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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

自傷っ子の心のカケラ

作者: 緋月 呪莉愛

※リストカットの描写少しだけあります。


虐待、ネグレスト家庭で育ったハーフの少女の話。

中学生より精神科に通院。

闘病しながら傷だらけの腕でも生きて行く。。

入院を繰り返しながらも。

少しずつ書いて行きます。

2017/06/01第一章完結。

人間には心の天使がいる。


貴方にも私にも。

誰にだっていて、護ってくれているのだけど。。。


「哀しいよ。寂しいよ。辛いよ。」

と、少女は涙するのでした。


「何がそんなに辛いのかい?教えてよ。」

心の天使は寄り添うように聞きます。


「何がって云われても解らないよ。只、只、消えたいの。。。」

「其れは本心かい?」

「え。。。?」

少女は戸惑います。


【私って何で消えたいんだろう。。。】




思わず涙が止まりました。

浮かぶは楽しかった追憶達。

遊園地や頑張った運動会。

そしてその記憶には、必ず笑顔の母が居たのでした。

少女は10/21に20才の誕生日を控えていました。

しかし母の消息は解らず、

祖母に引き取られ早5カ月。



少女は自制が利かず荒れに荒れていました。

家に帰らない。朝帰りは日常茶飯事。

それでも祖母は少女が帰るまで眠らずに心配して待ってくれていたのです。

其の事に気付いていた少女。でも辞められず、罪悪感と共に悪友とカラオケBOXで哀しい曲ばかり謳うのでした。


【誰か。。。誰か。。。私は此処に居るよ。。。】


心はそう叫んでいました。

そんな日々をどれ程過ごしたのでしょう。

少女は「現実」ではなく「夢」の中を彷徨い続けます。


「こうなりたいの!!」と悪友に云う。

悪友は「いいじゃん!」と云ってくれる。

それに同調してくれる否定しないでくれる悪友。

一緒に居て心地良くなかなか離れられない。

否、離れたくない。



そんな少女の心の天使はずっと叫んていました。

「みんなのことみて。。」「現実に戻っておいで。。」


声は届かず、少女は更に荒れました。




【もういいや。。。生きるって苦しい。。。】



そう思う度、ピンクのカミソリを手にする。


「すーーーーーーーーっ。」

と先ず軽く引く。切れ味は良さそうだ。


紅い赤い血液が滴ります。

一滴二滴。。。嗚呼、心が【浄化】されて行く。。。



「痛い!!痛いよやめてよ!!」

身体は悲鳴を上げます。


そこにやってきたは仮面の男。

【大丈夫。。大丈夫。。。痛くなんか無い。。。もっとカミソリを引くんだ。ラクになりたいんだろう?ラクにしてあげるよ。。。その紅い雫は悪いモノだ。。君にヘモグロビンは要らないよ。。。】



