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第34話 知識は新しいに限る

あ、つい先日気付いたのですが、ブクマ100突破しました!ありがとうございます!

完結目指して頑張ります。

どのような終わり方にするのかいまいち決まってはいない作者ですが、全力で書かせていただきます。


「ば、場所がないってどういうことですか?」

 

「言った通りさ。あんたらのようなよく分からない人に貸せるような土地などないんだよ!用が済んだならさっさと出ていってくれ!」

 

「まだ用は……」

 

「祐也様」

 

 フレイヤは祐也の肩に手を置くと、首を横に振った。これ以上話をしても意味はないと理解しているのだろう。

 祐也は納得がいないが、元商人の娘で自分よりも経験のあるフレイヤの指示に従うことにした。

 

 二人は後ろを振り返らず、そこから出ていった。

 

 

 

「一体どうなってるんだ?」

 

 溜め息と一緒にそんな言葉が出てきた。まるで理解できないといった表情だ。

 そんな祐也の独り言にフレイヤが反応した。

 

「確かに私たちが身元の知れない怪しい者というのは理解できますが、先払いやと言ってもダメだと言われると些か疑問が残りますね。それも全ての店でとなると、何者かの指示が出ているとしか思えません」

 

 祐也たちは今、店を出すための基本となるその土地を探していたのだ。探すといっても、この世界の日本でいうところの不動産のような所に行っただけなのだが。

 

 何故場所の確保からなのかというと、屋敷を使うのをサーシアが拒否したからだ。サーシア曰く、この場所には誰も来てくれないだろうし、来ても変人ばっかりだろうということだ。確かに幽霊屋敷と知っていて来るのは変人かただの馬鹿だろう。そんなやつらが商品を買ってくれるとも思えない。

 

 というので屋敷を使うメリットは元手がかからない以外ないのだ。むしろデメリットの方が大きいと言えるだろう。という訳で昨日拒否されたのだ。それが昨日の話。

 

 そして本日朝から不動産のような店を回っているのだが、行くとこ行くとこでさっきのように断られてしまうのだ。確かにフレイヤの言った通り何者かが指示を出して祐也たちの邪魔をしているように感じるだろう。

 

 

 実際フレイヤは過去の人間で、さらにいうと祐也の秘術“死霊術”によって作られた存在なのだ。確かに事情を知らぬ者からすれば怪しいといって拒否されるのも仕方ないだろう。冒険者登録もしていないので、身分証明もできないのだ。

 

 だがその辺祐也は違う。街に入るときは身分証を持っていなかったが今は冒険者の証である5つ星の彫られた認識票がある。

 これはどういう仕組みでできてるのかは分からないが、これさえあれば個人を特定することが可能ならしい。本当にどういう仕組みなのやら。

 

 という訳で断られた理由が分からないのだ。元商人の娘でその辺の知識も持っているフレイヤも頭を悩ませていた。

 冗談ではなく本当に邪魔をされているのではないだろうか。そう疑わざるを得ない状況なのだ。

 

 不動産のような土地を貸すという店は、現代日本のように発展していないこの世界では数が少なく、この街にある殆どの店に行ったのだが全て断られてしまっていた。

 

 言ってしまえば八方塞がりである。

 

 祐也は実際にはしていないが内心ではがっくりと地面に手をつきたい気分だった。

 

 

 そんな気分でもお腹は減ってしまうらしく、祐也のお腹がグゥー鳴った。

 

「ふふっ、気分転換にご飯にでもしましょうか」

 

「そうですね」

 

 

 朝からずっと不動産巡りをしていてお昼はまだ食べていなかった。日は既に真上にはなく傾き始めていた。お昼時は既に終わっているのだろう。祐也の腕時計も二時頃を指していた。お腹が空くのも当然と言える。

 

 お腹を鳴らしてしまって少し気恥ずかしいが、フレイヤの言う通り、遅めの昼御飯にすることにした。それに腹が減っては戦はできぬ。

 せめてこの原因だけでも今日中に突き止めたいのだ。そのためには頭を働かさなくてはならないのだ。と、祐也は自分の中で言い訳しつつ適当な店に入っていった。

 

 

 

 

「いらっしゃい!」

 

 店に入ると人当たりのよさそうなおばちゃんが忙しなく料理を運んでいた。入った店はお昼時は終わっているにも関わらず席は殆ど客で満たされている。よほど人気の店なのだろうか?

