表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/38

第2話 声の正体

どうでもいいですけど、バンドリの音ゲーのダウンロードが開始されましたよね

LINEで通知来て速攻ダウンロードしました


 祐也は声のする方へひたすら走った。

 猪や熊のいる後ろを振り返ることなく脱兎のごとく走った。

 

 どれくらい走っただろうか。

 緊張や焦りから体感時間など宛にはならない。

 体力の尽きるギリギリまで走り、そして倒れた。

 意識を失ったわけではない。

 だが、暫く歩くことすらできない。

 それくらい祐也は疲弊していた。

 

「この程度でへばるなんて情けない人間ね!まぁいいわ。ここまで来たらあの魔獣共も追ってこないだろうし」

 

 その声はツンツンしていたが愛らしく綺麗な声をしていた。

 ただ、どこから聞こえているのかが全くわからなかった。

 破裂しそうな肺をどうにか抑えながら祐也はやっとの思いで声をだした。

 

「お、お前は、誰、だ……どこに、いる……」

 

 途切れ途切れで、今にも死にそうな祐也の声に声の主が反応する。

 

「お、お前ですって!私にはサーシアって可愛い名前があるんだから!ちゃんとそう呼んでよね!」

 

 名乗られてもいないのに呼べなんて無理な話である。

 きっと指摘したら怒られるだろから指摘はしない。

 こういう時は謝るに越したことはない。

 呼吸が整ってきたため、まだ少し痛む喉で声をだした。

 

「ご、ごめん。それでサーシアはどこにいるの?」

 

「素直に謝るとは良い心掛けね!」

 

 サーシアは少し機嫌の良い声でそう言うと、祐也の頭の上に柔らかな感触がし、何かが乗っかった。

 もしかしなくてもサーシアである。

 

 祐也はサーシアの姿をみようとして頭を動かした。

 サーシアの姿を知らなかったため頭を動かそうとしたが知っていたら動かさなかっただろう。

 祐也は頭の上に乗っかっているものが手か何かだと思っていたのだが、乗っているのはサーシアそのものもである。

 つまり、頭を動かしたら、頭の上に乗っていたサーシアがどうなるかは察する通りである。

 

 祐也は頭の柔らかな感触がなくなったため手をどかしたのかと思ったがそれは違う。

 ただ頭の上から地面に落ちただけである。

 

「あんた、どういうつもり!せっかくの綺麗な体が汚れちゃったじゃない!」

 

 祐也は頭を反対側に動かした。

 するとそこに居たのは手に乗りそうなくらい小さく、背中に羽の生えた 全裸 の可愛い女の子であった。

 髪は紅色で長さは肩くらいのストレートである。

 体の所々に土がついている。

 祐也は状況を理解した。

 何故この子が怒っているのかを。

 

「本当にごめん。君がそこまで小さいって知らなかったんだ。今水を創ったからこれで体を洗ってくれ」

 

 サーシアから目を逸らして、空中で水を創った。

 例え相手の体が小さくても、女の子は女の子である。

 祐也は女の子の裸体をガン見できるほど図太くはなく、せいぜいチラ見する程度であった。

 そんなことをしてると急にステータスウィンドウが広がった。

 能力欄に新たな一文が追加されている。

 

  “創造”

 自分の考えたものを無から創る能力

 ただし生物は創ることができない

 使用範囲は能力者から半径5メートル

 

 どうやら空中に水を創ったことで、手の上じゃなくても創れることがわかったらしい。

 そんなことはどうでもいい。

 いや、どうでもよくないが、今は目の前の女の子の機嫌をとるのに必死であった。

 

 


 あの後、サーシアの機嫌が直るのにおよそ30分も要した。

 時間に関しては腕時計をつけていたためそれを見た。

 その間猪や熊が追ってくる様子はなく、完全に撒いたみたいだ。

 サーシアにことならの世界に関して詳しく聞こうと思うがその前にやるべきことがある。

 

「服を創ったから着てくれないか……目のやり場に困るんだ」

 

 全裸の女の子を放置して会話する趣味はない。

 それが本人の意思だったとしてもその状態(全裸)では話に集中することができない。

 祐也はサーシアにピッタリの大きさのドレスを創って渡した。

 背中に羽があるため背中に布がないものでないといけなかった。

 

「へぇ可愛いじゃない。ま、まぁ着てあげないこともないわよ!」

 

「気に入ってくれてよかった」

 

