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第19話 トリマキーズ


「いや、無理ですけど」

 

「「「……は?」」」

 

 男たちはこの状況で断られるなんて思ってもいなかったのだろう。気の抜けた声が出ている。

 

「だから、返さないって言ってるの。おーけー、アンダスタン?」

 

 特技、挑発を発動した。

 喧嘩を売ってるとしか思えない。本人はこれでもわりと真面目なのだが。

 

「私たちの装備返しなさいよ!」

「そうよそうよ!」

「私たちはなにも悪くないじゃない!」

 

 男たちの後ろから取り巻きーズが姿を表した。

 

「久しぶり~」

 

「「「久しぶり~じゃないわよ!」」」

 

 そういえばそうだな。三日ぶりくらいだもんな。

 奴隷買ったり、依頼行ったりしたせいでかなり時間が経ってるように感じた。

 どっちも今日の出来事だけど。

 

「というかさ、お前らどの面下げて返せとか言ってるわけ」

 

 装備を失ったのは決闘の結果だ。悪いことをして奪ったわけではない。不正はしたが。

 取り巻きーズが納得するかどうかは別だ。

 

「あれはアレックスが勝手に賭けたのよ!」

「そうよそうよ!」

「私たちは反対したわ!」

 

 アレックス叩かれまくりだな。本人ここにいたら涙目になっていたことだろう。

 可哀想に……なんて思わない。イケメンが悪く言われるとか飯うまだな。

 

「でも賭けは賭けだろ?」

 

「その変にしてやってくれ」

 

 黒スキンが話に割って入った。

 ちっ論破してやろうと思ったのに。要らぬ邪魔を。

 

「お前らも痛い目に遭いたくないだろ?」

 

「それはな」

 

 痛い目に遭うのは怖い。だがそれよりも怖いものがあるのだ。隣で唸っている幼女の方が断然怖い。

 何するかわからないからな。

 

「だからおとなしく渡してくれ」

 

「いや、無理だって」

 

「俺もあまり優しくない。次で最後だ。おとなしく渡せ」

 

 黒スキンは手をボキボキ鳴らして威嚇をしながら言う。

 この世界でもこの威嚇方法あるんだな。

 

「だから無理だ」

 

 祐也は威嚇にびくともせずスッパリと断った。

 

「だって売ったし」

 

「「「はぁああああ!!!」」」

 

 そう。祐也たちは装備の性能を見て既に武器やで売ったのだった。

 これなら自分で作った方が強いと。

 祐也が装備を巻き上げたのは強い装備があれば使うつもりで、なければ売る。

 ついでにどの程度の性能が普通なのか、確認程度の理由だった。

 

 男たちは動揺する。

 

「は、ハッタリだ!」

「俺達を騙そうとしてるんだ!」

「早く出せ!」

 

 無いものをどう出せというのだ。現実を見ろ。

 能力を使えばできないことはないけどな。

 

「で、この場合どうするんだ?」

 

「わかってて聞いてるんだろ。もちろんおまえの考えている通りだぜ!」

 

 黒スキンは祐也めがけて殴りかかる。

 その瞬間アリアが割って入った。黒スキンの拳を軽々と片手で受け止めた。

 

「な、何!?」

 

「よくも、お兄ちゃんに手をあげたな…………殺すぞ人間!」

 

「「……ひっ!」」

 

 アリアのあまりの気迫に黒スキン以外の男たちは怖じ気づきへたりこんだ。

 何人か漏らしてるし。おっさんのお漏らしシーンとか誰特だよ。

 

「もう一度聞くぞ、どうするんだ?」

 

「くそっ!なんて力だ!」

 

 黒スキンはアリアの手を振りきろうとするがびくとも動かない。

 

「アリア、潰さない程度に力を込めていいぞ」

 

「うん!」

 

 アリアは小さな手に力を入れた。いや、本人からすると殆んど力を入れてないのだが。

 

 黒スキンの手からミシミシと嫌な音が聞こえる。

 骨が軋む音ってはじめて聞いたな。

 

