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第1話 特殊な能力


 祐也は静かに目を覚ました。

 そこはどうやら森のようで、周りを見ても木と草しかない。

 

 どうやら全員バラバラに転移されたらしい。

 実はどこに転移するかはわからないというのも説明されていたのだが、祐也はその部分を聞いていなかった。

 

 なので異世界モノらしく、城の中とか、せめて町の近くに転移するとばかり思っていたのだが宛が外れたらしい。

 

 森なら食料には困らないしまだマシだろうと考えるのをやめて、ずっと気になっていた能力がどういうものなのか試すことにした。

 

 すると、目の前にゲームで言うところのステータスウィンドウらしきものが出てきた。

 能力欄を見る

 

 “創造”(クリエイト)

 自分の考えたものを無から創る能力

 

 どうやらかなりチート臭い能力を手にいれたようだ。

 だが、説明が曖昧過ぎて何ができて何ができないのかが全くといっていいほどわからない。

 物は試しということで色々実験をすることにした。

 

 とりあえず適当に金を創ることにした。

 何故金なのかって?特に理由はない。

 能力の発動には、呪文というか能力名を詠唱する。

 

 「“創造”」

 

 すると、掌に小粒の金が現れた。

 だが、なんだろう……なにか釈然としない。

 

「……ちゃっちい。」

 

 もっと言えばショボい。

 想像していた能力と違っていたせいで思っていたことが口に出てしまった。

 

 だが、とりあえず金は金なのでポケットの中にいれた。

 町に行けば使い道はあるだろう。

 異世界モノのテンプレでは時代は中世ヨーロッパだろうから、金貨とかに金は使うし。

 

 問題は大きさである。

 あまりにも小さい。

 この大きさでは金貨一枚にどれだけ能力を使わないといけないか……

 

 創る時のイメージが悪かったのかもしれないと、次は金の延べ棒をイメージする

 そう!大切なのはイメージだ!

 

 「“創造”」

 

 するとさっきと同じように掌に金が現れた。

 今回はイメージした通りの金の延べ棒だった。

 

 ショボいとかちゃっちいとか言ってすいませんでした。

 祐也は心の中で土下座した。

 

 そして、金の延べ棒を空っぽのリュックの中に入れた。これを町で売った時のことを考えると頬が緩んだ。

 ちなみにリュックは、起きたときに自分のとなりに置いてあった。

 

 祐也は次の実験に移る。

 今度は生物を創れるかを試すことにした。

 

 もとの世界での神話とかでは、生物を創ることは神にしかできないとされていて禁忌とされていることが多い。禁忌に触れれば天罰が下る。

 それが生物を創るということだ。

 祐也の観てきたアニメもそうだった。

 つまりは神をも恐れぬ所業である。

 

 さぁ、真理の扉を開こうではないか!

 投下交換だろ、錬金術師……。ふふふ

 おっと、これ以上はいけない。

 少し調子に乗りすぎたようだ……。

 今回は実験動物として有名なマウスさんを創ることにした。

 

「“創造”」

 

 何も起こらなかった。

 能力が発揮されたなら、掌にマウスが乗っているはずである。

 

 つまり、生物は作れない。

 そう結論を出そうとしたとき、急に目の前にステータスウィンドウが広がった。

 そして、能力の説明欄に一文付け足されていた。

 

 “創造”

 自分の考えたものを無から創る能力

 ただし生物は創ることができない

 

 どうやら詳しいことは体験すれば記載されるらしい。

 もう少し詳しいことが知りたいので実験を再開する。

 

 次はもといた世界の物も創れるかを試すことにした。

 

 今回創るのはソーラーパネルだ。

 これが出来たら、とりあえず電化製品を創りまくって快適な環境を創ることにする。

 

 異世界自体が近代なのはよろしくないが、自分で創る分にはいい。今そう決めた。

 今思えば祐也は都市部で育ったのだから、森で自給自足はなかなかの難易度である。

 

 よし、創ろう!