 飲食店で人気ということは凄く美味しいと予想される。ただでさえお腹が空いているので期待で胸がいっぱいになった。

 だがその前に、

 

「二人ですが席空いてます?」

 

 まず、ここで食べれるかが重要だ。はっきり言って今の祐也は味よりも早く食べれるかどうかだ。

 待ってくれと言われたのならそこがどれだけ美味しい料理を出す店だろうと別の店に変更するだろう。それくらいお腹が空いていた。

 

「カウンターでいいかい?」

 

 了承すると奥のカウンターに案内された。

 

 席に着くと少ししてからおばちゃんが注文を取りにやって来た。

 

「注文はどうするんだい?」

 

 もちろん初めてきた店でなおかつ、何の店かよく分からない店で何を頼むかは決まっているだろう。

 

「この店のオススメを!」

 

 こう注文すると基本的に外れはないのだ。自信がない料理をわざわざ出す食事処なんてないのだから。

 

「隣のあんたはどうする?」

 

「同じもの」

 

 因みにフレイヤはご飯を食べなくても祐也が魔力供給をすればいいのだが、五感はあるらしいのでそれならと食事などは一緒にすることになったのだった。

 

「はいよ」

 

 注文を取り終えるとおばちゃんはニヤリと不敵に笑うと店の厨房の方に消えていった。

 

 不敵な笑みの理由を考える余裕などこの時の祐也にはなかったのだった。そしてソレが来たときこの注文方法は今後やめよう。せめてどんな料理か聞いてからにしようと心に誓うことになる。

 

 

 

「お待たせ!」

 

 少ししてからおばちゃんは大きな丼を2つ持ってきたのだ。いや丼よりももっと大きい。あえていうとすると鍋だ。この時点で祐也は後悔しはじめていた。後悔先に立たずとはこの事なのだろう。

 

 おばちゃんはソレを目の前にドーンと置いた。

 

「これが当店オススメ超大盛〝カツドゥン〟だよ!」

 

 見た目は確かに超大盛のカツ丼だった。丼いっぱいに牛?の肉を揚げた物に卵をかけたものが乗っかっている。

 

 ここで祐也の頭の中に電撃が走った。

 

 カツ丼ということはお米が食べれるのではないのだろうか、と。

 

 この世界に来てからというもの日本人のソウルフードである〝米〟を食べていなかった。

 元の世界にいたときに読んでいた小説なのでこういうネタはよくやっていたのだが、祐也は実際はそんなことないだろうと疑っていた。

 だが実際召喚されてみてどうだ。〝米〟が恋しくて恋しくて仕方ながなかった。咲夜と二人で〝米〟について語り合ったのは記憶に新しい。

 それくらい〝米〟が食いたかったのだ。

 

 それがたまたま入った店でたまたま発見したのだ。これを運命と言わずしてなんというのだ。

 〝米〟の存在を確認したわけではないが、祐也は大興奮でカツ丼にかぶりついた。

 

 その様子見てフレイヤは困惑するがおばちゃんが、

 

「因みに全部食べきれたら無料だよ!」

 

 と言うとフレイヤも凄い勢いで平らげていく。

 

 一応貴族に嫁いだため基本はおっとりとしているのだが、商人である両親の後ろ姿を見て育ったせいか、お金の話になると性格が変わり、がめつくなるのだ。それはもう見ていてわかるレベルで。

 

 さらに今回の件についてだが、さっきも述べた通りフレイヤの体は祐也の魔力でできており、五感はあるが胃袋というものが存在していない。

 それはつまりどういうことを指すのかというと、無限に食べることができるということだ。

 

 余談だが食べた物は体内で魔力に変換されるらしい。といっても微々たるもので食事だけで体を維持しようとなると、大食い姫であるサーシア以上に食べたくてはならないのだ。そのため基本的には効率優先で祐也が魔力を供給している。

 

 

「うまい!」

「美味しいです!」

 

 そして二人は似たような感想を漏らすのだった。

 

「米がこんなに美味しいなんて……」

 

 祐也なんて感動のあまり、涙を流して食べている状態だ。

 

 端から見ると男と美女が二人並んで鍋サイズのカツ丼を手を止めず凄い速度で食べるというシュールな光景になっている。しかも男の方は泣きながら食べているのだ。持ってきたおばちゃんでさえも若干引いていた。

 