少女は流れて行く、滴る紅い雫を視て、

ぼーっと、多幸感すら感じていました。


「わたしは  いきてる。」


そう言葉にして口に出してみました。

脈打つごとに流れ出る血液がその証のようにすら思え、血液が愛しくなりました。

「もっと。。。」「もっと。。。。。」求め続け、ビニール袋に溜ってゆく血の海を見て「美しい」とすら感じます。



しかし、そんな日々も長くは続きません。


場所は精神科病棟。


少女は他人事の様に話を聞いていました。


目の前にいるいつもは優しい見慣れた【精神科】の先生。

先生は入院の手続きをしながらこう云いました。


「最初に言っておくよ。僕は貴女が自分を傷つけることがあれば貴女の身体を縛るよ。命の危機だからね。」


少女はよく解らずにいました。

「先生何言ってるんだろう。。。」


病院に初めて来た母は好き放題。

電話したり、先生の説明も聞かず。

少女は思いました。


【理解なんて求めちゃ駄目だね。。。】


両親は帰り、

木本先生は少女を部屋へと案内し、去って行きます。


「入  院  か。。。。。」


テーブルには看護師から手渡された【入院計画書】と云う名の紙。

チラッと見てみると、「4ヶ月」の文字。


そう、それが彼女の予定入院期間。

少女には現実味がありません。

そう、未だに「夢」の中で生きていました。


「現実」に引き戻されたのは入院して割と早い日だった。


入院しても【癒】や【安心】を求め続けました。

ボールペンを人差し指に刺した。

指から出た血で文字をノートに。


【しにたい。どうせいらないこ】


暫しの間、無心で血液でお絵描きしてたりしていたら。

巡回の看護師さんに気付けば腕を抑えられていましました。


そして、入院中の担当医の合田先生が直ぐに来ました。

「傷見せて。」

大人しく従った少女がいました。


「今回は傷も浅いし、このまま様子見るね。」

と去って行きました。


と、思ったら、凄いスピードでストレッチャーと共に木本先生が来て、少女にこう告げました。


「はーーーーーい!!ちょっと自分傷付けちゃったから手とお腹縛るねーーー!!!!」


驚く間もなく、凄い力でストレッチャーに乗せられる少女。


「キャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

恐怖のあまり叫ぶ。


着いたは誰もいない雑然とした部屋。


ベッドにはシーツだけではなく、水色と白色のベルト状のものがセットされていました。

「!?」

あっという間にベッドへ。そして力強く胴と両手首をベッドに固定されました。


そう。

待っていたのはいわゆる「抑制帯」と云う物で、どんなに叫んでも離して貰えず。


「命を護る」その点では必要な物らしくて。

でもそれを知らない少女は、

一気に先生や看護師が恐怖の塊に見えました。


一晩中叫ぶ勢いで叫び続ける少女の部屋に、佐野さんと後に解る看護師が入って来て一言。


「他の患者さんに迷惑だからやめて。」

それだけ告げると去って行きました。


それを聞いた少女は、

「あ。。。此処でも理解は求めちゃ駄目なんだ。。」

と、ますます涙が止まらなくなるのでした。

心に完全ガード。閉ざしました。



そして、いつの間に、眠剤の効果か叫び疲れたのか眠っていて、

朝覚醒めたら、木本先生と合田先生。


