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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

欲しいもの

作者: どんC
掲載日:2018/04/04

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 欲しいものはなに?


 言ってごらん あげるから


 したいことはなに?


 言ってごらん 叶えてあげるから



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






 私の名はアレクサ・オドリー。

 オドリー男爵の三女だ。

 家は貧乏貴族で父も母も金策に駆けずり回り。

 米つきバッタの様に商人や金貸しにペコペコしている。

 貴族の令嬢は優雅に刺繡してお茶を飲んでいるイメージがあるが、私は穴の空いた靴下を繕っていた。

 無論飲むのは白湯だ。

 我が家は、本当に底辺で金が無かった。


 近所に金持ちの商人の子がいてその子が持つ人形が羨ましかった。

 その子に似た金髪碧眼の人形はレースの一杯ついた紫色のドレスを着ている。

 その子は人形とお揃いのドレスを着ていた。

 自慢気に見せびらかして私を笑う。

 金持ちだから貴族の男の子とも知り合いだ。

 家と違ってまともな貴族だ。

 綺麗な服をきた、綺麗な男の子。

 王子様みたいだ。


「あら?貴女の持っているゴミもしかして人形?」


 私は姉様がトウモロコシの皮で作ったてくれた人形を後ろに隠した。

 あの綺麗な男の子は、今日はいない。

 私は逃げ出した。

 笑い声が追いかけてくる。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 欲しいものは何?


 言ってごらんあげるから


 したいことは何?


 言ってごらん叶えてあげるから


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 夜その声を聞いた。

 男とも女ともつかない声だった。


 朝あの子の人形がずぶ濡れになって床に落ちていた。

 あの子は池に落ちて死んでいた。

 お葬式。

 私はこっそりあの子の棺に人形を入れた。



 ─── それからあの声は聞こえなかったのに ───



「ねぇねぇ。見せて。見せて」


「凄い綺麗ね。婚約指輪?」


「昨日二人で見に行ったの。ほら大通りの『ジュエリークイーン』よ」


「あっあそこ良いよね~お父様とプロム用のアクセサリー見に行ったわ」


「私の婚約者もあそこでアクセサリー買ってくれないかな~」


「あら?結婚指輪頂いたのでしょう?」


「代々受け継がれてきた指輪はでかくて成金趣味丸出しなのよ。私シンプルな方が好きなの」


「公爵家ですもの仕方ないわ」


 ベンチに座ってお喋りを楽しむ二人は、草影にいる私に気が付かない。

 私には婚約者も指輪も無い。

 それどころか、一緒にお喋りを楽しむ友人もいない。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 欲しいものは何?


 言ってごらんあげるから


 したい事は何?


 言ってごらん叶えてあげるから


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 またあの声を聞いた。


 朝 引き出しを開けると指輪をはめた手首が入っていた。

 婚約者に指輪をもらった少女は女子寮の近くの森で首吊り死体で発見させた。

 左の手首は無かった。

 警護隊は指輪を狙った物取りの犯行だと断定した。

 犯人は男でかなりの力持ちと推測された。

 でなければ梯子を使わず高い木に死体を吊るせないからだ。


 私はこっそり森の中に指輪をはめた手首を埋めた。


 学園を卒業後、老伯爵婦人の看護婦になった。

 私は光り魔法が少し使えるからリウマチの痛みを取る事が出来る。

 割りと賃金が良くて実家に仕送りしている。


 気難しい老婆には孫がいて、その方はとても優しい。

 私は密かに彼に恋をした。

 今度大きなパーティーが、開かれ老伯爵婦人と看護婦の私も招かれた。

 帝都の館で開かれたパーティーは、豪勢で眩いものでした。


「ふう孫もやっと婚約者が決って、やれやれだよ。前の婚約者はあんなことになるし」


 老伯爵婦人の車椅子を押しながら私の笑顔は凍り付く。


「お婆様」


 若き侯爵は私達の所に挨拶にきた。

 美しい婚約者を連れて。


「ご婚約おめでとうございます」


「ああ…ありがとう。ミッシェル彼女はお婆様の世話係のアレクサだよ」


「まあ随分とお若いのね」


「彼女は光り魔法が使えてね。お婆様のリウーマチも随分楽になったんだよ」


「恐縮です」


「本当にアレクサは礼儀正しいな」


「使用人なんだから当たり前じゃない」


 彼女の言葉にツキリと胸が、痛む。


「ダンスが始まるわ。最初に私達が踊らないと始まらないわ」


 エイドリアン様は美しい婚約者を連れて踊る。

 二人とも見事なステップだ。


 私には縁の無い。きらびやかな世界。

 昔からそうだった。

 可愛い人形を持っているのも。

 素敵なドレスを着ているのも。

 婚約者と一緒に選んだ指環も。

 友人との他愛ないお喋りも。

 婚約披露パーティーも。

 私には関係無いものばかり。


 私はただ物欲しげに見ているだけ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 欲しいものは何?


 言ってごらんあげるから。


 して欲しい事はなに?


 叶えてあげるから



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 その夜またあの声がした。



 朝目覚めるとエイドリアン様がいた。

 床に倒れている。

 血塗れで冷たくなっていた。

 ヨロヨロと駆け寄りエイドリアン様を抱き締める。

 私は泣きながら、冷たくなった彼に口づける。


 ─── 欲しいものは何?言ってごらんあげるから。したい事は何?叶えてあげるから ───



 ハッキリ声が聞こえた。

 振り返る。

 そこに立っていたのは斧を持った一人の女。

 質素な寝間着を血塗れにして歪に嗤う。

 私がいた。


「殺して‼ 私を殺して‼」


 私は思い出した。

 欲しかったのは人形じゃない。

 あの子の横にいたエイドリアン様‼


 欲しかったのは指環じゃない‼

 彼女と婚約したエイドリアン様‼


 やっとやっと欲しいものが、手に入った。


 だからもう良いの。


 私は泣きながら懇願する。



「私を殺して !! 」


 私は嗤いながら斧を振り下ろした。



            ~ Fin ~


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 

2018/4/4 『小説家になろう』 どんC 

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★アレクサ・オードリー

貧乏男爵の三女。


★金持ちの少女

第一の犠牲者


★指環の少女

第二の犠牲者


★エイドリアン

伯爵。美男子で優しい。


★ミッシェル

エイドリアンの婚約者











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