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第22話 幽霊退治その2


「はぁぁあああ!!」

 

『ぎゃぁぁあ゛あ゛あ゛』

 

 咲夜は目の前に現れる幽霊を倶利伽羅で倒す。

 幽霊特効が効いてるようだな。ひとまず安心だな。創ったけど倒せないとか笑えないからな。

 

「結構効くもんだな。これ」

 

 祐也も剣の特技を持っているため普通に剣を使える。そのため前衛として戦っているのだが、幽霊が弱すぎる。

 剣が強いのはわかってるが、まるで豆腐を切ってるようだ。切った感触がないに等しい。

 実体がないのだから当然か。一人で納得して剣を振るった。

 あ、前衛で戦うためにアリアを無理矢理引き剥がした。今はサーシアに抱きついている。

 

 

「数が多い」

 

「一体一体は雑魚なんだけどな」

 

 地下に向かうと決めた後から幽霊がどんどん出てきた。悲鳴をあげる暇などない。

 

『私以外の幽霊はあいつの制御下にありますから』

 

「何故あなたは無事なのだ?」

 

『私も詳しくはわかりませんが、私があの女を殺したからだと思います』

 

 制御下にはならないのに呪いで死んだのか。どういう呪いなんだ?

 殺して幽霊にして自分の制御下におく、という呪いだと思ったのだが違うのかな?それとも何か見落としているのか。


 

『ここが入り口になります』

 

「何もないが?」

 

 美人幽霊が入り口として指を指した場所は暖炉の中だった。

 見た感じ咲夜の言った通り何もない。

 

『ここにスイッチがあります。そこを押してください』

 

 祐也は暖炉の横の壁を押した。すると壁が凹む。

―――ゴゴゴゴ……

 音がしたので再び暖炉を見ると地下に行くための階段が現れていた。暖炉の床がスライドしたようだ。

 

「何故こんなものがあるんですか?」

 

『今ではこのようなお化け屋敷ですが、元は貴族の屋敷ですよ?』

 

「なるほど」

 

 緊急時の脱出用ということか。貴族ということはお金持ちだからな。泥棒が入ってきたり、一揆などの時に逃げる用ということか。

 

「もしかして(トラップ)とかありませんよね?」

 

『それはどうでしょう。ふふふ』

 

 美人幽霊さんは不敵に笑った。

 え、何その笑い。怖いんですけど。これあるってことですよね。事前に罠の場所を教えていただけるとありがたいのですが。

 

「では行くぞ!」

 

「おい待て!罠があるかもしれ―――」

 

 祐也が言い切る前に咲夜の踏んだ階段からカチッて音がした。

 その瞬間金属のたらいが暖炉の上から落ちてきて咲夜の頭にクリーンヒットする。

 暖炉は煙突があるため結構な高さから落ちてきた。それが当たった咲夜というと………

 

「あぁぁ…………」

 

 頭を押さえて悶えていた。その程度で済むのはクラスが3だからだろう。日本にいた頃にこれやられてたら多分死んでたぞ。

 たらいで死ぬとか傑作だが、今は笑い事ではない。二人しか戦力がないのに一人が潰れたら洒落にならない。

 

「おい、話を聞かない馬鹿!」

 

「くっ…………」

 

 くっじゃねーよ!くっじゃ。

 本当にいい加減にしてもらいたいものだ。町の中とはいえ、命懸けであることを忘れてはいけないのだ。むしろたらいで済んで良かったな。

 

「それで、この微妙に痛い程度の罠はどういうことですか?」

 

 美人幽霊は目を逸らした。必死に笑いを堪えて。

 

『この家は男爵家ですので何かあるなんてことは殆どありません。という事で殆どの罠はネタになっています』

 

 たらいが上から落ちてくるネタあるよね~って納得できるか!

 男爵家は緊急時をなんだと思っているんだ!それで実際死んでるから笑えない。

 ここを使えてても死んでただろうけどな。

 

『ふふふ…………命の危険がある罠は事前に教えますから気にせず進んでください』

 

 つまり命の危険がない罠は教えないってことか。貴女の娯楽になるためにここに来たわけじゃないんだぞ!

 祐也は階段を踏んだ。カチッて音がする。さっき発動した咲夜の罠だな。二度目だから何も起きないはずだ。

 祐也の考えは落ちてきたたらいによって砕かれた。超痛い……

 

「これ何回発動するんですか!?」

 

『あはははははは……ふぅ』

 

 落ち着いたか?じゃあ説明してもらおう。

 

『ネタ系の罠はここにいる人数分は余裕で発動します、ブフッ』

 

 思い出し笑いをするな!ネタのためにやってるわけじゃないんだぞ!