 善は急げだ。

 

 「“創造”」

 

 ……何も起きない。

 金のように小さい訳でもなければ、マウスの時みたいにステータスウィンドウが広がったりもしない。

 

 つまり、別の要因があるのだろう。

 そういう結論に至った。

 もしかしたらイメージが悪かったのかもしれないが、それだと小さいソーラーパネルがあるはずである。

 

 いくら考えてもその要因がわからなかったため、別の物を創ることにした。

 創るのは懐中電灯。

 イメージはしやすいが、原因が『電化製品は創れない』だった場合創ることができない。

 

 これである程度原因は絞れるはずである。

 

 「“創造”」

 

 懐中電灯を創ることに成功した。

 電化製品は創れるということである。

 

 ならば原因は何だったのか……

 もしかしたら細かいところまでイメージできないと創れないのかもしれない。

 

 ならば、と祐也は銃を創ることにした。

 ある程度細かくイメージができる物。

 祐也にとってはそれが銃だった。

 

 一時期FPSにはまっていて、そのゲームはリアリティーを追求したゲームだったため、銃についてはそれなりに詳しかった。

 さらに、そのFPSが原因で銃のことをすごく調べていたので細かなイメージにも自信があった。

 

 創る銃はベレッタM92と言われる銃でもといた世界で最も信頼と知名度が高い銃である。

 何故銃なのかと言うと、本物の銃を持つのが祐也の密かな夢だったからである。

 

 「“創造”」

 

 今度は能力が発動したらしい。

 やはり能力の発動には細かなイメージが重要だったのだろう。

 

 祐也の手には創ったベレッタがあった。

 何度もネットで見たそのままの形だった。

 初めて持った本物の銃は重く、そして何よりも密かな願いが叶ったことに興奮した。

 

 どうせなら撃ってみたい

 

 そう思ってしまったのは、仕方のないことだろう。

 異世界に飛ばされただけでなく、密かな願いだった銃を手に入れたのだ。

 夢が叶ったのに浮かれない方がおかしいと言える。

 

 だが、祐也はここが森だということ完全に忘れていた。

 いや、わかっていたのだろうが、都会で生まれ育った祐也からしたら森がどれくらい危険なのか想像出来なかったのだろう。

 

 当たり前だが動物はいるだろうし、最悪狂暴のやつもいるかもしれない。

 だが、それを考えられるほど祐也は冷静ではなかった。

 

 祐也は我慢できなかった。

 ネットで調べたり、動画で見たり、ゲームでの撃ち方を真似て銃を適当な木に向けて構えた。

 ゆっくりと引き金を引いた。

 

 大きな銃声と共に腕に大きな衝撃がきた。

 見よう見まねでは完全に衝撃を殺しきれなかったらしく、腕が頭の上の方に挙がっていた。

 

 初めての射撃に興奮していた……がそれも束の間で後ろから大きな咆哮が響いた。

 

 咄嗟に後ろを振り向くとそこには猪のような生き物が存在していた。

 日本にいる猪とは色や目の色などが違っていた。

 さらに、オーラと言えばいいのかはわからないが、禍々しい雰囲気を醸し出している。

 多分魔物的な何かだろう。誰もがそう考える姿をしていた。

 

 ここで初めて森が、ましてや異世界の森がどれだけ危険なところなのかを知った。

 

 ――グルルゥゥ~

 

 猪のような生き物は唸りながらこちらを睨んだ。

 猪が走り出そうとした次の瞬間、横から熊のような生き物が猪を襲った。

 

 熊のような生き物も魔物みたいだった。

 現在二匹の魔物同士で闘っている状態だ。

 

 

 

 逃げるなら今だが、祐也は動かなかった。いや、動くことができなかったというのが正しい。

 猪に睨まれているときの緊張感がまだ残っていた。まるで蛇に睨まれた蛙のように一歩でも動いたら殺される。

 そのような緊張感だった。

 

 いわゆる、強者同士の闘いは迂闊に動いたら殺られる!みたいな感じである。

 祐也は強くはないのだが……

 

 現在は猪は熊と闘っているため、意識はこちらに向けていない。

 とりあえず命は助かった。

 変な緊張が解けたせいでその場にへたりこんでしまった。

 

 弱肉強食

 

 祐也の頭にはその言葉が浮かんでいた。

 それと同時にさっきまでの浮かれていた気分が一気に吹き飛んだ。

 そして、祐也は初めて自覚する。

 ここは既に平和で普通に生活する上ではほとんど危険のない日本とは違うのだと。

 

 祐也は震える足を抑えてゆっくりと音をたてないように立ち上がった。

 その場から逃げようとしたその時、

 

「やっと立ったわね!早くこっちに来なさい、このノロマ!」

 

 魔物とは逆の方向から女の子の声が聞こえた。

 祐也は罵倒されていることも気にせずに声のする方へ走った。

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