【お約束事】と云う紙を手にしてました。

少女は放心したまま説明を受けました。

その紙には、


1、如何なる理由で少しでも出血してた場合。

2、3回注意しても大声を出している時。

3、名前を訊いても答えられない時。

等と5つ以上の欄があり、その下には、


【上記の状態にひとつでも当てはまれば身体的拘束をします。拘束中は必要最低限の会話しかしません。緊急事態ですからです!!】

と、記してあり、それを受け取ると、


「もう自分を傷つけたくないか」

や、

「ベルトを取っても安全ですか?」

等の問に全部「YES」と答えた。

でなければ「このまま」になると判断したからなのでした。

少女は【こんな怖い空間ムリ。。。】と心で叫んでいました。

こんなのまだ始まりの一歩だと知らずに。。。。


無事、開放された少女は、壁にペタッと貼られた紙に改めて目をやります。

「ですからです!!」と云う言葉に、

「先生、日本語間違えてるよ。。」と、思いつつ、口にはしないでおこうと共に、そんな部分に和みを感じたのでした。


そして、先生から膨大な量の宿題を出されました。

ノートに色々書くのだ。

それが少女には辛く、よくサボっては注意された。

少女は19才と云う年齢にしては精神年齢が幼く、成長が止まった感じすらあった。


先ず、ルールを守らなかった。入院仲間との物(食品)のやり取りや、9時には床に入るというルールも、

「眠れる訳無い!!」と、入院仲間と看護師に喧嘩を売ったりした。

多分に迷惑な患者のナンバー3には入ってたと思うくらいの少女。

尚、此処でも荒んだままでした。



当時の入院メンバー。

ナツさん→いつでも自信に満ち溢れている身体の病も持つ強気な女性。

サヨちゃん→まだ当時高校生。自傷仲間でもあった。ナツさん大好き。

サトさん→お姉さんという存在。摂食障害で入院していた。



少女はその中で笑っていた。

そして泣いた。叫んだ。そして何度も母を思い出した。



「今頃何をしているのだろうか」

「それ以前に生きているのか」

「日本にいるのか」


そのことを考えただけで意識が遠のいた。

でも笑っている間だけは様々な事から逃れられるのだった。



そんなある日。

事件は起きた。


朝、いつもの様にナツさんに荒っぽい起こされ方をされて覚醒めたら、いつにも増してクールなナツさん。


その頃の病棟は決して平和とは云えない所だった。


ナツさんの手には点滴。

増々不安が増す。ナツさんは過去に癌で手術していた。


「花架。血液検査の結果出たの。まぁ、再発。最悪の結果よね。」淡々と云うナツさん。


少女は耐えられずに泣いた。

「何で花架が泣くの。大丈夫だってば。」

心の中で一抹の不安に襲われた。

それは、消えることのない不安となったのでした。



その日の夕飯時。

妄想と盗難を繰り返していた難しい患者さんがいた。

斎藤さんは、時に人の部屋に入り、お菓子などを盗っていた。

噂では誰もが知っていたが、巧い事、看護師の目に入らぬ様に盗るのだった。

ナツさんも被害に遭っていた。

そして、勿論怒っていた。



いつもの様に夕飯が配られて、

「いただきます。」って、手を合わせた時だった。



「斎藤さん!!また私のお菓子盗ったでしょ!!」


「盗ってないよ!!誰か見たというの?」


「あんたしかそんなことしない!!」


「盗ったのは花架だよ!!」

。。。え?私?