「あ、ああぁぁぁぁ!!痛てぇぇぇぇ!!!」

 

 黒スキンは大声で泣き叫ぶ。

 

「で、どうするんだ?」

 

「あ、諦める!諦めるから許してくれ!」

 

 どうしよっかな~。少し放置した。

 戦力ってのは量より質なんだよ。これを機に覚えておくといい。

 

「アリア手を離してやれ」

 

「うん」

 

 手を離したら黒スキンの手は真っ赤を通り越して赤黒くなっていた。

 これは骨折しているな。それも何ヵ所も。

 いい教訓としてこれからは人に絡まないようにするんだな。

 

「守ってくれてありがとうな」

 

「こ、この程度ならお安いごようだ!」

 

 むふーっと鼻から息を出してアリアは誇らし気に胸を張った。幼女なので胸はないのだが。

 幼女のドヤ顔可愛い。いつも通り頭を撫でた。

 うーん。頭を撫でるしかしていない気がする。もっと色々ほしいな。そんなことはないと思うが飽きられても嫌だし。

 誉めるときに頭を撫でる以外で何か考えとかないとな。

 

「という事で男たちは諦めたがお前らはどうするの?」

 

「「「っ…………」」」

 

 取り巻きーズはまだ諦めていなかった。悔しそうに祐也のことを睨んでいる。

 今後のことを考えたらここで決着をつけないとダメだろう。

 だがこのまま引き下がるとは到底思えない。

 

(何かいい案はないか?)

 

(創って渡したらいいだろ)

 

 それはなんか嫌だ。

 俺のことを冴えないと馬鹿にしたやつに装備を創るのは気に入らない。

 

(はぁ………じゃあ仲間に引き込むとか?)

 

(選択肢としてそれはありえないに決まってるだろ!)

 

 まず信用ができない。信用ができない相手を仲間にするつもりはない。

 

(どうすると言うのだ……)

 

(いっそのこと殺すのも手じゃね?)

 

(冗談でも笑えないぞ)

 

 冗談ではなく本気なのだが。

 俺の殺しに対する価値観は変わった。敵は殺す。邪魔する者も殺す。それが例え人間だろうと魔物だろうと怪物だろうと。殺しで変な感じがしたのは最初の狩りの時だけだ。

 日本にいた頃では考えられない思考回路だった。咲夜も似たような感じらしい。

 

 祐也がどうしようか考えていると取り巻きBがお願いしてきた。提案でも命令でもない。

 

「せめて武器だけでもお願いします!」

 

 いつも「そうよそうよ!」しか言わなかった彼女が土下座をしている。

 台詞は主体性が皆無で周りに合わせることしかしてこなかった子が自分から進んで土下座までしたのだ。

 懇願している女の子を無視するほど外道にはなれないが、今までの態度を考えるとな~。

 あ、面白いこと考えた。

 

「わかった。返すことはできないが元の武器に近い性能の武器を渡す。それで勘弁してくれ」

 

「ありがとうございます!」

 

「ただし、次絡んできたら殺すからな」

 

「はい」

 

 はいって言ったからな?

 祐也はさも次元倉庫から取り出したように武器を創って渡した。一つだけ。

 

「これでいいだろ。じゃあな」

 

 祐也が歩くと男たちは道を開けた。怯えすぎだ。

 

「ま、待ちなさい!」

「私たちの分は?」

 

 武器を貰っていない女たちが騒ぎだした。取り巻きBは武器を貰っているため「そうよそうよ!」がない。

 

「は?あるわけないだろ。俺はその子に頼まれたから渡したのであってお前らは違うだろ?」

 

「「なっ……」」

 

 取り巻きBにはお願いしますと言われ土下座までされた。だがお前ら見てただけじゃないか。

 ふざけるのも大概にしてもらいたいものだ。

 

「あ、関わったら殺すってのはお前ら二人も含まれるから」

 

「それは関係ないでしょ!」

「私たちは武器もらってないんだから!」

 

「貰って当然とでも思っているのか?」

 

 してもらって当然って、ゆとりか!