「き、気に入ってないから!ちょー全然まったくこれっぽっちも気に入ってないから!」

 

「左様で」

 

 サーシアは俗に言うツンデレである。

 そして、可愛いものに目がなかった。

 渡したドレスは某フルダイブアニメの衣装を参考に創った。

 アニメの知識がこんなところで役に立つとは……世の中は何が起こるかわからないものである。

 

 サーシアが服を着てくれたので質問を始めた。

 質問はこの世界の名前、この森の名前、さっきの動物たちのこと、そしてサーシアのことである。

 

「この世界の名前って……あんた馬鹿にしてんの?」

 

 怒るどころか呆れたって顔をされた。当たり前の反応である。

 一般常識どころか、世界の名前を知らないって、住んでておかしいレベルである。

 異世界モノでもテンプレの反応で、こういう時、主人公は記憶喪失か異世界から来たと正直に告げるの二択である。

 記憶喪失と嘘をついてもいいが、どうせいつかばれるのだ。

 その時のサーシアのことを考えると、今正直に話した方がいいだろうと結論をだした。

 

「えっと、信じられないと思うが俺はこの世界とは別の異なる世界から来たんだ。だから、分からないことがいっぱいあるから色々教えてほしい。」

 

「なるほどね……あんたがおかしな格好をしてる理由がわかったわ」

 

「信じてくれるのか?」

 

「別に、漂流者なんて珍しくないし」

 

「漂流者?」

 

「この世界では異世界から来た人のことを漂流者と呼ぶのよ」

 

 どうやら祐也のような存在は珍しくないしらしい。

 まぁ、女神は世界融合は年に一回あるかないかって言ってたから別の異世界でもあることを考えたらきっとよくあることなんだろう。

 でもこれで面倒な説明をしないですむと思うと多少気が楽になった。

 サーシアは納得したように頷くとさっきの質問の答えを教えてくれた。

 意外なんて言ったら失礼だろうが実は面倒見がいいのかもしれない。

 

「それでこの世界の名前だったわね。この世界の名前は寵愛を受けし星(アスガル)。この森は私達妖精種(ピクシー)の住んでいる森、別名迷いの森よ!」

 

「おぉー!!かっけぇー!!」

 

「ふふん!そうでしょ!そうでしょ!」

 

 どうやらサーシアはヨイショされたら調子に乗るタイプならしい。

 ここであえて無粋な質問を一つ。

 

「正式名と別名が逆なのでは?」

 

 祐也は一言多い男であった。

 

「そんなことどうでもいいのよ!ど・う・で・も!」

 

 顔を真っ赤にしてサーシアが怒った。

 普通に間違ったらしい。

 体が小さいから怒っても全然怖くないな。

 むしろ可愛いくらいである。

 そんなことを考えていたせいか祐也の頬は緩みきっていた。

 誰の目から見ても、怒ってる人を前にしているのに失礼なことを考えているのがよく分かる。祐也はそんな顔をしていた。

 その顔を見てサーシアの怒りは膨れ上がった。

 

「もう頭にきたわ!えぇ、頭にきた……ここまで頭にきたのは久しぶりよ!頭にきたからその舐め腐った顔をぶっ飛ばしてやるわ!“我が魔力を糧として具現化せよ。炎の投槍(フレイムジャベリン)”」

 

 サーシャの詠唱が終わると同時に炎で作られた槍が飛んできた。

 炎の槍の大きさは、サーシアよりも大きく

 もともとサーシアとの距離が近かったため、槍はすぐそこまで迫っていた。

 祐也は瞬時に水で盾を創った。

 そのすぐ後、サーシャの炎の投槍と祐也の水の盾が接触し、水の盾は全て蒸発した。

 少しでも水の盾を創るのが遅かったら、祐也の頭は、サーシャの宣言通り吹き飛んでいただろう。

 

「こ、殺す気か!」

 

「当たり前でしょ!何で死んでないのよ!おとなしく死になさいよ!私を辱しめたことを死後の世界で詫びなさいよ!」

 

 は、辱しめたって、ただ間違いを指摘しただけなのに……

 その後、お詫びに服をもう三着創るという事で、納得していただいた。

 

「次は三着程度じゃ許さないから!」

 

「わかってるって。次は四着だろ」

 

「四着……ごほんっ!まず、次はないように気を付けなさいよ!」

 

 今釣られそうになっただろ……。チョロいなこいつ。

 二度の怒りを宥めたことにより、サーシアと祐也の仲はだいぶ砕けたものになっていた。

 

