。

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