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戦後とマナの深淵

18/2/19 魔法詠唱関連変更

時は過ぎ討伐歴2年

自分たちが魔王を退けたことにより年号が討伐歴に変わった。これは恩賞を与えられない5人の死者への感謝と復興の旗印として行われたものだった。


私には恩賞として魔法研究所が与えられそこの最高責任者となった。研究所は小さな村の近くの森の中に建てられた大きな屋敷だった。初めは魔術師が20人以上いたが世の中が完全に平和になり復興で人手不足となり始めると皆やめていった。今は恐怖と孤独を抱えたまま一人で研究をしている。


「戦争は終わったんです。今は復興と発展の時代です」

最後の魔道士が残した言葉だ、確かに復興は大事だが魔王は完全に滅んだのではない。来るべき時のために強さが必要なはずだ。私は研究を一人で続けることを決意した。


討伐歴32年

賢者ももう若くないそれどころか心労によりまるで老人のようになっていた。一人で研究を続ける彼は周りから変人扱いされるようになっていた。近くの村の大人たちは子供にあそこは危険だから近寄ってはいけないと躾て避けている。子どもたちからは妖怪じじいや(なま)リッチなどと呼ばれていた。魔王討伐の功績があるので近寄るものはいないが非難する者もいない状態となっている。30年の研究でかなり強くなったと思うが恐怖は薄まらない……周りから人が離れてしまったので孤独感は更にました。


「魔法技術を伸ばすし威力を高めるのもここが限界か」

朝食を取りながらふとつぶやく独り言は癖になっていた。魔王を倒すには足りるのだろうか?もっと強くなる方法はないか?彼は思い悩む……しかし彼は知らないすでに魔王など一撃で葬れるほど強くなっていた。彼の中で恐怖と合わさった架空の魔王の実力は、彼が強くなるたび共に成長していきゴールを完全に見失っていたのだ。


「技術が頭打ちなら出力を上げてはどうか?」

この世界の魔法はマナの深淵と呼ばれる場所から漏れ出てくる。マナを詠唱によって性質変化させるものだ。そこで彼は漏れ出てくる魔力を効率的に集めるにはどうしたらいいか思案する。


「発生源にアクセスできれば出力をあげられるのではないか?」

彼は思いたち研究を始めた。


討伐歴46年

「ついに見つけたぞ!」頭は完全に禿げ上がっていた。

頭髪再生技術に寄り道もしたりしたが、ついにマナの中に意識を乗せる術式を開発した。マナを辿りそれを逆行してついにマナの深淵にたどり着いたのだ。魔王が指定した年に近づき焦っていた彼は先のことを考える余裕もなくなっていた。ろくに検証もせず自分とマナの深淵に接続路を作ろうとしていた。


「今こそ深淵の扉を開く時!」

入り口を開いたとたん意識は弾き飛ばされ体に戻る。

「失敗したか?」

次の瞬間に大量のマナが流れ込んで来るのを感じる。

「これは……成功だ!やっったぞ!はははははは」

からは何年ぶりかに笑い声を上げて喜んだ!


「早速魔法の威力の実験だ!」

魔法の威力を試すために作られた地下空間へ急ぐ。魔法試験場はだだっ広く地下一階をワンフロアで埋めている。中心には標的用の土人形がぽつんと佇んでいる。


「まずは最下級呪文から始めるか?それとも最大魔法を試してみるか?」

ここは大事をとって最下級のエクスプロージョンを試すことにした。土人形に「爆」と詠唱した。対象にありえない量のマナが集中し爆発エネルギーに変換される。「へ?」と情けない声を上げた直後辺りが閃光に包まれエクスプロージョンが発動する。


深淵から漏れ出てくる量と開いた穴からではマナの量が段違いであることは少し考えればわかることであったのだ。結果エクスプロージョンは通常ではありえないほどの規模で爆発した。


「いててて・・なんて威力だまったく」

目を開くと強大なクレータの中心にいて唖然とする。

急いでクレータからでて惨状を確認する。

「あああ研究所が……」

まるで巨大隕石でも落ちたかのように地面がえぐれていた。


これほどの規模の魔法を喰らえば自分も無傷ではすまないのだが何故か無傷のようだ。それどころか体の調子が良いくらいだ。ふと自分の手を見ると見慣れた自分の手ではない、顔を触るシワがない、視線を足元に落とす細かった脚が筋肉を携えた立派なものに頭に手を置く……髪がある……髪がある!これはいったいどういうことだ疑問に思い当たりを見回すと足元に割れた窓ガラスがあることに気がついた。それを拾い上げて顔を映してみる……それは懐かしい顔だった。


朝露を浴びた草原のようなきらめく緑の髪に日に当たっていない白い肌間違いない肉体が全盛期を迎えていた時の自分の姿がそこにあった!


「若返ったのか?」


マナの激流により体の傷はもちろん傷ついたDNAまで修復し細胞は完全に若さを取り戻していた。


呆然としていると近隣の村人が集まってきた。

「ついにやりやがったかあのジジイめ!」「賢者様はどこに?」

「やっぱり危ない人だったんだわ!」「え?生リッチ死んだの?」

口々に好き勝手なこと言ってる村人たちがいた。


どうやら若返った私が賢者だとは気がついていない。

家も財産もかろうじて残った信頼も失ってしまったようだ。

あの威力の魔法なら流石に魔王も倒せるだろうしこの地に固執する理由もなくなった。


「旅に出るか……」

魔法研究所と魔王への恐怖と信用と功績を一発の魔法で吹き飛ばした彼は世界を放浪することを決めた。

プロローグはここで終わり

次回から旅が始まります。

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