 超痛いし………今後は咲夜を前にして同じドジを踏まないようにしよう。

 

「階段一段目は罠になってるから踏まないように!」

 

 後ろの三人に注意を促したあと前に進んだ。

 さすがに同じ罠に引っ掛かる人はいなかった。

 

 

 

 

「咲夜~何度も言うけど罠に気を付けろよ!」

 

 先行している咲夜に注意を促した。注意しても罠に引っ掛かるから意味ないんだけどな。

 本人は楽しんでいるからいいかと思っている。罠の場所がわかって便利だし。

 

「わかってい―――うわぁ!」

 

 あ、また引っ掛かってる。今度は落とし穴だ。

 無事だとは思うが年のために様子を見に行った。

 

「大丈夫か?」

 

「このくらいなんともない」

 

 落とし穴はあまり深さはなかったため咲夜に怪我はない。体が白い粉まみれだが。

 

「自分の体を見てから言え」

 

 咲夜は浄化魔法を使って体を綺麗にした。

 罠はさっきからこんな感じだ。本当に殺す気がない。どこかのバラエティー番組に出ているかのようだ。

 

「あとどれくらいかかりますか?」

 

『あと少しです』

 

 地下は迷路のようになっているため、美人幽霊さんが案内してくれる。

 案内がなかったら絶対に迷っていた。それくらい複雑にできている。この地下が何故あるのかわからなくなってきた。

 本当に全部ネタなのではとさえ思える。

 あと少しという言葉を信じて美人幽霊さんについていく。

 

「幽霊の数もだんだん多くなってきている。この先にボスがいるということだな!」

 

「そ、そうだな」

 

 咲夜のテンションは幽霊の数に比例して上がっていった。祐也はここに来るまでに幽霊をたくさん見てきたため怖いとは感じないようになっている。

 要は慣れたのだった。

 それよりも咲夜のテンションに引いているくらいだった。

 咲夜は上機嫌で先行している。

 

『あ、そこには危ない罠が』

 

「ん?」

 

 そして人の話を聞かない。

 カチッと音がすると、後ろからゴロゴロと嫌な音がした。

 だいたい予想は付くが一応聞いておこう。

 

「これってどんな罠ですか?」

 

『鉄球が迫ってくる罠です』

 

 あーやっぱりね………

 

「後ろを振り返らず走れ!」

 

 祐也は走り出した。この罠のことは知り尽くしている。曲がり角が弱点だ。

 そこまで走れば助かるはずだ。そう考え、罠のことなど気にせず全力で走る。

 

「なんで貴女も走ってるんですか?」

 

 実体のない美人幽霊さんも走るというか、飛んでいた。

 

『私たちにもあの鉄球は影響があるということです』

 

 幽霊をも殺す鉄球って。なにそれ凄い。この剣と同じようになっているということだろ。

 誰が作ったのか気になるな。

 呑気なことを考えていると後ろから幽霊の断末魔の叫びが聞こえる。

 

『『ぐぎゃああああ』』

 

 これは間違えば自分も死ぬというデメリットがあるが幽霊を殺すには効率がいいな。

 もうしたくないけど。

 

「今思ったんですけど壁をすり抜けたらいいのでは?」

 

『この壁も鉄球と同じ造りでできてるのです』

 

 この地下だけ幽霊を警戒して作ってるのか?意味がわからんな。

 わかったことはこの地下作ったやつは馬鹿だということだ。

 

 そうこうしていると曲がり角が見えた。迷路のようにできてるくせに、ここだけ直線が長かったな。これは本格的に殺しにきてる。

 

「次で右に曲がるぞ!」

 

 咲夜から順に祐也、美人幽霊さん、アリアを抱き抱えたサーシアと曲がっていく。

 

「マリー掴まれ!」

 

 最後のマリーはすぐ後ろに鉄球が来ていたため手を差し出して引っ張った。

 鉄球は前の壁に激突して止まった。

 

「とりあえず全員無事でよかった」

 

 前を走っていた咲夜はネタ枠の罠によってあられもない姿になっていた。薄暗いため局部はよく見えなかった。

 …………どう罠にかかればそうなるんだよ。

 黙って服を渡した。

 

「ありがとう。まさか服を溶かす液体を出す罠があるとは思わなかった」

 

 服を溶かす液体だと………ジーザス!何故そのシーンを見逃したんだ!

 今からその罠があるところに戻りたいが鉄球が邪魔で戻れない。ちくしょうっ!

 祐也は血の涙を流しながら前に進んだ。

 

 

 

 

 

『この先があの女のいるところです』

 

「やっとか………」

 

 祐也たちは、ついにこの元凶のいる部屋の前まで来ていた。思えばここまで長かった。

 鉄球の後も毒矢が飛んできたり、槍のが構えている落とし穴とか即死罠を乗り越えてここまで来た。

 何度か本気で死ぬかと思ったけど。

 美人幽霊さん教えてくれるの遅いんですよ。罠にに引っ掛かる直前に教えられても回避できないって。

 余談だが、触手とか服を溶かす液体は無かったが、謎の白い液体を出す罠はあった。

 それも何故か男には反応しない。

 責任者呼べやオラァ!いい仕事してると誉めたい。

 

「それで、その女というのはどんな攻撃をしてくるのだ?」

 

『闇属性の魔法を使います』

 

 闇属性……どんな魔法なんだ?闇での攻撃方法って今一つイメージがつかない。

 闇に飲まれよ!的な感じかな?