 アレックスに甘やかされていたのかもな。“強奪”があるときに見たけど強い特技を持っているのは取り巻きBだけだった。

 なんか取り巻きって一括りにまとめるのも可哀想だな。これからはB子にしよう

 

 自分の立場を理解してくれたみたいだな。ここまで別に面白いことはない。

 面白いのはここからだ。

 

「俺の気が変わらないうちは武器を渡さないだろうな。俺の気が変わらないうちは。」

 

 大切なことなので二回言った。

 つまり気が変わるように何かしろということである。

 

「「私たちにもください!」」

 

 二人は土下座した。するしかなかった。

 祐也の気が変わるかもという可能性にかけるしかないのだ。

 

「土下座程度で俺の気は変わらないぞ?」

 

 今更だが祐也はクズだった。

 女たちは戸惑った。B子はこれで貰えたのだから自分たちも同じ事をすればもらえると思っていたのだ。

 それでは面白くないためもちろん断る。

 

「じ、じゃあ何をすれば……」

 

「それはお前らの考えることだろ。時間が経てば経つほど難しくなるぞ」

 

 祐也は急かした。

 女たちは慌てた。武器もお金も無いとなると冒険者では採集依頼しかできない。採集依頼をこなしながら武器を買うためにお金を貯めるのは不可能に近いだろう。

 そして冒険者だった女が落ちてなるものは娼婦だ。だが娼婦になるのは二人のプライドが許せないらしい。

 

「な、何でもしますから!どうか!」

 

「私も何でもします!」

 

 「何でもします」になるわけだ。

 この台詞を待っていたんだ。

 

「何でもするんだな?」

 

「「はい」」

 

 B子にだけ武器を渡した時からこうなるのは予想していた。何をさせるかも決めていた。

 

「二人で戦い勝った方に武器をやろう」

 

 これが祐也のしたかったことだった。

 よくも冴えないだの卑怯だの言ってくれたな。しっかり痛い目をみてもらわないと気がすまない。

 女たちは憎々しげに祐也を見る。

 

「別に俺はいいんだぞ。お前らがどうなろうと俺には関係ないからな」

 

 祐也の言葉を聞くがいなや二人はよろよろと立ち上がって互いを睨んだ。

 

「私のために犠牲になって」

 

「それはこっちの台詞よ」

 

 二人は掴みかかり、髪を引っ張ったり、叩いたりと戦いを始めた。相手を殺す勢いだ。

 

「昔からあなたの事が気に入らなかったのよ!」

「気が合うじゃない。私もあなたが大嫌いだったわ!アレックスに気に入られてるからって調子に乗ってるあなたが!」

「そういうあなただって気に入られてたじゃない!夜の相手をした回数は私より多かったじゃない!」

「何よ!あなただって―――」

 

 今までの不満が出てくること出てくること。二人は一切の躊躇いなく殴りあっている。

 う、うわぁ……あれはないわ。

 嗾けた本人はかなり引いていた。祐也の楽しみにしていたのはあくまでもキャットファイトと言えるような戦いだ。ボロボロになって服がはだけていくような。

 だが現実はどうだろうか。今までの不満を乗せて拳を振るう女たち。美しさの『う』の文字もない醜い戦い。

 女って怖い。祐也はこのような事態を招いたことを激しく後悔した。同時に現実の女の闇を知った。

 

 しばらく二人は互いのことを罵りあいながら戦った。片一方が馬乗りになったりしてサービスシーンはあったのだが口が汚いためサービスにならなかった。

 

「やるわね………」

「あなたもね………」

 

 二人は同時に倒れて意識を失った。最後はお互いの事を認めあったかのようだった。

 どこのヤンキー漫画だ!認めあうシーンがなかなか見所があって良かったが。

 

「これ、どう収拾をつけるつもりだ」

 

「ど、どうしよう………」

 

 こんなことになるなんて思ってもみなかったため考えていなかった。

 だがいろいろ学ばせてもらった。

 きっとこの二人は宿敵と書いて親友と読むような関係になっただろう。二人の新たな関係を祝して二人ともに装備をあげても罰は当たらないだろう。

 祐也は全く同じ剣を寝ている二人の横に置いた。

 

