一縷の望み
「一縷の望み」に読み仮名を振ろうか迷いましたが振らないことにしました。
私は覚悟を決め、数珠を力強く握る。
これでダメだったら、もう他に手段はない。
「いちかばちか……」
――怖いんだよ妖怪女め!
――近づくと呪われちゃうよ~
――妖怪は学校来んなよ!
「……っ!」
能力を使おうとすると、私の中に邪念が渦巻く。
それは、私が能力のことを誰にも話したくない理由でもあった。
「うぅんっ! ダメダメ! やるって決めたもん!」
どちらにしても、これが私に残された唯一の手段。もう、やるしかない。
今は誰もいない……今なら能力を使える!
「死者の国をさまよう魂! 我の声に応えよ!」
「……うーらーめーしー……」
現れた"ソレ"が全てを言い切る間もなく!
「やっ!! ……っほいっ!!」
「あっ……」
「うっ……」
勢いに任せて殴ってしまった。そういう存在を呼び出せておきながらそういう存在が苦手なんだった……
「うらめしやあああああ!! 小豆さん私"うらめしやっほい"って言っちゃったじゃないですか! "うらめしやっほい"って!」
「きゃあああああゴメンんんんんん!!」
ああ……そういう存在を呼び出せるんだからいい加減私も慣れなきゃいけないのに……
「でも今どき"うらめしや"も珍しいと思うよ……」
「そうですかぁ……」
かと言って"うらめしや"以外と言えば何かといえば私も提案できないけど。
というか、今は幽霊子ちゃん(仮称)が一縷の望みなんだ! 彼女の助けがなければきっと私は……!
「ところでご主人、ご用件は? 久々なので呪いでも何でもはりきっちゃいますよ!」
「あっそうだった! ここから出たいの…… 外からカギを開けてくれない?」
「らじゃ! 私は幽霊です! こんな扉スルリと……もぺっ!!」
あれ? 幽霊子ちゃん(仮称)って幽霊じゃないの? 何ですり抜けられないの?
「小豆さん……これ一度開け閉めしたらもう二度と開かない魔法がかかってます!! 私も出られないです!!」
「何でっ!?」
嘘……唯一の望みもダメ……
「えっ……待ってこれ私登校初日に倉庫に閉じ込められて死んじゃうの……?」
「きゃーっ!! 小豆さんはまだ死んだらダメですー!!」
もうここまで来たら聖蘭ちゃんだとしたらこれは故意でやっているよ……聖蘭ちゃんという証拠はないけど……
だっ……誰か……助けて……助けて……!!
最後の一言は次の話に繋がります!