 

「闇属性魔法は影を操ったり相手の意識を奪ったりする魔法よ」

 

 祐也が不思議そうにしていたためサーシアが説明してくれた。

 影と意識を奪ったりか。てことは闇耐性は意識を奪われないようになるってことかな?

 とりあえず装備だな。ブラックコートを五人分生産して配る。

 耐性値みたいに数値化するものがあればイメージがしやすいため、能力で現実離れした性能の装備を創ることができる。

 今回のブラックコートは闇耐性50とコートのみで大抵の攻撃は防げるビックリ性能だ。

 コートにした理由はこの場で着替えることができないからだ。

 

『………凄い能力ですね』

 

 祐也の能力を見て美人幽霊は唖然としている。剣は次元倉庫から出したとでも思っていたのだろう。

 今回の同じコートを五枚創ったからそれで気付いたらしい。

 

「俺と咲夜は漂流者なので」

 

『な、なるほど…………漂流者にはじめて会いましたが凄いのですね』

 

「そうですね」

 

 正直凄いとかそんなレベルではないと思う。この世界の住人と比べたらチート能力だからな。

 

「これで準備万端だな」

 

 ブラックコートを着た咲夜が言った。薄暗いからよく見えないがブラックコートに刀って凄くかっこいい。顔も凛々しいので女子から御姉様とか呼ばれてても不思議ではない気がする。

 中身が問題なんだよな~。

 祐也は自分のことを棚にあげていた。

 

「じゃあ扉を開けるぞ」

 

 祐也たちは、扉を開けて中に入った。真っ暗だったのが祐也たちが入った瞬間明かりが点く。

 明かりの中心にはメイド服を着た女の幽霊がいた。

 まるでゲームのボスの登場シーンのようだ。

 

「「おお~」」

 

 二人はその演出に対して感心した。相変わらず緊張感のない二人だった。

 

『よくここまでたどり着きましたね。それに関しては誉めてあげましょう』

 

 話し方もボス感が漂っている。自分の力に絶対の信頼をしている人の話し方だ。

 フ○ーザもこんな話し方だったと思う。あまり覚えてないけど。

 

「お前の目的は一体何だ!」

 

 咲夜がメイド幽霊に向かって叫んだ。

 ノリノリだなこいつ。

 いやーわかるよ。こういうシチュ憧れるよね。俺も聞きたかったよ。

 

『私の目的ですか?』

 

「ああ、そうだ」

 

『いいでしょう!冥土の土産に教えてあげましょう』

 

 アリアも冥土の土産って言ってたけど流行ってるのか?

 もしかしてメイドだから冥土の土産?あ、はい。すいません調子乗りました。

 

『私の目的はただ1つです。魔王様のために人間を殺すことです』

 

 人間を殺すこと?支援ではなかったのか?

 あれか、支援する予定が途中でバレたから殺すことに変更しましたということか。

 もしくは元々殺すことだったのか。

 どっちでもいいか。どうせこいつ殺すし。

 

「何故だ!そもそもお前も人間ではないのか!」

 

 咲夜がノリノリなためもう少しこの茶番に付き合うことにした。

 それは気になっていた。人間の敵の魔王を人間が支援するっておかしい話だもんな。

 

『私を下等な人間と一緒にしないでいただきたい』

 

「なにっ!」

 

『私はこの女に憑依しているにすぎない』

 

「なん、だと………」

 

 咲夜の表情とは裏腹に祐也は納得していた。

 やっぱり操られてたか。敵が人間を操って事件を起こすとかありきたりだからな。

 咲夜も驚愕の表情をしているが、あれはわざとだろう。役者だな~。

 たまにチラチラこっち見てくるし。はいはい凄い凄い。

 

「ならば、正体を表せ!」

 

『ククク………いいでしょう』

 

 メイド幽霊の背中から脱皮するかのように髪の生えた骨のようなものが現れた。

 現れ方がグロテスクなんてものではない。効果音をつけるなら[バキッ、ボキッバキ]って感じだ。

 実体はないので音は鳴らないが。

 

『これが私の真の姿です!』

 

「お、おう………」

 

 正体を表せ!って言った本人は凄く引いてた。その対応はさすがにないだろ、と思いつつ祐也もかなり引いていた。

 というかその場にいる全員引いてた。

 美人幽霊さんも真っ青だ。死んでるので元々真っ青だが。

 

『真の姿を見せたからには名乗らなくてはならないな!』

 

 別に無理して名乗らなくていいぞ。

 でも名乗りたいんだろうな。

 

『私の名前は魔王軍ヴァレルノール』

 

 へ、へぇ~。

 ど、どんな反応をしたらいいのだろうか。

 

『ではいくぞ!』

 

 俺たちに反応を求めていないのか名乗るだけ名乗ってこちらに向かってきた。

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