これって……
天は人に二物を与えずって言いますよね……
「♪~」
フジハレが歌う番になり、俺たちはその歌を聴かねばならぬということを覚悟した。
……窓の方から何かひびが入ったような音がしたけど大丈夫か?
そう、フジハレは絶望的な程の音痴だ。
それでいてフジハレ自身は気持ちよさそうに歌ってるから余計たちが悪い。
……フジハレ自身は自分から出る騒音が気にならないのか?
「ああ……こ……この世の終わりだっぺ……」
「これでみんな生きてるって凄くね!?」
瑠希奈があからさまに気持ち悪そうに目を回している。
……瑠希奈だけじゃない。皆が苦しそうな表情で悶えている。
「……はい、藤本さん上手に歌えましたね!」
「ちょっ……先生ひどい!」
先生がフジハレに見せつけるかのように耳栓を取って見せる。
耳栓ぐらいで防げるような騒音じゃないだろうに……
「うぅ……相変わらずの美声ね……」
遅れて聖蘭が入ってくる。小豆と話してたんじゃなかったのか。
一方のフジハレは美声という言葉に反応して嬉しそうにしている。明らかにお世辞だろ!
……と、それは置いといて。
「聖蘭! あれ、小豆は?」
「急にお腹痛くなったみたいでトイレに行くから先行っててって言われたの」
「マジか! 大丈夫かアイツ!」
……と、ふと横に目をやってみると。
零月が音楽の教科書で顔を隠し、何かを思案しているようだった。
ちょっと細かく話を分けてます。
これで視点が変わってもあまり違和感のないようになればいいのですが……