 

 祐也は服を創り終えると質問を再開していた。

 服を創るついでに服を入れる袋も創って渡した。

 

「んで、さっきの猪と熊?みたいなやつらのことを教えてくれ。魔物とか言ってたけど何なんだ?」

 

「うーん……説明が難しいわね。私もあまり詳しくは知らないけど、魔力が変質した動物かしら?」

 

「魔力が変質?」

 

「私もそれ以上は知らないわ。私は学者ではないし、そこまで詳しくは習ってないから」

 

「いや、いい……じゃあ普通の動物との見分けはできるか?」 

 

「可能よ。魔物は魔力の変質に伴って角が生えてくるらしいわ。さっきの二匹も頭に角が生えていたし」

 

「なるほど……」

 

 詳しくは知らないと言っておきながら重要なことは知ってるじゃないか。

 この世界には教育機関でもあるのだろうか?

 もしくはサーシアの家が裕福か……

 それは追々聞くとして、

 

「魔物と動物の強さの差はどれくらいなんだ?」

 

 問題はこれである。

 祐也はサーシアみたいに魔法を使えないため魔物に対抗する手段は現代の武器しかない。

 もし現代の武器が通用しないなら何か別の手段を考えなくてはならない。

 

「確かそこまで無かったと思うわ。魔物の方が少しだけ身体能力が強化されていて頭がいいってところかしら?」

 

 身体能力の強化の幅にもよるがほとんど変わらないということか……

 それならばいくらでも殺りようがある。

 ライフルに手榴弾や、RPGなど、大体の兵器なら創れる自信があった。

 さすがに核兵器は創れないし創ろうとも思わないが……。核ダメ、絶対!である。

 

「なら、対処できそうだな。あ、魔物って食える?」

 

「そのベースの動物次第ね……」

 

「なるほど……。あ、そろそろ日が沈みそうだがサーシアはどうするんだ?」

 

 長い間話をしていたらしい。

 腕時計を見ると日本時間で現在時刻は午後5時だ。後一時間程度で日が暮れるだろうという位置に太陽があった。

 日本の時間とほとんど変わらないのかもしれない。

 日が暮れる前に寝床の準備と、出来れば食料が欲しい。夜の森は危険なため、しっかりと準備をしなくてはならないのだ。

 野営の準備に必要な物資は食料以外なら能力でなんとかなる。かなり便利な能力だ。

 問題は食料である。祐也はお昼も食べていなかった。

 この世界に飛ばされたのはお昼前だったため、お昼時は祐也が魔物の昼御飯になりかけていた。

 これが冗談じゃないのだから恐ろしい話である。

 話が逸れたがさすがに二食も抜くとなると……いや、朝寝坊して牛乳しか飲んでいないため三食だ。三食はさすがに我慢できない。

 明日の朝動けなくなってしまう。

 せめて弁当がリュックの中に入っていたらよかったのだが、残念ながら空っぽだ……

 

 このままいけば詰んでしまう!

 異世界生活二日目にして餓死!

 実際のところ、水は創れるので最低でも一週間は生存できるのだが、現代日本の豊かな生活に毒された祐也にとっては死刑宣告も同然である。

 

 まぁつまり何が言いたいかというと、腹減った!飯食いたい!である。

 ここで問題が一つ……

 

 野草・・・どれが食えるのかわからない。最悪毒で死ぬ。

 魔物・・・狩らないといけない、一人では時間的に不可

 虫・・・食べたくない!

 

 森で生きてきた訳ではないので、祐也一人だとこうなってしまう。

 詰んでしまうのだ!

 幸いここには祐也以外にもう一人いる。

 サーシアである。

 いろんな事に詳しく学のある彼女の協力さえあれば今日を乗り切れる。そんな気がする。

 最初っから他力本願である。

 彼女の一言により祐也の運命が変わると言っても過言ではない。

 祐也の考えを察してか、服のお礼なのかはわからないがサーシアは、

 

「あんたと一緒にいるわよ?どーせあんたは一人じゃ何にもできないでしょ…………それに帰る場所なんてもう……」

 

 後半部分は声が小さかったため、祐也には聞こえなかった。

 一人でなにもできないとは実に遺憾である!

