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リジェネーション

18/2/19 魔法詠唱関連変更

「やれやれ、大騒ぎになってしまったな」

不健康そうな青白い肌に、朝露を浴びた草原のようなきらめく緑の髪は短めに整えられている。

黒い外套を纏い中には赤いローブを着込み大きな魔石が付いた杖を手に持ち

いかにも魔道士と言った風貌の彼は魔王を討伐した勇者のパーティーの生き残りの賢者である。


魔王討伐後に世界が平和と発展に喜びを感じている中

彼は魔王と対峙した時の恐怖を引きずり魔法の研究を進めありとあらゆる魔法を習得し

それでも止まらずマナの深淵への扉を開き膨大なマナを体に宿していた。

しかしその力を制御できてはいない、先程のエント村でも獣に毛が生えた程度の魔物に対抗するべく

放った魔法は危険なものだった”ファイアボルト”炎系魔法の最下位である。

炎を矢の形にして飛ばす。そんな簡単で単純な魔法も彼にかかれば何百年も維持する巨大な炎の楔となる。

ファイアボルトを放つ時に維持にマナが集中していたためそうなってしまった。

もしも威力や範囲や速度などにマナが集中していたらもっと恐ろしいことになっていただろう。


「次の町は後どれくらいだろうな」

森の中の道を次の町へと歩を進めていると、どこからともなく声が聞こえる


た・・けて・・・

たす・・・けて・・・


助けを求める声が聞こえる。

ふと思い出す。

寝食をともにし魔王に挑んで自らを犠牲に魔王を撃退したかつての仲間たち


「ははは!おまえが居るとなかなか旅が進まないな!」

勇気と優しさの塊のような勇者という言葉をそのまま具現化したような爽やかな青年だ。

「でもそこが賢者のいいところ」

彼女は魔法技術を研鑽しあった魔法使いだ。

「ったく会う人会う人助けてたらきりがねーぞ!」

ぶっきらぼうだが面倒見のいい兄貴のような存在の盗賊。

「ですがそのお陰でゆく先々で良いもてなしを受けるのではないか」

聖騎士だ強さと品格を兼ね備えた王と言われても納得してしまうような人物だ。

私は答える「すいませんモヤッとしたまま旅を続けたくないんです」

「そりゃそうだなスッキリして行く先々でもてなされる最高じゃないか!ははは」

勇者は笑う


懐かしい思い出に今まで自分が研究所こもって人助けを拒絶していたことを恥ずかしく思う。


助けに行こう!

生い茂った草をかき分け道なき道を声がする方へと向かう

大きな岩に出くわす高さは2mほどあり下の方に穴が開いていて向こう側に光が見える。

穴はトンネルのようになっており穴の大きさは、

大人が這って入らないといけないぐらいちいさいものだ。

声はこのトンネルから聞こえる。

子供か?それとも大人がハマっているのか?