一気に血の気が引いた。


「違う!あんただ!!花架はそんなことする子じゃないよ!!」


「花架は混血だよ!何するか解らないよ!!」

混血。。嗚呼、昔よくそれで苛められたな。。ココでもか。。


「何だよこのガン!!」

その一瞬にて、ナツさんの顔は怒りに震え、真っ赤になった。


「泥棒!!」「ガン!!」「泥棒!!」「ガン!!」。。。



何度繰り返されただろうやり取りに、少女は力が抜け、椅子に倒れかけた所で、

看護師の優子さんに「お部屋戻ろうか。」と支えられて部屋に戻された。


それ以降の事を少女は知らない。

只、一気に症状が悪化したのは確かだ。


ベッドから出れず、毎日泣く事しか出来ないのでした。

そんな時、ナツさんが少女に手紙を渡した。


『花架どうしたの?泣いてばかりいても私もサヨもサトも解らないのよ。ホール出ておいでよ。』

それを読んだ少女はもっと泣きました。

い、え、な、い、よ。。と。


結局、ナツさんが転科する話が出て、斎藤さんも現行犯で看護師に見つかり、強制退院して行った。

それを後にナツさんから聞いたのでした。

一ヶ月弱引き篭もった後のことでした。

ホールに出るなり、

「花架ーーーーーーー!!」とナツさんとサヨちゃんとサトさん。

少女は引き攣った笑顔で其れに答えた。応えた。


先ず、怒号。

「私が転科するかもなのに何でホール出ないのよーー!!」

とナツさん。


苦笑いを浮かべた少女。

「あ、ごめんねーー!!花架完全復活です!!」

「良かったーー!!」と、サヨちゃんとサトさん。

「もー、心配させんな!」と、ナツさん。


心の中で少女は、

「ナツさんの事のほうが心配だよ。。私は。。」

と、囁いた。


そして日々が経ち、ナツさんは転科して行った。


少女は落ち着いたり、荒れたりを繰り返していた。


ある日の朝。

サヨちゃんが小さくなって泣いている。

「大丈夫。。??」

そっと声を掛けてみたら隣に笹竹先生。

「あ、すいません。。。」

と、立ち去ろうとした時。



ぎゅっと強く掴まれた。

サヨちゃんだった。


「い か な い で。」


何だか心もぎゅっと掴まれた少女。


「はなかいったらわたし一人になっちゃう。。。」

「行かないで。。」 

笹竹先生に目をやると、

「本人がいていいというので良いですよ。。」

と微笑むので、サヨちゃんの隣に座る。


また洋服を掴むサヨちゃん。


「まだ行かないよ。でもサヨちゃん。この広い世界の中でこうしてサヨちゃんと私と出逢えたのってキセキじゃない?だからだいじょーぶ!!またお外で逢えるかもよ?家超近いし!!」

と、言葉を選びながら云った。


力なく頷くと、顔を上げてみせ、

「ごめんね。花架ありがとう。もう大丈夫。」って笑うサヨちゃん。

その笑顔が何故か痛く少女には感じた。


ワタシトオナジダ。


自室に戻り、少女はしっとりと声を上げずに泣いた。

【ごめんね、ごめんね。力に成れなくて。。】

自分は非力だ。

そんな気持ちと、「一人」の怖さを少女も識っている。


時は流れて往く。確かに流れて往く。


少女は退院を控え、何故か不安に駆られていた。

その心は風船の様に膨らみ。爆発を静かに待っていた。


何時しか、その「不安」は「シニタイ」に変わっていった。


そして爆発の夜。

【シニタイ】その一心で、筆箱から万年筆を取り出し、力を込めて掻き切った。


血液がだらーーーーっと流れて行く。

少女は完全に死のトリコとなっていた。


隣のマコちゃんがいつものようにカーテンを開ける。

「花ちゃ、、、キャーーーーーーーーーーー!!!!!」


すごいマコちゃんの声で少女は覚醒めた。

ハッと我に返った。

その時には既に当直の杏先生がいた。


「どうして首を切ったの?」

「シニタカッタ。」とだけ答えた。


そしたら、「安全なお部屋行こうか。」と杏先生。

少女はトボトボとついて行く。


【安全なお部屋】とは、いわゆる【保護室】だった。

云わば精神科のICUとでも云った所だ。


マイク付きカメラ付き。

【拘束、隔離付き。確かに死ねないわ。】

其の事実を認めるまで時間が掛かった。


でも、諦めが来、眠りにつき翌日へと日付が変わっていった。


木本先生と合田先生に囲まれ、以前と同じ質問をされ、少女はまたも同じく全てに【YES】と答え、開放された。


戻って来たら、

涙目のサヨちゃんがいた。


「花架。。。!!!なにやってんの!!。。もうそんな事しないで。。。」と、大泣きする。

何故、少女はサヨちゃんが泣いているのか解らなかった。

でも気付いたら「ごめんね、ごめんね。。」少女も泣いていたのでした。


また、日々は過ぎてゆく。

退院の日、その日が来ていた。


サヨちゃんと手を繋いで歩いた。

「バーカ花架!!」

「バカは貴方もでしょ、そしてバカで悪かったね!!」

「いいよ。」

「え?」

「死ぬなよバーーカ!!」

「はいーー。ごめんなさいーー。」

「サヨちゃんもだよ?」


サヨちゃんの細い指と少女の小指で指切りげんまんをする。


そして、

迎えが来て、別れの時。


「ぜーーーったい戻ってくんなよバーーカ!!」

「人の事バカバカ云わないのっ!!でもありがとう。」


父の車へ大量の荷物と4カ月の思い出を乗せ、祖母の元へと帰った。


「ただいまーー!!!」


其処には大分やつれたような祖母がいた。

そして、母の消息は未だ解らないのであった。


〜ワタシノ イバショハ ドコデスカ ?〜


2017-06-01第一章終わり。



私事ながら、読んでくださってありがとう御座いました。


少女は大人になり、

生きるを選び歩いて往く。。

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