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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

山姥と青年

作者: ユラカモマ

 昔々、ある村にとても心優しい女性がいた。彼女は子供が大好きで村中の子供たちの面倒をよく任されていた。彼女は村中の子供たちにお姉さんと呼ばれ慕われていた。ある時、戦が始まるということになって村の中でも年長の男の子たちは従軍するため町へと行くことになった。お姉さんは泣きながら布で作ったお守りと日持ちのする食べ物をめいっぱい持たせて無事に帰っておいでと見送った。

 それから、数年が経って戦が終わり生き残った男の子は立派な青年になった。ある日彼は村へ帰ることにした。彼は村に帰り大いに歓迎された。ところが不思議なことに彼が村を立った時、見送ってくれた年少のものや女の子たちが全然いなくなったいた。怪訝に思った彼がこっそり村人に尋ねると村人は青い顔で震えながら教えてくれた。山姥にやられたと。なんでも自分たちが立った後、山裾にある小屋に山姥が住み着き子供たちを襲うようになったとか。それは何としても退治せねば。青年は猟銃を持ってその小屋へと向かった。その小屋はすぐに発見された。青年は小屋の中に飛び込んだ。中にはぼろぼろの服をきたぼさぼさの白髪の山姥がいた。入口から得物を持って飛び込んできた彼を見つけると包丁を持って襲い掛かってきた。猟銃を構えようとした青年は山姥の勢いに間に合わず肩のあたりを切り付けられた。その勢いにすっかり気が動転した彼は猟銃を捨て逃げ出した。彼は逃げながら昔お姉さんに貰ったお守りを懐から取り出し祈った。どうか、力を貸してけれ。山姥は後ろから追いかけてくる。青年は太い木の棒を拾い山姥に向き直った。兄弟たちの仇、叫んで持っていたお守りを投げつけると山姥は足を止め落ちたそれを拾い上げた。青年はこれを好機と手にした枝で山姥を二三回殴った。山姥は地面に力なく倒れ伏した。彼は顔を拝もうと腕をつかみ倒れた山姥をひっくり返した。すると山姥はまだ生きていてつかまれた腕を握り返した。驚いたことに山姥はもう片方の手に先ほど自分が投げつけたお守りをつかんでいる。山姥は頭から血を流しながらじっと青年の顔を見て息も絶え絶えに言った。亀吉じゃないかえ、大きくなって、よう、戻って来たなあ。山姥は語った。村で飢饉あったこと。子供たちが口減らしのために小屋に閉じ込められたこと。日に日に弱っていく様子を見ていられず手にかけたこと。そのあとのことはよく覚えていないということ。このお守りを見て亀吉と気づいたこと。山姥は涙をこぼす青年の頭を一撫でして最期にこういった。ありがとう、亀吉はみんなの仇を討ってくれたんやねえ。青年はすっかり様変わりしたお姉さんの遺体を小屋の近くに埋め、それ以降村に帰ることはしなかったという。

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