「あ、こいつらが起きたら男に頼らず自分で強くなるようにって伝えておいてくれ」

 

 祐也はB子に頼むとその場を後にした。

 数年後、三人は新しく組んだパーティーで有名になったとかなってないとか。

 

 

 

 

 

 

「遅い!何してたのよ!」

 

 酒場に行くと顔を真っ赤にしてサーシアが怒っていた。

 

「いろいろあってさ」

 

 本当にいろいろあった。

 男たちから逃げたり、取り巻きーズが登場したり、女の闇を見たり。

 

「そんなの知らないわよ!私寂しかったんだから~」

 

 サーシアは急に泣き出した。

 え?サーシアさんってこんなことで泣くキャラでしたっけ。寂しがりやなのは知っているがここまでではないはずだ。もしや………

 祐也はサーシアの使っていたグラスを匂った。

 

 やっぱりな。グラスから酒の匂いがした。

 この世界では成人に正確な年齢はなく、親が一人前と認めたら大人とされ、自分で責任を負うようになる。

 だから子供がお酒を飲むのも可能で漂流者の二人も飲めるのだが、日本で暮らしていたせいか二十歳になるまでは飲まないようにしていた。

 これはあくまでも日本組の考えでサーシアは別だ。

 サーシアは酒を飲んで酔っているのだった。しかも泣き上戸。

 

「うっ……私何かあったんじゃないかって、心配で心配で………」

 

「ごめんって」

 

 酔っても美人だな~なんて現実逃避をしている暇はなかった。とりあえず慰めなくては。

 

「なんか腹が立ってきたわ!あんたも飲むわよ!」

 

 サーシアは顔を真っ赤にして祐也に酒を注いだ。今度は絡み酒のようだ。

 

「俺はまだ飲めないって」

 

「何よ!私の酒が飲めないって言うの!」

 

 めんどくせぇ~!

 酒の入ったグラスを無理矢理口に当てる。

 口を防いだせいで酒が顔にかかった。

 

「あはははは!あんた何溢してんの!」

 

 次は笑い上戸か………

 

「誰か助けてくれ」

 

 祐也は叫んだ。

 さっきから酔ったサーシアのスキンシップが凄い。抱きつくのは当然のこと乗っかってきたり、キスしようとしたりする。

 このままでは理性がもたない。

 

 待ったが一向に助けは来なかった。周りを見てみると、アリアとマリーはご飯に夢中で咲夜は二人に夢中だった。

 

「さぁ、飲むわよ!」

 

 また無理に飲ませようとする。

 なんか誰も助けてくれないし、どうでもよくなってきた。

 祐也は酒を飲んだ。

 

「いい飲みっぷりね!私も飲むわ!こっちに酒を追加~!樽持ってきなさい!」

 

 祐也もやけになって飲みはじめた。

 初めて飲んだ酒の味は辛くて喉が痛くなったが気にせずにがぶがぶ飲んだ。

 

「樽お待ち!」

 

 サーシアが頼んだ樽がきた。というか本当にあったんだ。

 

「よーし!飲むわよ!」

 

「いぇ~い!」

 

 既に祐也のテンションはおかしくなっていた。何もかもが面白くて面白くて仕方なかった。

 どうやら笑い上戸のようだ。

 咲夜も酒の味が気になったのか飲みだした。二十歳まで飲まないようにするという考えはどこかへいったようだ。欲に忠実なのだった。

 

 酒を浴びるように飲んで、途中から記憶が曖昧になっていった。

 咲夜は酔わない程度の飲んだあと幼女二人を連れて先に宿屋に帰った。

 アリアは眠かったのだろう。珍しく祐也を放置した。

 

「どんどん飲むわよ~!」

 

「じゃんじゃん持ってこーい!」

 

 放置された二人は先に帰ったことなど気にも留めずに酒を飲んだ。

 

 明け方店が閉まるぎりぎりまで飲んだ二人は、肩を組んでふらふらしながら店を出た。

 

 そして祐也は大人の階段を………

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