ゆうちゃんの狂乱
「えーっと、これはいったいどういう状況なの?」
姪の戸惑いながらも出した質問に「さあ?」と答えるしかできない。
「柔らかくてぷにぷにしてる。ああ、妹成分のいい香りがするよう」
さっきから、この調子でまったく離れようとしない。というか、妹成分のいい香りって何だろう?
嗅いだらわかるものなのかな。
「嗅ごうとするな」
ペシッとサクラにはたかれた。それもそうか。
「「……」」
「やめろ、そんな目で、やばいやつを見るような目で見ないでくれ」
もうなんか視線が痛い。というか、さっきから姪にずっとしがみついてスリスリしてるような奴にまで冷たい視線で見られるなんて。
「というか、ゆうちゃんってそんな変態チックなご趣味が?」
「失礼な!ちゃんと選考基準があるんです。ただ、妹であればいいってわけではないですから」
さいですか。
「ねえ、それよりもメイちゃんだっけ?ID交換しよ」
「まあ、いいですけど」
「ありがとう。カバン取ってくるから待ってて」
そういうとロッカールームに向かってしまった。
「どうする?」
「どうするって言われても普通に接してあげればいいじゃないか」
「でも、これじゃあ中二病キャラではなく中二病をお姉ちゃんキャラにいじられるヒロインキャラになってしまうような」
「それは……間違いないんじゃないか」
実際そうだし。
「ひどっ!そんな、日常系でも異世界に転生してまでもギャグ要素さえあればどこでもいるようなキャラと一緒にしないでよ!」
そこまで言わなくても。そりゃあ、みんな同じような感じだけど、パッと思いついただけでもみんな眼帯してるし毎回いじられてるけど。
「ちょっと!うちの子を怒らせないでくださいよ」
「少なくともうちのだけどな」
「保護者にあるまじき行為をしといていまさら所有権を主張するとは恥を知りなさい!」
「よし、話し合おうじゃないか。二次元を馬鹿にしときながらいざ見てみるとはまって抜け出せなくなったやつが良く言うよ」
「わたしに文句があるのなら聞こうじゃないか」
すでに、それが見覚えあるんだけど。
「ふっ」
「鼻で笑いましたね。今この瞬間に私の怒りが爆裂しましたよ」
「ならもっと、馬鹿にした笑い方でもいいんだぞ。プーックー」
「はあーっ!!」
「ぐへっ」
デジャブ!!
「はーい、みんな仕事に戻ってね」
「マスター了解です」
「中仁君はゆっくりしていいよ。代わりにゆうちゃんが働いてくれるから」
「いやでも……」
「いいのいいの」
「いえ、よくないです。断固反対します」
「でもねえ…さっき休憩取ったでしょ」
「うっ、それは…」
もはや返す言葉もないらしい。
「ゆうお姉ちゃん頑張って」
と照れながら姪がつぶやいた。
ゆうちゃんは満面の笑みでこぶしを握りながらこう答えた。
「お姉ちゃん、お仕事頑張るぞい」
彼女はもうだめかもしれない。