 まぁ事実なのが悲しいところだ。

 サーシアに寄生もといヒモになることが決定した。

 

「よっしゃぁ!飯!飯どーすんの!」

 

 祐也は欲望に忠実な男だった。

 

「そうね、ちゃちゃっと狩ってくるから作る準備だけしときなさい。あ、もちろんあんたが作るのよ!」

 

「了解しました!」

 

 祐也はビシッと右手で敬礼した。

 よくある間違いである。

 異世界だから指摘はされないのだが。

 サーシアは何それって言いながら狩りに出掛けた。

 

 祐也はせっせと野営の準備に取りかかった。

 とりあえずテントを創って組み立てる。

 父親がアウトドア好きだったため、テントを組み立てるなんて朝飯前である。

 サーシア用に小さいテントを創ってみた。

 もっとも、組立式ではないのだが

 

「テントの他に必要なものは……」

 

 とりあえず釜戸と寝袋を準備した。

 他に必要になったらその時創ればいいだろう。

 一通り準備を終えた祐也はこの世界の情報についてノートにまとめていた。

 もちろんノートとシャーペンも創った。

 サーシアから教えてもらったことを箇条書きにして書いていく。

 一日目にして街に飛ばされたわけでもないのに、現地の協力者とここまでの情報を手に入れれたのは運が良かったと言えるだろう。

 

 ふとクラスのやつらのことを思い出した。

 今頃どうしているだろうか……。

 運が悪いやつらは既に脱落してるかもしれない。現に祐也も食べられそうになっていたわけで。思い出したらゾッとした。

 今サーシアは狩りに行っている。

 情けない

 祐也の心の中はそんな感情で一杯になった。

 一緒に行ったところで肉壁程度しか役目はない。自分は無力なのだ

 だが、このままで終わるつもりはない。

 一生サーシアのヒモとか笑えない。

 それに、いつまでサーシアが一緒にいてくれるかわからない。

 

 ノートに明日からの目標を書いておいた。

 しばらくは能力を使いこなすが目標である。

 せめて脚を引っ張らない程度にはなりたい。

 

 

 

 数分後サーシアが戻ってきた。手ぶらで。

 

「もしかして失敗?飯なし?」

 

「私を誰だと思ってるのよ!もちろん狩ってきたわよ。鹿を」

 

「し、鹿!?何処に!?」

 

 どう見ても手ぶらである。

 小さな体に大きな鹿は隠せない……

 

「あーそうだった。次元倉庫に入れてるんだった」

 

 そう言うと、目の前に鹿が現れた。

 うん、ドユコト?

 まさかの亜空間収納魔法ですか、そうですか……って納得できるかい!

 サーシアさーん!説明お願いします!

 

「こことは別の次元に物を収納できる魔法よ。別次元だから、その空間は時間が止まってるわ!だから、入れたものは劣化しないし、自分しか取り出せないからかなり便利な魔法ね。入れれる量は魔力の量によるわ。この世界では一般的な魔法よ」

 

「アイテムボックスが一般的な魔法だと……」

 

 祐也に衝撃が走る!

 アイテムボックスもチート能力の一つだったり、一部の人しか使えなかったりするのが普通なのだが……

 この世界のチートの基準がわからなくなってきた。

 

 祐也が衝撃を受けたのは当たり前である。

 なにせこの魔法を作ったのは過去の漂流者なのだから。

 その漂流者は新たな魔法を作る能力だったため便利な魔法を作りまくって後に賢者と呼ばれるようになるのだが、それはまた別の話である。

 

「ほら!早くご飯作りなさい!」

 

 サーシアの声で祐也は正気に戻った。

 それほどの衝撃だったようだ。

 

「えっと……丸焼き?にしたらいいの?」

 

「は?解体して捌くのよ。血抜きはしてあるから!」

 

「あー解体ね、解体。知ってる知ってる……ってできるかぁぁああ!!!」

 

 料理は作れるが解体は無理だ!

 祐也は少し変わってるとはいえ、ほとんど普通の高校生である。動物の解体をできる普通の高校生がいるだろうか。いいや、いない。

 

「解体もできないの……はぁ」

 

 呆れた……って表情だ。

 そんな無茶言われても……

 

「わかった、それも教えてあげるからこっち来なさい……」

 

 地味に面倒見いいよな……

 地味とか言ったら怒られるか。

 小さい体を器用に使って教えてくれた。

 

 この世界に来てからずっとお世話になりっぱなしである。きっと必ず恩を返そう!と心に誓う祐也であった。

 

 解体作業のせいで食欲が無くなってしまうのはまた別の話である。まぁしっかり食べたのだが。

技名考えるの苦手です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