とにかく助けるために這って穴の中に入る意外と狭くてデコボコしていて外套が天井に引っかかる。

引っかかる外套を解きながら進むと助けを求めている者が見えた。


薄い青色で透き通った丸みを帯びた形でプルプルと震えている。

よく知ってるこいつはスライムだ・・・

生物で最弱なものから魔王軍幹部クラスまで幅広い強さと多彩な種類がいる魔物だ。


「たすけて・・・」

「ギィェェアアアアシャベッタァアアア!!」

賢者は慌てふためくどんな強いスライムでも喋るのは聞いたことが無く悲鳴を上げる。


落ち着け!落ち着け!相手は負傷しているんだ、優位に運べるはずだ。

まずは話しかけてみようと思った瞬間。


「ギィェェアアアア人間がシャベッタァアアア!!」

今度はスライムが悲鳴を上げた


「うわぁあああああああ」

「いやぁあああああああああ」

悲鳴を上げ合う一匹と一人


ひとしきり悲鳴を上げ終わると両者は落ち着きを取り戻す。


「は・・・はじめまして放浪の旅をしているものです」

「ど・・・どうもスライムです」

「こんなところで何しているのですか?」

「怪我をしてここに逃げ込んで助けを待ってました」

よく見るとスライムの体の半分は溶けて液状化して形を保つのもつらそうだ

「良かったら治療しましょうか?」

「あっはい、お願いします」


傷が永続的な毒のようなダメージによるものか

持続力の無いなものなのか判断がつかない

一度きりのヒールより回復効果が続くほうがいいかも知れないと思い

呪文を唱える「癒 続」「リジェネーション!」

緑色の光りに包まれ、みるみるうちに回復するスライム

「お~生き返る~ありがとう、おかげで助かったよ」

「もう大丈夫そうですね」

「それにしてもあんた魔物語を喋れるとは驚きだな」

「え?人間の言葉を話してるのはあなたですよ?」

しばらく沈黙が続く・・・


「一旦ここから出ましょうか」

賢者の言葉に従って二人はトンネルから抜け出て岩の上に登り腰掛ける。

スライムがポヨンポヨンと跳ねながら器用に岩を登り後をついてくる。

もしかしたら強大な力を持ったスライム族の頂点に君臨する魔物なのかも知れない、

恩を売ったことは正解だろう詳しく聞く必要があるな・・・


「整理しましょうあなたが人間の言葉を話していますよね?」

「いやいやあんたが魔物の言葉を話してる」

また沈黙・・・


「そもそも俺には音を発する器官がない」

プルプルと震える

「・・・ですよね」

驚くことに魔物ではなく私が魔物の言葉を話しているらしい

言葉というか魔物は思念波のようなもので会話するから

音は発しないと魔物研究記録で見た覚えがある。


思考を巡らせるきっとこれもマナの深淵の効果だろうと片付けようとした時

マナの中に意識を乗せる術式を思い出した。

まだ名付けてはいなかったがあの効果が残っているのか・・・


「私が話せるのはわかった。すると君は普通のスライムかい?」

「そうだよ世界最弱の生物と名高いスライム様だ!」

相当ヤケクソな人生を送ってきたらしく開き直っている。

「さっきだって鶏に突かれてあのざまさ!弱すぎて笑っちゃうよね」

ただのスライムか・・・だったら実験に付き合ってもらおう

「君は私に恩があるよね?」にっこり笑いかける

「う・・・はい」嫌な予感にたじろぐスライム

「さっそく実験だー!」賢者はスライムを脇に抱えて走り出す!

「ちょっと!ちょっとー!」脇に抱えられてプルプルするスライム


こうなった彼はもう止まらない、賢者は1人で数十年も籠もれるほど実験好きだ!

一気に街道にでてその街道を辿り次の町の方へ向かった。


少し走ると偶然商人の馬車を見つける。

「あれだ!おーいちょっと止まってくれー」

商人は呼び止められて馬を止める

「どうかしました?魔術師様?」

馬車に乗ったまま横向きに話しかける。

「こいつを見てくれ」スライムを差し出す賢者

「何か話してみて」と小声でスライムに耳打ちする

「こ・・・こんにちは・・・」


「このスライムがどうにかしたんですか?」

やはりスライムの声は聞こえていないようだ。

「少々お待ちを」

商人にそう伝えるとスライムを地面におろし魔法を唱える

「念 考 話」「トランスレーション」

マナに意思を載せる代わりに言葉を載せて飛ばせるようにした術式だ

意識と違い言葉ならごく微弱なマナでも乗せることはできるはずだ。


スライムを持ち上げて商人に差し出す。

「ほら!もう一回」スライムに耳打ちする

「こんにちは!」スライムが話す。


「ギィェェアアアアシャベッタァアアア!!」


商人は驚く!その声で馬が驚き馬車が急発進する!

街道をエント村の方角に走り去っていった。


「やった成功だ!魔物と話せる魔法を開発したぞ!」

「何それ怖い」


「やったぞ!スライムッこれは革命だ!」

手に持ったスライムを空に掲げる

「ははは!あんた面白い人間だな気に入ったよ!

 俺は決めた!あんたについていくぜ!」

「へ?」賢者はぽかんとした顔でスライムを見上げる

「見たところ1人旅だろ?仲間は多いほうが良いだろ?」

「仲間って・・・おまえ」「貴重な話し相手だぞ?」

たしかに道中寂しくなることもあったと思い浮かべる。

「わかった、一緒に行こうスライム!」

「よっしゃ~よろしくな!」

「こちらこそよろしく!」


□□□喋るスライムが仲間になった□□□


賢者はスライムを頭に乗せて次の町へ歩を進めた。


ブックマークありがとうございます。

不定期ですがよろしくお願いします。

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