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 そうして二人は鍋サイズのカツ丼を平らげたのだった。

 

「「「おぉぉおお!!!」」」

 

 それを見ていた店の中にいた人々は歓呼した。何故こんなことになっているのかは聞かずともわかった。

 

 どうやらこの量を食べきって無料を勝ち取るのが珍しいらしく、おばちゃんの話では前回平らげたのが一年ほど前で、紅毛で自分より少し歳上の少女ならしい。

 

 ……紅毛ってだけで誰だか予想できてしまった。それうちの義姉です。なんかすいません。

 

 今更だがこの店の名物は大食いチャレンジらしく、そのチャレンジ成功を狙って毎日男共が来るらしい。確かに客は男ばかりというか女性客はフレイヤ一人だった。

 

 因みにチャレンジを失敗するとどうなるかだが、そこそこ(材料代)のお金を払うか、助っ人を呼んで食べてもらい割勘のどちらからしい。つまり金を払うということだ。

 

 

 

 それにしても祐也が食べきるのは以外だったかもしれないが、それには理由があった。

 

 異世界に来てから食べる量が増えてきているのはわかっていたのだが、階位と、魔力量が増えるほど食べる量が多くなっていったのだ。どうやら魔力量に関係しているらしい。

 

 祐也の魔力量は最も魔力量の多い種族である妖精種のサーシアに〝そこそこの魔力の持ち主〟と祐也は言われたのだ。それはつまり、人種と比べると桁違いで多いということになる。

 

 もちろんそれは食べる量にも影響するため食べきることができたのだった。

 実はこの事に祐也は嘆いていたりするのだが、それはまた別の話である。

 

 

 そんなこんなで周りの客から注目を集めているのだった。

 

 

「それにしてもあんたら凄いねえ~。そんな細い体で完食するとは思ってもみなかったよ」

 

「ははは……」

 

 祐也は思わず苦笑い。自分達の存在が規格外であることを自覚しているからだ。

 

「あんたら名前を教えてもらってもいいかい?この店では完食した人の名前を記録しているんだ」

 

「は、はい。神凪祐也です」

 

「フレイヤです」

 

「ユウヤとフレイヤだね?」

 

 おばちゃんは木板に一人ずつ名前を書くと、壁に掛けた。壁の方を見ると十数枚の名前の書かれた木板があった。今まで完食した人のようだ。その中には案の定サーシアの名前があった。さすがフードファイターだ。

 

 

 

 二人は食休憩がてら、店にいる人たちから情報収集をはじめた。食べ終わっても居続けるのは飲食店のマナー的にはアウトだが、おばちゃん的には大丈夫らしい。

 

 祐也たちは手当たり次第聞いて回った

 

「店を出すのに必要な物?そりゃ金だろ!」

「違いねぇ!」

「そんなことよりも嬢ちゃん、この後暇か?」

 

 返答は殆どこのようなものだった。というか最後に至ってはナンパだ。言われなれているのか本人に気にした様子はなく余裕のある対応をしていた。

 

 

 

 結局情報は全くといっていいほど集まらず、カウンターでぐだぁーって項垂れていると、客が引いてきて暇になってきたのかおばちゃんがこちらに様子を見に来た。

 

「どうしたんだい?そんな疲れきった顔して」

 

 どうやら1日分の疲れが出ていたらしい。

 

「いや、いろいろありまして」

 

「面白そうだね。話してみな!」

 

 店を開いているおばちゃんなら知っているかもと、今日の出来事を話した。

 おばちゃんも分からないようで唸っていると、何か思い付いたように顔を上げた。

 

「ギルドカードは持っているかい?」

 

 ギルドカード?祐也は聞いたことのない単語に唯一現在の持ち物で可能性がありそうな冒険者の認識票を見せた。

 

「それは冒険者のだよ?……もしかして持ってないのかい?」

 

「これじゃないなら持ってないです」

 

 おばちゃんは深い溜め息をついて言った。

 

「今のご時世、商人になるには商業ギルドに入るなんて常識だよ?」

 

 祐也はそんな常識聞いたことなかった。本日の不動産はそんな常識的な物を持っていない祐也たちはただの冷やかしと勘違いして、あのような態度をとっていたのだった。

 

 それを知って祐也はフレイヤの方を見る。

 

「私の生きていた時代にそんなものはなかったもので……」

 

 と言いながら目を逸らすのだった。

次回はギルドカードの入手頑張ります!



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